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サメヴァンパイア2~噛まれたら最後~

「それでサメ子さん達はどこで戦うつもりなんですか?」

サメ子はヒーラーを務めるイワキを連れて、今回の決戦の場にやってきた。

「ここですか?」

え~大丈夫かなといった感じ。

何しろ目の前には整備途中で放棄されたエリアだったからだ。

「双頭の黄泉路の排水溝の水路を一つ挟んだちょっと高台になります、先程渡したマップで確認してもらえますか」

「はいはい、ここは避難所として考えられていたと聞いてますが」

「予算がなくなりまして、この有り様になっております、まっ、整備しますが」

「整備ですか?お金はもちろんですが、時間もないと‥思うのですが‥」

さすがに雇い主には、言いたいことはあれでも言葉に気を付けている。

イワキの目前にレンガが現れた。

ふわり

「えっ?」

古いものや欠けたもの、そういったレンガが次々と浮かび上がっていくではないか。

『サで始まりメで終わるもの 』

そんなサインがしてある陣が天空に浮かび、それらは吸い込まれていく。

終わったかなと思う頃に最後にトンと音と共に、新しいレンガが一斉にしかれた。

「サメ魔術‥すごすぎる」

大きな街や城下町でもここまでの術を使えるものはいないだろう。

「この煉瓦で作った○の部分には、テントの真ん中がきます、それでは周囲の防衛についての説明に移りましょう」

高台の周囲には堀で囲まれ、堀から高台に登るための傾斜も、踏むと滑りやすい笹が自生し、かけ上がりにくい構造になっています。

「あっ、本当だ」

イワキは覗きこんだが。

「覗きこむと危ないですよ」

不意に覗くと、下に落ちるバランスの悪さになっています。

「あああぁぁぁ」

落ちた。

遅かったようだ。

「大丈夫ですか?」

「ええ、まあ」

「まだ水を流してなくてよなったですよ」

「本当にすいません‥」

サメ子はトン!と下に降りてきた。

「水はスライム水を使う予定だったので、落ちたら死んでいたかもしれません」

「スライム水?ああ、あれですよね、病死した家畜を処分するためにあるやつですよね」

「あれは目と耳から入ると危ないですからね、大象くんがスライムを分けてもらいにいってます」

「玉子ちゃーん」

弧山大象(こやま たいしょう)が手を振った、するとスライムが入った容器から何びきかぼろっと落ちたのが見えた。

「あっ、来ましたね、本来ならば水を入れてから塩を撒いて調整しますが、地図にもあります、堀の×の部分から沖に繋げて海水が流れます」

「海‥」

いけない、あまりにも想像以上のことが起きているから、リアクションがイマイチになり始めている。

「高台にあるテントへの出入り口は一ヶ所となります」

大象はザクザクと穴を掘っている。

「あちらもあとで説明しますが、まずはこちらに」

→のパネルが三つに□が一つ。

「→が魔物の肉が移動する向きで、□の横に今回応援としてこられます、サンバ蜘蛛の方がお一人つきます、このパターンが三回続いて、☆の位置が白浪と繋がっております」

☆の向こう側にはお肉宅配の皆さんがスタンバイし、そこから肉取り競争に参加しない方々に配られます。

「そして結界ではありませんが、テントと加工場を守るために、大象くんが穴を掘って、植樹します、植樹されているのは防界林(ボウカイリン)としてつかわれているものです」

「これもまだ樹っていうよりは、枝ですよ」

シートに並べてあるこれから植えるものを見ながら率直な感想を述べた。

「確かに枝なのですが、見ていただければ納得していただけると思います」

バケツには水が入っている、匂いからすると海水のようだ。

そこにバチャとスライムを入れます。入れたスライムはすぐに溶けてスライム水となる。

「これをその植樹したばかりのものにかけてみてください」

「私が?‥それじゃ」

バシャっとかけると、ズズズズズと急成長を始め、三メートルほどの高さにまで成長をしたという。

「こんな感じの木々でぐるっと囲んでいきます」

「確かに立派ですが、あいつらこのぐらいなら越えてきませんか?」

「それも考えた上でこちらを使うのです、狂乱期が訪れる主な種族は獣族、彼らがこの木を牙や爪で傷つけようといたしますと、樹液がついてしまいます、その樹液は牙や爪をすぐにボロリとこぼしてしまうのですよ、また他にも効果がありまして、樹液は甘く飲み込みやすい、そして唾液と混ざって一分ほどで食道を焼きますし、被毛につきますと毛穴に入り込んで、そこを塞ぎにいきます」

