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第5話 ラウンド2

さっきから、部屋の中をうろうろしている。


意味もなく、外に出ては腕時計を見ている。


とにかく大分県県知事 中山は、落ち着かない。


(もうそろそろ、何かしらの報告が有ってもいい頃じゃないか!自衛隊は、何してるんだ!)


だんだん、苛立ってきた。


(防衛大臣に、治安出動を要請して何時間経つだろう? やっぱり、治安じゃなくて災害派遣で要請すれば良かったのかなぁ?)


と、中山はそればかり考えていた。


「県知事!」


そこに、中山の秘書が部屋に飛び込んで来た。


「自衛隊が、未確認生物の駆除に成功しました。」

「そうか!やって、くれたか!」


中山は、安心して椅子にもたれ掛かった。


(さて、この後はどうすればいいか?何を優先するか?)


犠牲になった人びとの遺族に賠償金等を考えた。


が、秘書は何か言いにくい顔をしていた。


「・・・知事。申しにくいのですが・・・。」


何故だろうか?その後の言葉を、聞きたくない。


「その・・・。実は。」 「はっきり、言いたまえ!」

「はい!新しい未確認生物が現れました!」


それを聞いた中山は、意識が遠退いた。



中山が倒れる一時間前。別府駅周辺


一人の自衛官が、未確認生物の死骸の頭を蹴った。


勿論、小銃をいつでも発砲できる体勢だ。


死亡確認だ。


まだ、生きていて襲われたらたまったもんでは無い。


同じように、一体一体蹴って確認している。


他の隊員達は、緊張しながら遠くから様子を見ている。


とくに、瀬川は先ほどの戦闘で弾が切れているので襲われたら何もできない。


「死亡確認ーー!全員、死んでます!」


確認し終えた隊員が、大声で告げた。


「良かった〜。終わった〜。」


安堵の溜め息をつき、瀬川は言った。


「よし!お前ら、武器と装具を確認しろ。あと、残弾も数えろ。」


双葉は、そう言ってLAVから降りた。


瀬川達は、自分の銃を細部まで点検した後装備が落ちてないか確認した。


「瀬川士長、武器装具異常無しです。残弾無し。」


湯川と木元も、同じように報告した。


双葉は、それを無線で小隊長に報告を入れた。


「了解。・・・お前ら、待機してろ。各分隊長が、呼ばれたから行ってくる。煙草、吸って待ってろ。」

「「「了解。」」」


瀬川は、煙草を取り出し火を着けた。


そこに、一人の隊員が近付いて来た。


「よ!先は、ありがとな!助かった。マジで。」

「長瀬!無事だったのかよ!」


長瀬は、作戦中に機関銃に故障がでて離脱したLAVのガナーだった。


「おかげさまで。礼に、珈琲をおごってやるよ。」

「いいの?じゃあ、遠慮無く!木元班長、ちょっとジュース買って来ます。」


瀬川は、運転席でリラックスしている木元に言った。


「・・・。わかった、行っていいよ。」

「長瀬のおごりですから、何がいいですか?湯川も、買って来てやるよ。」


長瀬は、瀬川の発言に苦い顔をして財布を見た。


「マジかよ!俺、この間パチンコ負けてんだよ?」

「・・・・。ティスティで。」

「あ、すいませんッス!じゃあ、俺コーラで。」


長瀬の悲痛な声は、木元と湯川に届かなかった。


今後、何があっても瀬川にだけにはおごるもんかと心に誓った。


二人は、別府駅のすぐ近くにある自販機に歩いて行った。


「え〜と、木元班長がティスティで〜。湯川が、コーラっと。」


瀬川は、頼まれた物を買っていく。


「双葉2曹は、何がいいかな?」

「おい、双葉2曹のもおごるのかよ。」


長瀬の反論に、瀬川は当たり前の様な顔をした。


「え?何、もしかして君、2曹だけ買わないとか言うの?」

「いや、そう言うんじゃないケド。」


瀬川は、無慈悲にブッラクのボタンを押した。


「じゃあ、俺は何にしようかな♪・・・ん?」


瀬川は珈琲を押そうとした瞬間、人の気配を感じた。


「?。どうした?瀬川?」

「なぁ、アレ人じゃね?」


瀬川は、遠くを指差した。


「ホントだ。人だ。」


二人いた。


よく見れば、片方は怪我しているのか肩を担がれやっと歩いている感じだ。


怪我をしている方は、30代半ばだろう。


辛そうな顔している。


もう一人は、自分と同い年ぐらい何か見覚えがある。


(あいつは・・・。)


