表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/74

第15話 ドレス

姉との激論(ほとんどがシェリルの一方的にな攻勢だった。)が終わり、夕食になっていた。


メイドに、注がれたワインを一口飲み父 マーベラスは口を開いた。


「シエラ、お前もそろそろ婚約者を見つけなければならないな。」


それを、聞いた瞬間シエラは喉に食べ物が詰まった。


「し、シエラお嬢様!大丈夫ですか!?」


後ろに控えていたメイドが、あわてて水を注いだ。


それを、シエラは一気に飲み干した。


「ゲホォ、ゲホォ!ち・・・父上、い・いきなり何を!?」

「何を、動揺してるの?いきなり、じゃあないわ。」


シルビーが、口を拭きながら言った。


「そうよ!シルビー姉さんの言う通りよ!だいたい、貴女もう、20歳なのよ!普通なら、婚約しているのが当たり前なのよ!」


シェリルも、参加しだした。


ちなみに、今のシエラの格好はスカート姿だった。


「明日、王宮でお前の功績を称え舞踏会が行われる。そこで、オリベル・ド・ハリル侯爵に付き人を頼んでいる。」


父の言葉に、唖然としてしまった。


(そんな、勝手に!)


シエラは、反論しようとした。


「オリベル!凄いじゃない!」


シェリルに、邪魔されてしまった。


オリベル・ド・ハリル侯爵とは、歳は25歳。


ハリル家の次男なので、家督は継げづオルテ王国の武官になった。


そこで、彼は実力を発揮した。


開かれた剣術大会では、20から24歳まで連続優勝。


また、どんな困難な任務にでも少数で達成してきた。


まさに、オルテの英雄である。


それだけに、狙っている女性は星の数だけいる。


そんな、彼がシエラの付き人になるのだ。


女性達が聞いたら、嫉妬に狂うだろう。


しかし、当の本人のシエラは不満な顔だった。


「何よ?何が不満なの、?」


シェリルは、妹の表情を見て問いただした。


「ぼくは・・・」


シェリルが、睨む。


「・・・わ、ワタシは、その・・・。」

「解った!もう、思い人がいるのね!」


シルビーが、図星を突いた。


「いるのか!?誰だ?私は、その男が平民でも構わないぞ!」


マーベラスは、歓喜した。


彼は、階級だの身分など別に気にしない。


娘が選んだならば、文句など無い。


それに、亡き妻との約束もある。


相手が、貴族なら安心するし平民なら立派に育てれば良い。


二人の姉も、自分で選んだ。


しかし、シエラは今だに婚約者どころか気になる異性の話しは無い。


心配だったのだ。


が、シルビーの次の一言で落胆した。


「タツミさん・・・でしょ?昔、貴女が私たちによく話してくれた夢の中の素敵な人。」


シルビーは、微笑んで言った。


(夢の中だと!)


「ね、姉さん!そんな事、無いわよ!いくら、この子でも流石に夢の中なんて。」


シェリルが、焦って言った。


「シエラよ。明日は、絶対にオリベルと行くのだ。いつまでも、妄想に囚われるな。」


シエラは、父の言葉を聞くと席を立った。


「・・・・大丈夫ですよ。もう、そんな歳ではありませんから。今日は、少し疲れました。部屋に戻ります。」

「シエラ!?」


シルビーは、シエラを呼び止めようとした。


シエラは、廊下に出て部屋に向かった。


足は、徐々に速くなる。


部屋に到着し、すぐにドアを閉めた。



「・・・タツミ。」


シエラは、ベットに入り首に掛けていたラケットを取り出し開けた。


ラケットの中には、地竜から出た鉛が入れられていた。


これだけが、タツミの存在の証。


父と姉の反応に、シエラは傷付いた。


責める気も、怒る気も無い。


当たり前の反応だった。

だが、それを見るとやっぱり辛い。


シエラは、鉛を出して両手で握り締めた。


(早く、タツミに会いたい。)


