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根性で歯を生やす

「いい加減にしてよ!」

タラグチさんの娘さんは、自分の父親と結婚相手が茶番といえるような試合をしたことで、乱入した。

それは白波の祭り二日目の夜。

娘の結婚相手が気に入らないタラグチさんは、結婚相手である銀目に決着をつけると言い出し、銀目はそれを了承したのだが、義理の父親に遠慮がちになっている防戦一方なところに、娘さんが槍を片手に突撃してきた。

「そうよ、二人とも、戦いは神聖なものよ」

奥さんもそういい出したことで、最後の方はタラグチも銀目もリングで正座となり、説教されて終わりになった。

「みなのもの、ここで一つ知らせがある」

エイ太郎が現れた。

一緒に上がってきたのは、八千代に今世話になっているオーパスではないか、しかし彼は迷宮内に入り込んでしまい、人からリザード用な体になったが、それはは戻ったはずなのだが、またリザードになっている。

なんでだ?

「この度の祭りの手伝いのために、オーパスは来てくれたのだが、この者は虹端(にじはし)から渡ってきた」

虹端というのは、他の国を海外と表現するように、異世界を虹の端にあることから使われている言葉である。

「しかし、その虹端は、恐ろしいことに主が住まうものを贄としか見ていない、生きている者の人数も制限されているという」

「オーパス、白波に引っ越してこいよ」

「お前なら歓迎するぜ」

働きぶりも真面目なために、白波勢からはそんな声が上がった。

「だがオーパスも家族や一族のものたちが今もその虹端にいる、調べたところその主が討てば、その地は滅ぶそうだ」

「おお、それはなんという」

「祭りを手伝うために白波にやってきたその日、主であるアオハ様にご挨拶をしたところ、アオハ様より2、3問答があった、そして最後にこうおっしゃられた」

『三角蜘蛛を討った後は我が引き受ける…』

「おお、なんという心の広さ」

「オーパス、改めてここで聞こう」

「我らの因縁、ここで終わらせる、俺はやってやるよ!」

『おおおおおおお』

「へっ、オーパス言うじゃないか」

「それでは明日の競技に一工夫というわけではないが、その三角蜘蛛の巣からこういうものをつれてきた」

Gの絵。

「明日の討伐競技の会にこやつを放つので、実際に立ち会ってもらいたい、こやつは自分よりもでかい相手に集団で襲いかかり、産卵し増える、三角蜘蛛の元にはこれが万はいるそうだ」