「なんですか、その植物」

そんな取り扱いが難しい樹木、その名は満天の(マンテンのキ)という、小雨こと齋道要(さいどう かなめ)が管理しているものである。

地上から見上げれば、枝葉が天の全てを埋め尽くすほどの大樹、その洞の一つを進んでいくと日本家屋のような廊下があり、先を進むと「ひみつきち」とプレートがかけられた部屋があった。

そこにハンゾウがやってノックをする。

「食事の時間でござるよ」

それだけいって洞の外へと出ていった。

しばらくすると部屋の中の音が止まった、恐らくゲームを切りのいいところでセーブしたからだろう、満天の樹では電波環境も大変よく、快適なネットらいふというやつが可能であり、そのため能力をリンクさせている他の三人、サメ子も館林廻(タテバヤシ メグル)弧山大象(コヤマ タイショウ)も異世界でネットを使えるのである。外に出ると、すぐそばの枝に葡萄、隣は桜、奥にはホップが見える。

これらは枝を剪定した後に接ぎ木したものである。どのような植物がこのように育てられるのかただいま実験している最中なのだが、今のところ育てられない植物は見つかってない。

「火をおこすのを手伝ってほしいでござる」

ハンゾウは薪を集めている。

剪定されたばかりの満天の樹は弱っている、たぶん、そうは本当に見えないが、足りない分をその分栄養を与えなければいけない、管理者である小雨が樹のそばで生活していれば、大地が活性化するので、今回だとだいたい一晩こうして満天の樹の元にいる。

ただその場で過ごしてくださいというのも大変だから、色々と工夫を凝らしてある、積んだゲームで遊んでいるというのもあるが、一番は中の日本家屋の部分である。

今はなき、齋道家のそのままのデザインとなっていた。

炎の勢いが安定したために、そこに鍋を置く、中には一口サイズの肉や野菜、上にルーが乗っている。

「最近どうでござるか?」

「最近か?」

なんて話をしていると、時間はあっという間にすぎていった。



今の世の中、学力がそこそこで、学費無料、奨学金があった場合全額肩代わり、そして余裕のある衣食住を約束する生活費の支給をしてくれる勉強の場というのはほぼないと思う。

「高専か、こっちか迷ったんだけどもさ、書類選考受かると、受験の年もバイトしなくてもいいからこっちにした」

と自分と同じ受験生の一人がそんな話をしていたのが聞こえたことがある。

もちろん、その後の進路というのもデータで確認した、術師といっても現場に出向くというというイメージはあるが、きちんと就業時間を守られ、休み類もかなりまとまってとれる。

「なあ、この進路のところにサメ二匹ってあるけど、これなんなんだろうな」

「えっ?何それ」

あっ、本当だサメってある。

が、その時は特に疑問が残り続けるわけではなかった。

そして、私は無事に書類選考から受験生生活をスタートすることができたのだった。

「なんか今年は一般から多めだったらしくてさ、イヤミ言われた」

何となく一般人同士が集まっていくことが多くなった。何しろ覚えるための授業がどうしても同じになるので、集まっては世間話ぐらいはするようになる。

試験は一年間に大きく分けると前期と後期、その間関連の施設も交通費支給、滞在食費なども無料なので、明日が休日ともなれば、前日の夜からこちらにやって来るような日々が続いていた。

同期の受験生は化け物とは言わないが、人間離れしている、さすが高倍率を潜り抜けてきただけあって、できるやつばかりだ。

これはどうやったらできるのだろうか?見当もつかないことを軽々とやられるとそりゃあ、落ち込むわけよ。

ええ、ただいま私は絶賛落ち込んでいます。

ただひたすらこの建物の上階を目指すという訓練施設、最初はよかった、上に向かうほどアスレチックかよ!という設置と化していく内部、先程あそこに手を伸ばそうとしましたところ、届かないままズベ!と落ちたら、心もボキっと折れました。

