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第十七話 武田徳川連合軍

『戦国武将、夢の共演』シナリオでも、やはり戦国武将の死は到来するもの。

北条早雲と太田道灌が相次いで老衰で亡くなった。太田家は太田三楽斎資正が継ぎ、北条家は北条氏康が継いだ。

道灌が死ぬと、越後の上杉謙信は越中方面ではなく関東に進攻を開始する。北条家は当主交代にさしたる混乱もなく、上杉景虎の養子縁組で同盟関係でもあったため、太田家は南北から攻められて、あえなく当主の太田三楽斎と氏資親子は敗れた。史実と異なり、この親子の仲が良好だったことが救いか。『父上、参りましょう』と堂々と父と子は刑場に歩いていき斬首となったという。


太田資正の四男、潮田出羽守資忠も懸命に戦ったが矢尽き刀折れて寿能城は北条の軍勢の猛攻を防ぎきれず落城した。史実では北条家に組して豊臣秀吉の小田原攻めで討たれた資忠。こちらでは、よもや北条家に滅ぼされる結果になるとは。落城寸前に


「小兵衛」

「はっ」

「もはやこれまで。おぬしに頼みがある」

「何なりと申しつけを」

「新六郎と共にみよを連れて能がいる若狭へ行け」

長男の資勝はすでに討ち死にしている。次男の新六郎資政はまだ元服して間もない少年だ。

みよは資勝の娘で資忠にとっては孫、資勝の妻は籠城中に流れ矢に当たり亡くなった。

「しかし能姫様の夫の作太郎殿はいま織田方の…」

「亡きお館様(道灌)の言う通りであった。そんな少年と縁を持てたことを喜べと…」

「殿…」

「作太郎殿なら新六郎を立派な男に育ててくれるであろう、能も姪を可愛がってくれよう」

「あい分かりました。殿の最期のご命令、北沢小兵衛宮内!しかと承りました!」

小兵衛が幼いみよを背負って、新六郎と共に寿能城から脱出した。



太田家滅亡の知らせは小浜城の能の元にも届いた。北の上杉、南の北条から同時に攻められて、どうしようもなかったと。上杉謙信と北条氏康は太田道灌が死ぬのをずっと待っていたのであろう。父の資忠、兄の資勝も討ち死に。北条の姫である紗代は何て言っていいか分からなかったが、ただ『申し訳ございません』と能に謝った。泣きながら。

紗代のせいではないと能も分かっているが、気持ちの整理がつかない。


「ごめんなさい、紗代様…。しばらく距離を置きましょう」

「はい…」

能は一人で泣くことが多くなった。それほど実家の滅亡というのは打ちのめされるものだ。

いくら今は若狭小浜塩見家の正室という立場であれ、寿能潮田家の娘というのは能にとって誇りであり拠り所だ。

弥生のように実家を憎んでいたのなら気持ちは違うのだろうが、能にとって、容貌が崩れるほどの死病に罹っても温かく愛してくれた父と母。こんな悲しみをそう簡単に乗り越えられるわけもない。

