6.ドッキリ大作戦 ②
「何か飲む?」
春菜に尋ねると冷たいものが飲みたいと言った。私は冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注いて部屋に戻った。部屋で待っていた春菜は私のベッドで寛いでいた。ストレートのロングヘヤーを手櫛しながらぼ~っとしていた。
「お待たせ。はい、麦茶だよ」
「あ、有難う。頂きま~す」
そう言って一口口に含んだ。春菜の一つ一つの仕草がとても可愛くて、愛おしくて、凄くドキドキするのだ。私は春菜の隣に腰掛け麦茶を一口飲んだ。暫くいつもの何気ない会話を一時間くらいした。
「もう、こんな時間。そろそろ帰ろうかな」
春菜は時計を見ながらそう呟いた。まだ、まだだ!まだ一緒に居たいぞ、私は。私は春菜の手をそっと握った。
「…まだ、一緒に居たい」
甘えた声色で春菜を見つめた。少し瞳をウルウルさせながら。そんな何時もの私ではない私を春菜は驚いた表情でいた。
「今日はやけに女の子らしいじゃん。どしたのさ?」
「私は女、だよ」
「知ってるけど。いつもの冬菜じゃないよ。すごく女の子っぽい」
「これも私よ。こんな私は、イヤ?」
そう言って首を傾げてみる。うん、我ながらすごく小悪魔女子だ。こんな私を見たら春菜は悶絶するかもしれないぞ。よしよし…。
すると春菜はいきなり私を抱きしめてきた。少し体が震えているのがわかる。どうしたのかと思いながら彼女の背中をポンポンと優しく叩いた。
「…こんな冬菜、ズルい」
「ズルいって。どういうこと?」
「可愛すぎ。こんな冬菜、みんな好きになっちゃう」
おいおい、私の彼女がいきなり嫉妬し始めたぞ。ちょっとやりすぎた?そう思いながら黙っていると春菜は話を続けた。
「こんな冬ちゃん、私以外絶対見せないで」
「ん。春ちゃんだけにしか見せない」
「ホント?」
「ほんと。絶対見せない」
「ん。約束」
そう言ってチュっとキスをする春菜。ちょ~可愛い~!!悶絶する私。今回のドッキリってドッキリ成立するのか?そう思いながらキスを交わした。長いキスが続いている。部屋中にちゅっちゅ、とリップ音が鳴り響いている。
「ん~。ちょ、春菜?キスしすぎ」
「ちゅっ。だって、したいんだもん。私すごくドキドキしてる。冬ちゃんのせいだからね」
そう言ってまた唇を交わす。そうして私の手をつかんで自分の胸に手を当てる。うん、確かにドキドキしているのがわかる。私だってドキドキしてるんだが。春菜の動悸を感じながら私の動悸も春菜に知ってほしいと思った。
「私もドキドキしてるんだよ?知ってる?」
私はそう春菜に伝えて春菜の手を取り自分の胸を押し当てた。すると春菜は驚いた表情で私の動悸を感じていた。
「ほんとだ。冬ちゃんってドキドキするんだね」
「私だって恋する乙女なんだよ」
「ふふ。確かに。誰に恋してるの?」
小悪魔な表情で薄笑いしながらそう尋ねる春菜はとっても魅力的だった。当たり前答えを求めているな、この小悪魔美少女め。
「目の前にいる、貴女に。私は恋してます…」
そう言って目を瞑った。春菜は、ふふ、と笑いキスした。いつもは口と口を重ねるだけのキスなのだが、今日の春菜はそれだけは満足できなかったのか私の口を春菜の舌でこじ開けると舌を絡め始めてきた。
「ん~…。ん、ん~」
お互いの舌を絡ませ悶絶するような声を出しながら大人のキスをした。
「あん…。春菜…、エロい」
「だって…。たまにはいいでしょ?今日の冬菜は凄く可愛い女の子だったもん」
「有難う。こういう私もいいでしょ?」
「こっちがいいけど。ほかの子に見られると好きになっちゃうから見せちゃダメ」
「見せないって。普段の私はモテないし。春菜だけの私だよ」
「約束だよ。私だけの冬菜だよ」
「勿論。という訳で、可愛い口調の私が魅力的だった件、ドッキリ大成功!」
ネタバラしをする。春菜は大きな声で笑った。なんとなくそう思っていたのだろう。私には演技は向いてないらしい。でも可愛い春菜がいっぱい見れたし、キスもいっぱいしたし、満足だ。
「途中から気づいてたでしょ?」
「うん。でも可愛かったから黙ってた」
「私も可愛い春菜を見れて楽しかった。ほかの女やまして男なんかに見せないでよ?」
私は嫉妬深い。春菜に釘を刺すと大きく頷いた。
「しないしない。絶対しないよ。安心して」
「でも春菜は陽キャだからな~。友達多いし。毎日心配だぞ」
「大丈夫。冬菜が一番だから。キスしたり触ったりするのは冬菜だけだよ」
「ん。ならいいけど。浮気はダメだぞ」
「しないも~ん。冬菜に嫌われたくな~い」
そう言いながら私に抱き付く春菜。私は抱き返して体を左右に揺さぶり顎を春菜の肩にあてた。
今日のお家デートは甘々でドキドキしっぱなしだったなぁ。まぁ、毎日イチャイチャしているけどな。ずっと春菜と恋人同士でいたい。そう思いながら午後7時まで私の部屋で春菜といちゃついていた私達だった。