表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/74

第24話 3姉妹

毎回、タイトルが浮かばないです。

「・・・"餓狩鬼"!」


シエラは、肩を抑え喉から絞る様に言った。


一瞬の無言が辺りを、包む。


人間、急に事件や事故に会うと頭が真っ白になる。


そうなったら、ボー然と立ち尽くすことがある。


何か起こったのか、解らなくなる状態だ。


「き、キャアアア!」


一人の女性が、悲鳴を揚げた。


その声は、瞬く間に連鎖する。


その場にいる人々は、我に返り逃げようと走り出す。


しかし、大人数であるから人混みとなり逃げられない。


会場内は、パニック状態だ。


「いかん!早く、餓狩鬼を討て!」


レオリオは、玉座から立ち上がった。


すぐさま、白狼騎士と警備の白鳳凰騎士達が動く。


しかし、人の流れで騎士達が進めない。


「くっ!そこを、退くんだ!」


バルカスが、叫だ。


だが、恐怖で混乱した人の耳には届かない。


(くそ!あそこには、妻がいるというのに!)


「シルビー!」


最早、頼れるのはシエラとハリルだけだ。


しかし、今のシエラは剣はおろか身を守る防具すら着けていない。


ハリルもまた、儀礼服の為に剣を携えていない。


「せめて、二人に剣さえあれば!」


バルカスは、何もできないことに苛立った。


そして、腰に差した剣を握り締めた。



シエラは、目の前の餓狩鬼を睨み付けた。


今の装備は、白いドレスに小量の宝石類のみ。


(・・・厳しいな。)


自虐的に、笑うしかない。


周りには、二人の姉と義理兄にエスコート役のハリル。


一番の救いは、ハリルだ。


この中で、自分と同じくらい。


いや、それ以上の実力がある。


彼と連携すれば、倒せずとも警備の騎士達ルノーが駆け付けるまで時間が稼げる。


シエラは、ハリルを横目で見た。


ハリルも、シエラを見て頷いた。


ハリルも、同じ考えらしいのはすぐに解った。


「やはり、剣は常に持つ物ですね。」


ハリルは、冗談を言った。


「まったくですね。」


それに、シエラは苦笑で答えた。


「ち、ちょっと、シエラ!貴女、何を考えてるのよ!」


そんな、シエラを見てシェリルは声をかけた。


「シェリル姉さん、僕とハリルがアイツを引き付けるよ。」

「貴女!気は確か、そんな傷を負ってアレとやりあうなんて!無謀よ!」


シェリルは、シエラの右肩を見た。


傷は、深くは無いが出血している。


お陰で、右腕を上げる動作が鈍く感じている。


「大丈夫だよ。それに、アイツの標的は僕みたいだし。ハリル、僕が引き付けるから。」

「解ってます。私は、補助に。」


ハリルが、言い終える直前。


餓狩鬼が、シエラに向け長い舌を放った。


「くっ!?」


餓狩鬼の舌を、シエラは左に跳んで避けた。


しかし、槍の様な舌は方向を左に曲げシエラを追う。


それを、前転し紙一重で避けた。


餓狩鬼は、爪を立て跳躍し襲う。


「シエラちゃん!?」


レイが、叫ぶ。


あの体勢では、爪から逃れられない。


爪が、シエラの顔を襲う。


「はっあ!」


が、ハリルが餓彼鬼に体当たりをした。


爪は、シエラに届かず仰け反った。


「ありがとう。助かったよ。」


シエラは、礼を言った。


「感謝なら、助かった後で別の形でお願いします。来ますよ!!」


忠告通り、餓狩鬼は直ぐに体勢を整えた。


以降、まさに紙一重の攻防が続く。


ハリルにサポートされ、何とか餓狩鬼の凶撃をかわす。



「はぁ、はぁ、はぁ。」


巧みに避けているが、肩の流血と着なれないドレスで余計に体力が落ちていく。


実際、時間がそれほど経っていない。


にも、関わらず額には汗をかいている。


シエラは、一秒一秒が長く感じていた。


「はぁ、はぁ、キツイな。」


つい、弱音を吐く。


姉達は、安全な距離まで離れた。


一先ず、安心だ。


しかし、餓狩鬼は獲物に休息を与えるつもりも無い。


牙を向け、再びシエラを襲う。


シエラは、瞬時にバックステップで避けようとした。


「ああ!」


シエラは、ハイヒールを引っ掛け右足首を捻って倒れた。


「シエラ!?」


直ぐ様、ハリルが駆け付ける。


「ぐはぁ!」


餓狩鬼は、シエラを直ぐに襲わず右腕を振るってハリルを吹き飛ばした。


「ハリル!?うわぁ!」


助けようとシエラは、立とうしたが着なれないドレスだ。


裾を踏みまた、倒れてしまった。


この機会を逃すはずが、無い。


餓狩鬼は、不気味に笑いシエラに近付くと右腕を振り上げた。


鋭利な凶爪が、降り落とされた。


(殺られる!?)