長康も寄り添い、能を抱きしめて慰める夜を過ごした。


そんな日がしばらく続いたころ城内で書類仕事をしていた長康のもとに

「申し上げます」

「どうした」

「武州寿能より北沢小兵衛なる者が殿とのご面会を望んでおります」

「北沢小兵衛…。確かにそう名乗ったのか?」

「はっ」

「一人か?」

「いえ、若武者と幼き姫を」

「ここへ丁重にお連れせよ。また奥にも使いを出し、御台にここへ来るよう伝えよ」

「ははっ!」


北沢小兵衛の名前を聞いて能は血相を変えて夫のいる部屋へと駆けた。そして小姓に案内されて廊下を歩く疲労困憊の小兵衛を見て

「小兵衛殿!竹丸!」

「ひっ、姫様!」

小兵衛は能に跪き、頭を垂れた。

「姉上!」

竹丸とは新六郎の幼名だ。可愛がっていた弟、成長した姿でもすぐに分かった。旅の垢で汚れ切った弟新六郎を抱きしめた能、小兵衛の後ろに隠れていた幼い少女がいる。

「竹丸、この子は?」

「兄上の娘みよにございます」

「兄上の…!」

能に怯えるみよ。

「ごめんね、いきなり大声を出して怖がらせてしまいました。私は能、貴女の父上の妹よ」

「父上の妹…?」

「そうよ、今日からは私が貴女の母になるわ」

小姓が長康を連れてきた。

「小兵衛殿」

「作太郎殿…」

「よく寿能からここまで…」

「主君の最期の命でござれば」

「貴公をもちろん、新六郎殿、そして出羽守様の孫娘は当家で庇護させていただきまする。つもる話はあと。能、風呂に案内してあげるといい」

「ぐすっ、承知しました」



引き続き、長康が城内で書類に目を通していると、能がやってきた。

小姓たちが能に平伏、長康は

「そちたちは呼ぶまで下がっていよ」

「「ははっ」」

能は座って長康に頭を垂れた。


「いかがであったか、小兵衛殿たちは」

「よほど疲れていたのでしょう。湯を浴びたあと眠ってしまいました。敷いていた布団に、もう倒れこむように」

「さもあろう、小兵衛殿と新六郎殿だけならまだしも、幼子を連れて寿能から小浜まで来たのだ。並大抵の旅路ではなかっただろう。俺でも出来るか分からんよ」

「殿…。あの場でああ言ってしまいましたが、あれは本心です。兄上の娘、みよを私の娘として育てたいのです」

「反対する理由はない。そなたの娘とならば俺の娘、養女としようではないか」

「ありがとう、殿」

「また小兵衛殿と新六郎殿は家臣として召し抱えようと思う。渋ったら能が説得してくれ」

「そちらは大丈夫だと思いますよ。でも、いいのですか?」

「ああ、ただし小兵衛殿には博打を止めてもらうのが条件だな」

能が笑った。久しぶりに。


二人を家臣に召し抱えるのは同情でも何でもない。北沢小兵衛宮内は史実でも潮田家の軍事を支えた家老級の武将、史実では主君の資忠より、かなりの年長だ。元々資忠の父である太田三楽斎に仕えており資忠が寿能拝領のおりに三楽斎から預けられた付け家老だ。

だから作太郎は寿能で出会った小兵衛が資忠より年少であったため、最初は信じられなかった。この世界では資忠と北沢宮内との年齢が逆転していた。作太郎と小兵衛は同年ほどだった。最初は北沢宮内の息子か、と思ったほどだが本人だった。これも『戦国武将、夢の共演』シナリオである影響か。史実の北沢宮内は第二次国府台合戦の時に太田が敗れ、北条の追撃を受けた時も主君資忠を守り抜き、無事に寿能城に帰している。


潮田家滅亡後は鷹飼になり、主君資忠のことを語り続けた。やがて徳川幕府ご用達の鷹狩場を任されるほどになる。登用した徳川家康もその武勇と旧主への忠誠心を見込んだのではなかろうか。こちらの北沢小兵衛もまた、主君資忠の遺命を受けて、寿能から小浜という長き逃避行を見事に達成させたではないか。


そして資忠次男の潮田新六郎資政、史実の彼は寿能落城時に、伯父の太田資武に連れられて脱出。その後は潮田勘右衛門資政と名を改め土井利勝に仕える優れた文官になったという。

つまり長康は妻の能が縁で優れた武官と文官を獲得できたということだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


優れた家臣二名出来た。能も立ち直り、紗代とも溝が生じず元のように仲良くなった。昨夜は久しぶりに能と紗代、二人同時に愛でた。

塩見家の前途は明るい、そう長康が思っていた時だ。武田徳川連合軍に明智光秀を総大将とする織田軍が敗れたという報告が届いた。尾張まで進入を許してしまい、信長は安土から清州へと向かい、塩見家にも出陣命令が届いた。

