人の理は唐獅子には関係ないよ
忍がトレイに軽食と飲み物を用意して、控え室に戻ってくると、自分の主人が、先ほど挨拶したままの格好で、ソファーにたどり着いたはいいが、そのまま転がろうとしていてた。
「鈴砂さま、そのままの格好で仮眠をとられるなら、こちらに着替えてくださいよ」
トレイをテーブルに置いて、用意してある柔らかな生地の上下を取り出すと。
ピク
何かに滅儀鈴砂は気がついたようで、渡されてすぐに着替えを始めた。
「すまん、七瀬が来るまで寝させてくれ」
「わかりました」
テーブルの上にソファーから手を伸ばしたら、すぐに食べれるような距離に置き直し、着替え終わった衣服を回収して出ていった。
(用意したのが私ではなく、佐藤季芽様だとわかるのか)
愛の力とらいいたいところだけども、鈴砂に気を回して、いいものばかり用意できるのは、術師の団体で数年外交を経験してなければ出来ないことだよ。
そのせいで、佐藤は鈴砂に貢いでいると噂をたてられたのだが。
長らく一般家庭出身の術剣士をお育てになった先生が病気のため、教えることができなくなって、まだ一人立ち出来ないものや、ここが受け皿でないと、受け入れ先がないこれから術剣士を覚えようとするものの、先生を引き受けたのが、自身は名家であり、人格的にも問題がなかった鈴砂であったのだが、最初は本当に苦労した。
たまたまその術剣士の見習いが、佐藤が属する生い月の達成者にも知り合いがいたので。
「カレーだ、こういうときは、カレーを食べるのだ」
知り合いというのは、斉道要なのだが、そしてなぜか同じく生い月の孤山大象もカレーを食べさせ、鍋ごともたせ、空になった鍋を後日持ってきたのを受け付けたのが、季芽である。
「えっ?滅儀?鈴砂さん?」
自分の冷え性を治してもらった恩があったので、一度差し入れにと思ったところ。
「廻さん、食料融通していいかしら」
生ひ月のリーダー館林廻に許可をとり。菓子程度の差し入れでは腹にたまらぬ状態であった、術剣士見習いたちは腹一杯食えることになった。
術剣士はなれば子供の頃からでも生活できるような環境が手にはいるため、一般から習いに来る子は、家族を楽にさせてやりたいとか、家に居場所がないといった子たちで。
「引き受けるのはいいですが、きちんと責任持ってくださいね」
おかわりをよそったときに、鈴砂はそう季芽に注意された。
「…うん」
それに対して鈴砂が照れていたことを、季芽は知らず、むしろ周囲が、この人を先生のためにも、飯のためにも逃してはいけないと思ったという。
ところで鈴砂と約束している余儀七瀬はどこにいるかというと、約束の時間までは仕事があるといっていた、そして仕事相手というのが、滅儀鈴砂の元嫁の琴柱だった。
「なるほどね、これは日焼け止めの需要が年々増加するわけだよ、白山にいると、あまりよその地域と交流はなくなるんでさ」
「患者さん見せてもらったけども、あれほぼ火傷よ、これからのシーズンあんな気候で術を使ったら、指先裂傷するわよ」
元々琴柱は、七瀬の親戚でもあるので交流はある、そして今は余儀の技術が彼女の勤めるマミーマミーという日焼け止めが有名な化粧品メーカーで使われ、琴柱も研究員である。
「とりあえずドラキュラSUNからシェア奪ったことで、予算とかも前より出るようになったし」
ライバルのドラキュラSUNは吸血鬼がビーチにいるマークでお馴染みである。
「たぶんなんとかなると思うよ」
このように余儀は今まで培ってきた技術を今は他の企業などに利用してもらって、利益を得ていた。
彼が営むbarフルミネも元々全部薬局である、今もbarの先にあるホテル街に向かう客などを相手に、余儀家を支えてきた薬の一つ、通称花婿の薬は扱ってはおります。