「・・・、健治!?」

「あ!ちょっ、待て!瀬川!」


瀬川は、長瀬の言葉も聞かずに二人の元に走り出した。


(間違い無い!)


あれは、幼なじみで腐れ縁の大柴 健治だ。




「しっかり、してください!難波さん!」


大柴は、何度このセリフを言ったのだろうと思った。


「・・・うる・・うるせえ。・・・、俺のことは・・いい。早くお前は、"アレ"が近づいてる事を伝えに行け!」


なんとか、この言葉だけでも難波は振り絞って言った。


「何言ってんスッカ!あっ!ほら!別府駅、見えてきましたよ!やった!自衛隊だ!」


よく見れば、化け物どもも死んでいた。


「難波さん!きっと、"アレ"も自衛隊が何とかしてくれますよ!」


大柴は、歓喜の声を上げながら言った。


「・・・・。どうだかな。」


今いる自衛隊達の装備は、小銃や機関銃といった武器しか持って来ていない筈だった。


これでは、"アレ"を倒せない。


難波は、そう感じた。


「・・・難波さん。」

「健治!!」


大柴は、自分の名前を呼ばれた。


一人の自衛官が、近づいて来る。


(あれは・・・。)


「龍巳?龍巳か!?」


幼い頃からの親友、瀬川 龍巳だった。


瀬川は、走って大柴達の元に近づいた。


「大丈夫か!」

「ああ。俺は、大丈夫だ。でも、難波さんが・・・。」


瀬川は、難波を見た。


血だらけだった。


(うわぁ!)


右腕から出血し左足は明らかに骨折している。


呼吸しづらいのだろうたぶん、肋骨もなん本かいっている。


「ハァハァ、俺は大丈夫だ。それより、化け物が」


難波は、痛みをこらえて言った。


「大丈夫ですよ。もう、倒しました。」


瀬川は、化け物どもの遺体を指さして言った。


「違うんだよ!龍巳!アレよりヤバそうな奴がいるんだよ!」


大柴は、凄い剣幕で言った。


「え?どういう事だよ?」


(アレよりヤバそう?)


「ハァハァ。くっ!」


難波は、痛みを耐え兼ねて苦悶の表情を浮かべた。


瀬川は、振り返り手を挙げ衛生隊員を呼んだ。


「取り敢えず!?衛生の所にいき。」


ズン! ズン!


(地震?・・・・違う!まるで、何か歩いているような!)


担架を持って、走って来た二人の隊員が突然止まって驚愕の表情をした。


「・・・・マジかよ。」


瀬川は、ゆっくりと頭を後ろに向けた。


振り向くな、振り向くな、振り向くなー!


心の警戒音が鳴り響く。


「・・・・と・・・・トカゲ?」


瀬川は、呟いた。


トカゲとは、トカゲ目トカゲ亜目の爬虫類の総称。


である。


普通なら、別に手に収まるくらいのサイズ。


しかし、遠くからでも解る。


あのトカゲ、デカイ。異常にデカイ。


トカゲなら、四階建ての大きさでは無い。


それに、鱗がある。これが、決定的だ。


(てか、まるでコイツって・・・)

