サメニンジャニンジャキシ
他の事を気にされても困る、討伐が終わるまで参加者に何かを余分なことは伝えられることはない。
「おお、生まれたのか、それは…良かった」
誰かに子が生まれたとか、子をなしたとか。
「看取る事はできなかったが、父上やりましたよ」
その死は安らかであったとか、そんな
話が飛び交っていた。
「鈴砂様」
そこで声をかけてきたのは、滅儀鈴砂に仕える忍のアキであって、鈴砂は本陣から離れてすぐの事であった。
「それでなんで僕のところに来たのさ」
そのまま二人は余儀七瀬の元にやってきたのだ。
「ここが一番安全だと思って」
「すいません」
「で、何?」
「はい、ご当主さまからです」
ご当主は鈴砂の祖父である。
「…」
「言いにくいのはわかるけども、早めにいってくれた方が打開策がわく、時間があればあるほど、そういうものだよ」
七瀬がそういうので。
「佐藤さまが襲撃にあわれました」
なんとなく七瀬は嫌な予感はしていたが、当たった。
「ああ、そうか…」
鈴砂がこれだけなのも怖い。
「あのね、前の時もそうやって君はね」
佐藤とは佐藤季芽のことで、いわゆる八千代サメ子のことである。彼女が封印にとらわれたと知ったときもこのような討伐後で、その時貸し出されていた滅儀の宝剣、五色霜林を握ったまま助けようとし、その剣をガキンボロンと折ったのだ。
「それで無事?」
「無事ですが、襲撃の理由に鈴砂様の、珀狼の名をあげて汚しましたので、これより襲撃しました紅粉屋印は滅儀家の怨敵に名前を連なるそうです」
怨敵として名前が上がると、討ち取った場合その家からも色々と報償がでることにもなる。
「館林くんは近くにいたの?紅粉屋は館林にご執着だっただろ」
「いませんでした、佐藤さまが狙われた場合、変葉の若木さまも危なのうございます故に、連絡を取りましたがこちらは無事でございます」
紅粉屋に佐藤が狙われた場合、笛曲を操る若木桜も危ないのである。
これは館林廻が紅粉屋と対した際に、回復の限界を越えてまで自分を討ち取ろうとするその姿が由来である。
廻は紅粉屋を仕留めるために、自分の欠損を桑蓬の一路という、神のために作られた捧げ物の力を使って埋めた、しかしそれでは不具合が出るので、術で情報を書き換え、脳をそれこそだましながら一太刀入れたのだ。
「呼ばれたけども」
「まっ、今回は限界を越えてはいるけども、やることはいつもと一緒だ」
そのような状態の廻を治療するのが佐藤と若木の役目であった。
欠損を他のもので埋めているので、まずはそれを剥がなければいけない、そこをまずほどく、これが佐藤の役目。
このままにしておけば、人ではなくなる故にそれを剥ぐが、使った術をただ反転させるだけではなく、負担を他に流さなければいけない。
しかし剥げば命は風前之灯、そこに命を吹き込むのが若木の役割、彼の秘曲により命は器になじんでいく。
「毎回手元震えるよ」
「それは同じくだよ」
しかし今状況は変わったようだ。
「近々、館林くんも出世するからね」
それもあるのだ。
「とりあえず事務局長おめでとうございます」
「ありがとうございます」
お礼を受けるのは館林巡、祝辞をのべるのは鳩川十閏(はとがわ
とうる)である。
何団体か新たに合併した団体の事務局長に決まる男が、警備のために珍しく所在がわかっていたので、鳩川が挨拶をしにきた。
「いや、不思議なんですよね、この人事」
「何がですか」
「ほぼ君らが解決したのに、トップに座らないところがね、謙虚なのか、野心家なのか、どっちかなって思って」
「それで確かめに?」
「挨拶をかねまして」
なお理事の一人には、鳩川のいう君らのもう一人、弧山大象の名前があるぐらいだ。
「それは簡単ですよ、僕には指揮の経験がなかった、だから今後のために勉強のために、今はできる人がやってもらうということで」
「なるほどね、赤字の補填に吸血鬼系の銀行である晴れ時々小雨銀行も後ろについているから、どうなのか、私のところに見極めてほしいときたもんでね」
「鳩川らしいですね」
鳩川は神や王に仕えるので、生まれから調停者としてはあちこちに信用がある。
「判断はお任せしますよ」
吸血鬼がらみの話は最近増えている、まあ、理由はあれなのだが。
そのあれであるサメの小雨は一瞬まぶしくカッ!と光ったと思うと、その周囲にいた魚人達の何人かがバタバタと倒れた。
「小雨様?」
眩しさのあまりに手で目を守った騎士のフルゥがその名前を呼ぶと。
「悪いな、じろじろ見られるのあんり好きじゃねえんだわ」
故に弱肉強食な白浪流挨拶、威嚇を行った。
言葉にするとこんな感じ。
お前は誰なんだ(じろじろ)
俺はこういうやつさ(カッ!)