しかし信長から早馬が届き

『兵はもちろん、将にも重傷者が多い、武蔵守は軍勢を家老の作田伯耆に任せて、尾張清洲まで急ぎ参るよう』


甲冑を能と紗代に装備させてもらっていた長康はその書を読んで

「仕方あるまいな…。能、紗代、俺は清州まで走っていく。以降のことは伯耆と計るように」

「「承知しました」」

小姓に

「家老の作田伯耆を呼べ」

「はっ」

作田伯耆守輝久が来た。

「殿、お呼びで」

廊下で膝をつき頭を垂れる輝久、ちなみに言うと、能と紗代を含め、塩見家の女たちは彼が元室町幕府第十三代将軍足利義輝とは知らない。


「上様より俺だけ早く戦場に来いという早馬が届いた。おぬしも知っての通り、俺は闘気の応用で馬より早く走れるため早速向かう。軍勢はそちが率いて尾張清洲を目指すのだ」

「承知しました」

「先日、家臣となった北沢小兵衛は武将として優秀だ。用いてみよ」

「そうですな、あれはものになります。新六郎も若いながら文官として申し分なし。御台様、よき人材と当家が縁を持てたこと、家老として感謝いたします」

「伯耆殿のお目に叶うなら大丈夫ですね。殿の人を見る目も捨てたものではありません」

「おいおい、ひどいな、能」



出陣準備を家老の作多伯耆守に任せ、小浜城外に出た長康

「サポートカード【SSR◆4神行太保戴宗】をセット」

そして

「神行法!」


一気に尾張清洲に向かって走り出した。そしてその長康に追いついてくる者がいる。

「全くおぬしは…戦場妻を置いて、いくさ場に行ってはならぬぞ」

それは律照尼だった。ちゃんと男装をしている。

「そなたもこんなに早く走れるのか…」

「言ったじゃろ、女も八百年以上生きると色々なことが出来るのじゃ」

「無理が無いか、その設定」

「細かいことは気にするな。で、今日はどこまで走るのじゃ?」

「清州までに決まっているだろう」

「否、途中で一発やるのじゃ。休憩大事」

「ううむ、それもそうか」

途中、琵琶湖畔で律照尼とお楽しみのあと、心身スッキリさせて再び疾駆を開始する。


近江、美濃を越えて尾張に入り、清州城に到着した。安土から、ここまで出張っていた信長は長康を出迎えた。

「よう来てくれた武蔵守」

「はっ」

信長に膝を屈して頭を垂れる長康、律照尼は外している。

「清州に戻ってきた将兵の治療を終えたら前線に向かえ。武田と徳川の追撃が中々振り切れず、ひどい有様のようじゃ」

「承知いたしました」


丸一日かけて清洲まで落ち延びてきた将兵の負傷を治した長康。

翌日早朝、律照尼と共に前線へ駆けていく。しばらく駆けると武田と徳川の兵が織田の軍勢に激しく追撃をかけている光景が見えた。

「行くぞ」

「はいよっ!」

律照尼が先陣を切った。

「きゃははははは!」

長刀一閃で武田兵を吹っ飛ばした。

「浅ましいのう、武田では追い首も手柄になるのか?」

追い首とは敗走している兵の首のことだ。

「「女!」」

「「生け捕りに」」

「「ぐああああああ!」」

「愚か者、私を抱いて良いのは塩見武蔵のみじゃ」


一方、長康はサポートカードに

【SSR◆4呂布奉先】【SSR◆無だいだらぼっち】【SSR◆4聖獣玄武】

【SSR◆4聖獣青龍】【SSR◆4聖獣白虎】【SSR◆4聖獣朱雀】

をセットした。だいだらぼっちは◆無でも特殊能力『巨大円匙』が盾となって長康を守ってくれる。

呂布の槍術に四聖獣の能力が乗って、方天戟一線で前線の武田勢は体が上下に真っ二つだ。

