表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/74

第18話 討伐

修正しました。

「はっ、ハックション!あ〜、まただ。悪寒がする〜。」


防護マスクの中で、盛大にくしゃみをした瀬川。


おかげで、中が唾だらけだ。


取って中を、拭きたい。

でも、できないのが残念だ。


(くそ。気持ちワリィ。)


今、瀬川達はウグイス森を抜け崖が多いい道を進んでいた。


「見つかりませんね。」


湯川が、諦めたように言った。


「湯川、そんな事言うなよ。」


瀬川は、すぐに注意した。


折角、浅野が生きている可能性がでてきたのに諦めたら終わりだからだ。


もっと活発に、動きたい。


が、どこからレオウルフが現れるか解らない以上下手に動けない。


警戒しながら、捜索するしかないのだ。


瀬川は、谷底や丘の上を見た。


「浅野ー!」

「浅野2士ーー!」


木元や双葉も、同じように探している。


瀬川達は、少しづつ移動して行く。


40分捜索し、15分間休憩を繰り返していく。


四人が、6回目の休憩をとった時に事態が動いた。


「双葉2曹!あれを見てください!」


木元が、指を指した。


地面に座っていた瀬川や湯川も、指差した方向を見た。


「あれは!」


そこには、キズだらけの小銃が無造作に投げ出されていた。


「俺、見てきます!」


瀬川が、走り出そうとした。


「待て!瀬川!迂闊に行くな!」


双葉は、瀬川を制止した。


「何故ですか?浅野が、いるかも知れないじゃないですか?」


瀬川は、興奮して言った。


しかし、双葉は冷静だった。


「いいか?瀬川。確かに、浅野がいるかも知れない。だが、同時に未確認生物がこの近くに潜んでいる可能性が高い。」


双葉は、瀬川を含む3人に言って聞かせた。


「あれは、どう見ても浅野が"何か"に目掛け投げつけた様に見える。」


双葉は、キズだらけの小銃を見て言った。


「・・・じゃあ、どうするんですか?」


瀬川は、今まで警戒しながら来たのでいないと思っている。


だが、双葉はあくまでいると仮定し指示を出した。


「・・・木元、湯川とバディになって後ろから警戒援護をしろ。瀬川、お前は俺と来い。」


双葉の指示に、木元は頷いて答えた。


そして、双葉と瀬川はゆっくりと小銃まで前進して行く。


前方、左右、上空を警戒しながら二人は進んでいく。


そして、二人は落ちている小銃の位置まで着いた。


周りを見回すが、浅野の姿は無い。


瀬川は、崖の下を見た。


「?・・・!?双葉2曹!」


瀬川は、双葉の肩を叩いた。


双葉は、すぐに崖の下を見た。


崖下に、ボロボロの鉄帽が転がっている。


その近くに、迷彩服を着た隊員が倒れていた。


「浅野!?」


双葉が呼んだ隊員、彼こそが浅野 健助 だった。


浅野は、ピクリとも動かない。


瀬川は、崖を降りようとした。


この斜面なら、気をつければ降りられなくもないからだ。


「待て!瀬川!」


降りようとした瀬川を、双葉が止めた。


「俺が、先に行く。お前は、俺の後に来い。」


そう言って、双葉は木元達を引き続き警戒に着かせ瀬川と崖を降りて行く。


二人は、無事に降りると浅野に近寄った。


まだ、レオウルフの姿は無い。


双葉は、すぐに浅野の脈をみた。


「浅野!しっかり、しろ!浅野!」


瀬川は、ひたすら浅野を呼ぶ。


脈はある。


外傷は、身体中にあるが致命的な傷は無さそうだった。


それに、息もある。



「うっ、うぅぅ。」


浅野は、意識を取り戻したのか薄く眼を開けた。


「「浅野!」」


生きていた。


「あ、・・・あ、あ。」

「もう、大丈夫だ。無理に、喋るな。よく、頑張ったな。」


双葉は、安心させる様に言った。


浅野は数回、うめき声を上げるとまた気を失った。


「浅野!?」

