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第39話 楽しい水族館2

魔術技庁は、オルテ王国最大の研究機関だ。


そこでは、新しい魔法開発に加え魔物の研究もしている。


勿論、この施設は厳重な警備で守られてある。


だが、先日のドラゴニードの事件で玉竜石を奪われた。


その為、現在は警備態勢を見直されている最中だ。


「ん〜ん!」


レナは、座りながら背筋を伸ばした。


ここ最近、彼女は第4騎士隊を離れ地竜の研究をしている。


彼女の目の前には、粉々になった地竜の骨がある。


レナは、玉竜石の欠片を手に取った。


あの事件から、石は光を失っていた。


骨格の方も、見る影も無い。


竜の弱点を研究していた彼女にとっては、残念なことである。


たが、変わりにもっと興味深い事があった。


それは、地竜の死因だ。


体内から、数多くの鉛が見付かったのだ。


変な話し、地竜は二度死んでいる。


一度目は、貿易都市エターロ。


二度目は、このオルテで。


そのどちらも、この鉛が出てきたのだ。


最初に、この死体を検死した時など千切れた右腕を見て驚いた。


まるで、強力な炎の魔法が内部で炸裂したかと思った。


調べたが、見付かったのは鉄の破片に鉛の塊だった。


それに、傷の回りから煤のような黒い粉が着いていた位だった。


「・・・弓矢・・・、じゃない。」


レナは、石を置き鉛を見た。


矢じりの先端にしても、小さい。


と言うより、矢で竜の鱗を貫くなんてできない。


地竜が、復活しかけた場所も調べた。


そこにも、この鉛は壁の中から出てきた。


魔法では、無い。


たぶん、何かしらの武器だ。


しかも、かなり強力な。


だが、誰が?

どこの、武器?


舞踏会での招待客に、そんな物を持っていた人はいない。


そもそも、この世界では考えられない武器だった。


「・・・私達よりも、高度な文明。」


レナは、呟いた。


「やあ、レナ君。お疲れさま。」


その時、一人の初老の男性がレナに声をかけた。


「ケレル卿。」


レナは、男性の名前を言った。


ケレルは、魔術技庁の最高責任者であり屈指の魔法研究者である。


白い髭を伸ばし、背が低くぷっくら太っている。


その為か、見た目で癒されてしまう。


今、ケレルは魔物が突然現れたり消えたりする謎を解明している。


本来なら、現地で調査中だが定期報告でオルテに戻って来ていた。


「研究熱心だね。でも、無理は身体に毒だよ?」

「はい。すいません。」


すると、ケレルはレナの前にある鉛を取った。


「フム。これが、例の鉛かい?」

「はい。そうです。」


ケレルは、色んな角度から鉛を見た。


「フ〜ム。この精製は、我々でもドワーフでもできない。それに、・・・。」


ケレルは、レナと同じ考えを言った。


「レナ君。」

「はい。」

「君は、私が声をかける前に呟いていたね?我々を凌ぐ文明ではないかと。」


レナは、頷いた。


「君も、思っているだろう?・・・この世界では無い、まったく別の世界があるのではないかとね。」


レナは、驚いてケレルを見た。


ケレルは、それを肯定と捉えた。


「竜さえ、倒してしまう力。・・・素晴らし!私は、ぜひ!その世界を、知りたい!君も、そう思わないか?」


ケレルは、興奮して言った。


「ケレル卿。勿論です!」


レナとって、知識を探究する者である。


そこに、知らない知識があれば欲しいと思うのは当然だ。


「問題は、どうやって"彼方"と交流するか・・・ですね。」


もしかしたら、彼方は既に何らかの魔法で此方に来られるのか?


それとも、突発的に両方の世界が繋がる瞬間があるのか?


考えたら、きりがない。


「レナ君。問題を、上げれば数え切れないぞ?そもそも、人間では無い可能性がある。そうなったら、我々との"交流"は難しくなる。」


ケレルが言った言葉は、素晴らしいと感じた。


「上手く、交流し同盟を結べれば帝国と公国を退ける力になりそうだ!その為には、私も力を貸そうじゃないか!レナ君!」


ケレルは、張りきりながらレナに温かいスープを渡して去った。


確かに、今のオルテの現状を打破できる。


それに、他国より先に文明を吸収し得る。


レナは、ケレルを見送るとシエラの事を思った。


そう言えば、地竜の右目を調べてくれと頼まれた。


そして、出てきたのが比較的に形状が解る鉛だった。


レナは、疑問に思った。


(何故、隊長は右目の鉛を・・・。まさか、隊長は何か異世界と繋がりがあるんじゃ?)