「・・・うわぁ〜。モウハン、みてぇーだ。」


そう、まさにそれ。


残念なのがここが密林では無く現代の建物である事だけだ。


「くそ!もう、来やがった!」


大柴は、憎々しく言った。


3時間前。


難波は、最初の未確認生物と戦った際に重傷を負った。


大柴は、難波を抱え身を隠した。


暫くして、様子を見たら。


そこには、化け物どもの姿は無く半壊した建物に警官隊の遺体。


「・・・連絡しないと。くそ!携帯が!」


壊れた携帯を捨て、難波に肩を貸して大柴は歩きだした。


「難波さん。とにかく、病院に行きましょう。」

「大柴、悪い。」


難波の言葉を聞き流し、近くの病院に行こうとした。


「!?大柴!」

「うわぁ!」


いきなり、難波に引っ張られ大柴は半壊した建物に入った。


「な、何スッカ?」

「黙ってろ!」


難波は、小声で言うと外を指差した。


そこには、例のオオトカゲがいた。


「ヒッ!」


大柴は、両手で口を押さえた。


トカゲは、ゆっくりと何かを食べていた。


すぐに、わかった人間の機動隊員の死体だ。


銃声がした、警官隊の生き残りだろうかトカゲに向け拳銃を撃っている。


ぐぅぅぅぅぅぅ。


しかし、トカゲは唸るだけで銃弾を弾いていた。


その内、発砲音は消えその代わり悲鳴と何かを咀嚼する音が。


「・・・・、裏口から行くぞ。」


こうして、大柴達はその場を後にした。


現在


「ヤバイ。丸腰だ。」


瀬川は、呟いた。


「・・・君。ゆっくりとそのコンビニに入るんだ。」


難波は、顔をコンビニに向けた。


瀬川は難波の背中を支えると、言われた通りにコンビニに入った。


衛生隊員の二人は、すぐに後方に下がった。


暫くの沈黙。


「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」


最初に破ったのはオオトカゲだった。


グォォォォォォォ!!


『う 、撃ってー!!』


無線から、流れた射撃命令に我に帰った自衛官達が次々に自分の持つ武器の引き金を引いた。


まるで、戦争いやB級の怪獣映画の様な光景だ。


「まったく、効きません!」

「いいから、撃ち続けろ!」

「誰か、パンツァーファウスト!」

「持って来てません!」

「手榴弾もか!?」

「街中で使えるわけないでしょ!?」


隊員達の怒号が飛び交う。

トカゲは、凄まじいいきよいで突こんで来た。


「退避ー!」


LAVといった装甲車を乗り捨て隊員達は、左右に退避した。


その瞬間、装甲車が宙に舞い駅に大穴が空いた。


瀬川は、一瞬だけオオトカゲの横顔を見た。


(ん!?あれは!?)


確証は無いが、額に何か紅く光っていた。


「・・・嘘だろ?あれは・・・。」


瀬川は、あのトカゲの特長に聞き覚えがある事を思い出した。


「・・・グラン・・・・ドラゴン。」


(何でだ?先の、未確認生物だってやっぱりオークだったのか?)


「君!どこ、行く!?待て、そっちは危ないぞ!ぐっ!」


難波の静止も聞かずに瀬川は、別府駅に走り出そうとした。


「待ってて!龍巳!」


大柴は、走り出した瀬川の腕を掴んだ。


「離せ!健治!俺は、確認しないといけないんだよ!」


(あの化け物が、もし本当に地竜 グランドラゴンならあの死骸共がオークなら。あいつは。夢の中の恋人は。

シエラは、存在している!)


