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赤い傘

戦う手段があるのならば、逃げることは許されないと思う。

滅儀(めぎ) 鈴砂(すずさ)にとっては、己の立場についてはそういうものだと思ってる。

だから緑深い、これから秋を迎える木々の並び、公園の一角にゆらりとした影を見つけたのならば、切るということは当たり前のこと。

スッ

紙にカミソリを縦に引いたような太刀筋は、よく見ると景色もずれている。

あっ、今戻った。

この剣術は滅儀では空も切り裂く、紫電(しでん)と呼ばれるのだが、自分ではまだまだ未熟で、そう呼ばれるのは好きではなかった。

さて、話を戻そう。

今切ったあれは、二、三日もすれば人に障ってくるだろう、現段階で認証のセンサーを持つカメラを向けたら、歪む程度でしかわからない。

こういったものは、存在事態が危険なものになっていくため、こちらの業界では見たのならば、連絡か、すぐに処理をするように求められているが。

あまりそのようなことを真面目にやっているものはない、やはり金にも名声にもならないと、熱心にやるということにはならないようだ。

滅儀 鈴砂の人柄というのは、そんな世界の中では少数派、まるで一般人みたいだねがこの男であった。

「でもさ、もう少し気を付けたらどうかな?不審者じゃない?」

気配を消さずに近づいてきた者がいた、その男はそのまま鈴砂に声をかえた。

「七瀬!」

現れた男の名前は余儀(ヨギ) 七瀬(ナナセ)

「なんで、ここに?今日も店にいこうと思ってたのに」

「そこのカフェが、行きつけなんだ」

灰色の建物は公会堂、あそこの二階にはカフェがあり、平日の今の時間は常連のものしか来ない。

「派手にやるのならば、口を出すつもりだったけども、それは必要なかったね、店に来るつもりだったの?ああ、それなら話が早いかも」



窓側の席にはサメが二匹並んで座っている。

小雨がちゅ~とメロンソーダを飲み始めたとき、隣のサメ子が窓の外を急ぐスーツ姿の学生が見えた。

「そっか、もう受験か」

「あっ、そんな時期か」

サメの姿のまま入れるお店、んな店はもちろんこっち側の店であり、過ごしやすい気温になってきた辺りに、大きな試験というのがあった。

「でもさ、あれって試験が始まる前にだいたい決まっているんだよね」

「そういうのをお前から聞くまで知らなかったからな」

「小雨はさ、むしろあの年は小雨入れなきゃ誰入れるっていう年じゃん」

「自分が受験の時ってさ、気がつかないものだろ?」

「実力があっても、落ちるのは、みてて嫌なものだね」

二人が同期になった試験は、術や異世界がある程度以上に当たり前の業界にある中で、一般からも募集を受け付けている。

しかしだ、試験を受ける前に前年度の合格者というのを調べると、求められる人物というのが見えるものであった。

「一般人だと当たり前なんだけども、術師方面ってさ、自分が受かって当たり前みたいなメンタルの持ち主が多いから、そういうのはまず調べないのよね」

「落としたお前らが悪いって騒ぐのいるからな」

「いるいる」

合格者は3パターン。

まず生まれがどこか名家の場合。

このパターンがあてはまるのは、登場人物では滅儀 鈴砂と余儀 七瀬。

名字は似ているが親戚ではない、名家の場合は一般人も受けるような試験に来ること事態が珍しい。

なお両家は同じ時期に功績をあげ、150年ほど前に名前を与えられた。

次に能力者の場合。

術師など、特殊能力者というのはとんでもなく多いが、この場合は何百年ぶりに現れたとか、よくわかってないというと高ポイント。

ここには小雨こと、斎道 要(さいどう かなめ)があてはまる。

そして、その他である。

その他は多岐に及びすぎてざっくりとしか紹介できないが、斎道が受験をするとなった年は慌ただしかった。

何しろ、前に現れたのは戦国時代以来のという能力の持ち主が受験するということで、合格基準が例年と変わったのである。

まず斎道は他の受験生より二歳上(募集基準では問題ないが、次の年も受けるものはかなり少ない)

