第10話 凱旋と確信
ここは、結構 悩みました。
どう書けば良いだろと。
正直、タイトルを考えのは苦手ですね。
あと、名前とか。
例えば、シエラの世界を何て名前を着けようとか。
赤いマントをなびかせクルーズは、暗い地下への階段を降りていく。
ここは、秘密の入口だ。
階段は、赤竜教会に繋がっている。
しばらく、降りていくと古い扉に行き当たった。
その扉には、二人の男性がいた。
どちらも、平民が着る服を着けている。
「・・・・・。天が、紅に染まる時。」
クルーズが、男性の一人に話しかけた。
「我が、御霊もまた紅に染まる。」
男性は、慣れたように言った。
男達は、会釈し扉を開けた。
邪教と言われる全ての竜教は、王国の騎士団問わず大陸全土から狙われている。
しかし、赤竜教は四面楚歌の王国の地下に構えっている。
灯台もと暗し。
まさか、自分達の下に竜教会があるとは思わない。
それに、ここなら王国の情報がすぐに手にはいる。
一見、洞窟の様な場所だったが。
洞窟内の壁には、赤い布が掛かっており。
天井には、蝋燭に照らされ余計に空間が紅く見える。
赤い絨毯を進み、クルーズは更に奥へ行く。
暫く歩くと、開けた場所に出た。
目の前には、この場所には似つかわしくない豪華な燭台と竜のオブジェがあった。
「クルーズ!戻ったか!」
オブジェの前で、赤い法衣を着た老人が腕を広げ出迎えた。
「はい。只今、戻りました。」
クルーズは、膝を付き頭を下げ言った。
「おぉ〜。クルーズ、頭を上げなさい。」
老人は、両手でクルーズの肩を持ち立たせた。
「それで、地竜はどうなったのだ?」
「はい。結果から言えば成功しました。」
「おお!帰ってこれたのだな!」
老人は、報告を聞くと歓喜の声で言った。
「・・・しかし、あちらの世界から帰って来た地竜は死にかけでした。そこを、オルテの騎士団がグランドラゴンにとどめを刺しました。」
「なんと!?地竜がか?」
クルーズは、言葉を続ける。
「そうです。あちらには、竜をも凌ぐ存在がいるようです。・・・我が、神を送るには危険かと。」
老人は、クルーズの話しを聞き口を開いた。
「・・・そうか。我が神を新世界に降臨させ、その御力で理想郷を築く計画は中止か。」
老人は、残念そうに言った。
「・・・しかし、それならば違う用途で使えば良いか。」
「用途とは?」
老人の発言に、クルーズは聞いた。
「邪魔な者を、送ればいい。他教の竜や・・・人をな。」
老人の声は、冷たかった。
地竜より、強い化け物がいる世界に人が生きていける筈が無い。
そう言いながら、老人は祈りの部屋へと歩いて行った。
「クルーズ殿、ご苦労様ですたね。」
クルーズの背後から、男性が話しかけた。
「・・・、貴様か。」
振り返るとそこには、金髪の美しい男性がいた。
しかも、男性の耳は長く尖っている。
「連れないですね。折角、挨拶に来たのに。」
「ふん。貴様の様な、エルフと親しくなった覚えなど無い。」
エルフの男性は、薄く笑った。
「貴様は、ただ私に"穴"の情報だけを教えればいいだけだ。バーガント、次は何処に出現する?」
バーガントと呼ばれたエルフは、わざとらしく残念そうな顔をした。
「残念ですが、アレは世界同士が交差する際の自然的な現象。風の精霊が、語り掛けて来なければ解りません。」
バーガントは、手を額に当てて言った。
「そうそう、地竜を倒したフォーグスの隊長。今ごろ、英雄扱いですよ。」
バーガントは、話を切り換えた。
「この世界で、初めて竜を倒したからしょうがないでしょうが・・・。」
クルーズは、下らなそうに聞いている。
「どうやら、彼女・・・地竜教の残党が例の儀式の為に狙っているようですよ。」
「ほう。それは、面白そうだな。確か、地竜教は王女も狙っているな。」
