Me of stoked
「フルゥ!」
姫巫女が先生からリースの作り方を習っているときに、そんな声が聞こえてきた。
そのフルゥはどこにいるかというと、そんな二人を見守るためにここにいたからだ。
「どこ?」
「ここです、小雨様」
「ああ、そこか」
正面向いても、上を向いても目の位置は変わらない、そんなデザインの110センチのサメは扉を開けた。
「白浪で祭りがあるから、一緒に行ってくれないか!」
そこでフルゥは姫巫女をちらりと見ると。
「申し訳ありませんが…」
「小雨様、無理にでも連れていってください」
「しかし、ハンゾウもいませんし」
「言っちゃ悪いけど、今の八千代って、世界を征服する方が容易い感じだぜ」
「それはどういうことでしょうか?」
「ここって神宝なわけで…」
「神宝とは?」
「ええっと、神はわかるな、いろんな定義はあるけども、うちらだと、神とは命を産み出すもので、そういう神のために作られた、捧げられたものが神宝、それは命を育むもので…ええっと、あれだ、メグが来たときに詳しい話を聞くとして?例えばさ、ちょっと前に俺の樹にちょっかい出して来た奴がいました」
俺の樹というのは神宝「満天の樹」
「神宝っていうのは申請して、審査を通れば持つのはそこまで難しくない、むしろ管理が大変だからできる人は持つことを推奨されるんだけどもさ、審査が通らない奴ほど欲しがるんだよ」
先祖代々の術を繰り広げて、浮世離れの大地に生えている満天の樹を手に入れようとしたが、まずリンクしている神宝「漆黒の知識」が解析を始める。そこまで解析は難しくなかったことで、「満天の樹」同じくリンクしている「桑蓬の一路」「八千代の庭」の養分にされた。
「まずこれを越えれるのがいねえな、今まで越えたの数える程度で、うちはむしろ越えてこいやっていう方針だしな」
「それは…そちらの方針でしょうが」
「術師ってさ、結構そういう精神だぜ、未知を喜ぶと言うか、そっちを楽しむようじゃないと、有事と向き合うのに向いてないってやつさ」
そこでくるりと後ろを小雨が向いたときに、腹の縫い傷に気がついた。
「もしかして、この間の?」
紅輝竜の鱗や希少価値の高い金属をパクパク食べて、お腹がパンパンになったある日。
「生まれるぅ」
と腹痛を訴えて、ガラガラと台に乗せられて運ばれていった。
「あっ、これ」
ベリ
「シールよ、んで、八千代が庭じゃなくて、島じゃねえ?にも色々あってだな、俺らが住んでいる世界で、いろんな植物が焼失や枯死しちゃったわけよ、八千代は元々方舟として作られたわけよ、種の保存、生育環境、エリアが九つあるから、クラウドナインとも呼ばれていたんだけども」
「それがなぜ?」
「金がかかるから、プロジェクトは白紙、神宝は廃棄がめちゃんこ大変なんで、引き継ぎがいるなら、引き継ぎさせるのさ、でもその焼失や枯死のせいで、八千代の重要度今すんげぇあがってて、エリアの拡張しなきゃいけなくて、それであの海上にいたわけ、表向きは」
「本音は?」
「サメ子は最近魔物扱いされなくなった、俺のおかげよ、けどももうちょっと離れた方がいいしな」
サメの姿になった、その姿になったことを説明しなければならなくなった、仲間の館林廻や弧山大象の前に出なければならないとき、先に会っていた小雨こと、斎道要は、面白そうだなっていうことで、サメに化けて、二匹のサメが二人の前にいた。
「へいよ!」
「えっ、ちょっと待ってくださいよ」
サメ子を構成している術を見て、これならいける、絶対面白いことになるというお笑い理由でサメになったのだ。
このお笑い理由だが、廻や他の術師が構成している術の再現が可能ではないかという可能性を感じ、懸賞金をかけたところ、出来ることが証明された。
それにより、サメ子は魔物ではなく、術のかけられた状態という扱いになる。
理によって、理解できない存在を魔物とされるが、このような区分けは百年ほど前に定められた。
人を迷わせる信仰の規制、またその原因は迷神とされ、厄介度は星に例えて等がつく。
