第25話 調査団
短いですが。
第一警戒区。
ここは、旧北道沿いにある盆地である。
元々は、訓練資材置き場として使われてきた。
しかし、中尾達調査団が調べた結果この場所が異世界と繋がる穴。
"クロス・ホール"があると解った。
直ちに防衛省は、厳重な警戒を命令。
周囲を施設部隊が、まだ簡易だが防壁を作った。
来年度までには、国家予算を使い更に増築し最高レベルの強靭な壁にする予定だ。
そこに、中尾率いる調査団が来た。
警戒区に、入ろうとする中尾を警衛中隊の隊員が止めた。
「すいません。申し訳無いですが、身分証と許可書を提示して下さい。」
中尾は、無造作にポッケトから身分証と自衛隊から発行された身分証をだした。
「ごくろうさん。」
中尾は、隊員の肩を叩くと警戒区の中に入って行った。
調査団の外国人達も、身分証と許可を出して中尾に続いた。
皆、期待に眼を輝かせていた。
[Mr.中尾。ここが、異世界に行ける入口がある場所は?]
調査団の一人が、中尾に話しかけた。
[入口とは、少し違うな。]
[どういう、意味だい?]
中尾は、流暢な英語で答えた。
[ここに、あるのは"穴"さ。]
["穴"だって?]
[そうだ。"穴"だ。こいつは、この世界ではこの場所に安定し固定してはいるが"アッチの世界"じゃランダムに場所を移動してるのさ。しかも、いつ開くのかさえ解らねぇ。つまり、コッチからアッチに行くのはできるかも知れねぇが。]
中尾は、一呼吸おいた。
[行ったが最後、戻って来れねぇ可能性が高い。だから、入口には程遠い。]
調査団達は、息を飲んだ。
[今まで、日本に来た化け物共はその"穴"に落ちてきた連中さ。俺達、日本の調査団はこれを"クロス・ホール"と名付けた。まぁ。その内、アッチの人間が落ちて来るかもな。]
[人間?原住民の事ですか?Mr.中尾。貴方は、あちらに文明があると思われているのですか?]
[何だ?思ちゃ悪いのか?]
調査団の一人が、中尾に言った。
[残念ながら、それは無いと思いますよ。我々の様な文明を持つ人類は、奇跡に近い偶然で進化し高度な文明を手に入れたんですよ。全宇宙を捜せば、同じ文明があるかも知れませんが。それこそ、数千や数億いや数兆分の1の確立でしょう。]
米国の学者は、言葉を続ける。
[まして、繋がった異世界に文明がある可能性は0に等しい]
その言葉に、中尾は笑った。
[夢が、ねぇな。そんなんじゃ、つまんねぇ人生になっちまうよ。]
中尾は、米人学者の肩を叩くとドームの中心に歩いて行った。
[人生、夢とロマンが必要だぞ。]
中尾は、片手を降って呟いた。
その日の午後、第1警戒地区と第2警戒地区の上番下番が行われた。
第1地区に、4中隊。
第2地区に、3中隊という布陣だ。