長康と律照尼が武田を押し返し、ようやく味方兵の治療に入れるようになった。


「おおっ、左馬之助殿、無事であったか」

路傍に倒れていた明智左馬之助を見つけた。治療中は無防備になる。律照尼がついてきてくれてよかったと思う長康だった。

「だめだ…。血を流しすぎて眠くてかなわねえ…。そのまま眠って起きな…え?」

「治りましたぞ。急ぎ清州へ引き返されよ」

「あ、ああ…。すまない」(すげえな、これが治癒法術か…)

間に合わなかった兵も多かったが、救える命はどんどん治していった長康。

再び武田か徳川が寄せてきたら応戦して押し返すの繰り返した。治った兵は元気を取り戻し、どんどん清州へと引き返していく。

やがて主戦場だった地に長康が辿り着くと


「日向守殿…」

明智光秀の首がさらされていた。斎藤内蔵助の首、稲葉山城下の草月庵で作太郎が調理したうな丼を食べた安藤守成や氏家卜全、稲葉一鉄の首もさらされていた。他にも身分が高そうな武将の首があった。長康は面識が無くて知らないが、それは森可成と池田恒興の首だ。まさに大惨敗と言える。長康と律照尼が諸将の首を見ていると

「作太郎殿、久しいな」

「これは…」

「無用、今は悲しいが敵味方じゃ。礼を示してくれるのは嬉しいが敵将に頭を下げたら疑われるぞ」

膝を屈し頭を下げようとしたら止められた。徳川家康であった。


「お久しぶりです。徳川様」

「元気そうじゃの、能殿、紗代殿はお元気か」

「はい」

「瀬名も元気じゃ、今も感謝しておるぞ」

「徳川様…。申し訳ございません。あの時は仕官話を断っておきながら…」

「あの頃と違い、守るべき者が出来た。腰を落ち着けるが当然よ。若狭の繁栄は伝え聞いている」


織田諸将の首に手を合わせた家康は

「織田諸将の首、持っていくがいい。信玄殿の許可も得ている」

「よいのですか?」

「かまわん、カラスについばまれるのも哀れゆえな」

「感謝いたします」

「いくさ場で会おう。武人のならい、遠慮は無用じゃ」

家康はそう言うと長康の前から去っていった。ふう、とため息をついて明智光秀の首を取った。律照尼が

「これが明智光秀か。きれいな死に顔じゃな」

「ああ、いくさ人の顔だ」

前世、冨沢秀雄一押しの戦国武将、明智光秀が死んだ。長康は光秀の髪を梳かして死に化粧を施した。他の武将たちも同様に。それが済むと収納法術に入れて清州へと駆けた。



信長のもとに諸将の首を持っていった長康。大敗を喫したことで激昂して光秀の首を蹴り飛ばすかもしれないと長康は危惧したが

「光秀…」

信長はしばらく光秀の首を見つめていた。

(これで少なくとも本能寺の変は起きないが…。これからどうなるのか)

「この者たちの髪を梳かし、化粧を施したのはそちか」

「はい、乱れた髪では男ぶりも下がると思った次第で」

「礼を言う」

「はい」

「五郎佐、この者どもの首、家族のもとに送り届けよ」

ホッと胸を撫でおろした長康だった。五郎佐とは丹羽長秀の通称だ。現在、信長の側近として在る。


「武蔵守」

「はっ」

「その方、残存兵を率いて武田徳川連合軍を迎え撃て」

「しばらくっ!」

丹羽長秀が諫めた。

「いま兵は武田と徳川に怯えて、とても戦にはなりますまい!武蔵が若狭から駆けつけて将兵の命を助けたことが何にもなりませんぞ!ここは清州に籠城して若狭の塩見軍を始め、各方面から援軍を待つことが肝要かと」

