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第三話『戦巫女と言わざる魔法使い』7

  ★相島★

 「兄さんと会ってるんですか?え?だって、さっき、妹だって教え………あ!」

 そこまで言って、私は言葉のある可能性に気付いた。

 教えていないって事は………

 「「そう、夜衣花君は、赤の他人として会っている。確か、両親の知人の娘と言う事になってるんだったかな?そして、仕事で忙しい知人の頼みで、長期休みの時のみ預かっている。と言う設定で会いに行っているそうだ」」

 日向さんが、まるで私の心を読んだかのタイミングでそうパソコンに言わせた。

 やっぱり………本当の兄妹なのに……妹だと名乗れず、接せられず………夜衣花ちゃんは今、どんな気持ちなんだろう?会いに行っているって事は、お兄さんの事を好きなんだろうけど………ふと思ったけど、

 「………これって、普通ならお兄さんを逆恨みしてもおかしくない状況ですよね?」

 「「確かに夜衣花君は兄の事を一時期恨んでいたそうだ」」

 やっぱり………

 「「だが、初めて会った時、次期当主候補として接する周りとは違い、普通の女の子として、不器用だが優しく扱ってくる兄に接する事で、恨みの心は消えたそうだ。むしろ、今は非常に、普通の兄妹以上に慕ってるようだな」」

 「そうなんですか……そうですよね。じゃなきゃ、休みの日にわざわざ忙しい合間を縫って会いに行きませんよね」

 「「だが、それによって夜衣花君は、『一つの事件』を起こす事になる」」

 「え?事件?」

 何だが嫌な予感がした。

 今まで聞いた話も十分嫌な話だったけど、少なくとも夜衣花ちゃんと契約を切りたくなる様な話じゃなかった。

 つまり、ここからが本題……そんな気がして……

 「「切っ掛けは、黒樹家。正確には四姫の命令で、夜衣花君の兄と同じ学校に分家次期当主達を密かに転校し………端的に言えば、兄をいじめさせた事」」

 「いじめさせた?え?何でです?どうしてそんな事を?」

 「「簡単な事だよ。取引はしたが、四姫は種なしの存在を許すつもりなんて毛頭なかったって事さ」」

 「でも、殺さない約束になってたんですよね?」

 「「そう、だから、黒樹家は直接殺せなかった」」

 そう言われ、私は寒気が走った。つまり、

 「間接的に殺そうと……夜衣花ちゃんのお兄さんを、『自殺させようとしていた』んですか!?」

 自分で言っておきながら、その言葉に私は愕然とした。

 自殺させる為に自分の親族を送り込む。

 馬鹿げた話で、とてつもなく恐ろしいけど………今、夜衣花ちゃんが会いに行ってるなら……

 「「結果として、それはうまくいかなかった。夜衣花君の兄は、一時期引き籠りにはなったようだが、自殺までには至らなかった………いや、正確には、自殺させるまで追い詰め様とした直前に、夜衣花君にその事がばれてしまい……その策略は夜衣花君によって潰された」」

 「夜衣花ちゃんに?ご両親じゃなくて」

 「「そう。文字通りにね」」

 文字通り?

 「「慕う兄が自殺寸前まで追い詰められている。それを知った夜衣花君は怒り狂い………いじめていた分家次期当主達・親族会議で集まっていた分家当主達と四姫を、『半殺しにした』って事だよ」」

 「っは!半殺し!?」


  ★夜衣花★

 今頃………日向さんが話してるんだろうな………あの事件の事を………自分で日向さんに話して貰う様にしておきながら………後悔の心がどこかにあるのか………ドキドキする。

 もし、あの話を聞いて、拒絶されたら………

 そう思うと………出会ってほんの数日しか一緒にいないのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう?不思議でしょうがないけど………人との出会いってそういうものなのかもしれない。どれだけ一緒に過ごしていようと、別れを辛く感じない相手もいれば、短い時間なのに別れが辛い相手………お兄ちゃんみたいな人もいる。

 「夜衣花お嬢様。着きましたよ」

 思考に没頭していると、いつの間にか目的地に着いていた。

 「エレアはいつもの場所にいますので、何かあった場合はいつでも呼んでください」

 「あのね。何かある事なんてあるわけないでしょ?まったく、心配性なんだから」

 心配そうな顔をするエレアに、私は思わず苦笑した。

 「ですが、兄妹とは言え、向こうは夜衣花お嬢様の事を妹だと知らないんですよ………もし」

 「はいはい。気を付けるから、じゃあ、行ってくるね」

 「あ!夜衣花お」

 まだ何か言いたそうなエレアを無視して、さっと車から出てドアを閉める。

 まったく、そんな事、あのお兄ちゃんに限ってあるわけないでしょ?本当にエレアは心配性なんだから………

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