絶対斎道はほしいということで、そうすると術のコントロールを長けているもの、そして斎道と協力して何かをやっていけるものを欲しがった。

この二つの資質、承認欲求が強い術師達の世界には本当に稀で、あまりにもいないために、斎道が合格してから、その能力が広く知られ、次の年に色んなところから息がかけられた一般人たちが願書を出してきた。

佐藤と館林の二名は、おそらくこの年でなければ受からなかったとされている。

佐藤はサメ子こと、佐藤季芽。

館林はメグこと、館林廻(タテバヤシ メグル)

「なんであんたが受かったのよって、よく言われてたわ」

「え~コントロールとかめちゃくちゃいいのに?」

「あのね、火力が求められる世界でコントロール得意だと、評価されにくいのよ」

野球で例えれば、ホームラン打てる子しかいらない業界。

「合格者の基準を、前年度の書類調べたらわかったから、そこで降りるつもりだったのよ」

その書類を持っていく最中に、同じ受験者である館林に声をかけれる。

「ちょっと待ってくれってね」

「あ~そっからわかったわ、メグが俺と先生が飯食ってたところにお前をつけれてきたんだよな」

「並んでカレー食べてたわよね」

「試験前にも説明会とかで何回か集まったろ?集まって、終わったら飯食っての店がいつも一緒で、でもいつも一人でたべていたんだよ。けどさ、メグが季芽をつれてきたあの時、混んでて、カウンターで並んで食べたんだわ」

そういうときは重なるらしい。

サメ子はレモンスカッシュをちゅー~と飲んだ。

「結局そっから三年ぐらいは一般人の志願者多かったね」

その辺りまで、斎道のサポートをしていたのが佐藤と館林であって、それは正直あまりよろしくはなかった。

この二人のノウハウを、用意した人材に教え込んだら用済みにしたかったという考えがちらりちらりと見えてきた。

「あっ、でも、俺はあいつらダメなんだわ」

斎道は用意された人材をよしとしなかった。

「だって、人形なんだもん、俺が悩んでいても、したい通りにしてくださいとか、そんなんしかいわないの」

「術師が用意したって感じだよね」

「話していてもさ、こっちと話がずれていることに気がついてないの、会話になってないのがんかんないの」

「でも美人だったよ」

目を引くような美人たちを用意されました。

「いいか、美人でも、俺の友人達をバカにするような事をいうやつはお断りなの!」

「あっ、もうそろそろ時間だわ」

「ベーグルは任せておけ」

お使いを頼む。

これにチーズをサーモンを挟んだものはとても美味しい。

「なんかあったら、連絡しろ!」

今日はやることがあるのだ。



「いい?」

「わかってるって!」

「じゃあ、復唱!」

七瀬が鈴砂に求めると。

「感情的にならない」

「はい」

「言いたいことがある場合は深呼吸してから」

「はい」

「お触り厳禁」

「もし、なんかしようとしたら、その時点で止めにはいるからね」

雨が降りだしてきていた。

「急ごう」

彼女はもう来ていた。

赤い傘をかぶったサメが一匹、こちらの姿に気がつくと、ペコリと一礼をした。

そこで鈴砂が何かしてしまわないかと、七瀬は不安になったが。

(なんでもう泣きそうなんだよ)

ため息1つついて。

「中へどうぞ、濡れてしまうから」

ここは余儀七瀬の店である。

「何か飲みますか?」

サメ子にメニューを渡すと。

「では紅茶を」

「前に飲んだのがいいかな?それともおすすめもあるけども」

「おすすめで」

こうなったのは理由がある。

七瀬がキレたからであった。

元々そんなに世間話をするような中の同業者同年代がいないために、話を楽しむために鈴砂はこの店に来ていたのだが。

「だからサメ子ちゃんが、お帰りなさい、もうね、それだけいってくれたら、幸せなんだよね、あ~でも言葉がなくてもかけよってくれるとか‥」

ずっとそのような話をするので。

「佐藤さん、暇かな?」

八千代の屋敷に連絡して、段取りをつけた。

「えっ?なんでお前、連絡先知ってるの?」

これからサメ子が来るということで、まずそこで不機嫌になった鈴砂。

「あっ?なんだって?ここで話を終わらせてもいいんだぞ」

鈴砂から幸せな妄想をひたすら聞かされて、うんざりしていた七瀬はそこで引くことはない。

何かあったら、すぐに切るから、バカに一回会ってほしいという話は少し迷っていたが、日時はこうして決められた。

本当は夜にだったが、その前にこうして会ったので、そのまま七瀬の店にということになった。

(しかし)