「バカ野郎!丸腰でどうすんだよ?」


腕を振り払おうとした瀬川に大柴は言った。


大柴は、瀬川の右手に拳銃を握らせた。


「・・・健治、悪い。」

「いいか!絶対、死ぬんじゃあねーぞ!絶対だぞ!」


警官の拳銃を握り締め瀬川は、走り出した。



「後退だー!下がれ!3中隊と合流しろ!」


2中隊と4中隊の隊員達は、3中隊と合流する為に走り出した。


化け物がいる中央は避け、回り込まなければならない。


それだけに、時間を食う。


別府駅の西口に待機していた3中隊は、いきなり駅から出てきたトカゲの化け物に対し攻撃を開始した。


『連隊長から、全隊員に伝達!』


そこに、連隊長自らの無線が入った。


『敵を遅滞せよ!1700に重迫撃中隊による砲撃を開始する!それまでに、後退しろ!』


その場にいる隊員達は、街中に迫撃砲!?駅はおろか街が壊滅的被害がでるたろうが!と思った。



『全ての責任は、俺が取る!』

「・・・・、聞いた通りだ!あと、55分持ちこたえるぞ!」


その言葉に、4中隊長 長谷川3佐は無線を握り締め言った。


『『『『了解』』』』


「ハァハァハァハァ、もうすぐだ。」


瀬川は、思い出していた。


あの日の夢を。


いつもの、青空と草木。


「タツミ!聞いてるの?」


シエラは、リスの様に頬を膨らませて言った。


「聞いてるって。」


瀬川は、笑って言った。


シエラのこの表情が可愛くて好きだなぁと思っていた。


「それで?確か、地竜教だっけか?いたの?」


シエラ達は、地竜教のアジトの情報を聞き付け踏み込んだらしい。


「それがさぁ〜、結局いなかったんだ。有ったのは、地竜の神銅像だけ。」


シエラは、溜め息をついた。


そして、その時の悔しさを思い出したのか不機嫌な表情をした。


「落ち込むなよ。捕まえるチャンスは、きっとあると思うぞ。」


瀬川は、後ろからシエラを抱き締めながら言った。


「・・・・うん。」


後ろからだから、表情はわからないが声からして機嫌が治ったらしい。


暫くの、沈黙。


安心感がお互いを包んでいた。


最初に沈黙を破ったのは瀬川だった。


「なぁ、シエラ。」

「何?」

「地竜て、どんな感じなんだ?」


瀬川の問いにシエラは、少し考えて口を開いた。


「う〜ん。僕も、実際に見たわけじゃないけど。地竜 グランドラゴンは、飛ばない竜で・・・。」


シエラは、特長を言っていく。


(・・・・トカゲかよ!)


正直な感想だった。


「それでね、一番の特長は゛額に紅いルビー゛みたいなのがあるんだ。」


その時は、ただそうなんだと思っただけだった。



タッタッタッタッタッタッタッタッ!


激しい銃弾の嵐。


瀬川は、流れ弾に当たらないように柱の陰に隠れ顔を出した。


「ハァハァハァハァハァハァ。額に紅いルビー!額に紅いルビー!クッソ、こっち向けよ!」


トカゲは、なかなかこっちを向かない。


駅の構内で大暴れしているだけだ。


辛うじて、合流した4、3、2中隊の集中火力によって駅内に閉じ込めている感じだが何時まで続くか。


そこで、瀬川はオオトカゲを観察した。


シエラが、地面に描いた絵を思い返した。


トカゲの様な体。


矢も剣も通さない、鋼鉄の白い鱗。


どうやら、5.56口径の弾丸も通用しないらしい。


そして、鋭い爪。


「こっち向け。こっち向けよ。」


あとは、額のルビーだけ。


段々、イラついてきた。


「クソトカゲ!こっち、向けよ!」



我慢の限界にきた瀬川は、大柴に預かった拳銃(自衛隊が使う拳銃と違いリボルバー)を連射した。


「あっ。」


ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!


後に、瀬川は語っている。


いゃ〜、当てる気は無かったんだけどね。

偶然って、怖いね。


オオトカゲが首を横にした瞬間だった。


最後の一発がトカゲの右目に、命中 してしまった。


グルルルルルルルルルルル。


(あっ。ルビーあった。 やっと、振り向いたのは良かっただが。


(・・・なんか、俺のこと睨んでるよ?)


攻撃をしていた隊員達が、急に動きを止め後ろ向いたトカゲを見た。


「ん?化け物の動きが止まった?」

「何だ?向こうむいてるぞ?」

「ん?トカゲの前に誰かいないか?あれは・・・瀬川?」

「「「・・・うちの、隊員だ!!」」」


すぐに、射撃中止の号令を出し隊員達は様子を見守った。


「・・・いや。わざとじゃないよ?うん。ただ振り返って欲しいだけだったんだよ。」


瀬川は、独り言の様に言ってみた。


「は・・・ははは。やだなぁ〜、そんなに睨むなよ〜。ちょっと、確認しただけじゃねぇか。」


そう言って、瀬川は持っていた弾切れの拳銃を見える様に捨てた。


言葉は、絶対に通じて無いのは解っている。


まず、このヤバイ状況を打破する為に隙を伺う。


「・・・。じゃあ、確認できたし俺もう行くから。」


瀬川は、一歩引く。


グルルルルルルルルルルル。


二歩、引く。三歩、四歩、五歩。


グォォォォォォォォ!