「万!」

「おいおい、そんなにいたら毎日びびって生きていかなきゃならねえじゃないか」

「つれてきたものは産卵しない個体だ、もう島には離してある、今回この件に協力してもらったのは、赤帽子だ」

「赤帽子、忍者の?」

「それは俺も知っているぞ、凄腕だ」

「その赤帽子の力を借り、どうすれば退治しやすいのか試してもらった、気になるものは詳しいまとめを用意するので後で見ること」

「明日の競技でもいいところ見せるが、これで続けて首とるぞ」

次やるべきことを先に提示すると、そのために人々は動き出すのだ。



「あぁ、サメ子ちゃんじゃないの?今日はなんだか、スケスケでエッチね」

狼の頭がついたマントをつけた、方言まじりで話す女性が森の中歩いてくるスケスケ半透明のサメ子を見つけた。

「毛皮が必要になってね、買いに来たんだよ」

サメ子達は魔物たちが暴れる狂乱期の双頭の黄泉路(デビルフォーク)で魔物退治していたのだが、やり過ぎてしまい、魔物がいなくなってしまった。

魔物がいなくなると、いなくなったで困るのはその魔物をあてにしていた人たちである。

「うちの人、昨日まで忙しかったけど、今日はうちにいるよ」

「後お土産持ってきたよ」

「嬉しい!」

「干した魚、達人がこしらえてくれたんだけど、鮭と鱈」

「この辺は山だから、海のものは珍しいわ」

「毛皮はどれぐらいあるのかな?あるなら冬毛と同じ量の夏毛も同じぐらいほしいんだけどもさ」

ここで言う冬毛と夏毛の違い。

狂乱期の魔物は二種類ある、低栄養のため理性を失い興奮状態にあるもの、こちらは夏毛、夏毛の物は冬前には安く、道具の材料などになる。

そして狂乱期に理性を持ったままの個体、こちらは栄養状態が良く、体も同じ種類でも一回り以上大きく、冬毛にはえかわっているため、冬に欲しい毛皮はこちらである。

「もしうちので足らないのなら、ご近所さん(一番近いので三キロ先)にも声かけてあげるよ、ここら辺はみんな毛皮は自分で何とかするから、すぐに集まるよ、けどサメ子ちゃんぐらいよ、スケスケでも訪ねて買いに来るの」

一軒屋が見えてきた。

「あんた、サメ子ちゃんが来たよ」

「ああ」

そういって刃物を研いでいる手を休めたのは旦那さんである。

「お久し振りです、赤帽子さん」

「一人だな」

「ええ、こちらを訪ねてくるのなら」

「また、そんなこと言ったらサメ子ちゃんが可哀想、もうハンゾウくんは別に悪くないじゃない?」

「あいつは嫌いだ」

「全くもう、こうなると頑固なんだから、ゴメンね、サメ子ちゃん」

サメ子の従者を務めるハンゾウと赤帽子は友人というわけではない。では何でこんなことを言うのかというと、赤帽子は忍びとして生まれ、主人も仕事を選べずに苦労してきた。

ハンゾウは忍者業界では有名人の息子である。

父親は大金星を上げて、領地を任され、忍の流派の棟梁にのしあがった人物であり、自分の息子に有名な忍びにあやかってハンゾウと名付けた(本名をハンゾウをしようとしたが、それはハンゾウを母親が阻止した)

その生まれと育ちの違いを目の当たりにしたせいで、ムカッとしたものがハンゾウを見るたびに込み上げてくるのだ。

そこにハンゾウがどこぞの主人につくと聞いたとき。

(主人の機嫌に振り回されろ)

などと思っていたが、おそらくそういうことがないてあろう人物であるサメ子が主人になった知る。

(チッ)

それでますます気に入らなくなっていった、奥さんにも一度こんなことをもらしたことがある。

「俺だって選べるならもっといいところを選びたいし、最初から八千代なら、くそ!俺が行っていたら、あいつよりもつと主人のためになるさ」

この時は忍びとして仕えていたが、ハンゾウの話がきっかけで、独立するためにはどうすればいいのか、そんなことを考えることになった。

「うちの人、先日無事に忍の仕事を引退したのよ」

「それはおめでとうございます!」

この悪意のない、心から喜んでくれるのサメ子を見ると、ハンゾウへの憎しみが増すので、相当歪んでいる。

「ああ、それで毛皮はどのぐらい欲しいんだ?」

「この村の人たちに行き渡る分、お金はこれです、あるなら、同じ分夏毛もほしいです」

「サメ子ちゃん、干した鮭はどうたべればいい?」

「お茶漬けもいいけど、炙ってマヨネーズ美味しいよ」

「それは幸せになる、サメ子ちゃんのところも海あるけど、干さないの?」

「達人がいうには、風が美味しくしてくれるだって、だからいい風が吹いているっつことが大事でさ、さすがにそこまでは真似できないね」

「冬毛も夏毛もうちだけで用意できるが、同じ金額でもっと量を増やすなら、支払いが金以外で、この魚か、薪が欲しいな」

「薪?」

「山ん中に住んでいるけど、薪にするの大変なのよ、何日もかけて割って、乾かして」

「薪ならたっぷりあるよ、今さ、付き合いがあるところが、海と山に囲まれているんだけどもさ、毎年冬になると薪が足りなくて、凍死しちゃう人が出ちゃうわけさ、それでさ、小雨が海から流木拾って、それ乾かして、薪にしているの」

