音楽室
―――次の日。元気になった私は学校に行った。
「おはよー。心音―会いたかったよー。」
桃香と抱き合う。
キャーキャー言ってたら
「おはよー。ていうか何やってんの?」
と、変な目で見てくる田中くんがいた。
そして後ろには長谷川くんがいた。
「おはよー。おっ関川さん、もう大丈夫なの?無理すんなよ?」
「やっぱ長谷川くんは優しいよねー。ねっ心音っ。田中くんとは違って。」
「何だよ。なんか悪いのかよ。」
いつの間にか桃香と田中くんはこんな感じで言い合いをするほど、仲良くなっていた。
キーンコーンカーンコーン
朝のチャイムが鳴り終わろうとしたとき、時間ギリギリに悠介はやってきた。
「おせーぞ、ゆーすけ。時間ギリギリじゃん。」
「寝坊、寝坊!」
「ゆう…じゃなくて菱田くん、昨日はありがと。」
「ああいいよ、別に。夕食、ご馳走になったし。」
―――それから午前中はなんとなーく過ごし 昼からの5時間目は音楽。
それも鑑賞の授業。
昼に鑑賞って…眠い……。
桃香に何回も体を揺らされながら、配られたプリントに音楽の感想を書いていった。
キーンコーンカーンコーン。
「起立、礼。」
「ありがとうございました。」
「心音―寝すぎだよ。あたし、何回起こしたと思う?」
呆れた顔で聞いてきた。
「ごめんごめん。睡魔には勝てないよ。」
音楽室を出て教室に向かう。
「もぉ―。実はさぁ先生、ちらちら心音のほう見てたよ。怒ってんじゃない!?」
「マジで!?それはやばいよ。音楽の成績、悪いのに、これ以上悪くなったら……。」
「ふふっ。」
「ん?今、笑った?」
「うん、笑った。(ニヤニヤ)」
「??」
「じょーだんだよ!先生、こっち見てなかったし。ていうか先生も寝てたし。」
「もーもーかー」
からかわれるのが大っきらい。
「ごめんて―でも、次は寝ないでよ。」
「もう寝ないです。……あ゛あ゛!」
「な、何?どうしたの?」
「教科書、音楽室に忘れた!取ってくる。」
「全く…先、行ってるからね。」
「はーーい。」言いながら、音楽室に向かって走る。
もー最悪。寝ちゃうし、からかわれるし、忘れ物はするし…。風邪、まだ治ってないのかなぁ。
音楽室に着き、教科書を探す。
「あったぁ。」ホッとして笑顔になる。早く戻らなきゃ。
帰ろうとしてドアのほうに目をやると、
そこには教室に戻ってるはずの長谷川くんがいた。
「どうしたの?」
「…………」無言。
なんだろう…??
ていうかもうチャイム鳴っちゃう。早く戻らなきゃ。
ドアのほうに向かった。
そして長谷川くんを抜いて帰ろうとした時、
ギュッ。
えっ。
私は長谷川くんに腕を引っ張られ、顔を上げるとすぐ目の前に相手の顔があった。
かっこいい……なんて思ってる時間はなく、すぐに目をそらした。この状況で目なんて合わせられない。
心臓がバクバク言ってる。
「関川さん?大丈夫?」
「う、うん。」
嘘ついた。異性の人がこんなに近くにいる経験がない私は大丈夫なわけなかった。
「僕の話、聞いて?」
私は小さく頷く。
「僕、関川さんのことが好き…です。」
「えっ。」
驚きが隠せない。いつも普通に喋っている‘友達’としか思っていなかったから。
「昨日、学校休んだじゃん?隣の席に関川さんがいなくて、なんか寂しかったんだ。それに1年の時、転校生としてココにやってきて実はそん時から気になってた。だけど、1、2年の時同じクラスじゃなかったし、僕のことなんか知らねーよなぁって思ってた。」
それだけ言いきると、長谷川くんは静かに深呼吸をして
「僕と付き合ってくれませんか?」
と優しい声で言った。
ドキドキしてパニクって声がでない。それよりもこの場から去りたい。
「せき、かわ、さん?」
長谷川くんはずっと無言でいる私を心配そうに見ていた。
私はとっさに
「ごめん。」
と、言って長谷川くんの手を離して音楽室から走り出した。