黒笛 五月闇
「ごめんなさい」
弧山大象はサメ子のもとに現れると、いきなり土下座した。
「理由も聞かずにいきなり謝られても、何がなんだかわからなきよ」
「う‥うん、そうだよね」
大象は一太刀携えて、狂乱期が訪れている難所、双頭の黄泉路周囲の、まだ理性を失っていない大型のものに狙いをつけて出ていったはずだ。
「なんか強敵いたとか?」
それなら引き返した理由はわかる。
今回サメ子と大象が行わなければならないのは、世界と世界のハザマにある白浪こちらの祭りのために、雑魚魔物の肉と、血の気が多い白浪勢と戦わせるための大型の魔物を確保することだ。
「やりすぎちゃった」
「は?」
抱えている大象の剣はジョビスナという。
作り方はとっても簡単、原材料を小雨食べさせるだけ!
このために集められた材料を素直に食べたのは、美味しいお酒をつけたためだ、酒の肴として、あちこちのツテから集められた貴重な金属をモグモグと食べ、最近八千代の庭に訪れる赤竜の鱗をパリパリと食べ。
見た目からお腹がパンパンになったところを取り出します。
取り出し方はご想像にお任せしますが、こちらを成型して、握ったときにすっぽ抜けないように持ち手の調整をする。
「切れ味を試したわけじゃん?それで、振り回したらまず割れたのね」
「どこだい?」
サメ子がヶ所を確認しようとしてもわからない。
「うん、わからないでしょ?一回割れたとしても、戻るんだよ、これ」
「へぇ~すごいね」
「最初ね、それ気づいたら、あ~これはすごい剣だなって思ったわけ、しかも、割れた破片に魔物が触れると、バチバチってするらしくてさ、そういうのも、おっ、これはすごくないかって、もっと知りたい、もっと知りたいって思ったら」
この辺りだけではなく、当初申告し、割り当てられた範囲以外にも足を運んで狩りをしてしまい、魔物の姿がなくなったところでやってしまった…ことに気がついたそうだ。
「そうか‥まずご飯を食べてから、一緒に謝りにいこうか」
そのため双頭の黄泉路そばの村民達は、魔物が全く来ないため、逆に不安に陥ってしまっていた。
食事の用意が始まり、美味しい匂いがただよう。
「あ~」
ヒーラーイワキは新しい美味しさに気がついたが、これから演奏の時間のために、食事のわけにはいかない。
「サンマはとても美味しかったな」
ただいま大象さんに用意されているのは、カタクチイワシとカツオのだし漬け隠し味は天かすご飯と、ピリ辛サンマつみれとカリっと揚じゃが汁である。
(あ~食べたいな)
イワキはそんな気持ちのまま、魔物襲撃で傷ついた防御林と、スライム水に落ちて肉となった魔物を加工するサンバグモのみなさんの疲労回復のために演奏を始めた。
今日は雨が降らなくて本当によかった、雨が降っていたら、上空から鳥の魔物が狙ってくるのである。
始まりの一音から聞くものの心を奪いに来る、そんな心を奮わせるような曲の名前は「草葉の玉」、音色を奏でる黒笛は「五月闇」
とてもこの演奏が終わったら私の分はあるのだろうか?と雑念を抱える人間のものとは思えない、素晴らしいものてある。
「汁に大根おろし入れる?」
「頂戴!」
「あ~これで大根無くなっちゃったわ」なんだって?サンマがメインなのに、大根がないだって、この憤り、誰が責任とってくれるんですか!
