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第12話 特殊警戒地域

翌朝、瀬川はアンビ(自衛隊のOD色の救急車)に乗り駐屯地に戻っていた。


退院報告の為、勤務隊舎3階の4中隊幹部室に来た。


「失礼します。小隊長、退院しました。」


瀬川は、目の前の男性に話し掛けた。


男性は、襟に3尉の階級章を着けている。


「そうか、何か後遺症は?」


男性は、報告を聞いて訊ねた。


「いいえ、ありません。」


瀬川は、質問に答えた。


「あの〜、橋本3尉。俺、明日から代休を取りたいんですが。」

「あ〜、無理だな。」


「何でですか!?ちょっと、小隊長!」


橋本と呼ばれた男性は、瀬川達の第3小隊小隊長である。


「ほら、お前て化け物トカゲに追い回されただろ?それで、上からカウンセリングを受けさせるように言われてんだよ。」


橋本は、珈琲を飲みながら説明を続けた。


「隊員の心のケアも、大事だからな。まぁ、とにかくだ。師団から、専門のカウンセラーが来てるから今日から3日間ちゃんと受けろよ。」

「そ、そんな〜。」


瀬川の落胆した肩を、橋本はドンマイと肩を叩いた。




演習場内


四方を、小高い丘に囲まれた場所。


そこは、"ロータリー下峠"と呼称されている。


その下峠に、さまざまな機械類が設置されていた。


周りには、数名の自衛官と共に六人の学者がいた。


「フゥム、やはり。ここから、現れたらしいな。」


しわくちゃの髪をかきむしりながら中尾は、ノートパソコンを見て呟いた。


中尾は、今回の事件に関し中尾の"別世界交差説"が浮き出てきた。


当然と言えば、当然だ。

よって政府が、正式に調査を依頼した。


これに、野党は馬鹿らし事に税金を使うなと反対した。


が、原因究明を急かす世間に政府は中尾の説に眼をつけた。


少しでも、原因を掴み対処する為に。


「失礼、大分県警の難波だ。」

「同じく、大柴っす。」 「お疲れ様です。どうぞ。」


松葉杖をつき、難波が大柴と共に警備に着いている自衛官に警察手帳を見せて調査現場に入ってきた。


「お〜、来たか。難波刑事。」

「ご無沙汰してます。教授。」


中尾は、ノートパソコンから眼を離し難波達の姿を見た。


「ほぉ〜、名誉の負傷ってやつか?」

「お恥ずかしい限りです。」


難波と大柴は、この前の未確認生物との戦闘で難波は右足を骨折。


大柴は、包帯だらけになっていた。


ちなみに、難波は無理矢理退院していた。


「それで、なにか解りましたか?」

「ああ、やはりあの生物達はこの場所からこっちらの世界に来たみたいだな。」


中尾が、指差した方向には"何かの円"があった。


よく見れば、円を中心に周りがまるで弾けたみたい草木が倒れていた。


「うわ!?それじゃあ、あそこから別の世界からあの化け物が来たてって事すっか?」


大柴は、円を見て言った。


「そうだ。」


中尾は、またノートパソコンを操作しだした。


「うへぇ〜。まさか、こんな所に異世界の入口があるなんて。」

「おい、若造。それは、違うぞ。」


大柴の発言を中尾は、否定した。


「これは、入口ではなく言わば"穴"だ。」

「あ、穴?」


中尾は、説明しだした。


「いいか、この世界ともう1つの世界はそれぞれ微妙に動いている。」


中尾は、両手を握りしめゆっくりと左右に動かし始めた。


「しかし、この2つの世界は本来なら一定の距離を保ち決して交わらない。」


「ということは、今回の事件は世界同士がクロス・・・・。つまり、交差してしまったから・・・・ですか?」


難波は、右手を顎に当てて言った。


「そう言う事だ。これは、異常だ。」


大柴は、異世界から来た化け物でも十分に異常だと思った。


「これは、推測だが"あちらの世界"がおかしくなったんだろう。」

「どうして、そう言われるのですか?」


中尾は、難波を見た。


「それはな、"二回連続"この場所だからだ。」


中尾は、ニヤリと笑い言った。


「こっちらが、おかしければ穴はランダムに開く。だが、二回も実際に開いたのはこの場所だけだ。」

「偶然じゃあないんスッか?」


大柴の答えに、中尾は首を振り否定した。


「偶然なんぞ、有り得ん。2度目は、1度目の数ミリの感覚で開いたんだ。ということは、3度目がこの場所で起きたら確証が持てる。そうなれば、狂っているのは"あちら"だ!」


中尾は、更に言う。


「あちこちは、いつ・どこで穴が開くかわからないだろうな。だが、こちらの対処は、簡単だ。この場所さえ、監視すればいい。」


中尾さらに、興奮して言った。


「わしはな、この現象を世界が交差する"クロス ワールド"と改めて銘々するぞ!」


中尾が宣言した直後、計器類が異常を知らせるアラームが鳴った。


そして、風が突然に円の中心に吹き込んでで来た。


「なぁ!?ま、まさか!」

「さ、3度目だ!?これで、確証が持ってたぞ!」


歓喜する中尾を、難波達が無理矢理引っ張る。


その場が、一瞬光り包まれた。


光りの中から現れたのは、体長2メートルはある白いオオカミだった。


「ま、また、化け物だ!?」


大柴が、叫んだと同時に警備の自衛官達が小銃を発疱した。


「は、早く本部に連絡するんだ!」


難波は、その場の長の自衛官に駆け寄り言った。


「わ・・解っている!」


自衛官は、すぐに無線機により連絡した。


「くそ!あいつを、絶対に市街に入れるな!」


難波は、中尾達を連れ自衛官の護衛で安全な場所へと移動し始めた。





駐屯地


瀬川は、カウンセリングを受けていた。


「・・・それじゃ。最近、何か夢とか見てないかな?」


カウセラーが、マジマジと瀬川を見ながら言った。


「ゆ、夢、ですか・・・!?」

「そう、夢だよ。悪夢とか、見てないかい?」

(夢なら、昔から見てるだけどなぁ。)


瀬川は、困った。


まさか、夢で幼なじみがいるとか。


その幼なじみと今、付き合ってます。


など、言ってしまったら即再入院されかねない。


しかも、精神系の。


「ん?何か、有るのかな?」

「え?いや!」


焦る瀬川を見て、カウセラーは疑い出した。


(ここで、無いって言えば良いんだけどなぁ〜。)


シエラを裏切ってしまう様で、嫌な感じがしてしまう。


突然、スピーカーから第1種がかっかた。


(お!ラッキー!)

「失礼します!自分、行かないといけないんで!」

「あっ!?瀬川君!」


瀬川は、静止を振り切り慌てて小隊部屋に駆け込んでいた。


「現在、未確認生物が演習場内が潜伏している。」


小隊長の橋本が、現状を説明する。


「今、16連隊と40連隊が演習場を囲む為に移動中である。それまで、県警が周りを警戒に当たっている。」


橋本は、地図を広げた。


「我が、連隊は場内に入り捜索。見つけしだい、これを射殺する。相手は、1体だ。前回より、容易な筈だ。」


橋本の、説明が終わると同時に瀬川達は武器を搬出し連隊の全中隊が演習場へ向け出撃した。




この日より、十文字演習場は"特殊警戒地域"へと名を変えた。


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