「大丈夫だ。気絶しただけだ。」


二人は、安堵のため息を着いた。


「よし、木元!湯川!LAVをここまでもってこい!」

「「了解しました!」」


木元達は、走ってもといた場所に行った。


「LAVが来るまで、俺とお前で浅野を上の道路まで運ぶぞ。」


双葉は、浅野を担ぎ上げ瀬川は後ろから双葉をサポートする形になった。


「双葉2曹。これから、どうするんですか?」


瀬川は、双葉に尋ねた。


「そうだな、浅野をまず連隊CP(指揮所)まで運ぶぞ。そのあとは、衛生に任せる。」


双葉は、防護マスクの中で額に大汗をかきながら言った。


「浅野、良くなるといいですね。」


瀬川も、同じ状態になりながら言った。


「そうだな。・・・ん?」

「???」


双葉が、答えた時。


二人の後ろから、低い唸り声がした。


それは、まるで地獄から聞こえてくるようで不気味だった。


「双葉・・・2曹。」

「・・・、解っとる。」


二人は、おそるおそる後ろを振り返ってみた。


そこには、瀬川達が見た死骸よりも一回りも大きいレオウルフだった。


明らかに、二人に向けて殺意を放っている。


「くそ!こんな、タイミングでか!」


双葉は、不運を呪う様に言った。


例え、このまま登っていっても着くまで襲わない保証は無い。


浅野を瀬川に託し、自分が囮になるしかない。


双葉が、浅野を預けようとした時。


先に、瀬川が動いた。


小銃の切り換えレバーを、単発にし瀬川は4発射撃した。


「双葉2曹!囮になります!そのうちに、速く!」


そう言い残し瀬川は、斜面を斜めに走り出した。


「バカ野郎!戻って来い!」


双葉が、怒鳴った。


しかし、放たれた4発をかわしたレオウルフは瀬川を標的に絞って追い始めた。


「くそ!瀬川ー!絶対に、死ぬなよ!」


双葉は、浅野を背負い直すと残りの斜面をかけ登って行く。


瀬川は、双葉達と十分に距離を取ると小銃を構えレオウルフに標準した。


「落ち着け!落ち着けよー。」


瀬川は、自分に言い聞かせるように呟いた。


引き金を3回引いて、発砲した。


が、レオウルフはそれを意図も簡単に避けた。


それでも、瀬川はレオウルフに向け射撃する。


しかし、一発も身体に当たらない。


それどころか、距離がどんどん縮まって行く。


「何なんだよ!?コイツ!」


瀬川は、どんどん焦りだした。


遂に、弾が切れてしまった。


直ぐに、弾倉を交換しようとした。


しかし―


「くそっ!」


小銃に装着しようとした瞬間、焦りからか、弾倉が手から落ちてしまった。


瀬川は、すぐに方膝を付き落ちた弾倉を拾おうとした。




目の前の敵が、隙を見せた。


産まれたばかりの子達の為に、狩りを教えるつもりで獲物を与えた。


最初は、良かった。


子ども達は、獲物を順調に追い詰めていった。


上手く、やってくれると思った。


だが、追い詰めた獲物が牙を向けたのだ。


奴は、今まで見たことがない"武器"を使ったのだ。


剣や槍それに弓矢などは、産まれたばかりの我が子でも簡単に避けられる。


しかし、"それ"、は違った。


一瞬にして、それは子の命を奪い去った。


それだけでは、無い。


片割れの子どもが、驚いて逃げ去ってしまった。


殺してやる、と近寄った。


すると、獲物は武器を投げつけた後に崖から足を踏み外し落ちていった。


あれから、自分は逃げ去った我が子を探していた。


それこそ、何も食べず眠らずに。


やっと、見つけたと思ったが最後の我が子もすでに殺されていた。


今、目の前にいるのは愛する我が子を殺した敵の同胞。


あの武器は、危険だ。


いつまでも、避けきれない。





レオウルフは、憎悪に満ちた眼で瀬川の隙を見逃さなかった。


レオウルフは、一気に距離を詰め瀬川に体当たりした。


もし、当たれば乗用車と激突したような衝撃だろう。


(くそ!、退院したばっかりなのに!?)


