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第十二話 麒麟がきた

「塩見作太郎長康か」

この夜、作太郎と義輝はうなぎのかば焼きを肴に酒を酌み交わした。

「不思議な話だ。長慶の命を助け、その長慶から名前を与えられた者と儂は飲んでいる」

「私は三好長慶から命を狙われた足利義輝と飲んでいます。後の人は、どっちつかずの卑怯者とでも言うでしょうか」

「長慶は病んでいたのであろう?」

「ええ、放置しておけば、あと一年も持たなかったでしょう」

「なら、おぬしは医者として正しいことをしたに過ぎん。医者に三好も足利将軍家もない。あるのは患者だけだろう」



「これからは東に?」

義輝から聞いた土産話は中国、四国、九州だった。

「ああ、今度は嫁でも探してみようかと思う。そろそろ一人では寂しいゆえな。もう、あれも後添いをもらうことを許してくれるだろう」

永禄の変で義輝は妻を失っている。政略結婚ではあったものの彼は妻を愛していた。

失った悲しみを乗り越えるまで、今まで時間がかかったということだろう。作太郎で言えば能や紗代を失うと同じだ。乗り越えられるか作太郎には分からない。

「嫁を娶った地で落ち着き、土に生きようと思う。人の営みはそれでいいと思うのじゃ」


翌朝、義輝は作太郎の屋敷をあとにした。

それから数日後のことだった。坂本城主の明智光秀から作太郎宛てに使者が来た。

『さくたろう』のピークタイム中だったので作太郎は待ってもらった。

営業時間を終えて、妻たちへのまかないを作ったあと、作太郎は使者に会った。


「それがし、明智光秀家臣、明智左馬之助と申す」

大物が来た。ずいぶんと待たせたのに何事もなかったかのように座っている。

かつ、平民の作太郎に頭を垂れて名乗りを上げた。これだけで主君光秀の器が知れようものだ。

書状を差し出したので

「日向殿の書、この場で読んでも?」

「もちろんにございます」

要約すると病に倒れた妻熙子の治療をしてほしいという内容だった。ずいぶんと切羽詰まった状況のようだ。


「分かりました。馬を飛ばせば坂本城まで一刻ほどで着くでしょう。いま妻たちに坂本行きを言ってくるので」

「おおおっ、かたじけない、塩見殿!」

塩見殿と言われることに、まだ慣れていない作太郎だった。

引き受けたのは何より、前世冨沢秀雄の推しの戦国武将は明智光秀であるからだ。実物が見たい。まあ『異日本戦国転生記』の世界だから実物であって実物ではないのだが…。


「ほう、塩見殿は我ら武士も顔負けなほどに馬術が巧みですな」

「明智左馬之助殿に馬術を褒められるとは光栄です」

そりゃあ琵琶湖を馬に跨って泳いだという『湖水渡り』の伝説の持ち主に褒められれば嬉しいだろう。


「簡単で結構です。現在の奥方の病状を教えて下さい」

「目の白い部分が黄色くなって全身の痛みを訴えております」

作太郎の顔は険しくなり、その場で馬を降りた。

「悪い、左馬之助殿、俺は先に行く!」

「は?」

「神行法!」

迷わなかった。サポートカード【SSR◆4神行太保戴宗】を用いて、さっきまで乗っていた馬さえも唖然とする早さで坂本城へと走った。

「すごいものだのう…。優れた気術者と聞いていたが…」

左馬之助の解釈は少々違うが、和風ファンタジーの世界では、別に化け物扱いされることではない作太郎の『神行法』だった。


