強固な夢
「今日も楽しいお話をありがとうございました、またお話しましょうね」
姫巫女が手を振り、付き添いの騎士も一礼をした後にサメ子は自分の部屋に向かった。
部屋に入り、鍵をがちゃりとかけた後に、もぞもぞとヒレを動かして、どこからともなく指輪を出した。
姫巫女と話しをしている最中に、間違って座ってしまった、あのガリッとやってしまった指輪である。
金に水晶の石の指輪、水晶は針水晶のようだ、斜めに線が入っている。
「たぶん、大丈夫」
そういってまたしまった。
それは自分に言い聞かせているんだと思う。
そして、その日屋敷にいたもの達は夢を見てしまうことになる。
夢でありながら、見ているときは決してそうだと思うことがないような強固な夢をである。
登場人物の紹介
・サメ子
彼女が作るゲソボールは、ゲソボーラーのイルカ達の憧れの的である。
八千代の庭、創造主の一人であり、管理者である。
翌日、小雨がサメ子を探していた。
「お前さ」
「ん?」
「術のコントロールきちんとできているか?」
「あれ、なんかあった?」
「昨日めっちゃ疲れたから、こっちでごろっとしていたんだけど、うたた寝の夢にしたら、どうも夢見が悪いんだけども…」
「なんか見た?」
「夢の内容としては、昔のな…、お前らと会う前…俺はまだガキでっていう、でも途中で、あっ、これ前にもあったなこんな感じの、見せられているって奴、ああ、あれだ、お前が変に意地はりあって、『私のネガティブさはこんなもんじゃない!見るがいい、私の心の闇を!』っていって、術がぶつかり合ったときに、そこにいた奴らがクラクラし始めたじゃん、あれだわ!って」
「指輪あるじゃないですか?」
「お前の持っている奴?あの針水晶の?」
「昨日間違って座ってしまったんですよ、その時ガリって音したから、それかな」
「お前な…、まずその指輪を持っていることで使えるようになる術があるんたから、そこを気を付けてくれよ」
「うん」
「あと、お前がコントロール失った場合、三人がかりでも止められないかもしれないってことはわかっているんだろうな」
「すいません」
「わかっているなら、いいや、お前のうっかりは今に始まった事ではないし」
「でしょ?」
「それでも本当に気を付けてくれよ、俺はお前を殺したくないんだからな」