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特別面会許可証

「いけないな、何だか思い出してしまったよ」

と季芽が笑うので。

「いえ‥」

こう言うときどうすればいいのか、ヒナキはパニックを起こしてしまいそうだった。

サメ子は封印の術の不具合で倒れ、その治療後、佐藤季芽(さとう

きのめ)として目が覚めた。

ヒナキはそんな彼女の世話をするために、ハンゾウから命じられ付き添っているメイドである。

ザワ

そこに何かが迫ってくるだろうという圧力があり、季芽は立ち上がりヒナキの前に出る。

人差し指が、一つ、二つと円を描くと。

ボッ!

その円は書き終わってすぐに燃え出して、形を失う。

「敵襲ですか」

「いや、術が近くを通ったね、誰かに向かって飛んでいったんだけど」

「ご主人様、あそこです」

人影をヒナキはとらえているようだが。

「えっ?どこ?」

「あそこです、狩りますか?」

準備はもう完了している。

「‥様子見てからでも、遅くはないんじゃないかな」

「わかりました、いつでも狩れるように控えております」

ヒナキは八人姉妹なのだが、今回彼女が選ばれた理由は、この戦闘力である。

「あのサンダルは使ってもいいのかな?」

「お待ちください」

サンダルを揃えてもらい、それを履いていく。

「こちらになります」

案内してもらうと、確かに人が、しかも倒れている。

そこにだ。

「また、来たね」

何かが近づいてくる。

「先に話を聞かなきゃならないようだ、すまないね」

指先は人の形を作っていく。

クシャ!

出来上がると、すぐに人形(ひとがた)はまるで握りつぶすような跡がついて、そのままひらひらと落ちていったが、地面に触れる前に霧散した。

「さて、この人はどうやって運ぼうか」

「それは大丈夫のようです」

「無事か!」

滅儀(めぎ) 鈴砂(すずさ)である。

手には得物を持ち、すぐに斬りかかれるようにしていた。

彼はサメ子の治療のために連絡を取られ、この湯治場に一緒にやって来た。

先程まで理容室まで行ってきたようだが、気配を察して戻ってきた。

「あら、鈴砂さん」

「季芽‥」

「運ぶの手伝ってくださいます」

「あっ、うん」

そういって男を季芽が借りている間の一つに寝かされた。

「ヒナキ、着替えを買ってきてくれるだろうか?」

メモに大体のサイズを記して、お金を渡して。

「店の人に渡せばいいと思うよ」

「わかりました」

湯治場なので、日中は売店がある。

そこでなくても、近所のスーパーまで行けば買えるだろう。

ヒナキを見送り。

「全く人がいる中、あんな術を使うだなんて」

鈴砂は怒っていた。

理由は弾道上とでもいうのだろうか、そこにいた人間に術が当たって、健康被害がでるだろう拙い術だったからだ。

「鈴砂さん」

「なんだ」

ちょっと怖い顔してたかなと、注意を受けたのかと、その一言で冷静になるのだが。

「髪、お切りになったんですね」

「ああ!!うん、そう、あんまりこういうのは気にかけないんだがな‥」

「よくお似合いですよ」

「そうか‥うん、そうか‥」

デレッデレである。

基本、鈴砂は季芽の前ではデレッデレである。



こんなところで待ち合わせしなくてもといった所で、斉道(さいどう) (かなめ)

は待っていたが、ここは古びた建物の死角とでも言おうか。

古い壁を背に目の前は伸び放題の草、そしてその中に女が一人。

(あれ、花なんだろう)

そう、あの女は長い髪に美しい顔を持ってはいるが、花である。

人工交雑種、百年ほど前に誕生した主に庭園などへの侵入者を24時間365日常駐し、対処をする。

(よく見ると、スカートが模様じゃなくて生花なんだよな)

今の季節に咲く、寒さに強い菊の種類ではあるが、靴を履いてないので異様に見える。

主人の命令に極めて従順であるために、愛好家は多いが、花としてなのか、その姿としてなのかは想像に委ねよう。

しかし目を合わせると、失敗したなって思った。

好奇心の目が、だんだん殺意に変わっていくからである。

「ダイヤ!ダメだ」

それを止める男の声。

「悪いね、こんなところで待ち合わせて貰っちゃって」

「本当ですよ、石咲さん」

「でもね、ここが静かにゆっくりと会えたわけだし」

「なんか起きたんですか?メアリーちゃんの方ですか?」

「メアリー?」

「秘密の花園っていう作品の主人公の名前です」

「へぇ、それって僕とどう?」

「そうっすね、叔父と姪ですし、そういう話ですよ」

「そうか、そういう話もあるのか」

「えっ?知らないんですか?ダイヤって、心とかいません?」

「そうだけど、それもなんかあるの?」

「ありますよ、その同じ作家の作品名ですよ」

「そうか、そういう意味があったのか、クリスがこもってばかりだから、花の一つでもって思ったんだよ」

「えっ?それであれっすか、あれ、そんな意味あったんですか」

「名前をつけたようだから、気に入ったのかなってぐらい」

「ああ、うん、時間があれば姪っ子の理解のためにも、本を読むことをおすすめします」

「そうだね、公表したから、時間あるし、本を探してみることにするよ」

「公表?」

「僕の病気、公表したから、今騒ぎになってて、ここで待ち合わせにしてもらったの」

「はっ?」

「肝臓の病気でね、ようやく公表できるから、公表したのさ、本当は公表前に君に話しておきたかったけども、君はきっと隠せないから、今でよかったかな、忙しかったの?」

お会いしたいというお話が来てますがどうしますか?

