第56話 文明の力
調子が良かったら、書きました。
「解りました。その条件を飲みましょう」
『そうか!良かった、任せろ!ああ、そうだ。私の真名はマルスだ』
マルスは、偽名を名乗った事を謝った。
「ちなみに、ここの場所からオルテまで遠いですか?」
『そうだな、ここはクルビスとオルテの国境付近だからな。せいぜい。馬車で5日から6日位は掛かるだろう』
(成る程、”馬車”で・・・か)
車両なら多分、寝ずになら3日だ。
(ギリギリか)
「良し!そうと決まれば、話しは速いな。浅野、大型を運転できるな」
「はい。一応は」
「なら、湯川と浅野は大型だ。俺と、アーちゃんそれにマルスさんでLAVで先頭を走る」
「「了解」」
二人は、瀬川に敬礼をした。
一行は、支度を5分以内で終わらせ車両に乗り込む。
『フム、凄いな。三人とはいえ、こんなに直ぐに準備ができるとは』
マルスは、感心しながら瀬川達の迅速な行動を絶賛した。
ご丁寧に、痕跡まで消し去っている。
アリエルは、翻訳し湯川に伝えた。
「まぁ、自衛隊スッからかね」
行動は、早く出るときは綺麗にがモットーが身に着いている。
「バカ、変な事を言うな」
「あっ!ヤッベ!」
浅野が、小声で注意した。
「でも、大丈夫スッよ。あの人、俺らの会話が解らないスッから」
湯川は、気にしないと付け加えた。
浅野は、アリエルの様子を見たがどうやら翻訳してない。
それどころか、ウィンクされた。
大丈夫だよ。
解ってるから。
っと、合図したのが理解した。
マルスも、首を傾げるだけで直ぐに別の事に興味を示した。
それは、車両だ。
『セガワ殿、これを引くムーヴは何処だ?』
解りやすく、ゆっくりとした口調で訊いてみた。
こんな、2台を引くのだ二匹や三匹では動かないだろう。
「え〜っと、『大丈夫、動く。コレ』」
『ム?中に、居るという事か』
マルスは、中で一生懸命に動くムーヴを想像した。
(む〜、見た目より中は狭そうだ)
しかも、たぶん暑苦しく何より臭いだろう。
失礼だが、乗りたく無い。
(ああ、あれは戦いでムーヴが殺されないようにする為か)
理解は、できるがやはり嫌な顔になってしまう。
『どうしたの?お兄ちゃん?』
アリエルが、不思議そうにマルスを除き込んだ。
『き、君は、アレに乗って平気なのか?』
『ぜんぜん、平気だよ。乗り心地が、良いんだよ』
マルスは、軽くショックを受ける。
(こんな、年端もいかない子が)
自分が、情けなくなった。
「どうした?行くぞ〜」
瀬川は、人の気持ちも知らずLAVから顔出して二人を呼ぶ。
『は〜い!行こ!』
『う、ウム』
正直、前の鉄馬車より後ろの荷馬車に乗りたいマルスだった。
「それで、何処に行けば良いんですか?」
瀬川は、乗る前に道順を聞いた。
『ここから、北にある静寂の森がある。その森を抜け南に行けば、ハッフル街道に出る。そこから、まずクラウス地方に行ける筈だ』
静寂の森、すでに帝国により結界は崩れ国境の意味は無い。
つまり、普通の森となっている筈である。
「・・・”静寂の森”ねぇ。なんか、いよいよ冒険RPGが始まるみたいだ」
瀬川は、ぼやいたがそんなに悪い気分では無かった。
(戦力的に、軽戦士が1に回復魔法使いが1・・・)
そして、完全武装自衛官が3である。
(・・・あとは、攻撃魔法使いが欲しいな〜。いや、できれば重戦士系も欲しい)
瀬川の頭の中で、FFシリーズが吹き出る。
チラっと、サイドミラーで大型車両を見る。
(モンスターが仲間になったら、後ろに乗せれるな〜)
今度は、ドラクエのスライムを思った。
「なんか、瀬川士長。ニヤけてないスッか?」
大型の助手席で、湯川が呆れた声で言った。
サイドミラー越しに、瀬川の表情が良く見えるのだ。
「・・・気にするなよ。時々、あの人はゲーム脳になるのは中隊でも有名だろ?」
流石に、浅野もフォローできない。
(やっぱ、モンスターを倒すと金が手に入るかな?)