術師と呼ばれるためには、「家・派・鈴」のいずれかで学ぶ必要があると、学生向けのハンドブックには書いてある。
それ以外の方法もあるんだが、まあ、それは今は置いておこう。
一般人が術師になるとしたら、鈴が広く募集している試験を受けて、合格するのがよく知られた方法である。
生まれを重視する「家」や紹介されなければ門弟に離れない「派」に比べると、簡単に見られがちだが、本人の才覚で判断されるため、あちこちの才能が集まり、選考もひたすら試されるため、それに関わる教師も多かった。
そのうちの一人、薄氷いづるは内密に話をしたいと呼び出される。
呼び出した相手、連絡が来た相手は有力有数な「家」の当主であった。
「お初にお目にかかります、薄氷と申します」
「堅苦しい挨拶はいいから、今回はこちらから頭下げる方なんだから」
こーゆー時はろくでもないと思ったでしょ?大当たりである。
「それでお話と言うのは?」
「うん、スゴくこちらとしても言いにくいことなんだけどもね、そちらを受けている受験生の一人が、うちの先代である父から自分の子供だという話を、先日呼び出されて聞かされてね」
思いっきりろくでもない話であった。
「そ、それは本人は知っているんですか?」
「いや、知らないと思う、もっと小さいときは月に一度ぐらい、一緒に食事はしたとは聞いているが、向こうの…何て呼べばいいのかな、弟のお母さんからは家名は入りませんってことで、うちの名前は出さなかったという話だ」
「名前はなんという…」
「三寧漢字の三に、安寧の寧」
「ええっと推薦書はどうしたんですか?三寧は確か一般でしたけど、推薦書二通ほどつけられましたよね」
「どことどこのだい?」
薄氷は思い出して、推薦者の名前をあげると…
「ああ、そこなら納得だ、そこなら先代の鶴の一言でどうとでもなるところだな」
「そちらのご家族の方はどこまでご存じなんでしょうか?」
「父と私だけだ、もし母に知られたら刀傷沙汰になるかもしれないからね、兄としてはうちの家に来てもらっても構わないとは思っているんだけども、私の目が届かないところで何かが起きる可能性はあるんだ」
「では私にどうしろと?」
「遠回しにはなるんだけども、弟を支援したいと思ってね」
そうなると、三寧にはかなりの配慮が必要となる。
「それでうちの弟は今の時期まで受験生として残っているということは、大分優秀だと思うのだが?」
鈴の受験は一年かけて前後期にわけられるが、前期にはこの試験の試験問題を作るために送り込まれた生徒達がかなり含まれている。
後期ではそのような目的の場合は罰則があるので、前期最後の試験を受け、結果発表した時までの人数と、後期からの自習室の割り振りが決められた人数がかなり違うのであった。
そのため後期まで残っているということは、優秀であり、そのまま後期終了後に今後についての面談があり、そこでやめるといわない限りは、そのまま鈴の術師として配属されることになる。
「この間友人と二人で、100人ほどのゴブリンの群れをキングだけ討ち取ってきました」
「おおそれは、さすが私の弟だ」
当主とは二十歳以上は離れているため、兄弟というよりは、親と子という感じかもしれない。
「その友達というのが今通っている学校の同級生なんですが、野球で大変有望な生徒だったんですけど、怪我で進学ができなくなりまして、その友達を三寧が誘いまして、『くすぶっているのはわかるな、君の腕にはまだ生きる道があると思う』そういって今その同級生の木壺は補欠試験を受けに来て、ゴブリンキング討ち取りましたから」
「うちの弟、格好いい!…確かにそういった競技というのは、私の同級生にもいたんですよ、接触して、大ケガをしてら彼は真面目に生きることをやめてしまった…しかし、弟は友人にも恵まれたようです、ゴブリンの群れを二人で相するということは、しっかりと計画をたてて、実行しなければならない。お互いのコミュニケーションとれなけれは大きなことなんて出来ませんから…ごめんな、お兄ちゃんなのに…先生、弟がやる気あるならとことんやらせてみてくれませんか?」
「しかし、そうなりますと…」
「ええわかってます、弟と一緒に木壺くんの分の支援も行いたいと思います」
こうして二人は内定をとることになった。
「あっ、でもこのままだと怪しまれるか、なんで内定になったのかって、先生なんとかなりませんかね、ちょうどいいものっていうか」
「ちょうどいいもの?」
「銘刀とか、秘技とか、そういうのと言いますかね、あっ、これで内定になってわかるような奴ですかね」