『試練【明智光秀の妻熙子の病を快癒させよ】が入りました』



「お願い、殿…。一人にして…苦しむ様を見られたくないの」

「熙子…!」

明智光秀の妻熙子は体の異変を訴えだしてからアッと云う間に病状は悪化した。

光秀は主君の信長、同朋の秀吉と利家から聞いた名医作太郎のことを思い出した。現在は塩見作太郎長康と名乗る人物。

しかも彼が現在拠点としているのは大津、坂本とは目鼻だ。これぞ天の配剤ではないか。急ぎ、光秀は明智左馬之助を使者にして大津へと向かってもらうことに。

平民、かつ若いと云っても正親町天皇と三好長慶から姓と名前を賜ったほどの名士、家老級の武士が使者に行かなければ無礼になると思ったからだ。

早く来てくれ…。光秀は熙子の手を握り、それだけを願った。


「母上…」

「玉、英…。ごめんね…。もう無理みたい…」

「母上、嫌だよ!」

三女の玉、四女の英は泣くことしか出来なかった。


その時だった。熙子の臥所の襖が勢いよく開いた。

「塩見作太郎長康、まかりこしました」

光秀と玉も英は驚き、光秀が

「番は何をしていた!」

「ああ、番の人たちを叱らないで下さい。時間が惜しいので法力と闘気を用いて、ここまで一気に来たので」

「で、ではおぬしが本当に大津の塩見作太郎殿か?」

「いかにも、使者の左馬之助殿は途中で置いてきました」

「置いてきたって…」

明智家で随一の馬術を誇る左馬之助を置いてけぼりにして走るなんて光秀にも出来ないことだ。


「奥方、私は塩見作太郎長康と言います。医者です」

「あ、明智日向の妻……熙子です」

「診察をしても?」

「はい…」

「いいのか、熙子」

「はい…。この若者の目は嘘偽りを言ってはおりません」

かなり痛むだろうに、無理して微笑む熙子。作太郎が鑑定したところ予想通り膵臓がんだった。初期発見は令和日本でも難しく、症状が現れたころには手遅れになっていることが多い。がんの王様と言われるくらいに全身に強烈な痛みを発する。


「患者は一寸でも早く、この苦痛から解放されたいものです。だから順序全て取っ払って、ここに来ました。許されよ、日向殿」

「あ、いや、取り乱してすまない。坂本城主の明智光秀にござる。本当に妻を治していただけるのか」

「お任せを」

ただ、ここまで進行してしまったすい臓がんを治すには、それなりの量の闘気を使う。

「奥方、万全を期すために申し訳ないが腹部の肌を」

「…分かりました」

腹部に手を当てて、闘気を使い、作太郎の脳裏にはレントゲンとCTの映像が交互に映る。

その映像にはがんに侵された場所が青白く光る。所々に転移していた。

「気術『万病治癒』」

熙子の全身が作太郎の闘気に包まれた。

「母上…」

「奇跡だ…」

熙子は体が軽くなったか起き上がり、

「ああ、痛くもない、苦しくもない…!体が軽い!」

「母上!」

玉姫と英姫が熙子に抱き着き、熙子も娘たちを泣きながら抱きしめた。光秀、そしてようやく駆けつけた左馬之助もそれを見て号泣した。


「ああ、そうだ。ついでです」

「え?」

作太郎は若き日の熙子が患った疱瘡により顔に残った痘痕を消してしまった。

「母上のお顔の痘痕が…」

「『鏡』」

作太郎が法術で鏡を出すと、熙子は自分の顔を見て絶句していた。痘痕が綺麗に無くなっていたのだ。顔は女の命、熙子は体が治ったことと同じくらいに痘痕が無くなったことに感激して何度も作太郎に頭を下げて感謝した。