「その薪うちに持ってきて大丈夫なの?」

「そこから八千代でも薪として海から運んできているんだよ、屋敷は薪使ってないんで、主によそさんが欲しい場合に持っていくためのものだね」

八千代では浜に上がったものをオーパスやフルゥが乾燥させるために、風通しのいいところに積み上げてもらっている。

「一トンならすぐ揃うよ」

「サメ子ちゃん、大薪持ち!!」

取引内容はまとまった、持ってきたお金と魚で今ある毛皮と引き換え、残りは魚と薪と交換という形になった。


現在セバダではサメが拾ってきたものは、漁港の浜で王城からの連絡係であるセフィリノか、漁港の天候を記録する役人が立ち会いのもと書類を作る。

主に流木なので、漁港で乾燥させて、乾燥させて薪として使えるようになったら、まとめて王都までの馬車に乗せる。

漁港と王都を繋ぐルートは二つ、陸路の馬車と、海路の船であるのだが、なぜ馬車なのかというと、ほぼ馬車に乗るのは、陸路の要所、見張り台の交代する兵士たちだからである。

まず漁港から薪をのせる、それで停留所につくと、人が乗る場合は、その人が乗る分の薪を停留所に下ろしてから乗ってもらう。停留所に薪を下ろしても、兵士たちがいるから、紛失や盗難の心配がない。

海路の場合、なんかあったらみんな沈むことも考えられるために、この方法がとられている。

書類で薪の量を管理され、王都につくとサメ取得物管理係が中身と量をチェックして運ばれていく。

持ち込まれた薪は、『王城3・王都3・漁港3・サメ1』で分けられている。そして、サメは薪を提供している一城二街から金銭を授与されていた。

与えられた金銭は本来の薪の額からすると安いのだが、それでも多額の支払いを受けている。

サメは王都滞在の際は、セバダの女王の伯母にあたるビオレータ王女が住んでいた夢見宮で過ごしている。

そのためサメ子(セバダではサメチカと呼ばれる)と小雨(セバダではサメコと呼ばれる)の紋章が用意された。

「はい、口開けて」

二匹の口をあけて、それぞれ生え揃っている歯のギザギザの輪の真ん中に尾びれというデザインになった。この時小雨は虫歯があったらしく、紋章が出来てから虫歯を知る、それを知ってすぐに小雨は根性で歯を生やす。

「こういう王族や貴族の建物なんかは、三月に完成させることが多いんだ」

小雨の隣にいるのは王城の正式な書類を作る文官、達筆のアルフレッドである。

チャラくは見えるが、かなりの難関な試験を突破してきている。

「なんで?三月に完成させるの?」

「三月に完成させると、龍が宿るってされてて、別名が建龍月ともいうんだ」

「じゃあさ、もし三月に完成しなかったら」

「そういうときはちょっとだけ残して、来年になったらそれがっちゃんはめて、三月に完成しました!にするの」

「なるほど」

「あっ、来たみたいだな、あ~ども、いつもセフィリノくんにはお世話になっています」

アルフレッドが中年男性二人にあいさつをした、一人は小雨も知っているらセフィリノの父のパブロである。

「これはサメコ様、アルフレッドさんもお久し振りです」

「ハジメマシテ!弟のバスです」

若干テンションが高いようだ。

「すいません、私の弟が、実はビオレータ王女の大ファンだったものですから」

「今日は呼吸するだけで幸せです」

「間違いなくセフィリノの親族だな」

「ああ、女王陛下が近くにいるときのセフィリノってああだもんな」

二人は役所で使う分の薪を夢見宮まで取りに来たのであった。

このバスが兄の家に訪ねてきた来たこともあって、セフィリノも久しぶりに実家に戻ってきた。

そして父はセフィリノに疑問をぶつけた。

「セフィリノ、あれは本当にサメなのか?」

「えっ?あ……サメですね、見たままですよ、だって魚を皮剥いで、生で食べるんですよ、生で魚食べるなんて考えられます?ハーブも一緒に食べてはいますけど」

刺身ウメー、醤油はねえけど、薬味あればウメー、ウメー。

「最近は口肥えてきて、ソースなんかつけてますがね」

カルパッチョ、最高だな。

セバダでは魚は煮るか、焼くかが主な食べ方なので、生で食べるなんて信じられない。そのため生でパクパク食べるサメたちは、確かにサメなのか?と疑うこともあるが、食べ物を見る限りサメ以外の何者でもないと思われている。


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