第66話 自衛官として
お久しぶりです
最近、放置気味でした
数時間前
三人の人影が、国境砦が一望できる丘で戦況を見守っていた。
「うわぁ、マジで映画みたいすっね」
湯川が、眼を細めながら感想を呟いた。
「・・・そうだな」
瀬川は、適当に答え必死に大型車両に有った8倍眼鏡でシエラを探していた。
「にしても、瀬川士長。ここまで、よく考えましたね」
浅野は、ここまでの道のりを思い出しながら言った。
瀬川達は、一旦静寂の森から出たがすぐに森の中に入ったのだ。
わざと、痕跡を残して隠れたのだ。
後は、車両に偽装を施し騎士団が過ぎ去るのを待って移動を開始した。
「流石、伊達に逃げ慣れてないスッね」
「ウッセー、好きで慣れた訳じゃねえよ」
ウンザリしながら、湯川の言葉を流した。
「・・・にしても、なんでワザワザあんな連中を追尾するんです?」
浅野の問いに、密かに顔を歪めた。
「それは、・・・あれだ。自衛官として、連中の行動があまりにも問題があるから観察して日本に帰れた時に報告する必要が有るからな!」
瀬川は、頭に浮かんだ言葉をそのまま伝えた。
浅野は、その説明をなんとなく納得したのかそれ以上は聞いてこなかった。
実際、連中は途中で村の様な集落を襲っているのを目撃していた。
まさに、虐殺だった。
瀬川達は、助けに入ろうと思ったが動けなかった。
体が、言うことをきかなかったのだ。
情けないが、どんなに戦う訓練をしていても所詮は平和な世界で育った日本人だと自覚してしまった。
『瀬川殿、加勢に行くつもりか?』
マルスは、3人のやり取りを見て言った。
「え?い、行くわけないスッよね!」
「・・・瀬川士長」
アリエルが、訳すと湯川と浅野が瀬川を見た。
瀬川は、眼を閉じ考えをまとめるとゆっくりと口を開いた。
「・・・いいか、湯川、浅野。俺達は、自衛官だ。自衛官として、いや男として非情な連中からせめて砦にいる人々だけでも救おうぜ。やむおえないとはいえ人々を見殺しにするなんてもうしたくない。俺は、一人でも行くぞ!ここで、腹をくくってやる!」
二人は、黙ってタメ息をついた。
「ああー!くそ!こうなったら、やるスッよ‼」
「一人で、行かせるつもりはありませんよ」
瀬川は、内心で笑いたくなった。
自衛官?男として?
いくら、大義名分を並べたとしても本当は好きな女1人さえ助けられれば良い。
(俺は、最低だな)
瀬川は、自分を責めると同時に二人に感謝した。
「アーちゃん、今度こそお留守番するんだよ」
「お兄ちゃん、『・・・シエラお姉ちゃんを絶対に助けて!』
「ああ、任せろ!」
瀬川が、アリエルの頭を撫でた時だった。
「あっ!瀬川士長、砦から人が!!」
「貸せ!」
浅野から、眼鏡を取り砦付近を見た。
そこには、集団が砦から出ていた。
その先頭には、二人の女性が進んでいた。
一人は、真っ赤な髪をした気の強そうな女性。
そして、もう1人は
(し、シエラ!?)
瀬川は、危うく叫びそうになってしまった。
(何やってんだ!戦力的に自殺行為だぞ‼)
「行くぞ!」
3人は、大型車両から必要そうな弾薬をLAVに注ぎ込んでいく。
「え?これも、持って行くんですか?」
「ああ、途中でお前を下ろすから何か有ったら゛それ゛で援護してくれ」
瀬川は、無線機を渡しアクセルを踏んだ。
LAVは、エンジン音を轟かせ真っ直ぐに走り出した。
その光景を、マルスは興味深い目で見ていた。
『さあ、アリエル王女。僕らは、特等席で彼らの活躍を観賞しようじゃあないか?』
マルスは、微笑みながらアリエルの手を握った。