レナはもう一度、鉛を見つめた。









水槽を、自由に泳ぐ魚。


中には、浅瀬に住む魚や深海魚までいる。


そのひとつひとつをアリエルは、夢中になって見ていた。


『「タツミ」お兄ちゃん!見て、見て!スッゴーいよ!』


アリエルは、瀬川の裾を引っ張って興奮している。


「お〜お〜!アーちゃん、危ないって!走るなよ。」


注意するが、瀬川も結構楽しんでいる。


「おっ!アーちゃん。来てごらん。ほら、ラッコだよ。。」

「ラッコ?・・・『わー!かわいい!お兄ちゃん、わたしこの子欲しい!』


二人は、ラッコが貝を食べている姿を見ている。


「たっく、はしゃぎ過ぎだぞ。」


竜也が、アリエルの為にオレンジジュースを買って来た。


「おっ!気が利くな。」

「お前のは、無いぞ。」

「くそドケチ。」

「言ってろ。」


竜也は、アリエルにジュースを渡した。


最初は、ストロに戸惑ったが一口飲むと夢中になって飲みだした。


「はい。了解しました。じゃ。・・・お待たせ〜。」


大柴が、携帯を閉まって瀬川達に合流した。


「よぉ、結構長かったな。」

「まぁね。VIP級の警備だからね〜。」


大柴は、大変と言い切った。


「にしては、他の客も沢山いるし何だか普通だな。」


竜也は、周りを見回した。


瀬川達の他のにも、観光客やカップルに家族連れの客がいた。


「流石に、貸し切りにはできなかったんだよ。」


歩きながら、一行はうみたまごのエントランスに着いた。


そこで、瀬川はポップコーンを購入した。


「お釣りの、400円です。ありがとうございました!」


男性スッタフが、笑顔で接客してくれた。


「ども。おっと!す、すいません!」


瀬川は、カップルにぶつかった。


「おい、気を付けろよ。」


彼氏が、睨みながら言った。


「す、す、すいません!」

(ヤッベ!?おっかない!)