「それは…」
「もちろん、そこもうちの名前が出ない、その配慮をしてくださった上でということになりますが」
「う~ん」
悩んで薄氷は現在持ち主が空白になっている名のある武具などはどうかと話をした。
「そうですね、それてそれなりのもね、扱いやすいものとなりますと…」
ご当主さまが気に入るであろう物をあげていくと。
「ん?花儀園の唐獅子は今は誰も選んでいないのか」
「ここ二代ほどは、気に入られた方は余儀家の方でも、滅儀家の方ではなく、一般の方ですね」
「今あげた中ならば、花儀園が一番だろうね、私の方でもこういうリストは作らせてもらうが、早めに弟と木壺くんの二人に会わせる手はずをつけてくれないだろうか?もし唐獅子が気に入ってくれたのならばそれでいいし、そうでなくても何か弟に相応しいものを見繕わなくてな」
やるぞ!と意気込むご当主の前で、薄氷の顔は死んでいる。
先生、お疲れさまです。
「ようやくマスクが買えた」
意外と安かったと、紙袋を下げたサラリーマンが歩いていく。
「泥棒!」
少し離れたところで、そんな声が上がった、すると女物の鞄を持った若い男が全力疾走でこっちにくるではないか。
「トウ!」
そんな掛け声と共に、若い男にサラリーマンはボディアタックをした。奇襲にぐらついて、当たってきた男を見ると、男の顔はサメのぬいぐるみをかぶっていた。
呆気にとられた若い男に、サメ男は関節技をかけた。
「痛!!!!!」
騒ぎで人が集まってくるが、群衆サメ男は若い男の首を腕でロックをし、それを見た果物屋の主人は。
「ワン…ツー」
カウントを始め、10カウントで若い男がタップをしたので、最後にぎゅっと一瞬強く絞めてから、腕を離した。
「ごほっごほ」
咳き込んだ若い男。
「誰がガムテープ持ってきて、縛るから、もちろん警察もお願いするよ」
サメ男はその場に集まった人たちに協力を求めた。
「ガムテープお持ちしました、サメ仮面さん」
サメ男のサメの部分は、サメのぬいぐるみを顎から被った形のマスクになっている。胴体や背びれ、尾びれもしっかりと再現されており、顔の向きを変えようとするたびに、そのヒレが揺れるのだか、これっていつも格好いい小雨くんモデルではありませんかね?
「すいませーん、俺、昼休み終わっちゃうんで、後はお任せしまーす」
パチパチ
去り行くサメ仮面に自然と拍手が生まれ、ヒーローはその中を走り去っていった。
「斎道管理官お帰りなさいませ」
職場に戻ると、何やら騒がしいようで。
「何かあったん?」
「管理官のお手を煩わせるほどではありませんよ」
そういわれてしまった。
「そっ、じゃあ、任せたわ、俺はカレー談義してくるわ」
「行ってらっしゃいませ」
「何てことをうちのあけびちゃんは言っちゃうのよ」
「相変わらずですね、あけびさん達は」
こう言うときはあいつに聞こう、カレーナイトこと紀志である。
「なんかお化けが出たんですって」
「お化け?」
斎道は目を輝かした。
紀志はそんな斎道に写真を一枚出した。
「お化けの割りには、なんか良いもの身に付けてんな」
「ツクモ神ですよ、だからただ戦いたいだけじゃなくて、持ち物として欲しい奴等も来ちゃいそうだから、早めに解決したいって感じですかね」
「あっ、そうそう、竜前祭は助かったわ」
カレーの戦い竜前祭の勝者発表後すぐに斎道に連絡したのは、この間紀志である。
「毎年行ってますから問題ありませんよ」
竜前祭の一般審査員として参加し、恒例の発表までの間カレーを食べて待っていた。
「今年のカレーはタイガーアイだったんですよ」
「やっぱり俺もいけばよかった!」
タイガーアイは、一陽市のカレー業界を盛り上げている店で、始まりの「とら」が無くなり、その従業員の方が始めた店。
定番メニューしか普段は出してないので、それ以外というのはかなりレアであった。
その写真も見せてくれた。
「このルーにかかっているのって、チーズ?」
お好み焼きの上のマヨネーズのように縦横白いものが交差していた。
「ガーリックマッシュポテトでした、大量調理の工夫なんでしょうね」
「タイガーアイはそういうところがありますからね、もちろん味は美味しい」
「普段はカレーと角煮カレーのどっちかしか出さないし」
そうタイガーアイはこの二つのメニューだけしかない。
「でも坂合さんのカレー食べれるとは思いませんでしたし」
カレーは店長が作り、角煮カレーは「とら」で働いていた坂合さんが作るのである。
「それはそう、坂合さんは店無くなったら、どうなるのかなって思っていたんだよ」