瀬川は、資金集めとレベル上げを考えた。
「瀬川士長!行きましょうよ!現実的に考えて、レベルとか無いスッよ!」
「うお!?ゆ、湯川。わ、解ってるって!」
湯川に、見透かされて焦った。
「と、とにかく、”静寂の森へ”行くぞ!」
瀬川は、運転席に座る。
『待ってくれ。少しだけ、寄り道をしてくれ』
「寄り道?」
『ああ、弔いたい者達が居る。それに、幾ばくかの荷物も拾って行きたい』
マルスは、気まずそうに自分の格好を見た。
確かに、似合うが女性の服だ。
「まぁ、しょうがないか」
瀬川は、頭を掻いた。
『すまない。だが、食糧も有るから必要だろ?』
確かに、瀬川達は数袋の乾パンしか持っていない。
これは、正直に助かる。
「良し!じゃあ、改めて行きますか」
マルスを助手席に、座らせた。
『ん?ちょっと、待て。ムーヴは、どうしたんだ?』
マルスは、LAVの中を見回した。
その中は、後ろに座席が2つ有り幼子が四人ほど入りそうな空間が有るだけだった。
「ムーヴ?『イナイ』」
『いや、待ておかしいだろ?それでは、動かないではないか』
マルスは、混乱していた。
『ちゃんと、動くから大丈夫だよ』
運転席の後ろに座っているアリエルは、マルスを宥める。
『動くだと?私を馬鹿にしているのか?』
マルスは、馬鹿にされていると思った。
瀬川は、めんどくさいので取り合わずにエンジンキーを回した。
『な!?なんだ!』
LAVは、軽快なエンジン音を轟かせた。
その事を知らないマルスは、突然に動きだした馬車に狼狽える。
『だ、大地が揺れているのか!?』
構わず、サイドブレーキを下ろしアクセルを踏む。
『走ってる!?走ってるぞ!?』
車なので、当たり前の事をマルスは驚嘆していた。
『この馬車は、独りでに動くのか!?ムーヴも馬も、いらずにか?』
そんな、馬車など今まで聞いた事が無い。
『そうか。魔力で、動くのだな』
『違うよ』
アリエルが、間違いを訂正する。
『何が、違う。魔力以外で、こんな物が動くはず無いだろう』
『”がそりん”って、液体だよ』
『がそ、りん?』
アリエルは、前に龍也から説明を受けていた。
と言っても、名前だけで仕組みなどは知らない。
LAVの窓から、マルスは景色を眺めた。
その速さは、馬やムーヴなど比べられない位に速い。
しかも、乗り心地はサスペンションによりある程度の衝撃を吸収しているので良い。
(魔力を使わずにこのような物を・・・)
改めて、瀬川達が何者か気になった。
『じえいたい・・・か』
小さく呟いた為、声はエンジン音に掻き消された。
(それが、この者達の本当の呼称か)
湯川と浅野の話している場面をマルスは、思い返した。
言葉は、解らなかったがそれが自分達を指す単語だと推測したのだ。
強力な魔法を使う兵士、独りでに動く馬車。
(”じえいたい”を有する国・・・ニホン。そして、”竜伐の聖女”が守国・・・オルテ)
マルスは、過ぎ去って行く風景を見ながら決意する。
(此ならば、クルビス帝国を確実に滅亡できるに違いない)
マルスの目的は、祖国の壊滅だった。
どんな方法で、瀬川とシエラを引き合わせるか悩んでます。
そして、出会った二人はどうするのか?
てか、どうやって戦争を止めようと動くのか?
詳しい人が居れば是非、アドバイスを下さい!