シエラは、眼を閉じた。


ドアから、ノックの音が聴こえた。


「シエラ?起きてる?」


シルビーだった。


彼女は、退出したシエラを心配して来たのだ。


「さっきは、ゴメンなさい。傷付くとは、思わなかったの。」


シルビーのせいじゃない。


だが、今は誰とも話したくなかった。


「シエラ、あのね。私は、信じてるわ。セガワ タツミを貴女の恋人を。」


意外だった。


シルビーが坦々と語りだす。


「根拠は、無いけれど。不思議に、貴女が話していたのを信じられるの。」


シルビーは、落ち着いた口調だった。


「私も、セガワさんに会いたいわ。・・・シエラ、また今度セガワさんの事を話して。」


「・・・・うん。」


シエラは、うれしくなり小さく答えた。


「絶対よ。約束。だって、いつかシェリルと私の義弟になるんですもの。だから、もっと知りたいわ!」


シルビーは、言い終わるとおやすみなさいと言って部屋に戻って行った。


そして、部屋はまた静寂に包まれた。







翌日、シエラは朝早くから庭園で剣術の稽古に励んでいた。


剣を降るたび、風を切る音が聞こえる。


しかし、どうもきれがない。


「・・・・ふぅ。・・・タツミの・・・バカ。」


昨夜、シエラはタツミと会えなかった。


この場合、大抵はどちらかが徹夜して起きているからだ。


そうゆう時は、前もって言う。


暗黙の了解、というやつだ。


が、今回は報告無しだった。


それが、シエラを苛立たせる原因だった。


「徹夜するならするて、前もって言ってよ!」


剣を力強く、振った。


たぶん、今まで一番の速さだろう。




「はぁくしょん!あ〜。」


瀬川は、鼻水を垂らしくしゃみをした。


「風邪か?」

「いえ、双葉2曹。大丈夫です。」


何故か、悪寒がした。


瀬川は、鼻水を拭き再び仮眠に入った。


(やっぱ、怒てんのか?シエラの奴?)




