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第34話 面会

今回は、載せるのに時間がかかりました。

シエラ達4人は、会議場から大広間まで歩いた。


全員、緊張感から解放されぐったりとしている。


流石のアークでさえ、壁にもたれ掛かり額の汗を拭っている。


「ねぇ、アーク。」


シエラは、溜め息をついているアークに声をかけた。


「何だい?」

「先、会議場で話していた事って本当なの?」

「ん?ああ。クルビス帝国とアラナ公国の件か。」


アークは、思い出した様に言った。


シエラは、不安になった。


本当に、戦争になれば王女捜索を中止し防衛の任に着かなければならない。


レオリオ王は、きっとそう命令するだろう。


民あっての、国。


国あっての王と、考えている人物だからだ。


それに、戦争になれば多くの犠牲がでる。


「なぁに、ただの噂だよ。報告はしたけど、気にする程じゃないよ。」


アークは、シエラの気持ちを察して安心する様に言った。


「今は、・・・でしょう?」


レイナが、髪をかきあげて言った。


「れ、レイナ。」


「貴方が、あの場で報告したという事は現実になる可能性が高いと言う意味。流石の、オルテも2ヵ国に攻められたらひとたまりもないですわね。」


レイナは、他人事の様だった。


「レイナちゃん〜。そんな、嫌な事を言わないでよ〜。気分がさらに、悪くなっちょうよ〜。ここは、明るい方に考えようよ!ならない、可能性だってあるし!」


ルノーは、雲行きが悪くなった空気を何とかしようと言った。


「そうだ。ルノーの言う通りだ。」


アークも、ルノーに同意した。


「あら?隠す必要は、無くてよ?限りなく、近いのでしょう?」


レイナの発言に、アークは気まずい表情になった。


「・・・アリエル様は、どうなるか。解って、言ってるの?レイナ。」


シエラは、拳を握った。


「捜索は、中止になるわね。再開は、問題が解決してからね。でも、それまでにアリエル様は・・・。」

「レイナ!!」


レイナの言葉を、シエラが遮った。


聞かなくても、解っているからだ。


シエラは、冷たく言ったレイナを睨んだ。


「・・・・。」

「・・・・。」


睨み合う、二人。


ルノーは、どうして良いか慌てた。


そして、アークはいつでも二人を止めれる様に構えた。


「・・・何で・・・何で!そんな、冷たく・・。」

「その前に、アリエル様を見つけますわ。」


今度は、レイナがシエラの言葉を遮った。


そして、シエラの横を通り過ぎた。


「王女は、必ずわたくしが無事に保護してみせますわ。」


その声には、強い意思を感じる。


一瞬にして、怒りが消えるのを感じた。


「戦争なんて、外交官が何とかしてくれる筈。なったとしても、わたくしがオルテ王国を守ってみせますわ。」


レイナは、後ろを振り向かずに言った。


「貴女は、留守番でもしていなさい。"静寂の森"にはわたくし一人で行きますわ。」


レイナは、皮肉を言って立ち去った。


自信に満ち溢れ、堂々とした姿だった。


シエラは、怒鳴った自分が恥ずかしくなった。


レイナは、最悪の事態を見通してそれに対し強い意思が有っる。


自分は、目を背けようとしたのに。


シエラは、今まで以上にレイナが強い女性だと思った。


「・・・ふぅ〜。まったく、レイナらしいな。」


アークは、溜め息を着きながら言った。


「それで、シエラ。君は、どうする?留守番するのかい?」


アークは、シエラを見た。


「勿論!僕も、行くさ!レイナには、負けてられないなからね!」


シエラは、両頬を叩いて気合いを入れた。


「アーク、ルノー。後の事は、任せたよ!」

「ああ。任せてくれ。」

「シエラちゃんも、気を付けてね!二人に、何かあったら私。泣いちゃうからね!新しい、運河ができちゃう位に泣くからね!!」


シエラは、二人に感謝し旅支度の為に部屋に歩いって行った。


その足取りは、しっかりしたものだった。


シエラは、ふっと空を見上げた。


何故か、瀬川に会いたいと思った。


(出発は、明日の早朝か。)


今夜は、旅に備え寝る事にした。


5日ぶりに、瀬川に会うと思うと少し心が軽くなった。


(タツミ。君は今、どうしてるの?)


