エピローグ
開戦時、海軍軍令部総長だった永野修身大将は、戦後、極東軍事裁判の被告とされ、真珠湾奇襲計画に関する責任を問われました。検事の尋問に対して永野修身は「そのとおり」、「しかり」、「もちろん」と簡潔に答弁し、すべての責任を認めました。真珠湾奇襲についての心境を外国人記者に問われた際、永野は「軍事的に見て大成功だった」と答え、あとは沈黙しました。
たしかに真珠湾奇襲は戦術的に大成功でした。アメリカ太平洋艦隊をほぼ壊滅させたのです。その効果により、日本軍は南方作戦をとどこおりなく順調に遂行することができました。第一段作戦は順調に進みました。
しかしながら政略的には失敗でした。アメリカ政府に誘導され、アメリカ政府政府の思惑通りに格好の参戦理由を与えてしまったからです。参戦反対だったアメリカ世論は、真珠湾奇襲の報を聞くと一変して参戦を支持することとなりました。そこには、ルーズベルト大統領による周到な陰謀と一世一代のウソ演説がありました。
日本を外交、経済、軍事の各方面から圧迫して日本軍に初弾を撃たせる、というアメリカ参戦のための陰謀は、日本軍に対する過小評価を前提にしていました。つまり、ハワイを日本軍に攻撃させてもさほどの被害は出ないという想定です。だからこそ、このような陰謀を実施できたのです。ところが、五十六によって錬成された精強な日本海軍航空隊は大戦果をあげました。これはルーズベルト大統領にとって計算外だったに違いありません。
真珠湾奇襲の翌日、連邦議会の演説でルーズベルト大統領はアメリカ国民を騙しました。しかし、真珠湾の大被害に驚き、怒ったアメリカ国民は大統領の嘘を看過してしまいます。結果、アメリカ国民の絶大な支持を背景として、ルーズベルト大統領は国力のすべてを戦争に投入することができ、連合国を勝利に導きました。
しかし、歴史はここで終わるわけではありません。真珠湾奇襲による被害があまりに甚大だったため、ルーズベルト大統領は陸海軍の現場責任者を処分せざるを得ませんでした。米太平洋艦隊司令長官キンメル大将とハワイ方面軍司令長官ショート中将は解任され、降格処分を受けたのち予備役に編入されました。
真珠湾の大損害を重視したアメリカの政府、連邦議会、陸軍、海軍はそれぞれ原因究明のために調査委員会を設置しました。これらの調査委員会は、いずれもアメリカ政府の正統性と日本の侵略性を指摘し、ルーズベルト大統領を擁護しました。政治的配慮がなされたからです。それでも、これらの調査によってルーズベルト大統領にとって不都合な事実の存在があぶり出されました。
「日本を圧迫すれば戦争になる」
という駐日大使グルーの度重なる警告はルーズベルト大統領によってことごとく握りつぶされていました。アメリカが不条理な要求を日本に突きつけた日米交渉の経過は連邦議会に報告されていませんでした。米英の戦争協力は、ルーズベルト大統領の独断により秘密裏に進められていました。事実上の対日最後通牒となったハル・ノートの過酷で理不尽な内容は連邦議会に知らされていませんでした。連邦議会の承認なく最後通牒を発出するのは憲法違反です。日本海軍の機動部隊がハワイに接近していた事実をアメリカ政府中枢は把握していたにもかかわらず、なぜかハワイの陸海軍司令部に伝えませんでした。そして、アメリカ政府は、キンメル大将とショート中将に弁明の機会を十分に与えようとしませんでした。こうした諸々の事実が白日の下に曝されました。
ここにおいてルーズベルト大統領に対するさまざまな疑義が生まれます。アメリカでは、戦中から戦後にかけて、ルーズベルト大統領は自由と民主主義を守った英雄として礼賛されていましたが、時間の経過とともに一部の識者から冷静な批判が向けられるようになっています。保守派の歴史学者は「歴史修正主義者」という罵声を浴びながらもルーズベルト政権の真実を追究し続けています。
日本においても、GHQによる洗脳を脱して極東裁判史観を否定する言論が現れています。戦争には敗れたものの、歴史戦において反撃する機会はまだ日本に与えられています。今後、われわれ日本人の態度次第では、アメリカの欺瞞と大東亜戦争の真相をあぶりだし、それをアメリカや国際社会につきつけて問い質す機会は残されています。その機会を活かすも殺すも、われわれ日本国民の意志次第です。
後世のわれわれに名誉回復の機会を与えてくれたのは、真珠湾奇襲を大成功させた先人たちです。もし真珠湾奇襲の戦果が軽微であったなら、アメリカ軍の責任者は誰も処分されなかったでしょうし、アメリカ政府も連邦議会も陸軍も海軍も調査委員会など設置しなかったでしょう。結果、ルーズベルト大統領の悪辣な日本圧迫工作は歴史の闇に葬り去られていた可能性が大きく、勝者(連合国)が驕りとともに書き記した捏造史観(極東裁判史観)を修正する機会は永遠に失われていたと思われます。
その意味において、日本海軍の機動部隊が真珠湾在泊のアメリカ太平洋艦隊に大打撃を与えた戦果は誇るべき武功です。真珠湾奇襲の大成功によってこそ、歴史の真実を後世に知らしめる端緒が開かれました。あとは、後世の日本国民がどうするかという問題です。




