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ぐふ!

偉い人たちの前で、最終プレゼン。

こういうときはやはり、緊張するものだ。

「クモリちゃん、リラックスだよ」

「はい!‥でもわかっているんですけど、鳩川さん、なんか怖くって」

「ダメだったらもう一回チャレンジしよう、私はこういうときはいつもそんな感じで待っていることにしてるよ」

「わかりました」

そして、鳩川が先に壇上に出ていくのである。

「お待たせしました、というわけでこれから新企画のためのプレゼンを始めたいと思います!」

いつもより元気よく大きな声を出ている気がする。

「鳩川」

一番上座の聴衆者が名前を呼ぶと、聴衆者達が緊張し始めた。

(何か不備があったのか)

(まずい、この間が怖い)

顔を強張らせた人間が出てくる。

そこに‥

「期待している」

「ありがとうございます」

(えっ、まさかのお言葉)

(相変わらず読めない人だ)

「ではクモリちゃん、、よろしく!」

「はい、はーい!任されました、今日はみなさまの前でレポートするということで大変緊張しています」

緊張もネタにしてしまえてる。その姿をみたら、そこで鳩川はほっとした。

【本日皆様にご紹介するのは、近海でとれました新鮮な魚介類をリーズナブルなお値段で提供しているご飯処『吉野』から店長の吉野さんにお越しいただいてます】

ナレーションは泉くんです。

ワゴンに乗せられ、おひつとお茶碗が運ばれてくる。

「吉野さん、今回持っていただいたご飯はどういうものなんでしょうか?」

「二年前からこの辺りで作り始めました新品種で『一等賞』といいます、この品種は風や病気に強く育てやすいし、ご飯にすると大変ふっくらとしてとても美味しいんですよ」

「吉野さんのお店はご飯を炊く名人ということで、私はすごくすごく期待してます」

「おかわりもあるから、たくさん食べてね」

【それではクモリちゃん】

「いただきます!」

つやつやのご飯をお口に運ぶ仕事です。

「ああ、おいしい!ご飯ってこんなにもちっと、でもつぶっとしているんですね」

「それが一等賞の特徴なんですよ」

「そのままでもとても美味しいのですが、おにぎりにしてもいいと、しかぁーし今日はみなさまにこちらを用意しました」

ゴクリ

それは期待するには十分になった。

そこに美味しい匂いが近づいてくる、これは魚のようだ。

「失礼します」

板前さんが焼き魚を運んできた。

【この建物では消防法の関係で、お店で使っている炭を使うことはできませんので、本日は許可を取り、中庭で調理し、こちらに運んでもらいました】

メリ

浜干しを済ませた焼き魚の皮に箸を入れ、骨を削ぐと、油が垂れて、美しい身が現れる。

「鳩川うん、我々の分はあるんだろうな」

「ええ、もちろんです、無理をいって人数分を用意していただきました」

控えていたスタッフ達が配膳を始めた。

(やりましたよ、鳩川さん)

(うまくいったね)

