第二話『不幸な彼女と過保護な武装メイド』8
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生じた爆発を男は硬化したを自分を包み込むように変形させてやり過ごす。
頃合いを見て式神の一部を透過させ、外を確認する。
そこには爆発によってあらゆるものが吹き飛んだ光景があったが、そこに男は違和感を覚えた。
爆発はコンクリートに穴を開け、近くの建物のガラス全てを吹き飛ばすほどの威力だった。
だが、それでも、爆発の中心にいたエレアの『痕跡がない』。
それに男が気付いた瞬間、爆発の中心地、何もない空間に唐突にロケットランチャーが現れた。
男は驚愕と同時に式神を壁にし、硬度を可能な限り上げる。
同時にロケットランチャーが撃たれ、壁式神にロケット弾が命中。
その爆発の威力に硬度を上げた式神は耐え切れずに千切れ飛んだが、その後ろには既にもう一枚の式神が展開されており、それで威力が落ちた爆発は完全に遮れた。
爆発が収まり、再び式神の一部を透過させると、男の目に何もない空間からエレアが現れ着地するのが入る。
つまり、エレアのマイルームは自分に対しても使えると言う事なのだろう。
もっとも、その場合は出られる場所は入った場所に限定されるのが、今出てきた所(爆発前に居た場所)から分かる。
更に、出てきたエレアが顔を赤くして息を荒げている所からすると、マイルームの中には空気がない様だった。
つまり、攻撃を畳み掛ければ、エレアに防げる術はない。
そう理解した男は内ポケットから何十枚もの式神を出し、一斉に空中に投げる。
空中にばらまかれた式神は、一斉に様々な獣の姿になった。
鷲などの鳥に、狼の肉食獣。
それらが一斉にエレアに襲い掛かる。
しかも、今度は爆発が一回限りで途切れない様に時間差を付けてだ。
エレアはそれをマイルームからサブマシンガンを二丁取り出して迎え撃つが、量の多さと強度に瞬く間に接近を許し、式神が膨れ上がる。
爆発の瞬間、エレアはマイルームの中に避難するが、立て続けに起きる爆発に、マイルームから出る事が出来ない。
勝った。
そう思った男は、油断なく新たな式神を出して爆発を途切れない様にさせながら、制御を奪った隔離結界を操作して電波だけ繋がる様にし、携帯電話をノートパソコンに繋げ様として、眉を顰める。
いくら操作しても、繋がらなかった。
男が魔法杖として使っているノートパソコンは、当然普通のノートパソコンではない。
だから、どんなに乱暴に放り投げたとしても壊れる事はないし、バッテリー(魔力)切れになる事は、少なくとも後三十分はないはず。
また、誰かに拾われたとしても、男以外は操作できない様になっているから、少なくとも最後に男が入力した命令は実行されているはずだが………
男が色々と思案していると、不意に携帯にメールが届いた。
光のない真っ暗な空間・マイルームに逃げ込んだエレアは、必死に息を止めていた。
魔法使いの予想通り、マイルームの中には空気はない。
勿論、入れようと思えば入れられるのだが、その分エレアに掛る負担が多い為、普段は空気を入れておらず、今回はそれが仇となった。
それを後悔しても意味がないが、少なくとも、酸素ボンベぐらいは用意しておくべきだったと思うエレアは、僅かに伝わる外の気配に変化が起きた事に気付き、眉を顰める。
息を止めるのに必死で、気付くのに遅れたが、いつの間にか爆発が止まっていた。
訳が分からず、恐る恐るマイルームから顔だけ出してみると………魔法使いは何処にも居らず、隔離結界の制御も元に戻っている事に気付く。
一瞬、罠かとも思ったが、隔離結界の制御カードを確認してみると、隔離結界から魔法使いが逃げている事を示す。
『結界内から一人回帰』
っと表示されていた。
あれほど優位な状況で、魔法使いが逃げる道理はない。
なのにそれを行ったと言う事は……
「………まさか!?夜衣花お嬢様!」
最悪な、最も恐れていた事を思い付き、エレアは急いで隔離結界を解除した。