瀬川は、逃げる様に戻った。


その様子を、先程の男性スタッフが見ていた。


「・・・こちら、中央。対象者が、警護2に接触。これより、イルカショーを見るため移動を開始した。」


男性スタッフは、襟を立て声を潜め言った。


「警護2は、速やかに追従せよ。」


男性スタッフは、先程のカップルを見た。


カップルは一瞬、スタッフと目が合うとすぐに目線を外した。


そして、瀬川達を追うようにカップルが移動を始める。


実は、従業員全員が大分県警の警官だった。


それを知っているのは、大柴だけである。


「アーちゃん。ほら、ポップコーン。食べな。」

「アリガトウ!『美味しい!』」


アリエルは、気に入ったのかポッコーンを夢中で食べ始めた。


この世界に来て、初めてのお菓子だ。


「ほら、さっさと行くぞ。ショーが、始まる。」


竜也は、急かしながら先を歩いた。


「そ〜そ!やっぱ、水族館ならイルカショーでしょ!」


大柴は、そう言って瀬川とアリエルを押した。


一行は、一番前の席に陣取った。


「ここで、大丈夫なのか?水が掛かるんじゃないか?」

「大丈夫、大丈夫。ほら、カッパ買って来たから。」


大柴は、龍也に全員分のカッパを渡した。


アリエルは、瀬川の横で何が始まるのかとワクワクしながら座っていた。


「ようこそ!うみたまごへ!イルカさん達も、皆さんに会えて嬉しいそうですよ!」


ショーが、始まった。


司会のお姉さんが、笛を吹くとイルカ達は一斉に顔を出した。


『わぁ!可愛い!!』


アリエルは、すぐにイルカを好きになった様だ。


「アーちゃん、カッパ着な。濡れるぞ。」


そして、笛の合図で見事な技を披露していく。


その度にアリエルは、はしゃいだ。


イルカ達は、つき次にアクロバッティクな技を決める。


ショーは、次第に佳境に入った。


「おぉ!スッゲー!」


瀬川もつられて、はしゃぎだした。


「それでは!皆さん!この後も、うみたまごを楽しんで行って下さい!」


司会のお姉さんが、頭を下げるとイルカも合わせてお辞儀した。


「なぁ、記念にイルカと写真撮らない?」

「そうだな、良いかもしれないな。」

「健治も、たまには良い事言うじゃん!」

「・・・何だよ・・・たまにはって。」


瀬川と竜也は、大柴の提案に賛成した。


ちょうど、ショーを終えたイルカ達が観客と触れ合っている。


四人は、すぐに近づいて並んだ。


意外にも、順番はすぐに来た。


「すいません。これで、お願いします。」


瀬川は、自分の携帯をインストラクターに渡した。


「それじゃ、いきますよ?はい、チーズ!」


四人は、イルカと写メを撮った。


アリエルは、写メを見ると驚いた。


一瞬で、絵ができた事が不思議なのだろう。


「さって、次はクラゲでも見て飯を食いますか?」

「何で、クラゲ何だよ?」


竜也は、呆れながら言った。


「良いじゃん!クラゲは、綺麗な生き物だよ?」


大柴は、力説し始めた。


(あ〜、でたな。クラゲマニア。)


瀬川は、呆れた。


大柴は、昔からクラゲが好きな理解不能な一面がある。


「解った、解った。見に行こうや。」


瀬川と竜也は、クラゲ話しが長くなる前に折れた。


アリエルは、次にどこに行くのか楽しみにしている。




暗く、落ち着いた音楽が流れている。


水槽の中には、色とりどりの深海魚が泳いでいる。


その中に、大柴が観たいクラゲがいた。


「おお!これだよ!これ!」


大柴は、興奮しながらクラゲを見た。


「たっく、何が良いんだよ?こんな、無脊椎が。」

「まったくだな。理解に、苦しむな。」


二人は、呆れ果てた。


が、アリエルだけは違う反応だった。


『何、これ!?すっごーい!変なのー!骨が、無いよ!?どうなってるの?』

「おっ?アリエルちゃん、良い食い付きだね〜。これは、クラゲ って言うだよ〜。」

「ク・・ラゲ?」


大柴は、優しく解説しだした。


「あ〜あ、昼飯が遅くなるな。」


瀬川は、溜め息をついた。


そして、暇潰しに天井にある解説を読もうと上を見た。


「・・・・んん?」


何となく、見上げた天井。


そこに、有り得ない"生物"がいた。


天井に、張り付いて口を開けている。


"それ"は、体表の皮膚のほとんど全てが剥離している。


さらに、肥大した脳は、外部にむき出しになっている。


眼らしい、眼球は無い。


鋭い牙、鋭利な爪、長い舌。


まさに、あのゲームに出てくる様な怪物だ。


あのゲームとは、・・・。

「・・・・龍巳。」

「・・・何?」


龍也も、ちょうど気付いていた。


「・・・この前、お前の居室で一緒にバイ○ ハザード・・・やったな?」

「やったな。2Pで。」



龍也の質問に、瀬川は相づちをしながら答えた。


「・・・ほら。なんだ?あそこ、"アレ"が出てくる面。」


龍也は、指差した。


「ああ〜。研究所のとこね。確か・・・"リッ○ー"が大量発生した所ね。」

「そうそう。苦労したな。」


龍也の言葉に、瀬川は頷いた。


床や天井、壁から襲い掛かって来るリッ○ー。


余談だが。


二人は、ハードモードで七回もゲームオーバーの末にクリアーした。


「・・・んで?"アレ"は、展示物か?」


龍也は、何と無く質問した。


勿論、瀬川は知らない。


展示物なら、結構な費用だろう。


本物に、そっくりだ。


(・・・手間、掛かってんな〜。)


瀬川は、感心した。


だが、うみたまごがバイオハザードとのコラボ企画あるなんて聞いて無い。


しかも、"アレ"はどう見ても生きてる。


ハァァァ〜。


不気味な吐息。


目線?の先には、アリエルがいる。


化け物は、動きだそうとした。


瀬川は、瞬時に目的がアリエルだと理解した。


それは、龍也も同じで二人は怪物が動く前に身体が動いた。


『キャア!?』

「おわぁ!?」


その瞬間、化け物は爪を立ててアリエルと大柴に真上から襲った。


ギリギリ、だった。


瀬川はアリエル、龍也は大柴を掴まえて右に跳んだ。


四人は、化け物の真横に倒れた。


「ちょ、ちょっと!何すんだ・・・何!?アレ!?」


大柴は、文句を言い終わる前にやっと気付いて叫んだ。


『餓狩鬼!?』


瀬川の腕の中でアリエルは、眼を見開いて驚いた。


「ググール?」


瀬川は、アリエルが言った言葉を呟いた。


(ア−ちゃんが、知ってるって事は・・・。)


