懐かしいあの頃
それから日にちは経ってグループの仲はますます仲良くなった。
今日は平日。なのに家にいる私。
「風邪かしら?熱、計った?」
「うん。37,8度ある。やっぱ風邪かなぁ。」
「今日、お母さん忙しいから、病院行けないんだ。」
「いいよ。自力で直すから。」
「ごめんね。でも、元気そうじゃん。1日寝れば治りそうだね。」
「うん。寝てるよ。」
「じゃあ お留守番頼むわね。いってきます。」
「いってらっしゃい。」
玄関でお母さんを笑顔で送る。
私のお母さんは毎日、仕事で大変。
仕事熱心な両親はだんだんすれ違って離婚してしまった。お父さんとお母さんの仲が悪いという訳ではなく、それぞれがやりたいことがあって目標があって離婚という結果になってしまった。
少しの間、その家で母と私と妹で住んでいた。
でも、お母さんは仕事で夜遅くなったりした時、子供2人じゃ危ないからと言って母の姉、つまり悠介の母親の家の近くのマンションに引っ越すと決めた。
引っ越してきたから中1の時、私は桃香たちのいる、この学校に転校して来た。
その日、1日中ずっと寝ていた。
こんなに寝れるんだと私自身びっくりした。
日が沈むころ 玄関のチャイムが鳴った。
体を起こし、急いで玄関に向かう。
お母さんかな。
「お母さん?」と言うのと同時にドアを開ける。
でも、そこに立っていたのは悠介だった。
「はい。明日の予定。」
紙を渡される。
「あ、ありがとう。」
「ていうか俺はお母さんじゃないからな。家が近いからって言われて持ってきた。熱でもあんの?」
「朝あったけど、今は平気。1日中すっと寝てたから。」
「だから、そんなに髪ボサボサなんだ。」
「う、うるさい…///」
すると
「あらー悠ちゃんじゃない。また背伸びたんじゃない。あっせっかくだから夕飯でも食べていったら?」
と、うしろからお母さんの声がした。いきなり声がしたと思ったら何を言ってるんだ、この人は。
「お母さん!」
「いいじゃない。悠ちゃん、お母さんに言っとくから。」
無理矢理な感じだけど、悠介と夕飯を食べることになった。
「できるまで心音の部屋で待ってて。できたら呼ぶから。」
「はいはい。悠ちゃん部屋、こっち。」
自分の部屋に悠介を案内する。
「結構部屋、きれいなんだな。」
「まあね。」
「ていうか、お前まで悠ちゃんかよ。」
「いいじゃん。親戚の人はみんな悠ちゃんって呼んでるわけだし…。学校じゃあ悠ちゃんなんて言えないから菱田くんって言ってるけど…。」
「はぁー。まぁいっか。」
そうため息をついた悠介は本棚にあるマンガを取って読み始めた。
私も一緒になって読み始める。
数分たって悠介の口がまた開く。
「久しぶりだな。喋るの。」
「え 私と?」
「そう。ふたりで喋るの小さい時以来じゃない?」
「そういえばそうだね。昔はよく遊んだよね。」
「うんうん。関川、帰る時間になったらめちゃくちゃ泣いてたもんな。」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだっけっじゃねーよ。」
昔のころを思い出し、ふたりは笑った。
と、そこに「ご飯出来たわよ―。」
「はーい」と返事をしてふたりはリビングに向かう。
するとそこには妹の愛梨がいた。
「悠にぃじゃん。久しぶり!」
「おっ愛梨ちゃん、お邪魔してます。」
何だこれ。2歳年下に馴れ馴れしく言われ、それに対して悠介は敬語。
「仕事が忙しくてなかなか親戚の方に会いに行けなくて…ここにきて1年以上たってるのに悠ちゃんのところにも顔出してないわ。」
「そういえばそうだね。」
「仕事が少し落ち着いたら悠ちゃんのところや他の親戚の方に会いに行きましょうね。」
それから話は変わり、学校の事やらなんやら…。
「ご馳走様でした。もう時間だし帰りますね。おばさん。」
と、悠介が席を立つ。
「あらそう?もっとゆっくりしていけばいいのに。」
「いえ、大丈夫です。おばさんこそ、仕事で疲れていらっしゃると思うので。」
「悠ちゃんは優しいのね。私たちはなんとか生活出来てるってお母さんに伝えておいてくれる?」
「はい、今日はありがとうございました。では。」
部屋から出ていく悠介。
「心音、送ってあげなさい?」
「えっ。」
嫌そうな顔をすると、お母さんは睨んできた。
ため息をついて席を立ち、玄関に向かう。
向かうとドアに手を掛け、もう出て行こうとしている悠介がいた。
「ん?どうした?」
「お母さんが送って行けって。」
「別にいいよ。それに風邪だったんだろ?」
「だよね。でも、ひとりで大丈夫?」
「すぐそこだし大丈夫だってば。じゃあ、、、また学校でな。」
「うん。またね。」
悠介の後ろ姿。
小さいころに比べ、やはり大きくなっているけど
懐かしい。