シエラは、飛んでいる鳥を見送りながら思った。


愛する人を。






看護師達が、仕事をしている。


患者の書類や、診察の準備。


勿論、普通の病院では当たり前の光景だ。


瀬川は、ナースステーションを少し覗いた。


白衣を着た看護師達、それに混じって迷彩服の女性も働いている。


その女性も、立派な看護師なのだ。


瀬川がいるのは、自衛隊病院である。


ここで、働く看護師達は全員れっきとした看護師だ。


それと同時に、自衛官でもある。


ちなみに、医者もほとんどが自衛官。


自衛官達は、病気で入院するとなればこの病院に来る。


そうすれば、入院費はタダしかも保険に入っていれば儲かる。


1日の入院で、1万円。

手術なら、10万円も保険がでる。


過去に、入院だけで15万も儲けた隊員もいる。


余談だが、瀬川も2回ほど入退院をしていたので懐が暖かい。


話しは、戻る。


今回、瀬川は別に怪我も病気もしていない。


別件で、自衛隊病院を訪れていた。


格好は、いつもの迷彩服ではない。


陸上自衛隊の制服(冬服第1種)を、着ている。


瀬川は、制帽を右脇に挟み近くにいた看護師を呼び止めた。


「すいません。あの〜、41連から来た者ですけど。」

「ああ。4中隊の瀬川士長ですね。お話は、聞いてます。こちらです。」


看護師は、すぐに愛想のいい顔になり瀬川を先導した。


廊下を左に曲がり、突き当たりを右へと歩いていく。


「よおう。来たか。待ってたぞ。」


待合室の様な所で、中尾が瀬川を出迎えた。


看護師は、中尾に軽く挨拶をすると戻って行った。


「まぁ、なんだ。座れ。」

「は、はぁ〜。」


瀬川は、気の抜けた返事をして座った。


制帽は、テーブルに置き中尾からコーヒーを貰った。


「さて、一息したら早速で悪いが面会してもらおうか。」


中尾は、コーヒーを一口飲み言った。


「それは、別に良いですけど・・・。」

「ん?なんだ?問題か?」

「いえね。あの子が、本当に異世界から来たのか解ったんですか?」


瀬川の質問に、中尾はにんまりした。


「なぁ、人のDNAの構造を知っているか?」

「DNA、ですか?え〜と、確かこんな風に二本の線みたいなのが螺旋状に・・・。」


瀬川は、ポケットからメモを取り出して螺旋を書いた。


それを、見て中尾は頷いた。


「そうだよな。まぁ、一般的な常識だ。通常、2本の逆向きのDNA鎖はシャルガフの法則による相補的な塩基により水素結合を介して全体として二重らせん構造をとっている。二本鎖構造の意義は、片方を保存用に残し、もう片方は、遺伝情報を必要な分だけmRNAに伝達する転写用とに分けてんだ。」