偉い人も食欲には負けるようです。



ヒクヒク

「誰だよ、旨いもの食っているやつは!」

「斉道管理官、これは地元の美味しい昼ご飯特集を始めるので、最終プレゼンとかいってましたよ」

「俺の分も寄越せ!」

「さすがに、幹部の方々の分しか用意してないでしょ」

「それに管理官、午後になれば会食がありますので、お食事を控えた方がよろしいのではありませんか?」

「仕事を挟んでじゃ、食事も美味しくないの、それにさ、ここの食堂ってあんまり美味しくないんだよね」

そこに職員向けのメッセージが流れる。

「あっ、今食堂からの案内来たんですけど、お昼ご飯コラボメニューですって」

「マジか」

自分にも来ているであろう、メッセージを読むと。

「今本部にいる皆様へ、飯テロにあっているかな?クスクス、そんなみなさまへ素晴らしいお知らせ」

タイトルからこんな調子である。


本日は飯処『吉野』様が中庭において出店いたします。間違えて食堂にいったやつはピロピロパー~


お品書き

・炭火であぶった美味しい焼き魚定食

600円



「行くんですか?」

「そうだな、でもまずはこの文面考えたやつ、しばく」

この文章を書くやつは心当たりがある、むしろあいつしかいない。

「俺抜けて大丈夫か?」

「ここで管理官が抜けられても、予定通りに進められると思います」

「それじゃあ、任せるわ」

「わかりました、お任せください」

任せるということがあまりない、斉道にそんなことを言われると、あけびは嬉しくてしょうがないのだ。

まだお昼前なので、人もまばらな中庭。

「冷やかしですか?冷やかしはご遠慮ください」

そう来る人に声をかけるのがいた。

難易度サメのダンジョンガイドを勤めた陽明(ヨーメイ)である。

「やっぱりお前か」

「600円です」

「あのな」

「600円でーす」

根負けした。

「お釣りはご入り用ですか?」

「いるよ」

「何だそうですか」

「でも安いよな」

「場所代も人件費もそうかかってないので」

「しかし、色んな所でも見るよな」

「労働は尊いですよ(キリ!)」

斉道は変な顔をした。

「これでもTとPとOは弁えて、たまにはずしてますから」

「はずしたところしかみたことねえよ」

そこに漂ってくる匂い。

「え?焼き魚だけじゃないの」

「焼き魚は数量限定何で、それ無くなったら麻婆豆腐作るんですよ」

「くっそ、それも食べたい」

「あくまで切れたらですから、まっ、それも無くなったらも考えているようですがね、オムレツにするとかいってましたよ」

板前さんがオムレツ焼いてくれます。

結局おやつの時間になってもお客さんが切れることはなかった。

「いらっしゃいませ、オムレツのケチャップはどうしますか?こちらの三種類のデザインからお選びいただきます!」

三種類というのはハートや星のデザイン、そして最後はオムレツという文字だけ。

「オムレツ、オムレツ、ハート、オムレツでお願いします」

一番人気はオムレツでした。

「これ、頼めるかな」

吉野の常連でもある職員は、食材を持ち込んできた。

「親子丼でいいですかね?」

持ち込まれたのは地鶏の肉だった。

「時間はかかってもかまわない、その価値がこの店にはある」

「え~そんなんありなんですか」

他の職員からそんな声がでると。

「いいんだよ、俺はいつもそんな感じなんだよ」

親子丼のハーフサイズはその場にいる職員たちにも振る舞われた。

釣りは入らねえぜ、無理させたからな、そういって多目にお金を置いて格好よく立ち去った。

「アザース」

「アザース」

「アザトゥース」

「アザース」

ん?お礼の中に今クトゥルフいなかった?




「とてみお疲れのようなので、リフレッシュ出来るようなコースをお願いできますか?」

「お任せください」

予約を受けた理容師達はは準備を始めた。

「ちょっと待ちな」

「おばあ様」

「耳かきは私がやろう」

「おばあ様が!」

「この店で一番のことをしておくれというのならば、私が耳かきをしないわけにはいかないだろう?それとも誰か務まるのかい?」

「それではお願い致します」

「ハサミやカミソリの手入れはきっちりしてあるんだろうね」

「いつでも準備はできています」

そこに「ご主人様とお会いするのでしたら、身なりをきちんとしてきたらいかがでしょうか?」と言われ、何の疑問も持たずにやって来た滅儀鈴砂(めぎ すずさ)がやってきたのである。

