第三話『戦巫女と言わざる魔法使い』1
「「そうか……君は随分損な性格をしているな。………流石は主人公と言った所か………」
「主人公?」
「「いや、何でもない………願わくば、君に与えた運命を変える選択が、あらゆる宿命の悪意に打ち勝つ事を」」
★???★
彼は夢を見る。
彼が力を得てから時より見る様になった夢だが、ここ最近はその頻度が増していた。
これは予知夢。
未来に起こる可能性の一つを見せる夢。
周囲の情景はぼやけているが、ここが大きな橋の上だと言う事は分かる。
その橋の上で彼は待っていた。
誰を待っているか、何度も同じ夢を見た彼には分かっていた。
ほどなくして、彼の前に待ち望んでいた人物が現
彼は不意に目を覚ました。
いつもとは違う中途半端な所で目を覚ました為、やや意識が朦朧としている。
「お休みでしたか、申し訳ございませんマイマスター」
その声は男の隣に立つ女性から発せられた。
目が途中で覚めた原因は、彼女が部屋に入ってきたせいだと分かったが、彼は別の意味で眉を顰める。
どこか全体的にとろんとした感じのその女性は、何故かナース服を着ていた。
彼が今居る場所は、彼が隠れ家として使っているビルの一室。
クリニックがビルに入ってわけでもないし、彼は医者でもない。
意味が分からず、彼は、自分が座る電動車いすに備え付けられているノートパソコンに文字を打ち込む。
すると、ノートパソコンから男性の人工音声が発せられた。
「「何でナース服なんて着ている?」」
その問いに、彼女は笑顔で、
「黒樹夜衣花様が病人を連れてくるそうですから」
っと答え、彼は眉を顰めた。
「「夜衣花君は勘違いしているのかな?僕は医者じゃなくて、魔法使いなんだかね」」
そうつぶやきをノートパソコンに入力し、苦笑混じりのため息を吐いた。
★相島★
「言わざる魔法使い?」
私の問い返しに夜衣花ちゃんは頷いた。
魔法使いに襲われた翌日、私達は、エレアさんが運転するレンタカーで、とある町に向かっている。
何でも退魔士………正確には夜衣花ちゃんとその仲間のみに協力している魔法使いがいる町だとか。
そして、その魔法使いに私の病気を診て貰う。
それだけを聞かされて車に乗り、車中でその魔法使いの話を聞いているんだけど………
「言わざるって事は、喋らない魔法使いって事だよね?でも、魔法使いって、呪文とか唱えなくちゃいけないんじゃないの?」
その疑問に夜衣花ちゃんは首を横に振った。
「私もそれほど詳しくないですけど、一概にそういうわけでもないらしいんですよ。特に現代の魔法使いは、昔の魔法使いとは別物ですから」
別物ね………あれ?そう言えば……
「ねえ?夜衣花ちゃん。昨日、退魔士と魔法使いは基本的に対立関係にあるって言ってなかった?その魔法使いの人は、大丈夫なの?」
「大丈夫です。今から会う魔法使いは………公然と味方だとは言えませんが、間違いなく私達の味方ですから」
?………意味が分からない。
顔にそれが出ていたのか、夜衣花ちゃんは苦笑して、
「色々と複雑なんです。その内にその辺りの説明もしますから、今はとりあえず、彼の事は内緒でお願いします」
「内緒?」
「はい。私達以外の、他の退魔士の前で彼の事を喋らないでください」
………よく分からないけど、
「分かったわ」
私は頷いた。