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第71話 金鷹騎士団

ご無沙汰してます


久し振りなので、大分落ちてますね文力が!


でも、更新できました!!


月明かりの中、半壊した砦を初老の男性が感慨ながら眺めていた。


「ふぉ、ふぉ。ビストの小僧め、死におったわい!ざまぁないのぉ~。ついでに、あの玉座に居座っとる皇帝も死なんかの?」


白いアゴヒゲを片手で弄りながら、嘲笑いながら悪どい顔を浮かべている。

老人は、胸に鷹のマークが入った鎧を着込んでいる。


「ダース様、不謹慎ですよ」


すると、一人のターバンを被った女性が老人に近寄り注意した。

この老人の名は、ダース・イエル。

この金鷹騎士団の団長であり、帝国最年長の騎士である。


「ふん!メトスよ。目ざとい、餓鬼が死んでくたんじゃ。笑いは出るが、涙など出ん!竜が来るなり、退却して正解じゃったわ!」


メトスと呼ばれた女性は、溜め息を付いた。


「それとも、お主はビストの死を悲しむか?あれだけ、主ら゛ダークエルフ゛を卑下していたガキに?」


褐色の肌に尖った耳、メトスは人間種ではなくダークエルフだった。


「まさか、清々しますよ。問題は、その後の発言です。その言葉を御身を快く思わない者にでも聞かれでもしたら、失墜どころか即断頭台行きですよ?」


メトスは、ダースを睨んで言ったがそれは彼を心から心配しているからだろう。


「むぅ、むぅ~。しかし、ワシはあの皇帝が気に食わんのだ」


クルビス帝国は、人間至上主義の国であるがこの金鷹騎士団には多くのダークエルフが人間と混じっている。

その理由は、元々この騎士団は囚人(政治犯や反乱者)やダークエルフの混成隊であった。

その働きは、最低限の装備で敵に突撃し相手の動向を観察する為だけの特攻隊。

勿論、生きて帰れないのは当たり前だった。


若き日のダースは、エリート街道を歩いていたが彼は当時から変わり者で野心家だった。


どうやったら、同期を出し抜いて出世できるだろう?

普通じゃダメだ!

とりあえず、使えるならいろいろ使った方が良くない?


そこに、人種など関係無かった。


志願して、簡単に混成隊の長になったダース。

勿論、隊の連中はダースを信頼どころか希望すら無い。

ダースもまた、駒だからどうでも良いと感じていた。


まず、彼はエルフが居るなら弓矢だろうと考えたが特攻隊なので支給される筈がない。


そこで、戦場に行く道すがら兎に角弓矢を造らせたのだ。

それこそ、人種関係無く時には自らも率先して。

彼等が通る森や道には、枝どころが使い古しの箒の柄すら無くなるほどだった。


生き残りたいなら、技術を磨け!


その合間に、弓矢の技をエルフが人間である囚人に教えさせた。


その甲斐があり、長 ダースの初戦は全員の正確な射的能力により大勝利をもぎ取った。


以後、幾度なく困難な戦場に送られても強襲・不意討ち・闇討ちなどで勝って来た。


混成隊は、鷹騎士団となり異例の゛金゛称号授かる頃にはダースの中には野心や差別意識など無くなっていた。

それどころか、帝国の中で信頼できる自慢の騎士団になっていたのだ。


今の金鷹騎士団は、その時から居るダークエルフや囚人から解放され自由になった者達の息子達から殆ど構成されている。


今だに、他の騎士団や皇帝自ら差別されるが気にしていない。


「ダース様、頼みますから思った事を口に癖を止めて下さい。まったく、お若い頃から注意してるでしょう?だから、・・・」


メトスは、ダースを弟を見るような目で言い聞かせる。


「ああ!わかった!わかった!年寄りを子供扱いするでない!」

「私から見たらダース様は、まだ75歳の子供ですよ?」

「お前らと一緒にするな!!」


一気に、血圧が上がってしまう。

最近、退役しようかと迷うが今の帝国を考えたらこの騎士団が潰されるのでできないのが悩みの種だ。


「兎に角、落ち着いてください。今は、どう動くかです。帝国に戻りますか?」


メトスは、ダースの命令を待つ。


「ふん、帰ったらあの皇帝に今回の責任を擦り付けられ騎士団が無くなるわ」


まだ、今までの功績を認めた先代皇帝なら戻れただろうと呟いた。


「では、どうしますか?」

「やり合うしか有るまい?あの竜を目の前で、殺してくれたオルテの連中を」


ダースは、風竜の亡骸を見下ろし言った。


「勝機は?」

「奴等もただでは無い、負傷し疲弊し気が減っておる。今なら、敵地の浅い所で追い付ける。竜を倒した方法は、解らんがそうそう使える物でも無い・・・。それに引き換え、ワシらはほぼ無傷。故に」


ダースは、眼を細めながら言った。

竜を殺すなど、信じていなかったが実際に見たら信じるしかないかわ。


「白狼騎士団の殲滅あるいは、竜殺しの娘の首を取る」


歳を重ねたが、ダースの眼は衰えず眼前の敵を狙う鷹の様にギラついていた。


「では、部下に前進の令を伝えます」

「ウム、できしだい追撃じゃ。あと、メトスよ。捜索の状況は?」

「今だに」

「・・・そうか」


メトスは、一礼し下がった。






「こん鷹キシ団?」


何とか、真意を聞き出そうと浅野は必死に言葉を口にする。


「そうだ。私の知っている限りでは団長がダースならば白狼騎士団をエターロに着く前に強襲する筈だ」


マルスは、大型トラックから見える景色を楽しみながら言った。


「兵力差から考えるならば、多くの負傷者を抱えそれを守るのがたった1隊ならば用心深いダースでも追撃してくる。ハハハ、追撃と言わず殲滅しに来るな」


浅野は、言葉の意味が半分理解できないが瀬川達がさらに危険になるのだけは理解した。


『ほんと、あの人ついてないな!』


アクセルを深く踏み込む、燃料とか言ってる場合ではない。


「そ、ソレデ、どうすん?」

「ん?ああ、どうするっと言いたいのか」


マルスは、浅野の質問に笑顔で答える。


「簡単だ。白狼騎士団第1隊騎士隊長 オリベル・ド・ハリルにオルテの姫を返還し襲って来るダースを説得する変わりに捕まった二人の解放とオルテ王国への亡命を条件に話をまとめる」


マルスは、横目でアリエルを見た。

どうやら、アリエルから聞いたらしい。


「協力を頼む。皆の幸せの為にね」

「うん、わかった!わたし、頑張るね!『アサノさん、大丈夫!』


アリエルが意気込むが、浅野は不安しか浮かばない。


『うわぁ!?』


いきなり、前方から人が飛び出して来た。


「止まれ!」


見事な鎧を着こんだ人間が、前に二人気付けばトラックの後方にも槍を構えた騎士が居た。


(か、囲まれた!?)


浅野は、ハンドルを握り締めた。


「さあ、アサノ。覚悟を決めて、馬車から降りよう。アリエル姫、国に帰れるよ。」


マルスは、優しく二人に言いながら何故か短剣を取り出した。


『ええ!?』


まったく、聞いてない浅野は情けない声を出した。









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