中身はお察しください。
「じゃあ、後で使えそうなものを送るから、使えそうなものがあったら、また打ち合わせね」
「急ぎ?どっか行くの?」
「うん、そう、琴ちゃんの苦手二人と会うんだ 」
「元旦那の方はともかく」
「悠久は気まぐれだからね、会えるとなったら、会うしかないでしょ」
「なんでまた」
「佐藤さんの依頼の件」
「それなら使い潰してもいいわよ」
そういわれるのが悠久、品玉悠久彼は人形を作ることを生業としているが、琴柱にはセクハラ気味な対応するので、嫌われているが本人は懲りてない。
「会うとは約束したけども、俺嫌いなんだよな、健康なやつ。いいところに生まれて、剣士やれる体もって、嫁が琴柱で、あ~これで今の嫁がサメでなかったら、約束もしてないけども」
こういうやつなので、約束したらすぐに会わないといけないし。
そのための手土産も七瀬はバッチリと用意している。
キラギヌの討伐のために異界に向かったときに、事前に許可をとり、悠久が好きそうなものを手にいれてきた。
「いらっしゃいませ、滅儀鈴砂さまと余儀七瀬さまですね、主人が中でお待ちでございます」
美しい人形についていくと。
「この子は美人だろ?」
人形についてごろ寝していた男が聞いてきた。
「惚れたか?惚れたか?」
鈴砂につめよった。
「美人だとは思うが」
「チッ」
「お前相変わらず歪んでんな」
「バカだな、これが楽しいんじゃないか」
自分の作った人形に人の心を奪わせる、それで今までも騒動を起こしたことがある男であり。
あの病み刀といわれた八重霞、その人形である大膳も作り上げた。
「んでなんだ?」
「封印に巻き込まれた人間を切り離すために人形は使えるか?」
「ああ、星麓の術師が巻き込まれたやつだな」
「話はどこまで?」
「バカな話だってことかな、封印設備が老朽化して、今の規格に合う前に手をうてばよかったのに、そこに自分を投げ出すなんて馬鹿げている、ああ、んなに睨むなや、少なくともそこで止めてくれなきゃ、俺は巻き込まれて死んでいただろうな、それを考えると、白山の人間は命を救われたのにも関わらず、動いているのはお前らだけだから、恩知らずだな、ハッハッハッ、まっ、ただ面白い話でもある、普通は囚われて、自我を擂り潰され、歩き回れないし」
季芽からサメ子になってますが、今日もお洗濯日よりなので、がんがん洗濯機を回し、タオルケットを洗いました。
「俺んところに来てくれるなら、手を貸してもいいぞ」
「七瀬、帰るぞ」
「お前、本気なんだな、良家の付き合いがもういやで、サメを利用しているのかと思っていた、お前、おもしろいな」
「悠久、お前こそ、んな目で人を見るのやめろ」
「え~でもこの程度で俺の腕借りれるんだから、我慢しろよ」
「それならかまわんぞ」
「あ~やだやだ、なんで世間はお前を自由にしてんだよ」
「そりゃあ、人が嫌がる、やりたがらない仕事やるからでしょ、面倒くさいがあるうちは俺は安泰よ」
病み刀人形のときもそうである。初めから悠久に持ってこられた話ではなく…
「違う、違う、大膳はそうではない!」
何度も注意され、割られたり、壊されたりした。しかし八重霞は24時間365日人とは違い討伐や警備に駆り出せるので、どうしてもご機嫌うかがいも兼ねて、人形が必要だった。
「なあ、俺にその人の話聞かせてくれる?」
ふらっと悠久は八重霞に会いに行った。
「なるほど、あんたにとっては、唯一無二なんだな」
「そうだ、過ぎってしまったと諦めろといわれるが、これだけは諦めるわけにはいかぬよ」そして出来上がった人形は、本人より大分美化されたもので、魅力的な顔立ちを見て、これが大膳だと八重霞は満足したという。
三寧はこの間、木壺のチームメイトにであった。
