第60話 違和感
拙い文章です
瀬川達は、騎士達の眼が回復する前に身を隠した。
『くそ!伏兵が、居やがった!j]
『おい、今の"光"属性の魔法だよな?j]
『けっ!まさか、どうせ水属性の魔法で太陽の光を集
めたんだろ』
『そ、そうだよな。オルテの"王族"がこんな場所に
居る筈ねぇよな?』
『下らない事を言ってないで、追い掛けるぞ!まだ、
遠くへは行ってない筈だ!』
口々に、言っていたがその中で隊長らしい男性が行動
を示し 騎士達は、森の奥へと進んで行つた。
「・・・ふぅ一。行ったか。ありゃ、暫く戻って来な
いな」
その後ろ姿を見て、瀬川は安堵した。
『フム。最初は、近くに回り込むと聞いて正気を疑つ
たが・・・。ウム。なかなか、見付からないものだな』
マルスが、感心しながら草むらから出てきた。
「そりゃ、ど一も」
(灯台もと暗しってヤツだな)
瀬川は、アリエルを見た。
「ア一ちゃん。本当に、助かった」
「ううん!良いの!」
アリエルは、自慢気に胸を張つた。
瀬川達は、見付からない様に迂回して二人の元に向かった。
「おっ!良かった!」
マルスの魔法が、解けたのか姿が見えていた。
すぐに、瀬川は近づこうと茂みから辺りを見回した。
「・・・まだ、誰も居ないみたいだな。アーちゃん、今度こそここで待っててくれよ」
瀬川は、マルスに行くぞっと合図した。
『いや、待って!誰か、来る!』
しかし、マルスが瀬川の腕を掴み通りを指差した。
「ちぃ!奴等か!」
そこには、1台の馬車が二人に近付いていた。
中に、何人か乗っている様だったが4~5人だろう。
小銃なら、何とか倒せるだろ
だが、瀬川はできるなら使いたくなかった。
(警告射撃で、脅せばどうにかなるか?)
希望的、思考だがやらないよりましだと思った。
瀬川は、親指を小銃の安全レバーに掛け走る準備をした。
(馬車から、出て来る前に抑えないと不味いよな?)
こんな時、シエラに夢で会っていれば安心感が有っただろう。
この世界に、飛ばされた瀬川はずっとシエラに会っていない。
見る夢の全てが、平凡いや記憶にすら残らない普通の睡眠だったのだ。
まるで、絆が絶ちきれた様な感覚に襲われる。
(駄目だ!今は、考えるな。目の前の事に集中するんだ!)
瀬川が、前を向いた時だった。
「あっ!?しまっ・・・なぁ!?」
そこには、馬車から降りてきた姿が有った。
ひとりは、金髪の少年。
耳が、尖っているにエルフだろう。
そして、少年の前に居る女性。
『シエラ・・・お姉ちゃん?』
アリエルが、女性の名前を呟いた。
瀬川が、幼い頃からずっと居た女性。
愛し焦がれた女性。
シエラ・ローズが、瀬川の目の前に居たのだ。
「は、ハハ。マジかよ」
瀬川は、その場に座り込んだ。
『瀬川殿、シエラとはあの竜を討伐したあのシエラ・ローズか?』
マルスが、信じられない様に尋ねた。
「シエ・・・ラ」
瀬川は、おもむろに立ち上がり歩きだした。
今まで、待ち焦がれた愛する人へと一歩一歩瀬川は踏み出した。
『待て!』
マルスが、瀬川の肩を掴み力任せに引っ張った。
「うお!」
瀬川が、後ろに倒れた時だった。
上空から、無数の矢が降って来た。
「シエラ‼」
『お姉ちゃん‼』
心臓が、凍りつく様だった。
矢は、ギリギリでシエラ達に当たらなかった。
シエラは、傷病の二人を乗せるとすぐに馬車を発進させた。
その間も、矢の雨は襲って来る。
そして、止んだと思ったら一個小隊規模だろか。
騎兵が、シエラ達を追跡しだした。
「ヤバい!このままだと、確実に捕まる‼」
瀬川は、立ち上がり走りだそうとした。
『瀬川殿、間に合う筈がないだろう』
「くっ!」
マルスの言葉を理解し、瀬川は立ち止まった。
奥歯を、噛みしめ地面を睨んだ。
(どうする?どうすりゃ、良いんだよ!LAVまで、戻るか?駄目だ。絶対、間に合わねぇ!・・・駄目なのか?)