こういったことをしても、倒れる方が間抜けという感覚なので、性格的にも小雨と相性がいい。
(こちらには吸血鬼がいないからかもしれませんが)
そうなのだ、このサンサンサンシャインな白浪は吸血鬼にとっては、生きていくのが辛い環境、住人としては存在はしていないとされる。
そのため噛まれる心配のない小雨は生き生きとしている。
小雨の正体である斉道要は彼の職としては、他種族、吸血鬼との外交官という立場である。
吸血鬼達は自分達を選ばれし民と思っているので、人との外交というのは今までもあったが、吸血鬼たちがどういう名前であるのか、そんな基本情報でさえもベールに包まれていたが。
それが天地に選ばれた、結びつける存在である斉道に祝福を受けたい、お近づきになりたいという吸血鬼たちからのアピール、挨拶状などからその名前が次々と明らかにされていた。
上司の石咲主幹からは。
「いなくてもいいから、むしろあんまりいると襲われるから」と仕事しているのかよくわからない状態ではあるが、吸血鬼たちの名前がわかったことと交流できることを考えると、当然と言えた。
「ようやく見つかったでござる」
その威嚇で見つけたのは、サメ子の従者である忍者、深山ハンゾウ。
「ハンゾウ殿?白浪におられるとは聞いてはおりました、八姫のご実家に行かれていると聞いてましたが」
八千代の屋敷に勤めるメイドの八姉妹の実家に、宴会状態である中、肉や芋を届けにいった。
「姉上の肉上司がイモ神の使いできました」
弟が急いで家のものに伝えに来たので、ハンゾウは肉や芋などを渡したが。
「そのまま酒を飲まないかの話になったので、急いできたでござるよ」
ハンゾウは酒は飲むが、宴会などは基本的に断り、またサメ子もそれを承認していた。
「みな出来上がっていたでござるし」
「イモ神ってサメ子」
「でござる」
「イモ神!!!」
小雨は受けたようだ。
「で、赤帽子がいるけども?」
「おお忘れていたでござる」
その時、忍者赤帽子は表情を凍らせた。
「フルゥ様」
「私ですか?」
「八千代サメ子さまから、魔剣ジョビスナを預かってきましたので」
そういってトランクを渡す。
「フルゥ、大事にしてね」
小雨が照れている。
何しろ、魔剣は小雨に材料を食べさせ、お腹の中で熟成させてから取り出したものを使っているからである。
「では私はこれで」
「行っちゃうの?」
小雨は悲しそうな顔をした。
「赤帽子がいれば、捕物も優勝狙えると思うのに…そっか」
「この後、世界でも救う用事があるんでござろう」
「んなもんねえよ」
「じゃあ、参加するでござる」
「チームサメニンジャニンジャキシ始動だな!」
この三人と一匹の威嚇と盛り上がり、周囲の魚人はあいつらヤバイと警戒を始めた。