クルーズは、興味が出てきた。
「どうでしょうか?先程の、教祖様の提案・・・試してみませんか?」
「・・・いや、試すのは彼女では無く彼女と親しい王女だ。」
クルーズは、冷徹に笑い言った。
「・・・おや?また、近いうちにあの現象が起きるそうですね。」
バーガントは、両手を耳にかざし精霊の声を聞いた。
「ちょうどいい。さっそく、試すか。」
クルーズは、出口の方に歩きながら言った。
その口調は、まるで悪戯を考えた子どものようだった。
「・・・ふん。全く、趣味の悪い人間だ。」
バーガントは、呟くとクルーズの後を追った。
シエラ達、第4隊は連行という名目でオルテ王国へと帰還している。
が、連行というより歓迎もしくは英雄の凱旋の様な光景が広がっていた。
紙吹雪が舞い、人々は一目でも英雄を観ようと集まっている。
「おお!帰って来たぞ!」
「竜伐の騎士達だ!」
「聖女様だ!"シェラジークの聖女"万歳!」
「竜伐の女神の聖女!万歳!」
「キャー!シエラ様ー!」
第1隊と3隊に連行された4隊の騎士達の姿を見るなり民達は歓声をあげた。
「シエラ様−!素敵!」
「こちらを、向いて下さい!」
「シエラ御姉様ー!」
特に、シエラの姿を見た女性達の多くは恋する目で見つめて言った。
それに、シエラは苦笑いで手を振る。
シエラは、確かにモテるのだがその多くは女性である。
平民、貴族の御令嬢問わずシエラに想いを寄せている。
日頃から男装し、端正な顔付きだ。
しかも、強い。
シエラは、溜め息をついた。
「こりゃ、隊長にまた恋文が増えるわね。」
「くぅー!同じ女としてモテる隊長がうらやましいわ!」
「バーカ。同性にモテても、しょうがないだろうが。たっく、代わってほしいのはコッチだよ。」
男性騎士の言葉に、確かになと相づちする同僚騎士。
そんな、騎士達の会話をシエラは聞いていた。
(他人事だと思ってと好き勝手に言って。後で、みてろよ。)
と思いっつ、歓声に手を振り答えていた。
「全く、なんですの?この状況は?」
「ボクに、聞かれても解んないよ。」
「黙りなさい!別に、貴女に聞いていませんわ!」
レイナは、ウンザリしながら言った。
地竜を倒し、シエラ達は1日爆睡した次の日にレイナによる事情聴取を受けた。
つまり、エターロに二日間も滞在したのだ。
そのせいで、地竜 グランドラゴン討伐の話しは王国全土に広がっていた。
「わたくしは、命令違反者を連行しているのにこれじゃまるで護衛じゃない!」
レイナは、不満を呟きながら手綱を握りしめた。
「だいたい、地竜は1隊と3隊で・・・。」
「・・・レイナ。民衆が見てるよ。」
シエラに指摘され、レイナは咳払いをして気持ちを入れ換えた。
「解っていますわ!」
「そう、それならいいけど。そう言えば、アークは?」
「彼なら、昨日の日に団長に報告する為に王国に戻ってますわ。」
それを聞いたシエラは、少し不安になりうつむいた。
「・・・僕、どうなちゃうんだろ?」
「さあ?知りませんわ。」
「まぁ、どちらにせよ。すべての責任は、僕だけにあるから絶対に部下達には負わせない!」
バチスやレナ達には、罰を受けさせ無い為ならどんな罰だろうと受ける覚悟がある。
「・・・。あ・安心なさい。ど・どうせ、悪くて1〜2月間ぐらいの停止処分ですわよ。」
それを見たレイナは、慣れない様に恥ずかしながら励ました。
「・・・レイナ。」
「な・・なんですの!ほら、そんな下らない事で暗い顔にならないでくださる!」
「・・・ありがとう。」
レイナの励ましに、シエラは嬉しくなり感謝の言葉を言った。
「べ・別に、好敵手が暗いとわたくしの調子が狂ってしまうだけですわ!」
もう話しかけるな。
と言うように、レイナはそっぽを向いた。
それを見て、シエラはおかしくて笑った。