たぶん今中階層にいるとは思いますが、下の階に一緒にこの建物に入った同期がいます、同期のサギシマくんは、見た目はそうは見えないのですが、ベルトがとてもロックなんですが、自分の理想の革ジャンというのが罠の奥にあったらしく、その革ジャンに引っ掛かってしまいました。

「俺のことはいいから、俺は運命に出会ったんだ!」とかいってたんですけどもね、そこに惑わされるなんて、男子って‥なんでも天から降ってきた理想の美少女とかもいるらしくて、そこは毎年何人か引っ掛かるから注意するように先輩に言われたんですけど、革ジャンか‥

「あっ、人がいましたね」

下から声がした。

「自分で立てますか?」

こんな教師いただろうか?

「大丈夫です、自分で歩けます、あ~やっぱりこんなところでつまずくなんて、私は合格は無理だな」

「そんなことはありませんよ」

「やっぱり術師の家に生まれていたらな」

「何をいっているんですか、術師の家の方が縛りが大きかったりするし、一般の想像を越えますよ。いいですか、うちの年なんて、本当にやばかった奴しかいないのに、中間の一位とったの一般出身の女性ですからね」

「えっ?本当ですか」

「まず名家のお嬢様います、俗世にあまり関わらない仙界の一門からもきました、そして一番は大公、わかりますか?吸血鬼という一族は色々おられますが、始まりの王には8人のご子息ご息女がおりまして、その方々は大公という称号をお持ちですが、そのうちのお一方が祝福された方がおりまして、あれはね、卑怯ですよ‥まあ、その三人の候補を出し抜いたことがあったわけですよ」

「その人はどうやっていたんですか」

「受験の年に色々と学んでますね、古流を中心に、習えるところをあちこちに顔を出してましたね」

「ハニー!」

サギシマの声が聞こえた。

「廻くん、なんか下にいる子が離したくないってごねてるんだよ」

「サメ‥」

「こちらはサメ子さん、私の年の一番机」

「半透明で失礼します」

半透明なのは本体は異世界におり、休み時間を利用して仮のボディでお届けします。

「なおもう一匹は管理職です」

「出世コース!!」

「サメ子さん、こちらの受験生の方が悩んでおりまして」

「ほほう」

「私このまま課題についていけなくなるのではないかと、術師として大丈夫かなと」

「当時、私も先生に相談しました」

「あっ、その話始めて聞くかも、なんて言われたんですか?」

「それはだれでもぶつかる壁だから悩むだけ無駄だよって」

「やっぱり私には無理かな‥」

「そういいながら先生は参考になる本を薦めてくれたよ」

「さっきの話の続きだけども、机の順番は一位はこちらにいるサメ子さん、二位は仙界の一門、三位が私、四位が大公から祝福をいただいた彼です、五位が名家のお嬢さんでした」