「ありがとう、ありがとう!なんてお礼を言えば!」

「いやいや、治ってよかった。さて、日向殿、俺は貧しい者からは取らないけれど、さすがに城主なら取らせてもらいます。三……」

「三百貫ですな!喜んで支払わせていただきますぞ!これ、金蔵より三百貫を」

「いや日向殿、違います。三貫です」


「父上、母上が眠ってしまいました」

「今までの苦痛で体が疲れ切っているのでしょう。ゆっくり休ませてあげましょう」

光秀が仰向けに寝かせて布団をかぶせた。

「ぐすっ、かたじけない、妻熙子は明智家の心の支えにござるゆえ」

「お役に立てて良かったです。さて、報酬もいただけましたので私はこれで…」

「いやいや、よろしければ泊っていって下され。妻の命の恩人に何のもてなしもしないわけにはまいらぬゆえ」

光秀の強い引き留めもあり、作太郎は坂本城に一泊することにした。『さくたろう』も翌日は定休日であるし、せっかくなので光秀と話したかった。なにせ前世の秀雄がもっとも推していた戦国武将は明智光秀なのだから。



その後、光秀主従と酒を酌み交わした作太郎だが

「えっ、では伝え聞いていた『変わらぬのは心の美しさよ』と言ったのは本当だったのですか!?」

「いや、勘弁して下され。まさかお若い作太郎殿がそれを知っているとは思わなかった」

疱瘡により顔に痘痕が残ってしまった熙子に変わり、熙子の父親は妹を替え玉にして祝言の席へと。しかし光秀はあっさり見破り熙子の父親が事情を話すと『女の顔など病や年齢でいかようにも変わるもの。変わらぬのは心の美しさよ』と言い、顔に痘痕が残る熙子を娶ったと言う。作太郎は、この話は本当なのですか、と問うと光秀は顔を赤めて事実だと言った。同席していた明智左馬之助と斎藤内蔵助も大笑いしていた。


そこへ

「はい、とても嬉しかったですよ。夫がそう言ってくれた時は涙が出ました」

睡魔を満足させて元気になった熙子が宴の席にやって来た。

「熙子、もう歩けるのか」

「はい殿、作太郎殿の闘気でもうすっかり。湯も浴びて参りました」

「そうか、よかった…。作太郎殿、あらためて礼を言う」

「いえ」

「ところで熙子の病はどういうものだったのだ?」

「臓器の一部が腐り、他の臓器にもそれが移って腐っていくというものです。左馬之助殿より目の白い部分が黄色くなり、全身の痛みと症状を聴き、それだと予想しました。この病が全身に及ぼす苦痛は相当であるため、一刻も早くそれから解放してあげたいと思い大急ぎで駆けつけた次第です」

「その通りです。もう地獄のような痛みでしたもの。少しでも早く苦痛から解放されたかった。本当に感謝しております。まして、あの痘痕まで消していただけて…」

「まあ、ついでです」

「ありがとうございます、さあ作太郎殿、一献」

「いや、何だか恐縮してしまいます。良妻賢母と言われる熙子様にお酌をされるなど」

「まあ、誰ですか。私を良妻賢母なんて言っているのは。ふふっ」

「いやいや御台様、それがしとてそう思いますぞ」

「左馬之助の申す通りにござる。明智家は御台様の内助でここまでの家になりました」

「あらあら、ありがとう、佐馬、内蔵助」


『試練【明智光秀の妻熙子の病を快癒させよ】を達成しました』

『【梅毒の予防薬レシピ】を獲得しました』

(おおっ、これは嬉しいな。サポカは欲しいけれど、こういうのも欲しいんだよ。特にこの時代では不治の病だからな)



