第三話『戦巫女と言わざる魔法使い』3
★相島★
無意識魔力吸収蓄積病の治療には少なくとも数日の時間が必要らしく、私は日向さんに預けられる事になった。
その間、夜衣花ちゃん達は前から決まっていた別の用件を済ますらしいけど………何だか心細くて、不安なんですけど………。
私の不安を余所に、日向さんは、ノートパソコンを言語出力とは違う操作して………その掌に光の塊を出現させ、何もない壁にその光の塊を投げ込んだ。
光の塊が壁に当たった次の瞬間、壁に光の塊がまるで水面に小石を投げ込んだかの様に消え、唐突にドアが現れる。
驚く私を余所に、ミーコさんが扉を開いて………そのドアの向こうには、草原と大きな屋敷が見えて、私は絶句。
「こちらがマスターの研究所です」
私は恐る恐るドアの向こうを覗き込み、吹き込んでくる自然な風に、思わず茫然とミーコさん・日向さん・エレアさん・夜衣花ちゃんの順に顔を見た。
「隔離結界を二度も経験しているのに、こんな事で驚くわけ?」
と若干小馬鹿にした感じでエレアさんが言うけど………こんな事って………普通は驚く事よね?
「御安心ください相島様。このマスターの研究所は、ちゃんと地球上にありますので」
えっと……何が安心なんだろう?………ん?………地球上?………それって、
「まるで地球外にもあるみたいな言い方ですよね?」
「はい。ありますけど、それが何か?」
平然と答えるミーコさんに、私は再び絶句するしかなかった。
………魔法使いって………凄過ぎ………でも、そんな魔法使い達を夜衣花ちゃん達退魔士が滅ぼした事があるって言うのが………?
チラッと夜衣花ちゃんを見ると、夜衣花ちゃんは何か難しい顔をしていた。
そして、私の視線に気付くと、少し笑って………何だか何かを決意した様な、そんな笑みだった………日向さんを見た。
「日向さん。相島命子さんの治療の他に、もう一つ依頼してもいいですか?」
「「構わないが、一体どんな依頼だい?」」
唐突な依頼と言う言葉に、夜衣花ちゃん以外のこの場の全員が怪訝な顔になった。
「簡単な事です。病気の治療中に、命子さんに私達側の基礎的な事を教えて欲しいんです」
「「………そんな事なら、君でも出来るんじゃないのか?」」
「かじった程度の知識より、日向さんが説明した方が分かりやすいと思いますけど?」
「「さて?どうだろうね?」」
「それに、魔法の事はついでです」
「「ついで?」」
「はい、本当に命子さんに教えて欲しいのは………」
「「………ああ、そう言う事か………まったく、君と言う子は………」」
何かを納得したのか、若干困った様な優しい笑みを夜衣花ちゃんに向ける日向さん。
私は意味が分からず困惑していると、夜衣花ちゃんが私に向き直って、
「そう言うわけで、治療中に日向さんから色々な事を教わってください。そして、」
そして、私に向けられた夜衣花ちゃんの言葉に、私は困惑した。
「一昨日契約したばかりでなんなのですが………もし、日向さんの話を聞いて、気が変わったのなら、契約の破棄を日向さんに言ってください。あ!もちろん、契約を破棄したからと言って、治療費の請求はしませんから」
そう言って、明らかに作り笑いだと分かる笑顔を私に向けた。
★???★
レンタカーの中で、夜衣花は助手席に座り、じっと窓の外を見ていた。
エレアはその夜衣花に心配そうに声を掛ける。
「夜衣花お嬢様。……よろしかったのですか?」
「何が?」
夜衣花は窓の外を見たまま、若干不機嫌そうな声で問い返した。
「その……あの女の事………気に入っておられたでしょ?何もこんなに早く……しかも、あの男に話させる事は………」
「………このまま一緒に仕事を続けていけば、いずれは知る事だし、こっち側に深く入り込んでから知るより、出来るだけ早く知っておいた方がいいでしょ?」
「それはそうかもしれませんが………」
「日向さんにお願いしたのは、当事者である私達が話すより、第三者である日向さんが話した方が………みょんネエが、ちゃんと自分の判断で選択出来るはずだから………大体」
そこで窓の外を見るのを止め、からかう様な笑みをエレアに向ける夜衣花。
「みょんネエの事をエレアは嫌ってたんじゃないの?」
「それはそれ。これはこれです。ただ、エレアは夜衣花お嬢様が悲しむ姿を見たくないだけです」
「そう………ありがとうエレア」