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第二話『不幸な彼女と過保護な武装メイド』12(終わり)

  ★???★

 「出てこい!いるのは分かっている!」

 男の呼び掛けに一拍間を置いて、トンネル先に変化が起きた。

 空間の一部に歪みが生じ、そこから真っ赤な着物姿の女が悠然と現れる。

 その女は、染めているのか、腰まである髪すら真っ赤で、カラーコンタクトでも入れているのか、瞳すら真っ赤だった。

 女は、クスクスと笑いながら、男を見る。

 「呼んだ?」

 とても朗らかな笑みを男に向けているが、状況に合わない上に、どこかおかしなものを感じさせる笑み。

 一瞬、男は悪寒に襲われた。

 男は魔法使いだ。

 現代の魔法が科学的に再構成され、なる者もしくは使い手に掛る負担が昔より掛らなくなっているとは言え、負担が全く無くなっているわけじゃない。

 だから、『狂った人間』なら『よく見ている』。

 そんな男でも、女の狂気は、悪寒を抑えきれないものだった。

 しかし、だからと言って、男は引き下がれるわけがない。

 「これは一体どういう事だ!いくら私が依頼を失敗したからと言って!いや!そもそも、なぜ依頼主がここにいる!?」

 その疑問の答えを、真昼はクスクス笑いながら口にした。

 「だって、近くにいないと夜衣花ちゃんを助けられないじゃない?」


  ★相島★

 「ところでお姉さん」

 なんのかんので何でか三人で寝る事になり、用意された寝巻きに着替えた時、不意に思い出し様に夜衣花ちゃんが私を呼んだ。

 ちなみにエレアさんは、食器を洗いに行ってる………私も手伝うって言ったんだけど………物凄い怖い笑顔で拒否された………仕事を奪うなって事なのかな?

 「私が意識を失う前、私の頭を撫でたのって、お姉さん?」

 頭を撫でた?

 あの場ではエレアさんが私を夜衣花ちゃんに近付けさせなかったし……そもそも、私達が夜衣花ちゃんを見付けた時は、既に意識を失ってたし、誰もいなかったけどな………。

 その事を夜衣花ちゃんに教えると、夜衣花ちゃんは眉を顰めて首を傾げた。

 ………それにしても………

 「ねぇ、夜衣花ちゃん。その、私の事をお姉さんって呼ぶの止めない?」

 私の提案に、夜衣花ちゃんはちょっとだけ目を瞬かせて、笑顔になった。

 「うん。私もそう思ってた……ん〜でも、なんて呼べばいい?」

 「何でもいいよ」

 「何でも?………じゃあ…………」

 おずおずっと言った感じで夜衣花ちゃんは、

 「みょんネエ?」

 っと言った。

 ……………命子だから?……………

 「………ダメ?」

 何だか可愛らしく問われた。

 そんな顔されたら………拒否なんか出来ないじゃない。

 私はちょっと苦笑して、

 「いいわよ。それで」


  ★???★

 男は困惑した。

 殺害を依頼した人間が、殺害しようとしている人間を助ける。

 その真意が分からない男は困惑したまま、紙を取り出し十数体の式神を作り出した。

 真意が何にせよ。女が男をこのまま素直に帰すわけがない。

 迎撃態勢に入った男をよそに、女は何故か右掌を愛おしそうに触りながら笑っている。

 「あ〜あっ。本当だったら、頭を撫でるだけじゃなくって、抱き付いたり、一緒に寝たり出来ていたのに」

 そうつぶやいた女は、不意に笑顔を消した。

 その次の瞬間、男の眼前に女の顔が現れ、

 「てめぇのせいだ。屑男」

 男は腹部に痛みを感じた。

 ゆっくり視線を下に向けると、そこにはいつの間にか女の手に握られていた『赤い木刀』が突き刺さっていた。

 反射的に男は式神を操ろうとするが、式神は応えない。

 それどころか、式神達はただの紙に戻り、男は『魔法使いとしての感覚を失った』。

 「黒樹家の……魔法………殺し!?」

 男の苦しそうに言った言葉に、女は再び笑みを浮かべた。

 ただし、今度は朗らかな笑みではなく、残忍な笑みを浮かべて、突き刺した木刀を一気に引き抜く。

 男の腹部から血が噴き出し、反射的に腹部を抑えようとする男の両手を、女は斬り飛ばした。

 大量の血を流し、男はゆっくりと倒れ、息絶える。

 女はその様子をクスクス笑いながら見詰め、男が動かなくなった事を確認すると、赤い木刀を何度も何度も男の遺体に刺し、更に大声で笑った。

 そして、不意に不快そうな顔になり、木刀を体内に消して、どこへともなくつぶやきだす。

 「あ〜あ!これでようやく夜衣花ちゃんと仲直り出来ると思ったのに、台無しよ」

 つぶやきながら、歩き出し、今まで執拗なまでに痛めつけていた遺体に見向きもしない。まるで始めからそこに何もなかったかの様に。

 「ピンチの夜衣花ちゃんを私が颯爽と現れて助けて、ありがとうお姉ちゃん。今まで怒っててごめんね。ううんいいのよ夜衣花ちゃん。だって、妹を助けるのは姉として当然でしょ。お姉ちゃん。そして、二人はひしっと抱き合う………そうなるはずだったのに!その為に雇ってやったって言うのに!使えない!」

 それまでにこにことつぶやいていた女が、唐突に激昂し、振り返り、遺体に下に戻って、遺体を蹴り出した。

 しばらく一心不乱に蹴り付けた後、またしても唐突にそれを止め、天井を見上げて明らかに狂気を宿した笑みを浮かべる。

 「そう言えば……そろそろだったわね?あれ」

 トンネルの一部がカサカサと動く。

 「じゃあ、夜衣花ちゃんにやって貰うように働きかけなくっちゃ。うふふ。待っててね夜衣花ちゃん。今度こそ夜衣花ちゃんのピンチを救ってあげるから」

 そう言って女は笑いながらこの場を去り、後に残されたのは証拠隠滅の為に、死体や車に群がり喰らう無数の蜘蛛達のみだった。

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