そして驚異は明けない夜という意味で、極夜と冠し、指定された極夜は討伐の条件が揃い次第、術師たちに招集がかけられるのである。
そして討伐しようにも長らく手を出せなかった、自分の世界にこもっている「極夜 一等 迷神 雲英衣」
彼を討ち滅ぼすチャンスが63年ぶりに来たということで、家や派や鈴など垣根を越えて術師達が白浪に集まった。
BGM Life is head 『Me of stoked』
「よく来てくれたな」
今回仕切るのは滅儀家の当主である。
「因縁があるもんでな、うちがまとめることになったが、安全第一でお願いするぜ」
滅儀家は、ある当主の配偶者が雲英衣の呪いによって死んでいた。
その時は利害一致した権力者と組まれて、後一歩で取り逃すことで、滅儀の当主は後に中興の祖と呼ばれるほど、討伐や解術にのめり込んだ。
なお、迷信がだいたいどんなことをやらかしたのかは、等級でわかる。
一等がつくということは、18Gなことをやらかしていると思えばいい。
光と音が人の世界とは違う雲英衣を王とする世界には、生きたまま姿を変えられた者とその怨念であふれ、他世界とアクセスしやすいが外から攻め込めないのは、このせいであった。
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彼らは生者がいると、己の不遇を当たり散らす。
光と音の問題は数年前に解決した、魔女から教えてもらった術が、光と音の誘惑を無効にすることができ、また現在組んでいる権力者もいないと報告は上がっている。
そして先日、白浪から捕物大会の協力の依頼があった。
その時に、捕物大会を開く理由になった、主のアオハ襲撃未遂事件によって血が騒いだままの住人達が満足するような、後腐れがない物とは何かはないか?と。
そして雲英衣の異形と怨念が選ばれた。
ようは血が騒いだままの住人達が、襲撃の復讐を考えてくれなければいいのだ、だから強くてもいいし、厄介の方がいい。
「住人達では手がおえなくても、白浪の防衛が出れば余裕で押さえられるっていうのが決め手だな」
負けたら負けたらで、そんなんで復讐を考えても返り討ちに合うだけだと一喝すれば、そこで止まるだろう。
「それじゃあ、お前ら頼むぞ」
雲英衣の玉座に向かうのは、滅儀の当主の孫、鈴砂と余儀七瀬
「やだな、僕らが戦うわけじゃないですし」
そう、玉座に向かうとしてもそのまま首をとるのはこの二人ではない。
最後のピースは余儀七瀬が滅儀鈴砂から依頼をもらったことだ。
サメ子、佐藤季芽にかけられている術を解くのに協力すること。
その旨を季芽が所属する生ひ月の達成者のリーダーである、館林廻から彼に自由に使ってくださいと、符術『三角蜘蛛の巣』を渡される。
これを他の世界と繋げやすいという、雲英衣の世界の特性をいかし、符術を鍵とし、雲英衣の玉座と三角蜘蛛の巣穴の壁をなくす。
それでどうなるかというか、互いが世界の王である故に、両者は殺しあう、その隙に鈴砂と七瀬はもう逃げている。
そして弱ったところを本隊が叩くのだが。
「口は悪いが、こういう粗筋の書き方見ていると、あいつは本当に余儀だな」
老い先が短いんだからもっと自由に生きてくださいよと残して、死地に飛び込んでいった。
そんなに上手くいくものか?と思っていたが、報告が届き、そのままあっさりと雲英衣を討伐できた時、現場の人間達はみんな目が点になっていた。
一等迷神だよな?こんなに簡単でいいのかって。
「もっと苦労すると思ったんだがな」
歴代の当主がやりとげれなかった大仕事を、なんだかんだで当主になってしまった身でこなしてしまったために、こんなことをこぼしてしまった。
しかし、当主としての責任を果たしたことで、肩の荷が一つおりた。
猪と鹿が山を荒らし、それを駆除をしたはいいが、食べられる量ではない量の肉となった。
「サメ子ちゃんのところに、お裾分けでいいんでないの?」
と嫁がいったので、連絡を取ると。
「ちょうどよかったでござる」
奴がでた。
「白浪の八姫の実家に行くでござるが、手土産にちょうどよかったでござる」