瀬川は、レオウルフに体当たりされる寸前。


瀬川の身体の周りを風が包んだ。


まるで、風が瀬川を守るような感じだ。


この感じ、前にもあった。


そう、グランドラゴンに追われバイクから転倒した時だ。


「ぐわぁああ!!!!」

それでも、瀬川は2メートルくらい跳ばされた。


瀬川は、地面に倒れ斜面を転がっていった。


崖底まで転がったが、身体にはかすり傷しかなかった。


「ぐぅ、がハァ。ハァ、ハァ。何だった・・・んだ?」


瀬川は、ふっとあの外人 ラムを思い出した。


だが、レオウルフは瞬時に瀬川に襲い掛かった。


「うわぁ!?」


レオウルフは、瀬川を右足で押さえ付けた。


詰み、だった。


「くっ!チクショ!こんな、ところで!」


しかし、瀬川はそれでも足掻く。


(あいつに、会うまで、死んでたまるか!)


だが、鋭い牙が瀬川の命を刈り取ろうと迫って来る。


景色が、スローモーションのようにゆっくりと瀬川は感じだ。


その時、レオウルフが突然に横に倒れた。


よく見れば、左目に矢が刺さってもがき苦しんでいる。


「な?ど、どこから?」


瀬川は、矢が飛んできた方向を見た。


「あっ!ラム?」


小高い山で、謎の外人のラムが弓を持って立っていた。


ラムは、瀬川の無事を確認する。


そして、後ろに担いでいる野球バットのバックから矢を取り出した。


「ま、まさか、あんな所から!?」


瀬川は、信じられ無い眼で見た。


ここから、ラムまで軽く300メートルは離れている。


いくら、弓道の達人でも流石に狙ってレオウルフの当てるは不可能だろう。


ラムは、弓を構え矢を放った。


矢は、放物線を描き苦しんでいるレオウルフの横腹に命中した。


『ウテ!ハヤク!』


呆然と見ていた瀬川の耳に、ラムの声がまるで横にいるかのように聞こえた。


「えっ?はぁ?」


瀬川は、周りを見た。


別に、ラムは無線機もまして拡声器も使っている訳でも無かった。


『ハヤク!ブキヲ取って![何してんのよ!死にたいの!]』


後半、ラムの言葉が解らなかったが瀬川は小銃を取り弾倉を込めた。


直ぐに、弾こまめをした。


そのまま、レオウルフに向け無我夢中に撃ちまくる。


「う、うおおおおおおおおお!」


放たれた弾丸は、全てレオウルフに吸い込まれるように当たっていく。


レオウルフは、血を垂れ流し倒れた。


「うおおおおおお!ハァ、ハァ、ハァ。」


瀬川は、弾丸が切れるまで引き金を引いていた。


「ハァ、ハァ、ハァ、や・・たか?」


動かなくなったレオウルフを見て、瀬川は手から小銃を離した。


そのまま、量膝を付いた時には全身に力が入ら無かった。


ラムが、右手を大きく振っている。


それに対し、瀬川は力なく右手を上げて答えた。


『[これで、タツミに"貸し"が2つね!]』


ラムが意地悪そうに、解らない言葉で何か言った。


最早、耳元で聴こえる言葉に反応する気力は瀬川には無かった。


「瀬川ーー!」


ぐったりとしている、瀬川に遠くから双葉の声がした。


双葉は、木元達3小隊や2・対戦小隊の面々と合流していた。


「いました!瀬川です!」

「無事か!?」

「スッゲー、瀬川士長!未確認、倒してるじゃないですか!?」


双葉達は、瀬川に近寄った。


ぐったりとしている瀬川を、湯川と木元が支えて立たせた。


「たく!バカ野郎が!無茶しやがって!」


双葉が、瀬川に怒鳴った。


「ハァ、ハァ、すい・・・ません。」


瀬川は、そう言って眼だけをラムのいる方向に向けた。


だが、ラムはいなかった。


「ん?瀬川、コイツに刺さってるのは・・・・矢か?」


双葉は、レオウルフの亡骸に刺さっている2本の矢を見た。


「瀬川、誰かいたのか?」


双葉は、瀬川に聴いた。


「その・・・"例の謎の外人"さんが、助けてくれました。」


瀬川は、こう答えるしか無かった。


「はあ?」


その場にいる全員が、瀬川の答えに首を傾げた。





こうして、第3未確認生物討伐任務を4中隊が達成した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