第74話 直談判
少ないですが、久しぶりです
国会議事堂
取材陣のカメラが一人の男性に、集中している。
「つまり、消えた3名の自衛官の安否確認を諦める方針と言うことで宜しいのですか?」
「あ~、そう言う訳では無くあくまで調査を縮小し継続すると言うことです」
記者の質問に、答えると更に付け加える。
「これは、前相田内閣のような失態を考えこれ以上の自衛官の゛犠牲゛を出さないよう考慮した結果です」
異世界"動物"保護法において、消息不明者を出したこの法案はすぐに撤廃された。
同時に、内閣は総辞職し全責任を相田元総理が取る形となった。
保護法の発案者の東議員は、政界に戻れるどころか精神科に入院中である。
「彼方の世界に行って、3名の行方を探す案は無いのですか?」
その質問に呆れた表情を浮かべた新総理の男性 早山はため息をついた。
「良いですか?確かに、此方からは行けるが調査チームの中尾教授が前から言っているでしょう?帰れる確率が低いと」
早山総理は、質問した記者をバカにしたように言った。
「そんな片道切符な上に、何があるか解らない未開の地に自衛隊を派遣させれる訳が無い!」
そこまで、言われ記者は悔しそうに黙った。
「よって、自衛隊の行動は引き続き゛ホール゛を監視し危険性生物の駆除。そして、調査研究チームは゛ホール゛の消滅を前提とした方針を取ります。勿論、必要人員で三人の調査もする予定です。後は、来週のサミットで詳しい内容をお話しします」
早山総理は、これで話は終わりとばかりに話を締め括る。
「では、最後の質問ですが何故3名の自衛官の階級を特別的に昇級するのですか?」
「それについては、゛最後まで゛自衛隊としての責務を果たした功績によるものです」
本人達が、知らないまま階級が上がった事を瀬川達は後になって知るのだった。
2等陸曹 瀬川 龍巳
3等陸曹 湯川 晃
3等陸曹 浅野 健介
駐屯地 居室
総理官邸のニュースを見ながら、瀬川 龍也は頭にきた。
「ふざけるな!何が、最後までだ!!」
持っていたリモコンをベットに叩き付け、憤慨した。
総理の口から出た言葉は、三人の生存を諦め事態の終息を謀るものだった。
「そんな、ふざけた事をまかり通してたまるか!」
龍也は、居室から出るとそのまま自分の中隊に上がらず4中隊に上がって行った。
「失礼します!3中隊の瀬川3曹です!」
龍也が、ノックをして訪ねたのは中隊長室だった。
「入りたまえ」
その声を聞き、龍也は中に入った。
そこには、二人の男性が居た。
奥に座って居るのは、4中隊長の長谷川3佐。
そして、その前に立っていたのは第3小隊小隊長の橋本3尉だった。
何か、話し合っていたのだろうが龍也は構わず長谷川に近付いて机に両手を叩き着けた。
「失礼を言うのは、自覚しています!ですが、言わせて下さい!どうか、自分を゛あちら゛に行かせて下さい!」
龍也は、自分が目茶苦茶な事を言っているのは解っていた。
「必ず、三人を見つけ出します‼」
「・・・できると思っているのかな?」
重苦しい長谷川の言葉が、室内に響いた。
「・・・・ですが!」
龍也は、苦い表情を浮かべた。
実現は、できないのは解りきっている。
だか、このまま最初から何もしない政府より少しでも建設な提案をする方がましだ。
「・・・君は、瀬川の兄弟である前に3中隊所属の自衛官だ。ならば、政府の対策に従い経過観察及び゛ホール゛の監視を最優先にすべきだ。確か、3中隊は今日から3日間の休養日に入る筈だろう?」
長谷川は、立ち上がり龍也を見た。
「それに、そう言うのはまず自分の中隊長に具申するべきだろ?」
話は終わった帰るようにと、オブラートに包み退室を促した。
「・・・失礼・・・しました」
龍也の背中を見送り、長谷川は深いため息をついた。
「まぁ、血を分けた兄弟だから仕方がないし此方としては部下だからな」
「中隊長、我々が政府に掛け合う事を何故教え無いのですか?」
橋本の問いに、長谷川は頭を掻いて答える。
「掛け合う・・・か。直接、総理大臣に嘆願書を持って直談判しに行くことは極力秘密裏にしたい」
長谷川と橋本は、大衆の前ですることにより世論を味方に付けるつもりだった。
しかし、実行してしまうと長谷川達は最悪懲戒免職になりかねない。
「話せば、彼も参加したいと言いかねないからな」
長谷川は、立ち上がりカレンダーを見た。
「来週のチケットは、取れたのか?」
「はい、1100の便を確保しました」
三人の部下を目の前で、無くした長谷川と橋本は責任を感じていたのだ。
「゛沖縄サミット゛に合わせ、訓練陸曹に調整済みでも有ります」
米・中・英国の首脳が一同に介する大イベントだ。
目立てば目立つ程良い。
しかも、そのテーマが異世界の゛ホール゛だ。
ここから、現代の主人公を瀬川の弟にしたいと思います