シエラは、両目を瞑った。


その時、暖かい温もりがシエラを包んだ。


「う、ウワアアアア!」


レイの雄叫び。


(な、何?)


シエラが、ゆっくりと目を開けた。


そこには、餓狩鬼の背中に必死で義理兄がしがみついていた。


二人の姉は、シエラを守る様に抱き締めていた。


「大丈夫。大丈夫。大丈夫よ。シエラ!」


シェリルは、目を閉じ。


まじないを言う様に呟く。


(シェリル姉さん・・・。無茶するなって、言ったクセに。)


「・・・・・。」


シルビーは、身体を震わせながら餓狩鬼を睨んでいる。


(シルビー姉さん・・・本当は恐がりなクセに。)


「う、うああああ!?」

「レイ!」


遂に、投げ出された夫の名をシェリルは叫んだ。


最早、邪魔者はいない後は獲物を喰らうのみ。


嬉しい事に、獲物と同じ匂いがする二匹がいるではないか!


餓狩鬼は、口からヨダレが垂れる。

「二人共、逃げて!」

「嫌よ!貴女を置いて逃げれる無いでしょ!」

「長女は、可愛い妹二人を守るものよ?」


餓狩鬼が、牙を三人に向けた。


その時、餓狩鬼は何かに反応し一瞬で後ろに下がった。


すると、餓狩鬼がいた場所に剣が突き刺さった。


「チィ!外したか!」


その剣を投げたのは、バルカスだった。


彼は、まだ人混みから脱してなかった。


彼は、持っていた剣を餓狩鬼に向け投げ放ったのだ。


餓狩鬼を殺せれば、御の字だったがそれでもシエラに武器を与えられた。


「シエラ君!頼む!」


バルカスは、シエラに賭けた。


「・・・・・・。」


シエラは、ゆっくりと姉達をほどくと立ち上がった。


血は、まだ止まらない。


捻った足首も、正直まだ痛い。


それでも、剣を取らずにいられなかった。


なぜなら、後ろには大切な姉妹達がいる。


「・・・シエラ。」

「・・・・・。」


シェリルとシルビーが、シエラを見た。


二人共、心配している。


「大丈夫。先は、ありがとう。」


シエラは、笑顔で言った。


シルビーは、こんな時のシエラは絶対に引かない事を知っている。


(見守るしかないわね。)


シェリルは、溜め息をついた。


彼女も、同じ気持ちだった。


「シエラ、気を付けるのよ。」

「いい?絶対に、無茶しないでよ。」


二人の姉に、シエラは頷いて答え餓狩鬼に向き直った。


深呼吸をして、シエラはハイヒールを脱いだ。


(ゴメンなさい。シルビー姉さん、シェリル姉さん!)


そして、剣を抜き自分のドレスの裾を動きやすい様に斬った。


細く綺麗な足首が、露出した。


ミニスカート。


そのぐらいの短さだ。


シエラは、右足を引きずりながら距離を詰める。


(・・・勝負は、一瞬!)


今の状態では、一回が限界だった。


シエラは、剣を構え体重を前に出した左足に集中させた。


「風の精霊よ。我が声を聞きその風を刃と成して剣に・・・宿れ!」


シエラの剣の周りに風が、宿った。


「・・・・・。」

「グルルル。」


シエラは、餓狩鬼に全神経を集中させた。


(お願い。・・・タツミ、力を貸して・・・。)


その時は、来た。


最初に動いたのは、餓狩鬼だった。


左腕を振り上げ、跳躍し渾身の力でシエラに降り下ろした。


「あああああああああ!!!!」


シエラは、それを左に避けた。


そして、力を貯めていた左足でおもいっきり地面を蹴った。


「ウッああああ!」


そのまま、餓狩鬼の真上まで跳躍したシエラは剣を降り下ろした。


風を宿した剣は、餓狩鬼を頭から胴体に至るまで切り裂いた。


切り裂いた身体は、音を立て左右に倒れた。


「アウ!」


シエラは、小さい悲鳴をあげて地面に倒れた。


「はぁー、はぁー、はぁー。」


シエラは、大の字になった。


(情けないなぁ〜。最近、体力作り怠ったからかな?でも、勝ったよ!・・・・・タツミ!)


