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プロローグ

人々が“魔の島”と呼ぶ場所に、一人の男が何処からともなく現れた。

  「・・・」

 その男は、荒れた土地を見て呆然とする。

 何れくらいかの後、その男の後ろに音もなくもう一人、男が現れた。

  「エナンか?」

 前に立っていた男が、後ろに現れた男の気配を察知し、そう聞いた。

  「あぁ・・・久しぶりだな?クロウ」

  「あぁ・・・」

 エナンと呼ばれた男は、呼んだ男の名を呼び、横に並んで立った。

 二人とも、肌の青黒い男である。

  「非道い有り様だろ?」

  「あぁ・・・非道いってもんじゃない!奴等がクーデターを起こしやがるから・・・」

 クロウは座り込み、肩を落として呟いた。

  「クロウ・・・力を貸してくれないか?」

  「・・・」

 エナンの言葉に、どう答えようかと悩んでいる様子で、少しの間黙り込んだ。

  「すまない・・・力は貸せない」

  「何故だ?」

 突然の台詞に、エナンが声を荒げる。

  「疲れたからさ・・・何もかも」

  「疲れた?何もかも?」

  「あぁ」

クロウは、腰を上げて立ち上がり、ふぅっと溜め息を付いた。

  「らしくない・・・どうしたんだ一体?」

  「さてね」

 エナンの問いに、答える気は無いようだ。

  「奴等の行いにか?」

  「それもあるが・・・」

  「が?」

  「・・・」

 クロウは、言おうかどうか悩んだ顔をして、エナンと向き合った。

  「お前に渡したい物がある」

  「渡したい物?」

  「あぁ」

 クロウは懐から、金や銀で装飾された黒い真珠のような首飾りを取り出し、エナンに無表情で差し出す。

  「おま・・・!それはッ!」

  「シッ!」

 クロウは、右手の人差し指を自分の口許に当て、エナンを黙らせた。

  「何故俺に此を?」

  「此を見たらわかる」

 クロウが後ろを向き、「パチン」と指をならした。

 すると、クロウの目の前に、巨大な魔法陣が姿を現す。

  「おま・・・転生する気か!?」

  「あぁ、戦いの無い世界に・・・な」

 クロウはもう一度、首飾りをエナンに差し出した。

  「形見みたいで受け取れん・・・」

  「“形見”じゃない・・・俺がどんな姿で生まれ変わっても、その首飾りの魔力を頼りにお前を見つけ出すため・・・言わば“目印”としてお前に託す」

  「なるほどな・・・」

 初めて、エナンが微笑んだ。

  「あぁ、それに・・・俺がいなくても、その戦いには勝てるさ!」

 クロウは、エナンに微笑み返して、ゆっくり魔法陣に向かって歩き始めた。

  「クロウ・ヴォルハルト!戦いの無い世界で待ってるからな!」

  「あぁ!またな!」

 クロウは、後ろ手て手をヒラヒラさせながら、魔法陣の中へ入って行った。

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