表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/32

第二話『不幸な彼女と過保護な武装メイド』7

  ★夜衣花★

 途切れる事がない式神達の猛攻を、黒樹刀を二刀流にして倒しつつ、射線軸上に仲間が居ようと放たれる銃弾を黒き大樹の反射防御を意識的に使って防ぐ。

  絶える事無く当たる銃弾と、それを防ぐ黒い葉が鬱陶しくって仕方がないけど、それ以上に意識の薄れが強くなってきていて………物凄くピンチな状況………。

 どう見ても総攻撃だろうから、向こうもエレアが追い詰めているのは確実なんだけど………なかなか式神達が止まらない。

 ……………もしかして………エレア、出し抜かれてるんじゃ………。

 そう思った時、辺りが急に暗くなった。

 反射的に空を見ると………っげ!

 そこには太陽を遮るほどの巨大な式神がいて、その拳を今まさに私に振り下ろそうとしていた。

 周りの式神達が私の退路を断つ様に動き始める。

 これは避けられない!

 そう判断した私は、腕をクロスさせて頭上に掲げ、そこから黒き大樹の根を地面に根付くまで出し、私の身体全てを覆い隠した。

 空気を巨大な拳を切る音がし、拳が黒き大樹の根に当たる。

 黒き大樹の根によって、打ち込まれた拳は霧散しているだろうけど、今の私の状態と式神の大きさからして、その消失した部分は僅かかもしれない。

 その証拠に、二撃目が直ぐに来た。

 衝撃で根が揺れ、根付いたコンクリートにひびが入って少しめくれる。

 打撃は次々と打ち込まれ、その度に黒き大樹が『成長しようと暴れ、私はそれを必死に制御した』。

 黒き大樹は『魔力を喰らう魔法の樹』。

 だから、魔法の天敵と言える存在だけど、これには大きなリスクがある。

 黒き大樹は、言わば魔法の木。

 つまり、養分である魔力を喰らえば、木の本能としてその分だけ成長しようとする。

 私達黒樹家の退魔士は、それを制御してその成長のタイミングをずらしたりして黒き大樹を使うんだけど………もし、これを制御しないとなると、私達の身体から溢れ出る様に成長し、辺りの全てを喰らって無限に成長してしまう。

 そもそも、黒き大樹は魔力だけを養分にするわけじゃくて、意志力なら何でも吸収する。

 だから、私達の制御下から離れた黒き大樹は、『最強最悪の魔物』になると言われてて………だから、黒樹家の者は、『その身にある黒き大樹と一緒に死ぬ事を義務……宿命付けられてた』。

 それを聞いた時は、何言ってるんだろう。って思ったけど………いざ命の危機にさらされた今、私は必死に暴走させない様にしている。

 暴走させても、暴走させなくても、どちらでも………死んでしまうのなら、暴走させないで、死ぬ事を私は選ぶ。

 それは黒樹家の宿命とか、義務とかじゃなくて…………何だろうね。自分でも分からないや。

 私は目の前に迫る死に、自然と苦笑めいたほほ笑みを浮かべていた。


  ★???★

 総攻撃。

 その言葉にエレアが顔を青くした。

 男はその様子を見ながら、強引に魔力を回復させた事から来る意識の薄れを必死に耐えつつ、内ポケットから市販されている栄養ドリンクの様なものを取り出し、一気に飲み干す。

 本来、魔力の回復は寝ている間にするのが基本だ。

 それは魔力を得る行為が激しく意志力を消費させる行為で、起きたままそれを行えば、起きているだけで常に消費される意志力に加え、起きている分だけ『魔力がある場所に意識が持って行かれやすい』。

 だから、それを無理にでも行えば今の男や、黒き大樹の使い過ぎで意識を失った夜衣花の様になる。

 男もあのまま何もしなければ、夜衣花の様に意識を失く事になっていた。

 それを防ぐ為のが男が飲んだ栄養ドリンクで、飲んだ人間の意志力を強引に回復させる効果がある。

 だが、これには大きな副作用があり、飲んでから数時間後に『必ず意識を失い、一日、悪ければ一年近く目を覚まさなくなる』。

 そんなリスクを負わなくてはいけないほど、男は魔力を消費しており、強引に魔力を回復させなけらば、隔離結界の制御を奪う事も、式神による空蝉も出来なかった。

 しかし、これでエレアには勝ち目がなくなった。

 所詮、エレアは退魔士の家系から生まれた落ちこぼれの変異退魔士能力者。

 純粋な退魔士であるシールド家の退魔士ならいざ知らず、物を出し入れ出来るだけのエレアに、魔力を取り戻した魔法使い勝てる通りがない。

 そう思った男は、予備の魔法杖である携帯電話を取り出す。

 その瞬間、エレアは男に向かって銃口を向けた。

 男は慌てて携帯電話を前に突き出し、『風景に偽装させていた式神』を硬化させ、それと同時に無数の銃弾が式神にめり込んだ。

 「確かにエレアはシールド家の出来そこない……でも、変異しているとは言え、シールド家の退魔士能力を持つ者よ………シールド家の空間認識能力を嘗めないで貰いたいものね」

 そう言ったエレアは、素早く二丁拳銃をマイルームに仕舞い、代わりにガトリングガンの銃身とトリガー部分だけを出した。

 「そして、出来そこないの能力でも、応用すれば、女のエレアでも大型火器を扱える!」

 ガトリングガンのトリガーが引かれ、大量の弾丸が硬化した式神に撃ち込まれた。

 もっともその大量の弾丸でも硬化した式神を貫通する事はなかった。

 エレアはそれに舌打ちをして、ガトリングガンをロケットランチャーに交換。

 その一瞬の隙を逃さず、男は内ポケットから新たな式神を五枚出し、硬化した式神の影から飛び出し、エレアに向かって投げ、投げられた式神は瞬時に獣になりエレアに襲い掛かる。

 エレアはそれをマイルームから『落とした』剣で串刺しにして動きを止め、そのままロケットランチャーを男に向けたその瞬間、獣の式神達の身体が膨れ上がり、エレアがそれに気付いた瞬間、エレアを巻き込む大爆発を引き起こした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