宴は終わり、その後、作太郎は寝所に案内された。

すると布団の横には

「伽を務めにまいりました」

一人の美女が待っていた。別に珍しいことではない。戦国大名が大事な客人を城に泊める時、家中の美女に夜の相手をさせるのは最上のもてなしだからだ。

そして客人もそれを受け取らないのは非礼となる。


「では申し訳ないが先に…」

作太郎は洗浄の法術を用いて互いの体を入泉したてのように綺麗にした。

「これが洗浄の法術…」

「俺は大津の住民、塩見作太郎、そなたは?」

「熙子様の侍女、彩と申します」

作太郎はさすがに驚いた。下女ならともかく侍女なら立派な士分だ。

「そんな恐れ多い。彩殿は私が平民と聞いていないのですか?」

「元々私も平民です。それに作太郎様は正親町帝と三好長慶様に姓と名を与えられた人物、お殿様から名士と聞いております。私の方こそ恐縮してしまいます」


作太郎が話を聞いてみると、彼女は戦災孤児で熙子に拾われ育てられ、長じて侍女に取り立てられたという。

病が治った熙子は彩を呼んだ。

熙子の病が治り、顔の痘痕まで消えたことを喜ぶ彩に熙子は礼を言い、改めて

『そちに頼みがある。私の病と顔を治してくれた作太郎殿が今宵城にお泊りになる。もてなしにはそれなりの女子を出さねばならぬが、長女と次女は嫁いでしまい、三女の玉と四女の英は嫁ぎ先が決まっている。私の侍女であるそちが作太郎殿の伽を務めてもらいたい』

彩は

『承知しました』

と、引き受けて今に至る。熙子にはもちろん、光秀や重臣たちにとっても作太郎は大事な客人、下女を伽に出すわけにもいかない。正室の侍女なら問題はない。

「お殿様いわく、作太郎様ほどの名士と縁を持てれば嬉しいと」

「日向殿がそんなことを…」

「ですから遠慮せず、この身を抱いて下さい」

「分かりました」



翌朝、坂本城の門で

「作太郎殿、彩が子供を生みましたら、我ら明智家で大切に育てるゆえ」

「はい、お願いいたします、日向殿」

作太郎は彩が確実に妊娠すると分かっていた。当初は避妊するつもりだったが肌を合わせていた彩は女の勘と言うのか、それを察して『避妊の法術は使わないで下さい』と言った。どうやら熙子から作太郎の子供を生むようにあらかじめ指示されていたのだろう。在野の士とは言え、作太郎ほどの医療術を持つ名士と繋がりを持つのは明智家にとって後々大きな利となる。光秀のみならず熙子がそう考えても不思議ではない。

サポートカード【SSR◆4光源氏】の特殊能力には相手がたとえ不妊であろうと妊娠させるスキルがある。作太郎が『妊娠しろ』と念じて射精すれば確実に妊娠するという奇跡のスキル。墓まで持っていくつもりの妻たちにも言えないスキルだ。そして作太郎は子供を切望する彩にその能力を使ったのだ。

もてなしのため用意した娘が妊娠した場合、もてなした側が育てるのも暗黙の了解でもある。


去っていく作太郎の背を見て

「明智家が大きくなったのは嬉しいですが…時に窮屈ですねぇ…。あの方なら玉と英どちらかを嫁がせてもよかった」

「全くだな」

玉と英には、すでに信長が嫁ぎ先を決めている。史実通り、玉は細川忠興、英は津田信澄に嫁ぐのだ。

「殿、御台様、作太郎殿の店は大人気の行列店、今度食べに行かれてはどうでしょうか」

と、左馬之助が言うと

「そうだな、正親町帝と三好長慶殿が絶賛したといううな丼、食べてみたいのう」

「ふふっ、私も食べたいですわ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あれから数日後、今日も『さくたろう』の営業は無事に終えて、妻と妾たちにまかないを作る作太郎。朝食を作るのは女たちの仕事だが、昼食のまかないは作太郎の仕事だ。

このまかないの時間が女たちは大好きで、子供たちと弟子もこの時間になると『さくたろう』にやってきて一緒に食べている。今日は鶏肉の照り焼きと鮎の塩焼きだ。

「母ちゃん、おかわり!」

弟子のしげが母のはるにどんぶりを出すが

「自分でよそいなさい、もう」

中々厳しいお母さんのようだ。

「はーい」

弟子の三人も来年には武士で言う元服の頃合いだ。長男の太郎、次男次郎、長女の桜もそろそろ手がかからない歳になる。料理人と医者の仕事に追われ、ほとんど子育てには携わっていない作太郎だが、この時代の父親には珍しいことではない。