その口車への返事が。

「ああ、そうか、それもそうだな、行ってくるか」

と反応を見て、やはり杞憂ではなかったと思った。

佐藤季芽(さとう きのめ)が目を覚ましたら、口説いてくるかもしれない。弱っているご主人様を不快にさせるわけにはいかなかった。

「‥‥」

「おはようございます、ご主人様」

「ヒナキ?‥今日って17日だっけ?」

「いえ、11日です、ハンゾウ様が八千代の管理者代行を務めることになりましたので、増員が前倒しになりました」

「そう‥」

「勝手なことをしたと怒らないのでしょうか?」

「ハンゾウが決めたことなら、それは必要だと言うことだよ、私はなんで今サメじゃ、ああそうか」

佐藤季芽は自分の姿に疑問を持ったが自分で何が起きたのか気がついたようだ。

「改めまして、私は八姉妹の3女ヒナキと申します、正直私たちの見分けをつくとは思いませんでしたので、驚いております」

「日本人はそういうの旨いんだよ」

「それは興味深いですね、同じ人種であるのに」

「同じ世界でも日本人の特徴みたいだね、生物の個体を顔を見てわかるって、小型のほ乳幻獣を多数飼育しても、見分けついているのに同じ世界の他の国の人たちが驚くんだよ」

「エイミさんはなんていってたかな」

「引き継ぎはもうしっかりできているから、今八千代に行っても大丈夫と」

「そう」

エイミさんはこの間呼び出しされた、白浪にいるエイ太郎さんの妹であって、この八姉妹は白浪に住んでいる人であった。

しかし、白浪は人というのにあまり優しい世界ではない。

野外に一時間以上いると、日差しで皮膚が火傷するような環境である、そのためある程度の年齢になったら、外の世界に移り住む事が多い。

前にも白浪から話はいただいたこともあるし、他からも話は出るが、今までは断っていたが、今回は返事に迷い、返事をした。一番の理由はこの間の呼び出しである。

姫巫女が屋敷にいたからであった。

この先、いつになるかわからないが、フルゥも含め、新しい生活を始めるときが来るだろう、その時が来たら‥と考えたためだ。

そしてまず驚いたこと。

八姉妹は名前というのがなかった。

八人の名前をまず考えなければならないのだが、八人?女性?

(男性だったら、里見八犬伝から取るのにな‥あっ)

そこで、あっ!である。

それで八犬士と結婚した里見義成の姫君から名前をとったのである。


登場人物紹介


白浪の八姫


・長女 シズミネ(静峯)


・次女 キノト (城之戸)


・三女 ヒナキ (鄙木)


・四女 タケノ (竹野)


・五女 ハマジ (浜路)


・六女 シオリ (栞)


・七女 オナミ (小波)


・八女 イロト (弟)





「どこまで覚えてますか?」

「『ハンゾウ、後は頼む、ぐふ!』までだね」

今の季芽は封印の術式が組み込まれて再構成されている。

「あちらのお姿は可愛らしいですよね」

「ナビゲーターがおすすめですってね、色々質問されてさ、あなたの新しい体はこちらです!みたいなさ」

それがサメ子です。

「あっ、そうだ、あの時叱るつもりだったんだ、忘れてた」

「それは茹で玉子とシャモジに落書きされた事件ですね」

「サメのぬいぐるみほしい!ってね、やられたよね、でこっちの姿に戻っているってことは、鈴砂さんに治療にしてもらったわけだけども、どのぐらいこの状態だって?」

「あのエロ、いえ、鈴砂様がいうには明日の昼には戻るだろうと、そして大丈夫です!」

「何が」

「治療の際に何か余計なことをしようとしたら、すぐに撃てるようにしてました」

「さすがに‥あっ(でも思い当たる)」

「何かされたんですか」

「鈴砂さんは、一番最初に会ったときも、こんな感じで疑われたのさ

シロ先生という治療師の元に、季芽は冷えから来る不調の改善に訪れたときのこと、先生が急患のために、そこにいた鈴砂にやっておいてとだけいいい、二人きりになった。

「鈴砂さんと私は気の相性が良すぎるんで、治療されるとこうして元に戻るんだけど、最初それがわからなくて」

治療後、ふらふらになって、焦点が会わなくて、体に赤みがさしていた。鈴砂が離婚してすぐだったこともあり。

「ちょっと鈴砂こっち来い!」

季芽の様子から何かしただろうと問い詰められ、シロ先生が事情を説明するまで正座で説教された。

「ああ、懐かしいわね、そういうこともあったわ」

嬉しそうに季芽は思い出す。


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