「ヤッッッッベ!」


瀬川、ダッシュ!


「ウォォォォオオオ!」


駅の改札口を、ジャンプで通り抜けそこから反対の改札口を走って隣接するショピングモールまで出た。


その間、グランドラゴンは駅内部を破壊しながら瀬川を追っている。


改札口など、木っ端微塵にし通れない道など突こんで破片を巻き散らかしながら進んでいる。


「ウワァ!クソ、今のは危なかったぞ!」


グランドラゴンが破壊し跳んできた大きい破片を、瀬川はギリギリで避けた。


(このままじゃあ、追い付かれる。)


実際に、建物のお陰で何とか距離は空けているもののそれも時間の問題だった。


「ハァハァ、何とかしねーと。!?アレだ!」


瀬川は、雑貨コーナーからハンカチを数枚取るとそのまま酒売場に走ってアルコール度の高い酒を2本手に取った。


どんどん、地竜が近づいて来る中。


瀬川は、酒の蓋を開けハンカチにアルコールを染み付けさせそれをもう一本にそれを取り付けた。


「確か、これで良かったはずだ。」


その時、強烈な悪臭が瀬川を包んだ。


(オェェ!)


追い付かれた。


地竜は、すぐ後ろいる。


(クソ!見積りが甘かった!)


一気に、緊張感が走った。


低い唸り声を上げ、地竜は瀬川を食う為に首を低めた。


「くっ!・・・・ウォォォオオオ!」


瀬川は、半分になった酒を地竜の左目にめがけ投げつけた。


そして、続けざまに即席火炎瓶に火を着け投げた。


地竜に当たった瞬間、地竜の顔が炎が襲った。


炎を消そうと、首を上下右左と振り回した。


勿論、周りは滅茶苦茶になっている。


その隙に、瀬川は非常口を見つけ外に出て駐車場に向かった。


「ハァハァハァハァ。どかに、乗り物は?」


あんな攻撃に、銃弾も効かないグランドラゴンがくたばる訳がない。


瀬川はそう思うと、車を探した。 が、見付からない。


「・・・、1台くらい残ってろよ!」


愚痴るが、無いものは無い。


「ハァハァハァハァ、あれは?バイクか!」


奇跡的に、バイクが1台残っていた。


しかし、鍵がない。


「なんだよ!!死ねてか?」


瀬川は、バイクを蹴った。

後ろで、壁が爆発したような音聞こえた。


グォォォォォォォォオオオオオオ!!!!!!!


(ヤバイ、来た!)


しかも、かなり切れている。


ゆっくりと、近づいて来る。


地竜は、嗅覚を使い瀬川を探している。


「もう、駄目か。」


瀬川は、バイクを背もたれにして座った。


「ん!?」


座った時、右手に違和感が。


「これは・・・、鍵?これって、まさか。」

(バイクの鍵か?)


瀬川は、バイクに股がり鍵を着けた。


一か八かの賭けだった。


深呼吸をし、鍵を回す。


エンジンがかかり、腹に来るような重い音と振動が身体を駆ける


バイク CB400は、軽快なエンジン音を轟かせた。


「よし!今日から、神様とか信じるぞ!」


半クラッチで前進し、すぐにスピードをあげクラッチを離した。


一気に、速度を挙げる。


2速から3速にギアを変え、別府駅を出た。


後方から、破壊音がした。


瀬川を見付けたグランドラゴンは、すぐに走り出した。


障害物など気にせずに、ただ己れを馬鹿にした下等な人間を殺す為に。


「追いかけて来やがったな。」


瀬川は、サイドミラーで確認した。



逃走劇が始まった。

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