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第41話 警察 VS 異界の魔物

(この剣、・・・・マジ物だな。)


瀬川は、握っていた剣を観察した。


確かな重量、鋭い剣先、素人目でも解る。


それが、明らかに敵を殺す為に造られた本物であることを。


「・・・龍己。」

「・・・あ?」


瀬川は、龍也を見た。


龍也も、同じ状態の様で片膝を着いている。


「もう、お前の為に車なんて出さん。」

「ああ・・・そ。」


瀬川は、座り込んだ。


そして、胸ポケットからタバコを出して火を付けた。


「・・・ん。」


瀬川は、タバコを龍也と大柴にも渡した。


二人も、タバコを口にくわえた。


瀬川は、煙を肺に一杯に入れた。


「・・・フゥーー。ああ。やっぱ、そう上手くいかねーよな。」


煙を上に吐きながら、瀬川は呟いた。


人間、どうしょうもない時は何故か冷静になる。


瀬川は、天井を見つめながら。


二口目を吸う。


3匹、新手のググールが瀬川達を見ながら唾液を垂らしている。


「たく。どんだけ、居やがる。」


龍也は、ウンザリしながら言った。


「あ〜あ。もう、弾無いよ?」


三人は、タバコを吸いながら言った。


瀬川は、何となくググールが狙っている人物が解った。


アリエルだ。


思ってみたら、最初からググール達はアリエルだけを狙っていた。


先も、大柴が襲われた時も近くにアリエルがいた。


アリエルをこの場に残し、逃げたら助かるだろう。


しかし、瀬川の頭にその考えは無い。


勿論、龍也と大柴もだ。


瀬川は、剣を杖がわりに立った。


「はぁ〜、たく。マジの剣でチャンバラかよ。」


瀬川は、ググールを睨みながら言った。


「文句言うな。俺なんか、コレだぞ?まったく、日本刀なら良いがフェイシングなんかやった事が無いだがな。」

(そこかよ。)


龍也は、趣味で居合いをしている。


「がんばっ。俺、見学しとく。ぶっちゃけ、腰抜けて立てない。」


大柴は、笑いながら言った。


「じゃあ、アーちゃんを頼むわ。」


大柴は、瀬川の頼みを親指を立てて了承した。


「よしゃ!来やがれ!刺身にして、今日の駐屯地のオカズにしてやるよ!」


瀬川は、手摺に身体をもたれ掛かりながら強がった。


1匹のググールが、瀬川達の前に跳んで来た。


「オラァ!上等じゃ!とっと、こ・・・ん?」


瀬川が、豪語する前に足下に黒っぽい缶が転がって来た。


「手榴弾か?」


龍也が、呟いた。


いきなり、缶から煙が出たと思ったら次々に同じ物が来た。


「げぇ!コレ、催涙ガスかよ!」


大柴が、叫んだ時は辺りはガスによって見えなくなった。


同時に、その場にいる3匹と三人は悶え苦しんだ。


アリエルが、気を失っているのが幸いだろう。


肌がまるで、燃える様に熱い。


眼が、鼻がワサビを直接ぶちこまれた様に痛い。


吸う空気さえ、喉に痛みを感じる。


その場に、立って居られない。


瀬川と龍也は、コレを食らわせられたのは久々だ。


自衛隊の新隊員前期、毎回の恒例でガス体験がある。


文字通り、天幕の中で催涙ガスを体験するのだ。


体験し終えた新隊員は、鼻水を垂らしながら出てくる。


顔を、持ってきた桶に水を入れ突っ込む。


それが、並ぶのだ。


中々、面白い光景だが本人達は必死なのだ。


大柴は、アリエルだけでも効果がない様にハンカチで口を覆った。


そして、スーツを脱ぎアリエルの肌を隠した。


ググールの方は、水槽に落ちって行く。


瀬川の目の前にいるヤツも、苦しみながら暴れている。


「がはぁ!げぇほ!」

[「こっちだ!」]


誰かが、瀬川の腕を引っ張った。


それは、ガスマスクを着けた難破だ。


他にも、花堂と松山も龍也達を誘導している。


難破は、瀬川の左腕を強引に引っ張った。


そして、瀬川達と入れ代わりに数人の足音が聞こえた。


[「第1班、前方正面!2・3班は、下方!」]