「受験番号は期待の順なんだけども、そこを覆したら、+になるわけだし」

「+になるかもしれませんが、そこまでたどり着けませんよ」

「サメ子さんなら、この建物をどうやって突破しますか?」

「この建物?体力勝負でないなら、これ術が適当に並んで、置いてあるから、基本の術把握していれば、自分の好きに動かせるよ」

「私だったら全部解体しちゃうかな」

「えっ?それでいいんですか?」

「確認してみるといいよ、そういうのは禁止されてないから」

「模範解答を聞くことも推奨されてますよ、そのまま自分の解答しちゃうのはダメですよ」

この受験生はラッキーだろう。

何しろ受験の年から今まで、こういったフォローし続けた二人だからだ。

当時は天地の糸、現在は不老不死、その力を解明したい人々は多い。そのために疎かになっていく部分は後進の教育、特に一般出身の術者への手間に出ていた。

特に天地の糸の存在が公になって、様々な派閥から人材を送り込まれ、そのために佐藤と館林の二人をはずし、そこでぶっつりと蓄えられていたノウハウが切られた。




術師のための剣術大会がある、簡単に言うと術による刀剣類であれば、年齢ぐらいの区分しかない大会。

未成年の部は長期休みに合わせて大きな大会があるので、強者ともなると、ここで名前と顔が知られていくことになる。

滅儀鈴砂(めぎ すずさ)は祖父が学生時代に優勝しており、剣道界では「かまいたち」、術剣を嗜むもの達からは「辻斬り」等と呼ばれていたそうだ。

それぐらい駆け抜けながら剣を振り抜くのがとんでもなくうまかったと聞いている。

「滅儀さん!」

遠くから呼ぶ声が聞こえる。

「あっ、すまん、‥うとうとしてた」

「お疲れのところ、申し訳ありません‥不審人物がいるようですので‥」

何か言いづらいようだ。

「誰がいたんだ?」

「やんごとなき方といいますか、術剣術使いましたので」

そして持ち物が素人目からしてもいいものを持っていた。

「そうなりますと、我々だけというよりは滅儀さんに同行をお願いした方がいいと」

「わかった、準備する」

こういった依頼は鈴砂にはよくある。

名家に生まれて、ある程度以上に腕があり、そしてもっとも頼みやすいポイントは、何か問題を起こしても家名を盾にすることを嫌悪している。

(そういった家に生まれたのだから、みんなの手本になるような生き方をしてほしいものだな)

こんな考え方を持っているが少数派である。

大小、どこかで自分は生まれたときから選ばれたのだなどと持っていることが多い。

(しかし、そのせいで人生をねじ曲げられ、涙を流し、恨みを叫びながら生きることになるものが、毎年増えているじゃないか)

「スズ、何かあったらすぐに連絡させてくれ、応援出すから」

「それではこちらです」

案内されて、不審者がいたという辺りまでやって来た。

「ここから繁華街にもいけるんですが、そちらでは目撃情報はありません」

「そうなると‥あっちか」

静かで街灯も少なくも、ぽつりぽつりと家がある。

「ここから廃墟のファンが多く訪れるビルとかもありますが、胆試しっていう‥」

「そのまま動くなよ」

後ろに目がついているのかと、その場にいた職員たちは思った。

鈴砂からすれば何かがこっちに狙いをつけた、ちょっと間をおいてそれがこちらに飛んできたから切ったといったところか。

いつ剣をその手にしていたかさえも気がつかなかった、そしてその剣でナナメに切られて落とされた矢が、カランカランと音をたてた。

「今来たのがわかったやつは俺についてきてほしい‥わかった、俺一人でいこう、みなさんはここで応援と合流してからついてきてください、データだけはこちらから送ります」

そういって一人鈴砂は、常人ならばついつい足元を見てしまうような暗がりを駆け出していった。

そしてそこに矢や、投石などを仕向けている罠があるので、できる限り潰していった。

(こんなもの仕掛けて、大怪我ではすまないぞ)

反射的に体が動くように訓練してあるから自分はいいものを‥考えたとき、少しばかり嫌な予感がした、この罠がなんで易々解けるのか、仕掛けたのが自分の顔見知りであるのではないかということに。

(いないならば問題ない)

だからそれははずれる。

夕時ならばススキが風に揺れたら絵になるであろうひらけたばしょに、月が眩しかった。

逆光でシルエットしかわからないが、そのシルエットは女性のもので、お互いの間合いを踏んだところで、彼女の方から仕掛けられた。

「さすがにそれでは首はとれないぞ、香藁(かわら) 瀬世(せせ)

「あら、名前覚えていたのね」

「俺の周りにはお前のファンがいたからな」

日焼けした肌、短い髪、でもさ、特に彼女は目が魅力的なんだ、わかるだろ?あぁ、あの目に睨まれたい‥

当時の鈴砂にはわからなかったが、今なら何となくわかる、輪郭とか質感が色っぽいななんて、‥それはサメを嫁にしている男の感想です。

二人は向き合う、彼らがいつの間にか剣を持っている、いないときがあるのは、それは現在の術剣がまず最初に収納することを教えるからである。

召喚術を応用したものだが、こういったものは時代と共に変わる。

江戸時代などは帯刀したままがほとんどで、逆にこのような術は実際に使うものは少なかったが、銃刀類を所持するのを規制されるようになってからは、日本にいた術師達はこの術を初等教育に採用した。