もじもじ

(こいつ、佐藤さんの前になるとここまで変わるのか)

勇猛果敢という言葉が合うようなこの男が、サメ一匹を目の前にして、何をどう話せばいいのか、迷っているようで、いまだに会話は始まらない。

「本当に二人は付き合っていたんですか?こいつの妄想とかじゃなく?」

「あ~明確に付き合いますな?はい/いいえがあったかんじではないですが、付き合っていたになるんじゃないですかね」

たまにある、自然発生型。

「鈴砂さん」

「なんだ?」

喉がからからに乾いてた鈴砂はそのまま水をグビグビ飲んだ。

「結婚おめでとうございます」

「それは‥だな」

「ほら、説明」

「あれはお前を忘れる術をかけられているのを解くためにであってな」

「お嫁さんを大事にしてあげてください」

滅儀鈴砂の嫁、良い子の抱き枕シリーズ硬め(サメ)

「俺は硬めよりもち肌が好きなんだ」

覚えているだろうか?

「サメ子ちゃんのもち肌!」

「なんですって!」

とサメ子を怒らせたのが実は鈴砂なのである。

ピリピリピリ

サメ子からの怒りが漂い始めた、ここに皮膚が弱い人間がいなくてよかった、いたらブツブツになっていただろう。

しかしこの怒りを浴びたら、逆に緊張がとれた。

「だって、知らんうちに自分に術がかけられていたんだぞ、誰も解いてくれるわけにはいかないし、それなら自分でやるしかないだろう」

「かかっているとわかったのはいつです?」

「かけられた後に、映画見に行っても、なんかいつもと違うんだ、感情が理解できない、自分にはなくなっててそこで自分には喜怒哀楽のうち、怒しかないっていうのがわかって、これは‥おかしいだろう」

「怒しかないってことはあれかな、滅儀の剣が曇らないようにってやつか」

「しかし、ずいぶんと強い術がかかってますね」

「お前がサメになりましたってことで、封印類の処置に問題はなかったのか?って口に出したからな」

「それにしてもですよ」

「とりあえず、うちの一族もまったく解こうとはしなかったので、どういう風に俺を見ているのかわかったよ」

「そりゃあ、そうでしょうよ、あなたは若様なんですから、嫁をもらい、子をたくさん作るのが」

「18の時に嫁もらったよ、もらったけどもさ」

滅儀の一族は結婚できる年齢になったら、強制的に結婚させられる。

つまり鈴砂も一回は結婚しているのである。

「その時は疑問に思わなかった、でも結婚してからわかったし、相手もね、俺のこと好きではない、あれは嫌いなんだろうな」

次の世代も期待できるようなお相手を準備されます。

「上手くやっていくの難しいなって俺も思ったし、向こうも思ったんじゃない?それでいきなり始まった結婚は、いきなり終わったからな‥その話をしに来たわけじゃないだろうし、その話をしたいわけじゃない!今回の結婚をして術を無理矢理解いたっていうのは、全部俺が悪い、そして自力で解いたそのことは誉めてくれよ!」

「‥大分こじれているって聞いてましたが、大丈夫そうですね」

「うん、これ聞いたら、大丈夫かなって思った」

しかし、七瀬の予想ははずれたのである。


「なんでおさわりダメなんだよ!」

サメ子が帰ってから、ずっとこんな調子だったのである。

「結婚しよ!一緒に暮らそう」

珍しく酒も入り。

「サメ子ちゃん、サメ子!」

時々名前を呼んでは泣き出していた。

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