統制が、とれている。


一瞬、自衛隊が来たと思った。


瀬川は、痛い眼を開けて確認した。



黒い装備に包まれた男達の胸元には、アルファベットが付いていた。


(・・・S・・A・・T? )


[「君、怪我は大丈夫か?」]


難破は、赤く染まった右腕を見ながら言った。


「がはぁ、は〜、は〜、だい・・・じょぶ・・・です。」


瀬川は、右腕を動かして答えた。


右腕は、アリエルの不思議な力で出血はしているが大したことは無い。


難破は、それを確認した。


すると、奥から乾いた銃声が。


SATの隊員達は、容赦なく引き金を引いた。


銃口から、大量の弾丸がググールの身体を貫く。


弾は、ググールを貫きその形を変えていく。


前から入った弾は、貫通し後ろへ肉片を飛び散りながら出ていく。


一匹のググールは、半狂乱になりながら隊員達に襲いかかる。


[「撃て!」]


号令が、掛かると無数の銃声が鳴る。


ググールは、爪を届かせる前に息を絶えた。


水槽に落ちたググールも、銃弾を喰らい絶命した。


水槽は、緑に染まる。


ググールの遺体の他にサメも、巻き添えになり肉片が浮かぶ。


やがて、銃声は止んだ。


[「よし!撃ち方止め!確認しろ!」]


ググールに、二名の隊員が近付き蹴って確認した。


[「・・・死亡、確認!」]


隊員は、右腕を上げて合図した。


「・・・解決だな。」


難破は、マスクを外し言った。


「瀬川・・・龍巳・・・君、だったね?」


難破は、瀬川に声を掛けた。


「君とは、これで二度目だな。」


難破は、前の地竜事件を思い出しながら言った。


「え、ええ。確か、けん・・・大柴の相方の・・。」

「難破だ。その節は、世話になった。」

「あ・・・の、時・・・の・・・。グハァ!」


瀬川は、上手く喋れなかった。


「無理に、喋らない方がいい。さぁ、立てるか?ここから、出よう。」


難破は、瀬川を起こし支えながら歩き出した。


後方では、SATがググールの遺体を確認している声が聴こえる。


瀬川は、アリエルが心配で見た。


アリエルは、松山が抱えて連れていく。


瀬川は、安心して難破に身をゆだねた。


もう、力が入らない。


後ろを見れば、龍也と大柴も同じ状況だった。


二人は、河堂に持たれて何とか歩いている。



瀬川達三人は、額から汗が出て大量の鼻水が垂れていた。


催涙ガスを喰らえば、みんなこうなる。


そのまま、エントランスに着くと。


機動隊と制服警官が、何かを囲み集団でボコ殴りにしていた。


その何かは、簡単に解ったググールだ。


ググールは、全身を殴打され虫の息だった。


・・・これで、終わりか?


