ある放課後にて
「おーい、翔~!早くしないと帰っちゃうよ!!」幼なじみの綾が僕を催促する。
「分かったからそう慌てるなって……あれ?筆箱がない…‥…教室かな?綾!ちょっと待ってて」
「も~!早くしてよ~!」僕は、綾の言葉を無視して、階段を駆け昇る。
僕の教室は最上階にあるため、走っていると、部活をしていない僕なんかは、とても疲れる。
おっと、忘れる所だった。僕の名前は速水翔、普通の高校一年生だ。さっきも言ったように部活はしておらず、運動神経は普通より下、勉強も可もなく不可もなくってとこ。で、さっきいた幼なじみが櫻井綾、部活はソフト部で、けっこう活躍しているらしい。でも、そんな綾は勉強がかなり苦手で、頭良いやつに聞けば良いのにいちいち僕に聞いてくる。
綾はけっこう男子にもてるらしく、人気ランキングでも上位に入る。それに比べて僕は容姿は普通、女子の話題にさえ出てこないだろう。
僕は生まれてからずっと自分に自信がなかった。だから好きな人ができても何もできない自分を責めたりした。
しかし、僕はまた好きな人がいる。名前は椎名沙織さん、かわいいのと物静かな所が男子の心を掴み、密かに人気が出ている。僕もその一人なのだが、みんながアプローチをしているなか、一人椎名さんを眺める毎日を過ごしている。
息も絶え絶えに教室に着き、ドアを開けた。その瞬間、いつもの教室のはずなのに何かが違った。
今僕の目の前には、憧れの椎名さんがいる。
「あっ……えっ…えーっと…‥…」僕はここに来た本来の目的を忘れ、椎名さんにどうやって話しかければ良いのか迷っていると、
「速水君……だったよね?」
「えっ!?……はっ…はい!!」
「あのさ……頼みがあるんだけど…‥…」
「なっ何ですか?」
椎名さんは大きく息を吸い込み、
「私と、友達になってほしいの…‥…」
…‥……‥……‥…ん?何だこの状況は、整理すると、僕は好きな人から友達になってほしいって頼まれているのか?
「嫌なら別に…‥…」
「いえ!そんなことないです!僕が責任を持ってあなたを幸せにします!」
「速水君それは早いかも…‥…」
「あっ!いや、これは…‥…」
「あははっ……やっぱり」
「え?やっぱりってどういう事ですか?」
「毎日私を見てたから最初は少し気持ち悪いなって思ってたけど、他の男子の人達が私に近付いて来るようになってからあなたは違うって気付いたの」
「それで、もし、速水君が告白してきたら付き合うつもりだったんだけど、ここで会えた。今しかないって思って私から告白しようって思ったんだけど、それでもまだ不安なの、本当にこの人といて大丈夫なのかって、だからまだ付き合う事はできない、ごめんなさい」
「………‥……‥……‥……‥…」僕はどうすれば良いか分からなかった、でも、答えはもう決まってる。
「僕が努力していつか椎名さんと付き合えるまでは友達として仲良くしてください」
「……はい!」そのときの椎名さんの表情は、今まで見たことない笑顔だった。
この瞬間、僕は決めた。どれだけ困難でも、僕の思いが椎名さんに届くまで、僕は諦めない!
ーーいっぽうその頃
「筆箱探すだけなのに、翔は何やってんのよー!!」
律儀にも、綾はずっと待っていた…‥…