瀬川は、何と無くアレが異世界から来たのだと理解した。


ググールの爪は、コンクリートの床をえぐっていた。


「おい!早く、逃げ・・・!?」


龍也が、急かす前にググールは四人に飛び掛かっていた。


最早、間に合わない。


爪は、アリエルと瀬川を。

龍也と大柴は、ググールの巨体の下敷きに。


それが、数秒先の末路だと予想できた。


(クソ!スマン!シエラ!)


瀬川は、心の中でシエラに謝罪した。


そして、無駄と解っていても背中をググールに向けた。


アリエルを、自分の前に抱え守る様に庇った。


乾いた銃声が、響いた。


それも、八発。


ググールは、瀬川達の左側に倒れた。


(・・・な、何だ?まさか、大柴か?)


瀬川は、恐る恐る眼を開けて横を見た。


大柴が、拳銃を出して撃ったと思ったのだ。


しかし、大柴は両腕を顔の前で交差して眼を瞑っていた。


(あれ?じゃあ、誰だ?)

「早く、立って逃げろ!!」


深海魚コーナーの入口から、銃を構えた二人組が走って来た。


「大柴巡査!確りして下さい!」


女性が、眼を大柴に向け言った。


(あれ?このカップルは!?)


瀬川は、驚いた。


その男女は先程、瀬川が肩をぶつけてしまったカップルだった。


「離れろ!?」


男性が、叫んだ。


ググールが、まだ生きている。


身体から、血が出ているが致命傷を与えられなかったのだ。


瀬川達は、すぐに立ち上がりカップルの後ろに走った。


それを、確認しカップルは更に弾丸をググールに撃ち込む。


途中から、大柴も拳銃を抜いて発砲する。


ググールは、穴だらけになり息を引き取った。


「・・・。」

「・・・。」


沈黙が、辺りを包む。


男性が、ググールに近づいた。


そして、頭を蹴って死亡を確認した。


「よし、死んでる。」


男性の一言で、一同は安心した。


「難破さん。河堂です。相手は、人間じゃないです。はい。はい。解りました。」


男性は、携帯で難破と連絡をとった。


どうやら、事後の指示を聞いているらしい。


「大丈夫ですか?怪我は?」


女性の方は、瀬川達を特にアリエルを心配して声掛けた。


「たっく、どこのアンブ○ラがこんな物をけしかけやがったんだよ。」


男性が、ググールを見て悪態をついた。


(あっ、この人もバイ○ファンなんだ。)


瀬川は、一気に男性に親近感が沸いた。


「か、河堂巡査!?」


大柴が、叫んだ。


「ああ?な!?」


大柴が、指差した方向にググールが2匹。


壁と天井に、張り付いて此方を伺っていた。


「おいおい。冗談だろ?」


男性 河堂は、顔を引きって笑った。


「大柴!護衛対象を、連れて逃げろ!松山!お前は、ここで俺と足止めだ!」

「はい!」


女性 松山は、銃を再度構えた。


「河堂巡査!松山さん!」

「大柴君、大丈夫だから行って!」


松山の言葉に、大柴は瀬川達を立たせると二人に敬礼をした。


「すいません!頼みます!」


そして、瀬川達は出口まで走った。


「ガアアア!」


ググールは、獲物を逃さない為に動き出した。


「行かせるかよ!」


河堂は、一番近いググールを撃った。


しかし、武器を理解したのか紙一重で避けられた。


そのまま、二人と距離を空ける。


河堂達を、警戒しているのだ。


「・・・足止めは、できそうですね。」


松山は、睨みながら言った。


「けっ!もっと、危険手当てが欲しいぜ。」

「・・・、申請します?」

「名案だな。よし!松山、SATが来るまで粘るぞ。んで、がっぽり手当てを貰う!」


河堂が、笑いながら言った。


「解りました。私、ハワイ旅行の費用にしよ。」


松山の冗談に、河堂は俺も連れて行けと乗かった。



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