アリエルは、心配そうに瀬川を見つめた。
「お兄ちゃん」
瀬川なら、どうにかしてくれると信じているのだろう。
(アーちゃん・・・。そうだよな。やってみないと、わかんねぇよな)
『マルスさん、アーちゃん連れテ戻る』
『言っておくが、助けに行っても手遅れだぞ?』
「・・・さぁな、ここでいつまでも居るよりマシだよ」
マルスは、瀬川の言葉が解らず戸惑った。
「アーちゃん、マルスさんと浅野達の所に行ってくれ。大丈夫、シエラ達は絶対に助ける」
「お兄ちゃん、気をつけて」
瀬川は、アリエルの頭を撫で笑って返した。
二人を見送り、瀬川は馬車が走って行った方向を向いた。
そして、そのまま無線機のプレストークスイッチを押し浅野に連絡を取る。
「フクオカ、ベップ、送れ」
[ベップ、送れ]
瀬川は、今までの経緯を説明した。
さすがに、浅野と湯川が心配したが二人にいつでも出発できるように伝えた。
「よし、行くか ・・・ん?誰だ!?」
瀬川は、小銃を背中に担ぎ走り出そうとした。
不意に、後ろから人の気配がし振り返った。
『やあ』
「んな!??」
瀬川は、小銃を男性に向けようとしとた。
だが、男性は素早く瀬川の間合いを積めた。
『安心してくれないか?別に、僕は連中の仲間じゃないよ。だから、その物騒な物を向けないでくれ』
男性は、優しげな笑みをした。
勿論、言葉が解らない瀬川は警戒心で後ろに下がり小銃を構え直した。
そもそも、理解しても警戒しないはがおかしい。
男性は、やれやれと言う様に首を降った。
「テ、てめぇ、いつからそこに居やがった!」
『いつからって、君らが別れる時だよ』
男性は、眼鏡をかけ直しなが分かりやすく話した。
「じ、じゃあ、『あなた、だれ?』」
『僕?僕は、物書きさ。』
その声には、敵意が無かった。
『ここには。・・・まあ、物語の構想のネタが有りそうだったのでね』
「つまり、取材って事か?」
肯定するように、男性がまた笑った。
この時、瀬川は不思議と違和感を感じた。
いや、最初からだった。
『それで、静寂の森まで来てこの騒ぎさ。』
「・・・」
『そして、君はあの娘さん達を助けたいんだろ?なら、先回りすれば良い』
男性は、当然の様に提案してみせた。
「ハァア?できるわけないだろうが!だいたい、あんた怪しいんだよ!」
『失礼だな。君に分かりやすく喋っている親切な僕に。それに、追い抜く事ができるんだよ』
(なんだ?この妙な感じ?)
男性は、首を傾げる瀬川を無視して話しを続ける。
『エルフが、森に掛けた結界はまだ完全に解けてないのさ。だから、皆は知らず知らずに道を遠回りしているんだ』
瀬川は、何の事か解らず戸惑ってしまった。
『つまり、この方向を真っ直ぐ進めば簡単に待ち伏せができるのさ』
男性は、反対側の方向を指差した。
(嘘くせぇなぁ)
『まぁ、信じるか君次第だけどね』
男性は、穏和な表情をした。
(・・・賭けてみるか)
『アリガトウ。わたし、行く』
男性が、瀬川を騙すメリットが無いが連中の仲間なら危険だった。
だが、何故かそうでは無いと思えた。
瀬川は、一応頭を下げて指差した方向に走り出した。
『そうだ、その調子で義妹を助けてくれ・・・゛日本人゛』
瀬川の後ろ姿を見ながら、男性は呟いた。
『・・・まったく、これは面白い報告になるよ。クロエ』
瀬川が感じた違和感、それは彼が日本語を理解して話していたのだった。
それに瀬川が、気付くのは先の事だった。