落ち込んでいる時や困っている時には、励ましたり手伝ってくれる。
レイナは、シエラを好敵手と言うがシエラは彼女を大切な幼馴染みの親友と思っている。
タツミが言うには、"ツンデレ"と呼ぶらしい。
そんな事を考えていると、一行は城に到着していた。
「やぁ、二人とも無事に着いたな。中で、団長が待ってる。」
城門の前でアークが、二人を出迎えた。
そして、騎士達を鍛練場に待機させバチスと団長室に向かった。
「シエラ隊長!ご無事で何よりです!」
廻廊に差し掛かった時、前からレナが抱き付いてきた。
「私、すっごく心配してたんですよ!隊長の身に何かあったらと思うと眠れなっかたんですよ!」
レナは疲れた表情をして眼には、隈ができていた。
「レナ。大丈夫?」
「はい、大丈夫・・・で・す。」
レナは、シエラの無事な姿を見て安心した。
すると、て一気に緊張の糸が解けその場に座りこんだ。
「レナ!?」
「レナ殿!?」
シエラは、座りこんだレナを見ると寝息をたて寝ていた。
「まったく、バチス。レナを頼むよ。」
「解りました。さぁ、レナ殿。しっかりして下さい。」
バチスは、レナを抱え兵舎に向かった。
そして、シエラは団長室の扉の前に来た。
アークが、扉を3回ノックした。
「白鳳凰騎士団第1隊騎士長アーク リング。」
「同じく、第3隊騎士長レイナ カーチス。第4隊騎士長シエラ ローズを連行してきました。」
扉を開け、アークに続きシエラその後ろにレイナが部屋に入った。
「二人とも、ご苦労。」
椅子に座りながらクロエは、報告書を読んで言った。
「・・・さて、シエラ。今回の件についてだが・・。」
クロエは、書類を読みながらシエラに来た手紙の内容を言い始めた。。
「シエラ。まず、国王から地竜討伐の功績により勲章を授けられる。第4隊の騎士達もまな。」
「え?」
シエラは、予想していなかった。
「そして、各種族からは感謝状に・・・ほぅ。カルラ教の教王からは、褒美が来ているな。」
シエラは、複雑な気分になった。
確かに、地竜を倒したのは自分達だ。
だか、自分達の前にタツミ達が地竜に致命傷を負わせていたお陰である。。
「・・・団長。地竜を倒せたのは。」
「シエラ、上はあくまでもこの功績は君にあると判断している。」
シエラの言葉を遮り、クロエは言った。
「確かに、地竜は致命傷を与えられていた。が、重要なのは誰が"倒したのか"だ。」
竜を倒したという偉業を、各国に広める事だけで注目を集め抑止力になる。
それだけではなく、自国の士気力も高まる。
「解りました。」
納得ができないままシエラは、頷いた。
「まったく、何ですの?結局、命令違反の罰は無いんですの?」
シエラの後ろに立っていたレイナが、皮肉げに言った。
「そうだったな。シエラ、命令違反の罰で君を第4隊の隊長騎士の任を解く。」
クロエは、ハッキリとシエラのクビを言った。
「後任は、そうだな。バチス副隊長騎士に任せよう。」
これに対し、意外な人物が反論した。
「何故ですの!クロエ団長!納得できませんわ!」
レイナだ。
「レイナ。」
シエラは、驚いた。
レイナは、クロエを睨めつけて言葉を続けた。
「確かに、あの子は命令を違反し処罰しなければいけませんわ。ですが、結果、エターロの住民は救われました!」
レイナは、机を叩いた。
「それだけではなく、地竜 グランドラゴンの討伐さえ成功しています!なのに、隊長騎士の任を解くのはあんまりですわ!」
「・・・、レイナ。もういいよ。」
「貴女は、黙りなさい!」
シエラは、諭しようにレイナを説得しだした。
「レイナ、命令を違反したのはボクだ。隊長騎士の権限を、使ってね。違反したのは、どんな罰を受ける覚悟があったからさ。」
シエラに後悔は、無かった。
「だから、ボクはこの処分を受けるよ。」