直ぐに、シルビーとシェリルが駆け寄る。


「シエラ!」

「大丈夫?怪我は、無いの?」


二人は、シエラに怪我無いか至るところを触り確かめる。


「アハ、アハははは!く、くすぐったい!くすぐったいよ!」


一生懸命、抵抗するシエラ。


「あ、アハははは!大丈夫!僕は、大丈夫だよ。」


すると、急にシェリルは止めてうつむいた。


「・・・シェリル姉さん?」


よく見れば、シェリルは泣いている。


「バカ!何で、こんなに傷ついてるのよ!貴女は、女の子なのよ!しかも、騎士の仕事で危険な事ばっかやって!どれだけ、私やシルビー姉さん家族に・・・心配かけてんのよ!ウゥゥ。」

「・・・シェリル・・・姉さん。」


シエラも、うつむいてしまった。


シルビーは、二人を優しく自分に抱き寄せた。


まるで、子供を泣き止ます様に二人の頭を撫でた。


「・・・シエラ。そのドレスは、シェリルが徹夜で貴女の為に探したのよ。」

「・・・え?」


シエラは、頭を上げた。

「貴女が女性として、綺麗な服を着て悦んで貰いたいからよ。」


シルビーは、優しく言った。


「シェリル姉さん。」

「ヒク、ヒク、な、何よ!シエラ、貴女は女性だから人並みの女の幸せにならなくちゃいけないのよ?それが、亡くなったお母様の願いなのよ。」


シェリルは、落ち着いてきたのか言葉を続ける。


「だから、お願い。いつまでも、空想の男なんか想わないで現実の男性を見てよ。」

「シェリル。」

「何よ。シルビー姉さんだって、心配なんでしょ?」


シルビーは、困った顔になった。


シェリルが、言う空想の男は瀬川の事なのはすぐに解った。


「・・・シェリル姉さん。その話しは後にしない?」

「そうね、シェリル。今は、取り合えず難が去った事を喜ばない?」


シルビーのフォローもあって、シルビーは渋々納得した。


「シルビー!」

「シェリル!」


すると、人混みから解放されたバルカスとハリルに肩を貸して歩いて来るレイが手を振っていた。


(ああ、助かったんだぁ。)


シエラは、心から安心とした。


「助かった・・・・と、本当に思って?」


女性の声が、聴こえてきたと思った時だった。


突然、シエラ達三人の周りに地面から盛り上がった。


壁が出現したかと思うと、壁は丸くなり遂にはドームの形になった。


「な!?」

「そ、そんな!?シェリル!」

「シエラ!」


突然、現れたドームにバルカス達は中にいるシエラ達を呼んだが返答が無い。


「お主達、落ち着くのだ!」


声の主は、王 レオリオだった。


彼は会場に戻ったルノー達、白鳳凰騎士団第2隊と合流していた。


「レオリオ殿下!」


バルカス達は、膝を着き頭を下げた。


「よい、頭を上げよ。今は、中にいる三人を救う方が先決だ。」


レオリオは、ドームを睨んだ。


「先程、使いから"魔術技庁"から報告があった。」


レオリオが言う"魔術技庁"とは、オルテ国において魔法の研究機関である。


新しい魔法や魔道具開発、その他には魔物の生態の調査といった全般を行っている。


最近、第4隊のレナが地竜の竜玉石を研究していた。


「先日に、グランドラゴンの竜玉石が盗まれた。」


レオリオは、坦々と言った。


「玉石が!?」


ハリルは、驚いて言った。


魔術技庁は、ただでさえ警備が厳重だ。


しかも、竜玉石は竜を倒さねば手に入らない品物。


よって、玉石は最高度の警備で管理しているからだった。


「うむ。今回の件と、別と考えたいが・・・。」


レオリオは、嘆息し言った。


「餓狩鬼を使用するのは、"地竜教団"・・・。」


レイが、緊張しながら言った。


「そうだ。玉石を奪った・・・のもな。」

「くそ!奴等は、何がしたいんだ!」


バルカスは、苛立って床を殴った。


「・・・・"反魂の儀式"・・・奴等は、地竜を復活させるつもりかもしれん。」


レオリオの言葉に、その場にいる人間が凍り付いた。


「そ、それでは、早くあの壁を壊し妻達を救わねば!」

「バルカスよ。落ち着け。すでにあれを打ち破る為に、城壁破りを用意させている。」


レオリオは、バルカスをたしなめた。


「く!我等は、それまで待たなければいけないのか!」


口惜し様に、バルカスはドームを見た。


「ああ、シェリル。」


レイは、シェリルの無事を祈る様に両手合わせた。


ハリルは、ドームを睨んだ。


「・・・・シエラちゃん!」


ルノーは、槍を握り締め小さく呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