『・・・ん、ん〜。』


松山に抱えられたアリエルが、意識を取り戻した。


「ああ、良かった〜!瀬川さん。アリエルちゃんが気が付きましたよ!」


松山は、安心しながら言った。


「アーちゃん、がはぁ!よがづだぁ〜。」


瀬川は、なんとか言葉を出した。


『お兄ちゃん?「タツミおにぃちゃん!」


アリエルは、瀬川に飛び付いた。


「ダイジョウブ?イタク、無い?」



瀬川は、アリエルの頭を撫でて答えた。


そして、瀬川は駐車場で待機させていた救急車で治療を受けた。


大柴とアリエルは、途中でテントで待つ事にした。


龍也は、瀬川に付き添った。


その時、瀬川と龍也の持つ"剣"について訊かれた。


「ああ、コレは・・・・・ハハハ。」

「・・・私物です。と、言うより借り物です。友人に返す予定だったんです!」


龍也が、無茶な言い訳を言った。


「そ、そうなんですよ〜!ハハハ、ほら。重量とか、品質とかいかにも!って、感じでしょ?」


瀬川も、龍也の言い訳に乗りその場は怪しまれながらもなんとかした。


「・・・何なんだよ!借り物って!」


治療を終えて、二人が待つテントに行く途中に瀬川が言った。


「文句を、言うな。それしか、無いだろ?」


龍也は、冷たく答えた。


「何が、それしか無いだろう?・・・だ!」

「うるさい。俺は、早く帰りたいんだ。」


瀬川兄弟による、プチケンカが勃発した。


「ああ?テメェ、コラ。その言い方は、なんだよ?」

「止めろ、鬱陶しい。まったく。」

「だ、か、ら、その言い方を止めろ!」


テントの前で、にらみ合う二人。


「タツミオニイチャン!タツヤオニイチャン!ダメ!『ケンカしないで!』


すると、アリエルがいつの間に二人の間入って来た。


「アーちゃん。」

「・・・、アリエル。俺たちは別にケンカしていないよ。」


龍也は、方膝を着いて言った。


『ケンカ・・・じゃないの』


アリエルは、疑いながら言った。


「・・・ああ、ケンカしていないよ。」


龍也は、アリエルの言葉を推測して言った。


アリエルは、ホットした。


そして、気付いた様に瀬川の左腕を掴んだ。


「オニイチャン!『ググール、・・・・・・!』

「アーちゃん、ゴメン。何、言ってか解んねぇ。」


瀬川は、首を傾げた。


すると、アリエルは両手を丸くした。


「・・・マル?」

「なぁ、龍己。もしかして、アリエルちゃん。なんか、重要な事を伝えたいんじゃないの?」


大柴は、アリエルの必死な仕草を見て言った。


「・・・そうだな。ググール・・・って連呼してるしな。おい、龍己。この中で一番話の解るのは、お前だろ?」


龍也は、腕を組み瀬川を見た。


「そう言ってもなぁ〜。ぶちゃちけ、そんなに話せないし解らないぞ?」


瀬川は、考えた。


「え〜と・・・。あ!建治、紙とペンあるか?」

「え?あるけど・・・、ああ。そうか!」


大柴は、胸元からメモ帳とボールペンを出した。


それを、アリエルに渡した。


「さぁ、アーちゃん。いつものように、描いてごらん。」


瀬川は、アリエルとの面会の時はこうして意志疎通をしていた。


アリエルは、メモ帳に丸い物体を何個も描いた。


そして、周りを黒く塗りつぶしていく。


「・・・何?これ?」


大柴は、首を傾げた。


龍也も、それが何か解らない様だった。


・・・なんだ?この感じは?まさか、これって。


ただ、瀬川だけはその絵を見て嫌な予感がした。


「ヤハサ!ヤハサ!」


アリエルは、一生懸命に同じ単語を言っている。


更に、その横にググールの絵を描いた。


「ああ、なるほどな。クソ!建治!難破さんを、呼んでこい!」


瀬川は、その絵を見て予感が確信に変わった。


「ちょ、ちょっと、どうしたの?」


大柴が、困惑した。


「早く、呼べ!でないと、日本に新しい"外来種"が誕生するぞ!」


大柴は、瀬川の言葉に従って難破を呼びに行った。


「・・・アーちゃん。コレは、こっちの言葉で・・・。」


瀬川は、アリエルの絵を指差した。


「"卵"って、言うんだ。」

「た、ま、ご、?」


アリエルは、復唱した。




数時間後



制服警官が、懐中電灯を照らし暗い下水道を進んで行く。


「うっうっ、クッサ!オェェ!」

「おい!しっかり、しろよ。」


警官は、十名で進んでいた。


「ホントに、卵なんて有るのかよ。」


鼻をつまみながら、愚痴を溢した。


彼等の装備は、通常の支給された拳銃の他にショットガンを携行している。


「さあな、たっく。早く、清潔な地上に出たいぜ。」

「うっうっ、制服に臭いが移っちまう。」


瀬川が、アリエルから聞き出した情報で彼等はここにいる。


どうやら、卵は暗くジメジメした場所にあるらしい。


そこで、難破は署長を通じて警視庁に報告した。


上は、すぐに大分県及び周辺の県を一斉に捜索。