レイナは、まだ納得できない表情だった。
「ありがとう。レイナ。」
「なっ!?か、勘違いしないで!わ、わたくしは、ただ好敵手をこんな所で失いたくないだけですわ!」
レイナは、顔を真っ赤にさせ言った。
(やっぱり、レイナは"ツンデレ"というやつだね。)
シエラは、そう思い笑った。
「ちょっと!何を笑っているのよ!」
「二人とも、いいかな。シエラ。」
クロエは、二人の会話を止めさせた。
「はい。」
「しばらく、実家に戻って今後の事を考えるといい。」
「はい、解りました。」
シエラ、素直に頷いた。
シエラがクビを言い渡せられた夕方、"黒猫亭"にシエラ達第4隊は集まっていた。
「ぐぅ!シエラ隊長!申し訳ありません!」
バチスは、一気にラム酒を飲みほすとシエラに頭を下げた。
「バ、バチス!頭、上げてよ!それに、ボクはもう隊長じゃあ無いよ!」
シエラは、あわてて言った。
黒猫亭の空気は、重い。
折角、地竜を討伐したのに隊長が止めさせたのでは意味が無いからだ。
「ほら!みんなも、暗いよ!折角の祝勝会なんだ、もっと明るく飲もうよ!」
シエラは、明るく振る舞った。
すると、奥から料理を持ってきた大柄な女性が店内を見回した。
「なんだい!まったく、揃いも揃って辛気くさいね!」
女性は、騎士達を一喝した。
「あっ!バラシテアさん!」
シエラが、呼んだこの女性。
バラシテアは、この黒猫亭の女主人だ。
まだ、見習いだったのころからシエラに良くしてくれていた。
隊長になってもよく、この店に食事に来ていた。
「まぁ〜、シエラちゃん!大丈夫かい?隊長をクビにされたんだって?」
バラシテアは、心配して言った。
シエラを自分の娘のように、思っているからだ。
「大丈夫だよ!心配無いって!」
シエラは、あわてて言った。
「しばらく、アースの実家にいる事になったんだ。それに、第4隊はバチスが後任になったんだし安心して任せられるよ。」
「それなら、いいけど。こら!バチス!ヘマすんじや無いよ!」
「解っている!隊長が、戻って来るまで私が4隊を引っ張る!」
バチスは、机を叩いて反論した。
「まぁ、レナちゃんがいるから安心ね。」
バラシテアが、反論を一蹴した。
その様子をみて、騎士達は笑いだした。
「そんな、私なんかそんなにお役にたてるかわかりません。」
レナは、両手を振り言った。
バラシテアの発言により、空気は明るくなった。
団長室から出た後、レイナは苛立ちながら去って行きアークは事後処理の為にまたエターロへ出発した。
そして、現在に至る。
「そう言えば、シエラ隊長。」
場がやっと、盛り上がっていた時にレナが机に"ある物"を置いた。
「だから、隊長じゃないよ。」
「す、すいません。その、シエラ様が言われた通り地竜の右目からこれがでできました。」
それは、潰れた鉄の塊だった。
「レナ殿、これは?・・・フム・・・鉛のようですな。」
バチスは、興味深く鉛の塊を見た。
「はい、シエラ様に言われて地竜の右目を解剖しました。すると、シエラ様が言ってたようにこの塊が奥に入っていました。」
レナは、不思議に思った。
何故、この塊が地竜の右目にある事を知っていたのだろうかと。
シエラは、鉛の塊を掴むと胸に当てて涙を流した。
「し、シエラ様!」
「どうしたんですか?」
二人は、狼狽えた。
やはり、クビにされ辛いのだろと思った。
だが、シエラは辛くて泣いているのではなく"嬉しい"から泣いていた。
「やっぱり、やっぱりだ!タツミは、いるんだ。本当に・・・いるんだ!」
シエラは、小さい声で呟いた。
タツミに、会いたいと強く思った。
バチス達が、あわてて慰める声が聴こえる。
シエラは、いつかきっと愛する人に会えると確信した。
こうして、黒猫亭での夜は更けていく。
次は、瀬川パートです。