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元凶

ドロン!

とサメに化け、裏通りにある酒の越後屋にやって来た。

「すいません」

「は~い」

棚を片付けている店員さんに声をかけると、カウンターまで案内してくれた。

「サメ子さんから預かっているお酒のリストはこちらになります」

「伝票とか持ってこなくても大丈夫なの?」

身分証明の準備だけはしていた。

「そりゃあ、まあ、まっ、これ以上は警備上の関係で話せませんが」

思った以上にセキュリティはしっかりしているところのようだ。

(まっ、あいつだしな)

どんなときでも安全な手を、策を選ぶので、それゆえに小雨は信用できるのである。

「こちらから三本ですね、リストの一枚目が当店で通常に販売しているもの、二枚目が限定出荷や限定醸造、三枚目は限八千代の庭を訪れるお客様へのお土産のために用意されたオリジナルラベルです」

「えっ?そんなの知らないんだけども、一回も貰ったことねえ」

「そ、それならば三枚目からお選びになったらいかがでしょうか?」

あきらかにしょぼーんとしているサメにかける言葉に困る。

「店長大変ですよ」

「イワサキくん、どうしたの!」

「あれ?サメ子さんじゃない、えっ?えっ?」

「イワサキくん、この方は小雨さん、見てわかるように八千代の庭の方だよ」

「なんか、今大騒ぎで、サメ子さん結婚したんですか?」

「えっ?マジかよ、そんな話一個もでてないが」

「今、サメと結婚した人がいて」

写真を見せてもらう。

「サメ子に似ているけども、サメ子じゃないし、あれ、これどっかで…っていうか、結婚したのメギかよ、昼前にぶっ飛ばしたばっかだぜ」

新郎 メギ

新婦 サメ?

「小雨さん、メギって、あのメギですか?」

「店長、そのメギですよ」

「頭痛くなってきた」

そこに通知が…

「あっ、なんかそのメギさんって人が結婚した相手って、それサメじゃなくて、抱き枕みたいですよ」

イワサキは更新を読み上げてくれた。



結婚しました。

八千代の庭に来てすぐにサメ子に写真を見せた。

「どうよ」

「どうよって何よ」

「元カレだろう」

「映画を見に行ったり、指輪はもらいましたけども…」

「その気がない奴に男は指輪なんてやらないぞ」

「ん~でも幸せならいいんじゃない?」

「マジでござるか、マジでござるか、ヒャッヒャヒャッヒャ」

「見ろ、ああいう反応がありえるようなことが今起きているんだぞ」

ハンゾウ大ウケ。

「神や精霊などと結婚するということはありますし」

「隣国の王妹の方でもおりましてね」

姫巫女と騎士はそういう婚姻がある文化だったようだ。

「柊が、今、どんな顔しているのか、チョーみたい」

「柊さんか、苦虫噛み潰してるんじゃないかな」

ここに名前が上がった柊は、メギ側に護衛として仕える忍であって、付き合うべき人間と自分が思っている以外の人間には辛辣な男である。

「これはすぐにどうなっているのか、詳しく調べねば」

「いや、悪いけども、サメ子はもちろん、ハンゾウも今は八千代側にいたほうかまいいぞ」

「おや、やっぱり危ないでござるか?」

「越後屋の店長が、そのまま裏から八千代に行ってくれっていうぐらい」

「さすが滅儀(メギ)の若様、結婚しました一つで俺らの業界の話題かっさらうし、あれは、たぶん原因サメ子じゃないかっていう証拠探しているんじゃないか」

「これ、抱き枕っていってたけど、こんなの売ってるの?」

「いや、これ俺があげたやつ」

「元凶はお前か」

「おいおい、あれは俺に負けた残念賞だぜ」

佐藤季芽が退任するとき、追い出すような手続きの早さを見せたこともあり、どういうことかと問い合わせに来たのが、メギであった。

その話をこのまま続けると、メギの家中が快く思わないということはわかっていたので。

サイドウが忘却をかけることを勧めた。

忘却はかけた、陣はあっている。けども、メギは今に至るまで何度も佐藤のことを思い出した。

そのためサイドウはもう一度かけ直そうとしたのだが、それがあの勝負。

勝ったら、佐藤季芽のことを教える。

負けたら、佐藤季芽のことは忘れる。

一生忘れたまま、それぐらい強い術でなければ、納得はしなかっただろう。

(それにその方が術はかけやすかったしな)

そして、こちらが関与しないところで、メギは抱き枕と結婚。

「さすがにそこまでは俺にもわけわからん」

「うっひゃひゃ」

「メギさんは真剣なわけだしさ」

「これ、しばらくしてから、メギん所に嫁にいけるんじゃないの?」

「嫁さんいるじゃない」

「一匹増えたところでもう変わりはしねえし、メギの若様は物好きで、ああなってしまったら、見合いの話も来ねえよ」

「でござろうな、今まで優良物件であった若様がこんなことになってしまったら、見合いの話はないでござるし、下手すりゃ後継げないでござろうな」

「まさかサメハーレムを狙って、こんなことをしたのか」

「ゴクリ、サメハー主でござるか」

「勇者だな」

「二人ともさ、そう茶化しているけどもさ、八つ当たりで何か来るかもしれないんだから、私は警戒することにするよ」





これは想定はしていたことだ。

あそこは生まれを見るような家柄だし。

メギさんはいい人ではあるけども…

周りはそうはいかない。

「はじめまして」

「……」

「……」

挨拶をした後に、返される言葉はなく、軽蔑の目と嫌悪感を一度でも浴びてしまったら、ここにはいられない…




サメは一人、部屋で指輪を見ていた。

「また返し損ねてしまった」という言葉だけは聞き取れた。

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