坂合さんは斎道や紀志の親ぐらいの年齢の女性で、元々は実家のカレーが角煮で、「とら」に働きに来たとき、「とら」の店主がうまそうだなっていうことで、メニューに加わることになった。
「それでカレー手当貰っちゃってね、それあったから離婚しても困らなかったのよ」
と笑いながらいうような人で、これ以上詳しくはなかなかコメントしづらい内容の話になるので、ここで切らせてもらおう。
それじゃあ、戻るかと思ったとき。
「斎道くん」
呼び止めた声にビクッとなる。
「石咲さん、こんにちは」
「ボディアタックから関節技を決めるのもいいけど、アームロックはほどほどにね」
顔は隠したつもりであったが、バレてたね。
組織な重要な部門、情報を扱う部署の幹部である石咲治海(いしざき はるうみ)主管だよ。
「僕の目から逃れることが出来るのかい?」
去り際にそんなことをいうので。
「すいませんでした」
背中に謝るしかない。
「今日さ、何食べる?」
「やっぱりここ(ダイヤモンド商店街)に来たら、カレーでしょ」
なんて夕食はどこで食べる?という話を男女がしている。
「そこのお兄さん、お姉さーん」
そんな二人を呼び止めるのは魔女、いや魔女っぽい格好をしている女性である。
「あっ、ダイアナブライトちゃんだ」
彼女さんの方は知ってる。
「えっ?誰」
「ほら、けっこう当たる占いのダイアナブライトちゃん」
「あのけっこう当たる占いの!」
「そうそう、あれとクモリちゃんの美味しいご飯みっけ!は見てる」
「そうそう、それ!」
「まだ夕食決まってないなら、良かったらここにしない?」
竜前祭のクーポン付きのちらしをスッと出した。
「このクーポンは今日までなんだけど、あの虎イバルの特製カレーセットが半額になるのよ」
クーポン一枚で三食まで半額になってます。
「いいんですか?俺二セット食べる?」
「はっはっ、すんごい食べれるね、でもいいの?ダイアナブライトちゃん」
「本当は食べに行くつもりだったんだけど、狐さんがこれからやって来るしね」
バイバイと手を降ってその男女と別れる。
そんなダイアナブライトに向かって一直線に歩いてくる屈強な男。
(うっ…来た、早く来てください)
町会長!
「トウ!」
その祈りは町会長に通じた。
オーダーのシャツにベストをきちんと決めた、白髪混じりの伊達男がそのまま屈強な男の背中に、蹴りをいれた。
「あっ?」
意味がわからない。
なんで痛いんだ?と背中の痛みの意味がわからないでいた。
「加護持ちだと聞いていたが、残念」
そのまま町会長は懷に入り込み、ドスンと投げた。
男は起き上がろうとすると、その力がないらしくそのままのびた。
「アグノエル辺りならばコレクションに欲しいだろうから、恩を売るか、連絡をつけてくれ」
そういうと黒い影がひとつその場から離れた。
「もう町会長!なんでもっと早くに来てくれないんですか」
ダイアナブライトは囮であったので、不安で不満が爆発した。
「すまないな、夕紅くん(本名)」
「ダイアナブライトです!」
「つい格好よく登場したくなった」
決めポーズをつけていうのだが、それを見ると怒りが薄れていく…意識が途切れ…ていく。
「おっと」
体を支える力がなくなり、倒れそうな夕紅を抱き寄せ、そのまま首を軽く噛んだ。
彼女が見た予知の内容が町会長の頭の中で再現される。
今夜事件が起きるはずだった、今のびているこの屈強な男ツアーレが、先ほどクーポンを渡した男女を襲うというものである。
血生臭いさまで再現せれる、人には耐えれない、この作品を18Gにするような内容、町会長の吸血行為で夕紅の記憶から消しているのだ
「甘美な時間だけど、これだけはいただけない」
町会長は吸血行為で若返る、先ほどの伊達男は育ちが良さそうな坊っちゃんに姿を変えている。
この街の裏側はトラブルが多くなっている、今夜のような事件がいい例であろう。
一陽市の七曜ダイヤモンド商店街は天地の糸、斎道要の存在が公にされてから吸血鬼の人口が増えているがわ元から住んでいるヴィルヌーヴが町会長になることによって、治安の維持に勤めている。
もちろん、吸血鬼側にも思惑はある。
先ほどのツアーレのように加護が強いものを探している。
予知と調査によって、ツアーレはその加護によって何百の事件を起こしても、それだとわからず、人より見つからず、目立たないまま次の事件が起こせたを
それぐらいならば天地の糸までとは行かないけども、使えるのではないか?と思ったが、加護は人に対してまで、吸血鬼の蹴りが入ってしまうようでは、ハズレである。




