第二話『不幸な彼女と過保護な武装メイド』9
★相島★
拾ったノートパソコンの画面には、多分ここら一帯の詳細な地図と…………画面を埋め尽くすほどの式神と戦っている夜衣花ちゃんが映っていた。
っど!どういう事!?なんで夜衣花ちゃんがまだ戦っているの!?
何が何だか分からずおろおろするしかない私に、通行人が不審そうな眼を向けてきたけど、それを気にしている状況じゃなくって………でも、どうしたら…………………。
そうこうしている内に、ノートパソコンの画面に映る夜衣花ちゃんがよりピンチな状況に、物凄く大きな式神が現れて、夜衣花ちゃんが防戦一方になっていた。
エレアさんはまだ戻ってこない。
何とかしなくちゃ、このままだと夜衣花ちゃんが、でも、私には夜衣花ちゃんやエレアさんみたいな能力は………能力?
ふっとある事を思い出した。
……そうだ!私にはあの病気がある。それを使えば……………でも、どうやって?
自分がどんな病気に掛っているか、それが魔法に関わるものだと知ったのは、ほんの数時間前の話だし………それを意図的に起こすなんて出来るはずが…………。
そう思いながら何とかノートパソコンを操作しようとガチャガチャしていた時、不意にノートパソコンの画面が乱れた。
?………何か変な事でもしたかな?
訳が分からずノートパソコンを引っ繰り返したりして見てみたけど………傷らしきものはない。故障と言うわけではないようだし、私の操作に反応している感じでもなかった。
首を傾げていると、画面の乱れはどんどんどんどん激しくなり………何故か、それに合わせて画面の中の式神達の動きが鈍くなり始め、終には唐突に画面が真っ暗になって何も映さなくなる。
……………?…………どういう事?何が起こったの?夜衣花ちゃんは!?
訳が分からず再びおろおろしていると、不意に目の前に男性が現れた。
★???★
携帯に届いたそのメールは、隔離結界の外に置いてきたノートパソコンから送られてきたもので、その内容は、
『魔力切れにより緊急シャットダウンがされました』
っと言う内容だった。
あまりの事に、男は固まり、新たな式神を出すのを止めて茫然としてしまう。
意味が分からなかった。
ノートパソコンには、男の全魔力を込めていた。
だから、総攻撃をさせていても、少なくとも後一時間は魔力切れを起こす事はないはずだった。
なのに、魔力切れにより緊急シャットダウン?
何故そうなったのか全く分からないが、男はこれだけは理解した。
男は依頼を失敗したと言う事を。
そう判断した男の行動はすぐさま隔離結界から脱出する。
すると戻った元の場所の目の前に、自分の魔法杖を持った一般人だったはずの女性を確認し、思わず固まってしまった。
★相島★
現れ方からすると、間違いなく目の前のこの人が………魔法使いだよね?どう見ても普通の人なんだけど………
そう思って固まっていると、向こうも何故か固まってて………回復したのは魔法使いの人が先だった。
「………それ、私のですので、返してくれませんか?」
っと言われたので、私は特に考えなくノートパソコンを差し出してしまう。
だって、変な病気に掛っているだけの一般人に、魔法使いの人をどうにか出来るとは思わなかったし………何となくだけど、もう大丈夫な気がしたから………。
★???★
素直に魔法杖が返されたので、多少面喰いつつ、魔力を魔法杖に送って再起動。
状況を確認すると、予想通り式神は全て機能停止しており、隔離結界も消滅している。
魔法杖の魔力が無くなったのだから当たり前だが、確認しても男はにわかに信じられなかった。
目の前にいる女性が何かをしたのは間違いないが………男には、どこからどう見ても普通の人間にしか見えない。
魔法使いの性分として、何をしたのか知りたい欲求が生じるが、今はこの場から逃走する事を優先するべきだ。
何故なら、隔離結界の制御を既に返している。
マイルームの中にこもらせていたとは言え、それに気付かない武装メイドではないだろう。
そして、『檻から放たれた天敵』にわざわざ近付く馬鹿はいない。
そう思った男は、何事もなかったかの様に歩き出し、この場から速やかに去った。