「ふぅぅ。」


シエラは、剣を鞘に納めた。


そこに、大きい鞄を持った一人の男性が歩み寄って来た。


「やぁ、シエラ。朝から精がでるね。」


男性は、シエラに話し掛けた。


「あっ!カシュウ先生!お久し振りです!」


シエラは、大きい声でカシュウと呼んだ男性に近寄った。


「ああ。久しぶりだね。」

カシュウは、シエラの頭を撫でた。


「先生。もう、子どもじゃ無いよー。」


頬を膨らませて、言った。


「ははははは、すまないね。ところで、マーベラスさんはいるかい?」

「はい。今は、書斎で仕事をしてる筈です。」


シエラは、笑顔で答えた。

カシュウは、白髪混じりの髪をかいた。


「まったく。今日は、健康診断だと言っているのに。」


カシュウは、三十代前半でたくましい体格をしている。


昔は、従軍医師補佐をしていたそうだ。


今は、アースで町医者をしている。


幼い頃のシエラが、病気になった時カシュウが治療をした。


それが、きっかけで以来ローズ家と親交を深めている。


「すいません。先生。」


シエラが、父の変わりに謝った。


「シエラが、頭を下げる事は無いよ。」


そう言うと、カシュウは荷物を持ち屋敷に向かって歩き出した。


「先生、その荷物はぼくが持つよ。」


「大丈夫だよ。これぐらい。」


そして、カシュウは屋敷に歩いて行った。


「シエラ!こんな、所にいたのね!」


カシュウと入れ替わりに、シェリルが怒鳴りながら来た。


「お、おはよー。シェリル姉さん。」


シエラは、引きった笑顔で言った。


「な〜にが、おはよー。よ!貴女!今日が、何があるかわかってるの!」


積めよって、睨んだ。


シエラは、今まさに蛇に睨まれたカエル状態だ。


「た、たしか〜、ぼ。」


悪鬼の如く、睨む姉。


「・・・わたしが主賓の、舞踏会デス。」


直立不動で、答えた。


「だったら!来なさい!まったく、先ずは汗を流さなくちゃ。」


シェリルは、シエラの腕を掴み連行した。


その後、シエラを沐浴した後にシルビーの部屋に連れていかれた。


「ね、姉さん。こ、これは?」


シエラの目の前には、色とりどりのドレスの山があった。



「あら、遅かったわね。二人供。」


白のドレスを両手で持ったシルビーが、笑顔で迎えた。


「ゴメンなさい。シルビー姉さん。この子たったら、庭で剣術してたのよ。」

「ふふ、シエラらしいわね。ところで、どう?このドレス。なかなか、似合いそうだと思うんだけど・・・。」

「うぅ〜ん、ちょっと派手過ぎない?」

「そうかしら?」


シエラを、無視して二人の姉は話しだした。


「あの〜、姉さん達。今夜、着ていく服ならぼく・・・。わたし、邪魔じゃないかな?」


シエラは、ドレスの話しに夢中な二人に言った。


「何よ。違うわよ。私達じゃなく、貴女が着るドレスなのよ。」


「ボクが!」


シエラは、シェリルの言葉に驚いた。


「い、いいよ!今夜、着ていく服ならあるから!」


シエラ、両手を振り言った。


「それって、騎士の制服でしょ?」


シルビーが、微笑みながら言った。


「うん。」


頷く、シエラ。


「何を、言ってんの!そんなの、着させるわけ無いじゃない!いい?今夜、着ていくのはドレス!しかも、とびっきり綺麗なドレスよ!」


シェリルが、腰に右手を当てシエラに指を指し言った


「え〜、ドレスはいいよ!落ち着かないよ!」

「落ち着きなさい!いい、綺麗になってハリル侯爵をものにしなさい!」


シェリルは、強気に言った。


「ものにって。わたしは、そんなつもりは。」


シエラは、ため息をつきながら言った。


(僕には、タツミがいるのに。)


しかし、姉に言った所で更に怒るに決まっている。


その後、姉に挟まれ否応無くされるがままになってしまった。


太陽が、沈みかけここシルビーの部屋には鏡を見ているシエラがいた。


いつもの男装ではない。

白をメインとしたドレスを着て薄く化粧をしている。


シエラにとって、初めて化粧だった。


「まぁー、綺麗になったわよ!シエラ!」

「どう?綺麗になった自分は?」


シェリルは、まるで自分の事に様に聞いた。


「・・・これが、ぼく?」


シエラは、改めて自分の姿を見た。


アイラインを引き、ピンクの口紅を着けている。


両耳には、赤い宝石のイヤリングに羽根をモチーフにしたネックレス。


まるで、自分じゃないようだ。


なんだか、照れくさい。

(この姿を、タツミに見せたいな。)


「不思議な感じが、するよ。」


シエラの言葉を聞き、二人の姉は優しく微笑んだ。


「失礼します。」


そこに、執事のレクトがノックをして入って来た。


「ハリル侯爵が、来られました。」


レクトは、一礼し言った。


「解ったわ。いい?ハリル侯爵に失礼が無いようにね?」

「姉さん達は、一緒に来ないの?」

「私と、シェリルは後で夫と行くわ。」


シルビーは、頭を撫でながら言った。


「シエラ。舞踏会は、女の戦よ。それを、肝に命じて行きなさい!」


シェリルは、シエラの肩に手を置き言った。


「戦・・・解ったよ!シェリル姉さん!」


シエラは、気合いを入れ剣を腰に着けた。


「・・・。待ちなさい。あんたって子は!剣は、置いて行きなさい!どこの世に、ドレス着て剣を差して舞踏会に行く女がいんのよ!?」

「えっ?でも、騎士の誇りだし。」


シェリルは、妹を羽交い締めにして剣を取り上げた。



「ミス ローズ、お初にお見栄かかります。」


剣を取り上げられ玄関に出たシエラを、金髪の男性が迎えた。


「ハリル侯爵、御待たせして申し訳ません。」


シエラは、頭を下げ言った。


「いえ、お気遣いなく。それに、私の事はオリベルと呼んでください。」


男性 オリベルは、人懐こい笑みを浮かべて言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