中尾の説明に、瀬川は頭が痛くなってきた。


「ち、ちょっと!待って下さい。」


瀬川は、あの子の質問しただけなのに別に科学の疑問を訊いた訳ではない。


「ああ、悪りぃな。お前さんには、難しかったか?」


瀬川は、バカにされた気分になった。


「まあ、つまりはだな。人間には、この二本鎖構造になってるのが普通だ。だかな、ここにもう一本あるとしたら?」


中尾は、瀬川が書いたメモにボールペンで線を付け加えた。


「はっきり、言ってな。3本鎖構造なんて、ありえねぇんだよ。しかも、用途が解らん。保存用でも、遺伝情報でも無い。」


瀬川は、メモをまじまじと見た。


「・・・・もしかして、これがあの子の・・・って事ですか?」


瀬川の質問に、中尾は肯定した。


「それ以外は、俺達と変わらねぇ。違うのは、この線だけだ。」


中尾は、メモを瀬川に返した。


「さて、世間話はこれくらいにしようか。お前さんは、とっとと"任務"に行くんだな。」


中尾は、席を立ち部屋から出って行った。


「・・・、はぁ〜。任務・・・ねぇ〜。」


瀬川は、溜め息を着き部屋を出て病室に向かった。


瀬川に、与えられた任務。


それは、異世界からの少女とのコミュニケーションだった。


あれから、少女はこの病院で治療されていた。


治療と言うより、精密検査だ。


担当医や語学学者、精神科医にそれ専用のスッタフ。


様々な人が、少女とコミュニケーションをとろうとした。


だが、以前少女は俯いたまま黙っている。


少女には、悪いが病室には数台の監視カメラがある。


それらは、少女の監察の為に設置されている。


24時間態勢で、少女を見ているのだ。


その中で、深夜に少女の口から寝言で瀬川の名前を言っていた。


そこで、政府は、少女にコミュニケーションをとる為に瀬川を指名した。


少女と、会話を交わし言葉を覚えさせる。


また、少女が発する単語を聞き分け解析する。


できれば、あちらの世界に付いても情報を聞き出す。


以上の三点が、瀬川にかせられた任務内容だ。


瀬川は、溜め息をついた。


(何、話せばいいんだよ?)


病室の前には、二人の男が立っていた。


二人の右腕にはMPと書かれた肩章があった。


(ここか。)


瀬川は、二人に敬礼をした。


「41普通科連体第4中隊、陸士長瀬川龍巳です。」


一人が、答礼した。


「面会時間は、三時間だ。」


MPは、瀬川を睨み付ける様に言った。


少し、一呼吸置いて瀬川は病室に入った。


そこには、窓開け外を見つめる少女がいた。


金髪ヘアーが、風で揺れている。


服装は、前に着ていたドレスではなく水玉模様のパジャマだった。


「・・・よ、よぉ。」


瀬川は、勇気を出して少女に声をかけた。


少女は、瀬川に気付いて振り返った。


最初は、警戒して見ていた。


「タツミ『お兄ちゃん』?」


少女は、瀬川の名前を言った。


後半の言葉は、意味が解らなかった。


しかし、少女は確かに瀬川を知っている様だった。


「え〜と、そう。はい?イエス?」


瀬川は、何と言っていいのか解らず頭を掻いた。


少女は、じっと瀬川を見てくる。


(弱った。どうすりゃ、いいんだよ?)


瀬川は、少し考え質問する事にした。


「確かに、俺が瀬川 龍巳だよ。何で、俺の事を知ってるのかな?」


瀬川は、ベットの横にある椅子に座った。


少女は、首を傾げた。


(ああ。やっぱり、言葉が解んないか〜。)


夢の中では、日本語に聞こえるのに妙な感じがした。


「俺の事・・・・。」


瀬川は、監視カメラを見た。


会話も、聴かれてるんだろうが訊いてみる事にした。


「俺の事、"シエラ"に聞いたの?」


瀬川の発言に、少女は明るい表情になった。


『"シエラ"お姉ちゃんを、知っているの?じゃあ、やっぱりお兄ちゃんはセガワ タツミなんだね!!』

「え??何て??」


少女は、ベットを飛び越え瀬川に抱きついて喋った。


だが、言ってる言葉が解らない。


『スッっごい!私ね、私ね、ずっとお兄ちゃんに会いたかったんだよ!』


少女は、少し離れ瀬川を見て興奮しながら言った。


「え、えっ〜と?」


少女が、何を言っているのかさっぱり解らず困惑する。


『あのね、あのね、私ね!』


少女は、なおも話し掛けてくる。


瀬川は、とにかく誤魔化し笑顔で頷く。


突然、瀬川の携帯が鳴った。


開くと、小隊長からメールがあった。


[落ち着かせろ!]


