表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

ゲソボール

キュキュン!!

なんの音だろうか?

聞き慣れぬ音に、姫巫女は窓の外を眺めるのだが、窓からは暦のために植えられた花達しか見えなかった。

今は暑さに弱い花たちが終わりを迎える、初夏である。

コンコン

「はい!」

ノックに返事をする。

「失礼いたします、焼き菓子をいただきましたが、中に入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

赤というか、朱の菓子鉢を抱えてきた男は、生まれ育った城が戦に巻き込まれて以来、ずっと付き添っている騎士である。

「ルゥー、今の音、聞こえた?」

「ああ、あれはイルカ達がサメの皆様を呼んでおられる声です」

「サメ子さん達を?」

「ええ、そうです、前に知り合いになったそうで、今来ている方々は沿岸で、漁師の網に魚を追い込んでいるといってました」

「ちょっとそれは、見てみたいものね」

「小雨様もお出でになられていたのも、イルカとの約束があったそうなので」

「まあ、一緒に泳ぎに行くのかしら?素敵ね」

「泳ぐというより、遊ぶが正しいのではないかと、イルカ達に流行している遊びがありまして…」

凍らせたイカイッパイ分のゲソを、海の中に投げてもらって、それを溶けるまで奪い合うというもの。

「それをサメの方々はゲソボールと呼ばれていました」


登場人物


・姫巫女

生まれ育ったところでは危険だということで、あまり自由に歩き回れなかったが、今は毎日屋敷の周囲を散歩するのが楽しみの一つ。


・騎士

ルゥーと呼ばれていたが、これは愛称であり、今は姫巫女しか呼ぶものはいない。


姫巫女にはお気に入りの場所がある。

散歩が終ると、日が沈み、屋敷に明かりが点るまで、一階ののこの場所から、ずっと窓の外を見ているのだ。

元々椅子もテーブルもなかったのだが、他の部屋からテーブルと椅子が準備され、今では花が一輪飾られていたりする。

サメがタオルをかぶってこちらにやって来るのが見えたので。

「これはサメ子様」

一礼をする。

「イルカの皆様とは楽しい時間を過ごせましたか?」

「私はゲソを凍らせる係なんだよ、それを海の中に投げるんだけど、小雨が思いっきり勢いよく水の中に飛び込んで、濡れちゃった」

サメ子はシャワーで洗っていたようだ、シャンプーのいい匂いがしている。

「ここに座っても?」

「どうぞ」

そういってサメ子は向かいの席に勢いをつけて飛び乗ると。

ガリ!

音がした。

そ~とサメ子かヒレでその位置を探ると。

ポロリ

指輪が出てきた。

しかし、サメ子は何事もなかったかのようにそれをしまい。

「ゲソボールはですね、奥が深いんですよ」

話を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