「すいません、三寧さんでしょうか、私は木壺の元チームメイトでして、今三寧さんのお誘いで元気になっていると聞いたものですから」
木壺は元々野球をやっていたが、怪我をしてから魂が抜けた日々を送っていた中で、三寧が自分の考えの実証に木壺を誘、その結果が良かったので、木壺は術者の、全国術師協会(JM)の育成扱いになった。
「あいつは生意気なやつなんですが、その生意気が勝つためにはとても必要でした、私たちのチームは勝たなければ予算も獲得できない、勝たないと何も始まらないところで、木壺は勝ってくれましたが、その分無理をさせてしまいました、もう木壺は俺の顔を見たくはないかもしれませんが、木壺がまたランニングとか体作り始めているって聞いてから、嬉しくなっちゃって…それでは俺も走り込みに戻ります、すいませんいきなりこんな話をしちゃって」
「そちらも頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
どこまで知られているかは知らないが、さすがに唐獅子と千枚皮とキャッチボールしているとまではわからないだろう。
今木壺は、実家から花儀園にすんでいる、部屋は事務棟の上階にあるのだが、朝は走り、そこから夕方まで勉強、夜は唐獅子セイと毛だらけのダチョウのような千枚皮のセンと一緒に野球を見ているような日々である。
この野球を一緒に見るで、唐獅子がある日ボールを加えてきた、花儀園の忘れ物の野球ボールで、これを投げてやると、上手にキャッチして、また戻ってきた。
「二匹が野球を覚えたって?」
「一喜一憂が観戦になれているファンの人たちと同じになってたので間違いないです」
バッターが登場する際の曲が聞こえると、それっぽいパフォーマンスをするようになるのである、どすこい。
「一度生で、白山の術師たちの野球リーグあるし、みにいこうか」
千枚皮の家族である今村・エルフ・月白はそういった。
か
「そういうのがあるとは知らなかったな」
「能力者とか魔獣混成のチームだったりするから、一般人には知られてないしね」
それでも野球したいので、特別ルールで野球をしていたのであった。
そして二匹は一度選手として参加することになり、その日は今村が仕事のために撮影したものを後日見せてもらったが。
「打者が難しいから、守備と代走としての選手になるのか」
フライを高い位置まで飛び上がってキャッチしたり、ちゃんとルールを理解してないと出来ない、ファーストランナーから得点圏を狙う唐獅子が見られたりしました。
「セイちゃんがこんな顔するって、花儀園に攻めこまれた時以来じゃないかな」
「えーそれっていつですか?」
「あ~もう百年ぐらい前か、あそこら辺の20年は本当に怒濤の展開だったわ、あの頃は世の中に緊張感が漂っていたわ」
見かけは三寧よりもお兄さんだが、かなりの長命である。
「お~い、月白いるか?」
誰かが呼んでいる、花儀園の人ではないようだが。
「百重?時間より早くない?」
「年齢的に朝早いんだよ」
年配の男性は唐獅子にべろべろ、千枚皮に体をごしごしすり付けられてやってきた。
「三寧くん、この人が滅儀家の当主で滅儀百重」
「唐獅子討伐した家なのに、なんで唐獅子になつかれてるんですか?」
「討伐した方の唐獅子はセイをいじめていたっていうし、うちの家でもセイの従者になったのいるからな」
「人の理なんて唐獅子には関係ないよ」
「お前ら、話進まねえから、そろそろ離れろ!」
離しても、百重に向かいそうになるが、これでもまだ唐獅子の従者にはなれないらしい。
「従者になると、園から出れなくなるから」
帰ろうとすると引き留められる、それが従者になるものの資格である。
そして今はそのまま花儀園の園長勤めることになっていた。