能、紗代、弥生は子供を二人ずつ生んでいる。夏江も一人生んで、いま生まれた赤子に母乳をあげている。幸せそうだ。はる、ちよ、とみも一人ずつ作太郎の子供を生んでいる。大家族だ。


「能、子供がたくさんいることはいいことだが、うちの懐具合は大丈夫か?」

「はい『さくたろう』の収益で十分に私たちは暮らしていけていますよ」

「旦那様に命を助けられた方たちもよくしてくれますからね」

紗代の言う通りだった。無償で診療所の屋敷を提供してくれた大津商人の顔役は、息子の命を助けてもらった礼と作太郎に正当な報酬三貫を支払ったうえで、そう申し出てくれた。

元患者やその家族からは琵琶湖の幸を始め、作物も分けてもらうことも多い。今浜でもそうだったが、作太郎の家族は大津でも町の人々に支えられている。


作太郎は医者としての収入も全部能たちに預けている。小遣いは必要な時にもらっている。四人の妻たちに家の運営を任せて、妾たちはそれのフォローという感じだ。彼は料理人と医者に集中していたから、家の経済状況はあまり把握していない。戦国時代と令和日本のお父さんも、そう変わらないと云うことか。

ちなみに作太郎はゲーム内で円に直せば億単位ほどの財力はあるが、いまだ手を付けていない。正当に、この時代で働いて稼いだ金で妻と子供たちを食べさせたいと思っているからだ。大富豪と云うわけではないが子供たちを腹いっぱい食べさせるほどは十分ということだろう。


「ありがとうな、能…。いつも感謝しているよ」

本心だろう。能を始め、妻たちの内助があって作太郎は料理人、医者としても働けるのだから。

「礼を言うのは私たちです。いま関東も戦で大変な様子で…。もしかしたら私や紗代様はどこかに嫁ぎ、子供を抱いて戦火から逃げていたこともあり得たのです。それが…」

ご飯粒を頬につけて飯を食べる長男太郎の頭を撫でつつ

「こうしてお腹いっぱいに米の飯を食べられる子供たちと共に生きていけるのですから」

「そうですね、能様の言う通りです。戦に縁なき男に嫁がせれば安心と言っていたひい御爺様の言葉、よく分かります」

紗代が言うと弥生も頷き

「もしかすると先夫の長政様は浅井家の没落が分かっていたかもしれません。旦那様が近江に訪れたころ浅井はすでに六角に押されていたし…浅井を滅ぼした六角も結局織田家に…。あの時に長政様が私を旦那様に託さなかったなら今頃どうなっていたか分かりません」

弥生もまた美味しそうにご飯を食べている長女の頭を撫でた。


「備中守様はけして愚かな武将ではない。運が無かっただけだ」

「…そうですね」

「そろそろ許してやったらどうか。彼の最期の言葉、伝え聞いているだろう」

長政は小谷落城の時『弥生、すまぬ』と言い切腹している。

「長政様だけでなく、亡き父と兄も許そうと思います。すでにこの世にいない人を怨んだままで生きていれば娘の桜にも、それが伝わり、歪んだ女子に育ってしまうと思うので」

「そうか、それがいい」

そう話が落ち着いたころ


「作太郎さん!港の工事現場で足場が崩れて怪我人多数だ!急ぎ来てくれ!」

顔なじみの土木職人が血相変えて『さくたろう』に訪れた。

「分かった。能、炊き出しで握り飯を作って、あとで現場に持って来てくれ」

「分かりました。おちよさん、お米の準備を」

「承知しました」

「お父さん」

作太郎は長男太郎の背に腰を下ろし、頭を撫で

「お父さん、ちょっと行ってくる。お母さんの言うことを聞いて待っているんだぞ」

「うん」

「よしっ、夏江、一緒に来てくれ。君の怪力が必要だ」

「はいよっ」

前世消防士だった作太郎、戦国時代でもやることは変わらない。人命最優先、作太郎の顔は優しい父親から戦う男へと変わっていた。

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