「織田の戦に籠城戦はない。戦は他領で行うものよ。武蔵守、上杉との戦、聞いておる」

「はっ」

「そちは本当に闘気術に長けておるようだな。権六曰く『上様も思わず頭を下げてしまうのではないかと』と言っておった」

「それをやったら首が飛ぶと柴田様は」

「権六め、儂はそんなに了見が狭くないわ、武蔵守」

「はっ」

「この戦でそれなりの武功を立てれば若狭の南、光秀の旧領すべてくれてやる。励め」

「はっ!」(これは思わぬことになったな…)


その場を立ち、用いる兵の様子を見に行こうとした長康は『ハッ』と何かを思い出したように、再度その場に座った。信長が

「いかがした?」

と問うと

「恐れながら、私に残存兵を預けたら上様の元に残る兵力はいかほどに相成りましょうや」

「ふむ、二百から三百程度か」

「私が預かるはずであった兵より千ほどを連れて、すぐに小牧山の吉乃様の元に参るがよろしかろうと」

「何故か」

「私の出陣後、ここに訪れる援軍諸将、蒲生、筒井、細川、そして羽柴…。いずれも清州にある上様より多勢です」

「そいつらが儂を裏切るかもしれぬと?」

「滅多なことを申すな、武蔵守」

丹羽長秀が叱責するが長康は続けた。

「武将たるもの、少なからず天下への野心はございます。ご自分ならどうするか、お考え下さい。上様が援軍の将であり、前線拠点にいる君主、しかも天下を取れる段階に達している君主が自分の軍勢より寡兵であったなら何を考えますか。簒奪を考えないと言い切れますか」

「…………」

「この清州は空き城にして最初に訪れた援軍の将にくれてやるくらいの気持ちで、上様は速やかに小牧山へとお引きください」

「あい分かった。まこと武蔵守の申す通り、ぬかったわ。五郎左、急ぎ小牧山城へ参る」

「ははっ」


「では私は練兵場に赴き、上様に同行する兵を用意いたします」

と、長康が去ろうとしたところ信長が呼び止め

「武蔵守、武将には少なからず天下への野心があると言ったな。そちもか?」

そう訊ねた。長康は

「恐れながら上様、私はすでに天下人になっております」

「なに?」

「私は『天下一料理人』の称号を正親町天皇と亡き三好長慶殿より賜っております。料理人として私は天下を取っておるのです。武士としても天下を欲するなど人として欲張りすぎにござりましょう」

信長はそれを聞くや大笑いをした。側にいた丹羽長秀も苦笑している。

「そうであったな!ははははっ!おぬしはすでに天下人であったわ!いや情けない君主よ、家臣に先を越されるとはのう!はっはははは!」



城から出て練兵場に赴く長康、練兵場でちょうど長康が深手を治した足軽大将がいたので

「と、いうわけで上様について小牧山に向かう千人ほどの兵をお願いしたい」

「上様の出立はいつごろになりますか?」

「俺が『すぐに』と進言したので、早ければ明朝、遅くとも明後日の朝となるであろう」

「承知いたしました。こちらで編成しておきます」


次は自分が用いる兵の確認だ、そう長康が思っていると

「武蔵殿」

「おお、左馬之助殿、もう大丈夫にござるか」

「おかげさまで。大したものでござるな、治癒法術とは」

明智左馬之助は膝をついて頭を垂れた。

「主君光秀、同朋内蔵助の首を持ち帰ってくれたうえ化粧まで施してくだされたこと感謝いたす」

「いや、私にとっても大切な御仁たちでござれば」

「迎撃の総大将に武蔵殿が命じられたと聞きました」

「その通りにござる。塩見の軍勢はまだ到着していないので残存兵を再編し…」

「それがしを副将に据えて下さらぬか」

「おいっ、左馬之助、なに抜け駆けをしているのじゃ。武蔵殿、それがし滝川一益を副将に据えられよ、お若い貴公にはそれがしのような老練な将がそばにいなければ!」

滝川伊予守一益も今回長康に命を助けられた将である。彼はかつて関東方面の軍団長であったが太田道灌に木っ端みじんにされて、その敗戦の責を問われて部隊長級の将に降格されていた。