その肉を持っていくという。
「その間サメ子殿に何かあったらよろしく!」
といって一方的に話を切った。
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神宝 漆黒の知識は、一等迷信雲英衣のデータを採集しています、それに連動し…
ビー
ビー
ビー
八千代の庭の管理者に危険が迫っています、データ採集を中止し、蓬桑の一路の管理者経由で邏卒通報します。
邏卒とは、昔の警官の役職だが、術師を取り締まる役職名である。
「手配者、紅粉屋 印(ベニヤ シルシ)がいると通報あり、出動!」
隊長の一言で、隊員達が整列した。
紅粉屋は、廻にその犯罪を暴かれた、元々は術師、錬金に所属していたエリートである。その裏で気になる術師や異世界からの旅人を闇討ちしていたが、その気になる術師として、ターゲットとして廻が選ばれたとき、紅粉屋の過去を覗き見て犯罪が発覚したが、その能力が気になったことで狙われたわけではない。
狙われた理由は、廻の回復適正の高さ。
いわゆる術をかけた時に、どのぐらい回復できるかという奴で、術師としては重傷を一発で治せる程度とされている。
しかし、廻は自分の体を損傷した場合、そこらにあるもの、それこそ無機物を、情報を書き換えて、足りないものを埋める。
「君がいるってことは廻くんいるんでしょ?」
印は季芽の前の席に座った。
「もう一人君はいないの?」
彼は興味がある人間の名前しか覚えない、もう一人君というのは若木桜(わかぎ さくら)で、もちろん季芽の名前も未だに覚えてない。
「でもさ、君も面白くなったよね、魔物になったし、君に何かあったら、珀狼にも追いかけられそうだし」珀狼は鈴砂のことである、名前の由来は彼の目は狼のような琥珀色の目だからである。
ヒュ
風を切る音がした、隠し持っていた杖で、印は季芽の喉を突く、季芽は見てからよけれたのだが。
シャコン
杖に仕込んだ刃、杖ではなく、これは鎌で、季芽の首を狙うが。
サ(→右)メ(←左)Sボタン押す
「何の!」
シュポン
季目はサメ子になって、そこを抜け出す。
しかし、相変わらずピンチである、転がされたらそのままトドメに繋がるであろう。
だから、そのまま無視してもよかった。
ハンゾウは本当に、本当に嫌いというか、理解できないし、その主人のサメ子も甘すぎると思っている。
仕事の際には休憩とか長めにとるし、休憩中に。
「これお小遣いね」
と財布ごと渡してくるし。
この財布もいい革を使っているし、きっとハンゾウのお下がりか何かと思っていたら。
「拙者はそういうのは自分で選びたいんで」
「あっ、ゴメンね、趣味に合わなかったか」
サメ子が赤帽子のために考えて選んだものだったらしい。
あいつは本当にムカつく、それはそれとして、サメ子をどうするか?赤帽子の出した結論は、このあいう腹立つわの気持ちをとりあえず紅粉屋の腹にうちこんだ。
「…ああ、君も見たことあるね、名前何て言うの?」
打ち込まれたら喋れないような一撃、昏倒するような重さなのではあるが。
(何か体いじってるのか)
そうよぎったところ。
「全員、突撃!」
邏卒が包囲網を形成し、一斉に確保のために動いた。
ヒョイ
赤帽子はサメ子を抱え、そのまま邏卒の隊長の元にやってきた。
「ご無事でしたか!」
「何とかね」
「佐藤さん!」
廻も駆けつけた。
すると、包囲網をかわした紅粉屋が遠くの方から。
「館林くん、今度は遊ぼうね!」なんて叫んだ。
「ありがとう、あなたがいなかったら、私はどうなっていたかわからなかったよ」
赤帽子に向けて、サメ子はお礼をのべると。
「礼を言われるほどではありませんよ」
そう、こんなことをぐらいで礼を言う、主人が存在するなんてありえないじゃないか。
そんなことを思う赤帽子は、八姫のヒナキからはサメを愛する才能があるという。
「サメのためには、闇に染まることも躊躇いもないと思うんですよね」
なお鈴砂はその点は手段を選んでしまうので、まだまだ甘いですよ、だそうだ。




