鎧娘に境界空間管理局について説明する
鎧娘が尋ねて来たので、いろいろ説明する回
やあ、いらっしゃい。
境界空間管理局特異点観測室にようこそ。
まあ、どうぞ。
ダイニングのテーブルで申し訳ないけど、あまり来客用に作られてないんだよここは。
何か飲む?
ああ、お茶持参ね。
完全には信用されてないって訳だ。
いや、あっちの世界で冒険者とかやってたんなら当然の反応だと思うよ。
この間は、災難だったね。
学生勇者君は、君の無事よりは、鎧の発動の方を心配していたみたいだったけど。
ぶっちゃけ、そんなにヤバイ代物なの?
はあ、そりゃすごいね。
伝説のドラゴンバトラーみたいじゃないか。
学生勇者の言った決戦級ってのも頷けるね。
で、それは自分の意思で発動できたりしないの?
三段換装……それは、聞いた気がする。
二段までは自分の意思で換装できるのか。
三段目は危機が迫ったときに自動的にってことか。
あくまで、君の生命の危機が基準で、近くで何か起こっても反応しないわけだ。
逆に、身の危険が迫ると自動的に発動してしまう危険があるということなんだね。
動力というか、エネルギーは何なんだろう。
魔力とか、精神エネルギーとかそっち系?
解らないんだ。
うん、学生勇者が心配している意味が解った。
境界空間管理局としては、一応監視下というか動向を把握しておく必要があるかな。
大丈夫、プライベートに口出しとか監視とかしないよ。
そうだね、転移とか召喚とかされた場合に追跡調査するとか、決戦級鎧が発動しそうな危険はないかとか、その程度だよ。
必要なら製作者の意見の聴取とかもするだろうけど、どこの世界か解らないんじゃ調査できないしね。
あーそこね。境界空間管理局という聞いたこともない組織は、いったいどんな組織なのかと。
これを聞いてしまうと、後戻りできなくなってしまうけれども、その覚悟はできてる?
あはは、冗談だよ。
あまり口外して欲しくはないけれどね。
他人に話して信用されるような話でもないしね。
境界空間管理局というのは、名前のとおり境界空間を管理している組織なんだけど、そもそも境界空間ってなんだってところからだね。
多元宇宙とか並行世界とか聞いたことある?
同時に重なり合って存在している世界で次元の壁とかで仕切られてるって理論なんだけど。
そうそう、その境界の次元の壁っていうのが、実は壁じゃなくて部屋だったって話。
で、その部屋っていうのは、ものすごい数の世界と接しているわけで、その部屋を好き勝手にするとヤバイんじゃないかっていうのは、なんとなく判るでしょ。
で、連邦政府がそこを管理して一般の人は入れないようにしましょうってことで設立したのが境界空間管理局ってわけだ。
これが大体千五百年ぐらい前。
そうだね。所謂宇宙人だと思ってもらっていい。
もちろん。君が行ってた世界の人達とか、それこそ鎧を造ったドワーフの名工とかも同じ括りでいくと宇宙人なんだけどね。
で、千年ぐらい前に境界空間で重大な現象が観測された。
境界空間から見る世界って球形に見えるんだけど、その一つが崩壊したの。
それって、一つの宇宙がまるごと消滅したってことになる。
局の研究者達は焦ったね。
自分達の宇宙も崩壊する危険性を孕んでるって事がわかったからね。
研究の結果、次元断層とか空間の裂け目とか呼ばれる現象が原因だということが判ったんだ。
一応空間とかの裂け目って偶発的にできる事も多くて、それは自然に修復するんだけど。
大きな裂け目は修復仕切れなくて、それが広がって崩壊してしまう。
それで、局の研究者が開発したのが、次元の裂け目を修復する装置だ。
更に、研究により宇宙の内部の次元の裂け目が境界空間から観測できる球体の表面に影響を与えることが判った。
この装置の開発と、球体表面の観測によって、境界空間管理局の仕事は大きく変わる事になった。
宇宙空間が崩壊する原因となる次元の裂け目の修復だ。
それ以来、境界空間管理局員は「空間を繕う者[Plane Mender]」って呼ばれるようになりましたとさ。
でもね、事はそう簡単ではなかったんだ。
小さな次元の裂け目は自然に修復されるって言ったけど、そうでない裂け目が研究によって明らかになった。
その原因は「魔法」だったんだ。
魔法って、物理法則を無視するよね。エネルギー保存とか質量保存とかの法則を無視するだろう。
それが空間を歪ませる。その歪みが大きくなると、次元のほつれみたいな「ごく小さい次元の裂け目」ができてしまう。
普通なら、自然に修復されてしまうんだけど、魔法は使われ続けて歪みは大きくなっていくから、修復されずに小さな裂け目は加速的に大きくなっていってしまうんだ。
だから、魔法の使われている所へ行って、その影響の出ているところに例の装置を設置して、現地でエージェントを手配して、裂け目がなるべく小さいうちに修復する。
これが、今の境界空間管理局のメインの仕事ってわけだ。
君はもう解っていると思うけど、魔法は実際に存在するじゃない。
でも、この地球みたいに魔法がほぼ存在しない世界もある。
そして、魔法のない場所から魔法のある場所への事故転移とか、召喚転移とか、転生とかも当然あるには、あるんだけど、実例の存在する密度は疎らなんだ。
だけど、ここ地球、中でも日本における実例の密度は、他の場所に比べて多すぎるんだよ。
だから現地で観測して、なにかあれば報告しろって派遣されているのが、特異点観測室ってわけだ。
とはいえ、そんなとこに大人数を割く訳にもいかないんで、実際は室長ひとりしかいない。
それが、この私、クローノ=エスフォーゼということです。
あはは、そうだろうね急に言われても、なんこっちゃだろうね。
でも、説明したことに嘘はないよ。
ということで、決戦級って言われる鎧の動力が魔力ならば、監視下に置く必要があるのは理解してもらえたかな?
うん、ありがとう。協力に感謝するよ。
なにか、困ったことがあれば相談に来るといい。
監視下に置く代償というわけではないけど、大抵の相談には乗れると思うよ。
魔法や鎧の事はもちろん、完全なプライベートな事でもOKさ。」
こう見えて、結構ヒマなんでね。