「では、お二人には私の両翼についてもらいます。左馬之助殿は右将、伊予守殿は左将で」

「「承知仕った」」

左馬之助は主君光秀と長きにわたり主君の両翼を務めた同朋斎藤内蔵助の弔い合戦という意味もあるだろう。一益はこれを機に挽回という気持ちが。


しかし兵はもう戦う前から武田徳川連合軍を怯え切った様子だ。逃散が相次ぐだろう。

無理にサポートカードの特殊能力を使って、それを止める気は無い。出陣は明日、残った者たちだけで迎え撃てばいい、長康はそう考えた。律照尼が

「よいのか?前に上杉と戦えたのは、おぬしの気術もあるが兵数が拮抗していたから。このまま逃散を許すと戦にならぬぞ?」

「かまわんよ、戦う気のない者は連れていく気はない。数が少ないなら少ないなりにやりようはある」

「武田信玄を相手にのう…。まあ、私は思い切り暴れさせてもらう」

「そうしてくれ」

「ふふっ、だから今からたっぷりと可愛がってくれんとの」


翌朝、信長は千五百ほどの兵と丹羽長秀を伴い、小牧山城へと向かった。

代わりに長康と明智左馬之助、滝川一益が入った。城代でもなく、一時預かりのような形だ。

だが城には入らない。このまま出陣する。逃散せずに残った兵は四千、明智光秀の出陣時は四万近い大軍であったが今は十分の一だ。長康は補佐役に名乗り出てくれた明智左馬之助と滝川一益に言った。

「清州は放棄する。籠城はしない。上様のご命令通り前線に向かう」

「「はっ」」

羽柴秀吉を始め、援軍の将は清州に向かっている。あとは彼らの判断に任せるつもりだ。


清州城練兵場、四千の兵が並ぶ。正直言うと長康にとって『四千も残ったのか!』と驚きだった。そして指揮官が立つ、高台へと上がる。左右に明智左馬之助、滝川一益が就いた。

この時の長康のサポートカードデッキは

【SSR◆4呂布奉先】【SSR◆4源九郎判官義経】【SSR◆4天魁星呼保義宋江】

【SSR◆3張良子房】【SSR◆2諸葛亮孔明】【SSR◆2司馬懿仲達】

長康自身の武力向上は呂布と義経、そして頭脳に張良、三国志の孔明、仲達をセットした。軍師系サポートカード、いずれも◆4を達成できていないため三枚揃えた。

武田信玄と徳川家康に対して兵力が少ない状況で戦わなくてはならない。この局面、統率力を爆発的に上げる宋江のスキル『梁山泊』は必須だ。


「明智、安藤、氏家、稲葉、池田、森、いずれも織田家を代表する武将である。しかし武運尽きて武田と徳川に敗れ、首をさらされた。ここにあるは主君を失いし兵ばかり。信玄と家康は何といおうか、敗残兵の寄せ集めとでも笑うだろうか。が、今は笑わせておけ」

兵たちは不思議な感覚に囚われる。中には逃げそこない渋々ここにいる者たちもいる。

しかし、長康の言葉を聞いているうちに戦意が上がってくるのだ。

「武田徳川連合軍と戦うため、ここに集いし精鋭たちよ。我が名は塩見武蔵守長康、貴公らの主君の弔い合戦、驕る信玄に目にもの見せてくれる!我に続け!」

「「「おおおおおおおおおおおッッ!!」」」


『試練【武田徳川連合軍と戦い勝利、もしくは退却させよ】が入りました』

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