(面倒だから入れないでって逃げてたんだよな)

「本当は館林くんも呼ぼうと思ったんだけども」

「ああ、聞き取り調査って、でも本当なんっすか?」

「うん、そっちは調査中なんだけども、君も当事者だから話しておくけども」


【術者が何人も迷宮に連れ去られている】


「なんでなのかもわからないけども、そんな中でひょっこり迷宮から戻ってきた、OBだったら話を聞くでしょ」

「俺はいいんですか?」

「大事なのは何で術者いなくなったかだから、連れ去られたとしか思えないから連れ去られただけどもね、調査次第では言葉変わるだろうね」

「あっ、俺牡蠣を食べてない」

「昼食?」

「いや、そん時牡蠣を目の前で食べられててさ、そこで喚ばれたんですよ」

「海産物にするか?」

「おおお」

「詳しくは店についてから話をしようか」



個室のレストラン

「カニ汁頼んでいいですか!」

本日の一押しとかかれてます。

「いいよ、しかし、君達は仲いいよね、試験の時に初めてあったって聞いていたけども」

「そうっすね、今も付き合いありますね」

「羨ましいよ、僕もそうだけど、クリスにもそんな同期はいなかったし」

クリスが石咲の姪であり、斉道の一期下の後輩。

そして不老不死の娘。

「体には気を付けるようにとは言ったんだけども、まさか不老不死になってるだなんて知らなかったしね」

そこにカニが来たので。

「カニ食っていいっすか」

「どうぞ、しかし、斉道くんは私の敵にも味方にもならないよね」

「カニが食いにくくなるような話題っすね」

「誉めているんだよ」

「誉めるなら、遠回しじゃないほうがいいですよ」

「まっすぐすぎて、敵にしてもやりにくい、味方にしても手におえない、まあ、それが君なのかもしれない」

現在斉道の扱い、同期の椅子取りゲームは勝者後は、扱いづらいということで別ジャンルに数えられている。

「君に話さなきゃいけないことがあったね、ああ、そうそう、再生と解毒の杖ね」

「ソレガナンノカンケイガ」

ここら辺が斉道が向かない理由である。

「それ持っているでしょ、あれね、もうしばらくしたら所持と使用についての罰則が無くなるんで」

「ナンノオハナシデショウカ」

「あの罰則ってね、僕の病気を疑っていた派閥がねあったわけ、そこが薬物の不法所持を予防するという形でそれも合わせて取り締まるという、蹴落としたかったのよ、そこで、あまりにも僕が隙を見せないから」

「ソウデスカ」

「だからこれからの話を君に話すよ、クリスには君のように家族付き合いをするような同期はいないからさ。この世界で不老不死は生きにくい、だから嫌気がさしたら、僕が全力で他の世界に逃げそうと思ってるよ」

「ナンデソノハナシヲ、オレニ」

「敵にも味方にもならないからだよ、まあ、これは僕の勘、三人にもいっておいてくれる」

出来れば旨いカニを堪能したかったが、斉道の頭にはこれからの厄介な事柄しか思い浮かばなかった。



「クモリちゃん、お疲れ様、ごめんね、プレゼンのレポーター急に頼んじゃって」

「マネージャーのためなら、任せてください」

「でもね、無理しないでね」

「じゃあ、お先にします」

「じゃーね!じゃあ、泉くんも今日はここでお疲れ」

「何かありましたら、連絡してください」

「はい、わかりました」

と退館手続きを取る二人を鳩川は手を振って見送る。

そして鳩川は自分の仕事に移った。

【特別面会許可証】

紫色のあまり発行されないそれを鳩川は受け取り、コツコツと足音を響かせ、建物の奥へ、奥へと入っていく。

こちら側は旧館とされる、薄暗くまた所々に歴史を感じる、窓のサッシも木造である。

カーテンが閉められた、小さなガラス窓。

コンコンとノックすると、ガラス窓が開いたので、そこに特別面会許可証を出すと、中で確認されるために一度引っ込み、女性の手が特別面会許可証を差し出してきた。

「45分までです」

時計を確認すると、30分の時間をいただけたようだ。

この奥には不老不死ブームとなり、妙薬の高騰の原因になっている、公式に認められている現在唯一の不老不死、石咲クリス(いしざき クリス)がいる。

「あら、今日だったかしら」

「お約束はしてましたよ」

「わかっているわ、つい意地悪したくなったのよ」

「それでご用件は?」

「人を探してもらおうと思って」

「どのような人を?荒事は彼女たちがやるとして」

窓の外に視線を向けると、ワンピース姿の女性と黄色と黒の少女がいた。

「そうね、生きるのが嫌になったら、私を殺してくれるような人間かしらね」

「はっはっ、ご冗談を、そこまでの人物はどうやって知り合いになれるのか、逆に教えてくださいよ」

「ピジョンブラットの鳩川さんなら、やってくれるんじゃないかしら」

「その言い方はあまり好きではありませんね、それに私は鳩川の術師としてはあまり出来はよくはありませんから、母が弟子を取って流派は継がせるでしょうし」

「それが佐藤先輩?」

「違いますよ」

「そう、それも一つ知りたかったの」

「それなら私も一ついいですか?」

「何かしら」

「何でわざわざ私を呼んだんですか?」

「あなたが敵でも味方でもないからよ」

「そういう所は、石咲さんと同じですね」

お互い笑った後に。

「じゃあ、お願いね」

「出来る限りはしますよ」

真実なのか、偽りなのかわからない言葉は重ね合う。


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