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第8話 ミューズの表と裏

「殿下、失礼いたします」

入ってきたティタンはソワソワしていた。


自分の婚約者が王太子と一緒なのだ。


自分がいない間に何の話をしていたかは正直気になっていた。





「すまないが、先にミューズ嬢と話をさせてもらっていた」

「この間のお礼の話をしていたの。お二人にはお世話になったもの」


エリックに座るように言われ、ミューズの隣に大人しく腰をかける。


「安心しろ、何もなかったぞ」


ティタンの表情を見てそう話す。


「す、すみません」


そんな人ではないと、知りつつも邪推してしまった。





「俺にはレナンがいる。そのレナンについて何だが二人にお願いがあってな。ミューズ嬢にレナンの友人になってほしいのだ」


「私に?」

王太子の婚約者であるレナンとは同じ公爵令嬢ではあるものの年も違い、接点がなかったので話したことはあまりない。


「レナンは王太子妃となるのだが、なかなか良い友人に巡り会えなくてね。君なら彼女を蹴落とそうとしたり、打算を持たずに接してくれそうだなと思って」


「ですが、私も友人は少なく評判も良いとは言えない身ですが」


病により皆と距離が出来ている。


「それがいい。つまり病によって離れなかったものは、君を大事に思う本当の友人だからな。ティタンもミューズ嬢も俺に恩を感じるならばぜひレナンをお願いしたい」

そして、と続ける。


「王太子妃教育ばかりも可哀想でな。こちらに来てお茶でも一緒に飲んでもらえばそれでいい。ミューズ嬢は博識だし、異国からの贈り物など一緒に見て頂ければなと思った」

ミューズはエリックの言葉の裏を考える。


呪いの品があったら教えてほしいという事だろうか。


「ただ来るだけではなく、ティタンが訓練してる時など見学してもらって構わない。その許可を出しておく」

「いいのですか?」

パァーッとミューズの表情が明るくなる。


愛しのティタンの仕事風景も見られるなんてと嬉しく思う。


ティタンは少し恥ずかしそうだ。


「そんな汗臭いところわざわざ見なくても」

「あなたの頑張っているところぜひ見たいわ」


ミューズはうっとりとした表情だ。


「私で良ければぜひお受けいたします」


こそりとサミュエルがエリックに耳打ちする。

「よろしいのですか?そんな許可を与えて」

「見えないところに置くほうが逆に不安だ。それにティタンがいる限り、ミューズ嬢も下手なことはしまい」

側に置き、監視したいのもある。


あとはミューズの良心任せだ。






それからミューズは王宮へ時々来てレナンとお茶をしたり、騎士の訓練を見学していた。


レナンとは話が弾み、とても仲良くなった。


騎士団の者たちも、ティタンの婚約者があまりにも美人で驚いていた。


隣国の王女が口説いても靡かない理由がわかったようだ。


慎ましくお淑やかなミューズは、見る人の庇護欲を駆り立てる。

騎士団の中でも見惚れるものが増えた。





やがてミューズはしばらくぶりの夜会に出た。


レナンからも誘われ、呪いから復帰後初の参加だ。


エスコートはもちろんティタンに頼み、親しい友人たちにも手紙を送っていた。


しばらくぶりのため、緊張感が凄まじい。


ティタンのエスコートで入場すると、どよめきが聞こえる。



醜いなんてものではない。

肌は白くキメ細かい。シミなどないように思えるほどの透明感だ。


豪奢な髪には、薄紫の花と宝石が髪と共に結い上げられていた。


豊かな胸とほっそりとしたウエスト。



視線を感じたティタンはヤキモチからか、ミューズの腰へと手を回し、自分の方へと寄せた。


「頼むから俺から離れないでくれよ」

「あら、頼まれても離れるつもりはないわ」


微笑み合い、寄り添う時間は二人にとって何より幸せだ。


もう誰も二人を邪魔することはないだろう。






ミューズはティタンがいつか絶対に王族付きの騎士になることを確信していた。


彼の腕前は本当に凄いし、その強さは必ず認められると思っていたのだ。


そしてミューズも謀らずとも王太子妃の友人になることができ、強力な後ろ盾を持つことが出来た。


自分たち以外の公爵家二つも潰せたし、スフォリア家の地位もますます上がっている。




そんな二人の邪魔をするものなど、この国にいるわけがない。


懸念はティタンに言い寄ったという他国の王女だけだ。


(何かあれば排除も厭わないけど……)

そんな事はけしてティタンに知られてはならない。


エリックも止めることはしないだろうが、先に相談くらいはしておいた方がいいかもしれない。


穏便に追い返せればそれでいい。

そうでない場合は……。




ティタンの腕に絡めた指に力が入る。


「本当に、ずっと一緒だからね」

不安そうなミューズに、ティタンは優しく笑う。

「あぁ。ずっと一緒だ」


ミューズの心うちなど何も知らないその笑顔は眩しすぎる程だ。





この幸せがなくなりませんようにと、ミューズはそう願うばかりだ。



王太子妃の部分から大幅な加筆をしました。




少しだけ問題はあったものの、お互いを思う気持ちに変わりはない、というお話でした。


ここまでお読み頂き、ありがとうございました(*´ω`*)



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