所轄関係無く、警察官達がマンホールへと入って行く。


しかも、真夜中に。


「うわぁ!ウェェ、最悪だ。なんか、肩に着いちまった。」


警官の肩に、天井から液体が落ちて来た。


手でさわったら、ベトベトしている。


警官が、懐中電灯を上に上げた。


「げっ!?なんだ!これ!?」

「どうした?」


その場にいる警官達も、見上げた。


そこには、人一人入る位の丸い塊が有った。


回りには、粘液が着いている。


まるで、映画に出てくるエイリアンの巣の様だ。


その場で、行きを飲む警官達。


その後も、各地でローラー捜索で卵は四ヶ所見付かった。


その中で、成体のググールが数匹いて巣を守っていた。


だが、機動隊や警官そしてSATの銃撃により役目を果たせず絶命した。


見付かった卵は、研究資料で3〜4個を除き全て焼却処分された。


一応、未知の細菌やらウイルスを考え巣に消毒剤を撒いて徹底した。


全て、終わる頃には三日かかった。




駐屯地の中に、営内隊員の私有車を停める駐車場がある。


辺りは、暗くなりつつあった。


瀬川 龍也は、愛車のトランクを整理していた。


「よぉう。」

「・・・龍己か。」


龍也は、片腕を上げて歩いて来る瀬川を見た。


二人の格好は、ジャー戦だった。


ジャー戦とは、上に戦闘服を着て下にジャージを穿っている。


「腕・・・大丈夫なのか?」

「ああ、スッカリな。」

瀬川の腕は、あの後に病院に見せた。


腕は、既に自然治癒したかの様な傷痕しかない。


医者も、驚いていた。


「いゃー、大変だったな。」

「まったくだな。」


二人は、水族館の後に別府警察署に行き事情調書された。


それが、終わり部隊に帰ると警務隊が笑顔で出迎えてくれた。


「龍己。お前、警務の事情調書は終わったのか?」

「つい、先な。」


瀬川は、肩を回した。


「俺もだ。」


龍也は、溜め息をついて言った。


「そう言えば、この"2本"どうするんだ?」


龍也は、トランクにある剣を指差した。


「んん。それか〜。そのまま、置いとけよ。」

「ふざけるな。完璧な銃刀違反だろうが。」


瀬川は、剣を持った。


「拾得物・・・になるのかな?誰のだろうな?」

「さぁな。刀剣マニアのだろう?」


龍也は、吐き捨てる様に言った。


「刀剣マニアねぇ〜。」

「なんだ?お前、なんか知ってるのか?」


瀬川が、意味ありげな言葉に龍也が反応した。


「・・・。」

「なんだよ?ジロジロ見るな。」

「龍己、ホントは知ってるんだな。この剣も、あの化け物も。」


龍也は、瀬川を睨んだ。


「俺が、何年お前の双子やってると思う?」


龍也の言葉に、瀬川は頭を掻いた。


「"餓狩鬼"。化け物はアッチではそう呼ばれているらしい。」


瀬川は、語り出した。


「これと決めた獲物を、しつこく狙う特性があるから暗殺様に飼われているらしい。」


龍也は、瀬川の説明を静かに聞く。


「俺たちを襲ったのは、変種だ。普通は、姿を消せる事は無いそうだ。」

「・・・変種・・・と言うことは、希少って事だな。龍己、あれは明らかにアリエルを狙っていた。つまり、何らかの勢力・・組織が絡んでいるのか?」


龍也は、考えを口にした。


「ああ、竜教っう狂った宗教団体だ。アーちゃんが、ここに来る前に狙われて一緒に来たんだだろうよ。」

「そして、伺っていた。」


龍也は、トランクを閉めた。


「化け物については、解った。」

「次は、剣だろ?その2本は、アーちゃんの国の騎士団隊長さんが持ってたヤツだ。」


瀬川は、車を見ながら言った。


「1つは、騎士団の第3隊長の物でもう1つは・・・。」


瀬川は、少し笑った。


「・・・シエラ・・・さん、だろ?」

「な、なんで、知ってんだ!?」


瀬川は、龍也にシエラの事を話した記憶は。


「ガキの頃、話しただろ。」


あったらしい。


「だから、何年双子やってると思う?」


龍也は、呆れた表情になった。


「お前、シエラさんの事になるとにやける癖があるぞ。治しとけよ。」

「うぐぐ。」

「たぶん、今までの説明は昨日の夜に訊いたな。」


瀬川の図星を、付く龍也だった。


「て、てか、覚えてたのかよ。」

「まぁ、ついこの前まで忘れてたけどな。」


龍也は、腕を組み言った。


「・・・剣は、預かっててやるよ。」

「龍也。」

「大切な彼女の物なんだろ?」


龍也は、生活隊舎に歩きだした。


「スマン、恩に着る。」


瀬川は、素直に頭を下げた。


「止せ。気色悪い。」






後日、ニュースや新聞等で大々的に警察の活躍が報じられた。


どの記事の見出しも、"警察 VS 異界の魔物"と言うもだった。


そろそろ、瀬川の世界とシエラの世界の名前を考えようと思います。


何かないか、考えてます。

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