瀬世の剣先が揺れる。

「来ないの?」

「お前の話は最近聞かなくなっていたが、死んだと思ったよ」

「見合いで結婚することになって相手が嫌になって逃げた」

鈴砂の心にダメージが来た。

「あっ、うん、そうか、おとなしくしてくれるといいんだが‥」

「それはないわ」

今まで試合形式で三回戦ったことがあるが、鈴砂は2勝ではある。

しかしもつれて、もつれてやっと取れた試合なので、しんどい相手と向こうも思っているだろう。

スッ

踏み込みは鈴砂。

「あら?どこか怪我してるの?」

そういう不調はわかるようだ。

剣と剣を合わせて、そのまま力押ししかけるが、瀬世は口に針をくわえていた。

ヒュ

離れたが、あのまま組み合っていたら、手の甲に針を吹き落とされただろう。

「何で驚くの?」

ここで取り押さえるはないと思った。

「最初からその顔で来てくれればいいのよ」

目の前の相手のこと以外は考えるな。

「何度か戦っていて良かったわ」

もちろん戦ったのは子供の頃といっていい、鈴砂の剣は鋭くはなっているが流れは変わってはいない。

瀬世は瀬世で自分のお家芸の一つを出しているようだ。

彼女の剣には厚みがある。

その分振り上げや振り下げが大変なのだが、風を切る音がブゥンと羽音のような音がする。

空練(クウネリ)

鈴砂の祖父からは、それは香藁家(かわら)の技で、あの音がどのぐらい維持できるかで実力がわかるという話をされているはずだが、もう鈴砂はそんな話を思い出すつもりもない。

右手で握る剣のため、肩がその分下がっていたが、まるで剣を持っていないかのように方の位置が揃う。


刃身一体の境地


打ち合いが始まる、そしてかわし損ねればその瞬間勝負はつく。瀬世の呼吸を伺う、吐ききり、吸うに切り替わるその時を鈴砂は見逃さなかった。



「そんなに嫌な相手だったのか」

「しょうがないとは思っていたの、でもね、抱き締められたらわかったのよ、この人ではないってね」

「そこからどこへ」

「他の世界へ」

「何で戻ってきた」

「旦那と息子が死んでいるのが辛くなった、こっちに帰ってきたら、実家から追っ手が出たわ」

驚いた鈴砂が瀬世を見ると、瀬世は微笑んでそのまま目を閉じた。

「スズ、すまん、近くまでいたが罠解除してた‥少し聞こえてはいたがな、言いにくかったこと謂えたから、だから最後はあんな顔だ、後はこっちに任せておけ、そうだなお前は、映画好きだっていってただろう、映画見て、うまい飯、余儀(よぎ)の店に行け、明日の昼にでもこっちから連絡するから」

「ああ、それじゃあ、頼むわ」

Barフルミネに鈴砂は夜遅くに訪れた。

「いらっしゃい、珍しいね、こんな時間に、ああ、あれか、映画でも見てきたの?何の映画?」

洗い物の片手間に聞いてきたので、余儀七瀬(よぎ ななせ)は深刻そうな鈴砂の顔をまだ見ていない。

「サメヴァンパイア2な」

ここで七瀬はしまった、話題のふり方間違ったと思ったという。

「あのさ」

「なにさ」

「依頼していい?」

「どんな?」

佐藤季芽(さとう きのめ)にかかっているだろう術類を解いてやってほしい」

「いいよ」

「いいの?安請け合いして」

「二人で幸せになりたいとか妄想を聞くのは飽きたし」

ここでお知らせです。

滅儀鈴砂も先程見たという『サメヴァンパイア2~噛まれたら最後』は映画館通りすぐそば、カレーハウス『トラトラトラ』様隣、シネマコズミックにて月末まで上映中です。


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