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第四話『寡黙な召喚執事と鯉の会』1

 「……減るもんじゃない……」

 「減るんです!」

 「……何が?……」

 「心ががです!乙女ががです!」

 「……………」

 「んー!!!!」


  ★夜衣花★

 退魔の依頼にはそのほとんどにクラス付けがされている。

 それを決めているのが、現地にいる情報を主な生業とする特殊な退魔士達が決めているから、詳細な基準は知らないけれど、下からF・D・C・B・A・Sとなっていて、上に行けばいくほどより強くて厄介な退魔対象となっている。

 数日前に戦ってみょんネエを巻き込んだあの魔物のクラスはA級。

 普通は一人でやる退魔じゃないのよね………まあ、多分、分家達の嫌がらせでエレアやガルンが所用で出掛けている私の所に来たんだろうけど………ん~………まあ、みょんネエと言うイレギュラーがなければ簡単に終わってたと言えば、終わってた退魔だったけど………あれは上手い具合に増える前に叩けたから、実際の所はB級だったかな?多分だけど、増え切った事を想定してのクラスだったと思うし………

 っで、今回、私が急遽受ける事になった依頼は、S級。

 その多くが『国単位以上の被害・影響が出る魔物が対象になるクラス』で、退魔の対象である魔物の名前は『でいだらぼっち』

 ダイダラボッチとか、だいらんぼうとか、地方によっては色々な名前で呼ばれている巨人の妖怪。と言えば、知っている人は知ってるかもしれない。

 実の所言えば、その多くが、それぞれ名前ごとに全く別の魔物だったりするんだけど、共通した似た被害を出すから、巨人で同じ被害を出す魔物をその妖怪の名前で呼んでて………そのどれもがS級退魔対象になったりする。

 妖怪の方の話を知っている人なら知っているとは思うけど、ダイダラボッチなどと呼ばれる妖怪は、山を作ったり、移動させたり、池を作ったりする話が多い。

 要するにそれだけ巨大で、場合によっては『事象干渉能力』があるって事。

 そんな魔物を放っておけば、あっと言う間に国は滅茶苦茶になっちゃう。

 でも、それだけ巨大だから、簡単に倒す事が出来なくて、多くの場合が退魔士側に多大な被害を出していた。

 そんな多大な被害を出したでいだらぼっちの一体が、富士の樹海に封印されてて、毎年封印が弱まるこの時期に黒樹家かその分家が再封印を施してる。

 これはそのでいだらぼっちに施した封印が、黒き大樹の『接ぎ木法』と呼ばれる封印方法されている為。

 接ぎ木法は、封印対象の周りの木々にその名の通り黒き大樹を接ぎ木して、その場に封印対象を縛り付ける方法で、これを行う事で封印対象から魔力を奪いつつ……時間は掛るけど……消滅させる事が出来る。………もっとも、これには、定期的に接ぎ木に使った黒き大樹の枝を交換しないといけない欠点がある。元々黒き大樹は魔力が満ちた黒樹家の人間の心の中で安定して存在できる一種の魔物だから、接ぎ木によりある程度安定させているとはいえ、どうしても劣化しちゃう。だから、黒樹家とその分家が持ち回りで再封印・新たな接ぎ木を追加しなくちゃいけないんだけど………実は、今回の担当は分家の、しかも、六大分家と呼ばれる数多くある分家の中で最も力を持った六分家の一つ『赤樹(あかき)家』が担当するはずだったんだけど………

 「誠に申し訳ございません黒き大樹の戦巫女」

 そう言って頭を下げる赤樹家に仕える武装メイド。

 武装メイドと言っても、こっちはエレアと違って黒樹家分家出身の武装メイドで、メイドの格好もしていない。

 ………まあ、武装メイドって言っても、本当にメイドの格好をしている人は結構少ないって話なんだよね………まあ、慣れたからいいけど………

 エレアを見てため息を吐き、エレアを困惑させながら、

 「一体どういう訳でこっちに回ってきたんです?赤樹家次期当主・琶夷袖(べいじゅ)はどうしたんです」

 そう聞くと、赤樹家の武装メイドは困った顔をして、

 「それが………行方知れずでして………」

 「はぁ?行方知れずって………」

 あの女………何度こっちに迷惑を掛ければ気が済むんだ!………まあ、半殺しにした相手だから、恨んでるのは間違いないんだろうけど………そう言えば、この間の退魔も赤樹家から回ってきたっけ………最近多いな赤樹家中心の嫌がらせ………とりあえず言う事だけは言っとくべきかな?

 「百歩譲って赤樹家が再封印を出来ない事は認めますが………どうしてそれが私に回ってくるんです。他の六大分家は?」

 「申し訳ございません。他の分家方々も別の退魔などでこちらに回せる余力が無いそうなので………」

 ………この間の退魔の時も同じ事を言うのね………と言うか、

 「いくら再封印するだけの簡単なS級退魔だからと言って………優先順位がおかしいでしょ?いくらなんでも」

 「申し訳ございません」

 ………この人に文句を言ってもしょうがないか………申し訳ございませんしか言わないし………

 私はため息を吐き、背後の樹海を見た。

 正確には、認識障害の人払いの結界が張られている樹海を見た。

 封印が弱まっているせいか、若干歪んで見える。

 「………まあ、あまり時間もないみたいですし………ちゃんと再封印しますから、あなたは帰っていいですよ」

 「はい。ご無事をお祈りいたしております黒き大樹の戦巫女」

 赤樹家の武装メイドは私に一礼して、さっさと帰って行った。

 ………まあ、武装メイドって言っても、私の武装メイドじゃないしね………

 っで、その私の武装メイドは、遅れているみょんネエに連絡を取っていて、

 「だーかーらー黒色の肌に、銀色の髪のオールバック、赤い瞳の執事服の男だって言ってんでしょうが!」

 ………どうも所用で離れていたもう一人の仲間ガルンと中々合流できないみたい。

 みょんネエが私の過去を聞いても仲間のままでいてくれた事はうれしいけど………ガルンの奴、一体何をしてるのかしら?

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