「・・・・。」


瀬川は、笑顔のまま携帯をポケットの中に直した。


そして、外を眺めた。


(・・・居やがる。)


瀬川は、乾いた様な笑いをした。


『もう!お兄ちゃん、ちょっと聞いてるの?』

「ご、ゴメン。ゴメン。」


何となく、意味がわかり謝った。


「ねぇ、ところでさぁ。きみの名前は、何て言うのか?な・ま・え。」


ともかく、少女の名前を知らないと先には進めない。


「な・ま・え?」


少女は、首を傾げた。


「え〜と。そう、俺がタ・ツ・ミだろ?きみは?」


瀬川は、自分を指差した後に少女を差した。


少女は、ハッとした。


『名前だね!私は、アリエル!アリエル レオ オルテ!』

「アリ・・・エル。アリエルちゃんか?」


瀬川の言葉に、頷いた。


名前は、アリエル。


そして、シエラの知り合いなのは確信した。


「ふーむ。」


瀬川は、頭を整理した。


改めて、アリエルを見た。


入って来たときよりは、年相応とした感じになった。


何故か、キラキラした目で瀬川を見ている。


『まるで、お伽草子の主人公が目の前に居るみたい!!』


アリエルが、手を合わせ喋った。


(ん〜。まずは、言葉からか〜。)


瀬川は、本来の任務を思い出した。


しかし、瀬川は国語の教師でも英語の教師でも無い。


ましてや、この世界に無い言語の専門家でも無い。


「さて、どうしたもんかね?」


瀬川は、悩んだがすぐに思い付いた。


「アリエルちゃん、これは何て言うのかな?」


瀬川は、自分の座っている椅子を指差した。


『椅子の事?』

「え〜と、『い、いずぅりぃ・・・ノォ・・きょおと』?」


瀬川は、アリエルの言った言葉をたどたどしく言った。


『違うよ。椅子だよ。椅子。』


瀬川は、アリエルから同じ単語が出た事に気付いた。


「そうか!『イィスゥ』?」

『うん。椅子!』


瀬川は、確信した。


(なるほど、椅子はこの単語か。)


瀬川は、すぐにメモ帳を出した。


そして、椅子と書いての横に発音を書いた。


次に、天井を差した。


『あれはね、天井だよ!天井!て・ん・じ・ょ・う!』


アリエルは、すぐに瀬川の意図が解ったのか言葉を繰り返した。


『て、ん、じゅう?』


瀬川は、すぐに確認した。


『天井!』

『てんじょう?』

『そうだよ!天井だよ!』


瀬川は、メモを書いた。


こうして、暫くやり取りをした。


小さい教師による、言葉の授業は瞬く間に過ぎていった。


(この方法も、すぐに限界が来るなぁ。)


瀬川は、次の手段を考えた。


ドアから、ノックの音がした。


「瀬川士長、時間だ。」


外にいるMPが言った。


腕時計を見たら、17時を過ぎていた。


(うわぁ、早や!)


アリエルは、不思議そうな顔で瀬川を見た。


『お兄ちゃん、どうしたの?』

「え〜と、あのな。俺、もう帰らないといけないんだよ。」


瀬川は、ジェスチャーをしながら伝えた。


『え?帰ちゃうの?』


2分後、やっと伝わったのかアリエルは瀬川の腕を掴んだ。


『嫌!もっと、お話したいの!』

「お、おい。」


困った瀬川は、アリエルをなだめる。


「大丈夫だって、明日も来るから!」


残念ながら、アリエルには伝わらない。


結局、面会時間の30分過ぎにようやくアリエルに解放された。


『明日も、来てくれる?お兄ちゃん。約束だよ?』


アリエルが、何を言っているか解らないが納得してくれたらしい。


「いい子に、してるんだぞ?」


瀬川は、アリエルの頭を撫で病室を出た。


アリエルは、嬉しい気持ちになった。


今まで、彼女の頭を撫でてくれたのは両親しかいなかった。


それは、アリエルがオルテ王国の第一王女だからだ。


自分より年上、同い年、年下、全員はアリエルに対し恐縮する。


誰もが、撫でるどころか敬語を使い敬うのだ。


それゆえ、友達と言えるのはシエラだけかもしれない。


だが、そのシエラでさえ当初は恐縮して堅い表情だった。


それなのに、瀬川は平気で接してくれた。


『明日が、楽しみだな〜。』


アリエルは、瀬川が来るまで不安だった。


今では、ワクワクしている。


ここは、シエラが話してくれていた世界。


実際に、窓の外は今まで見たことが無いような大きい建物がある。


つまり、不思議な物が沢山ある。


(タツミお兄ちゃんに、頼めばお外で遊べるかな?)


アリエルは、上機嫌になってベットに乗った。


その日は、なかなか眠れ無かった。

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