天気予報
「んじゃ、まあ、帰りますか」
会議が終わると、それぞれみんなは帰路につくのだが。
「サイドウ管理官!」
ずっと探していたのだろうか、息を切らした男が名前を呼んだ。
「おや、最近名前が変わったメギくんじゃないか!」
「メギさん、これから管理官は次の予定がありますので」
管理官のスケジュール調整をする補佐役の一人、女性が制止するが。
「この後お時間作れますでしょうか?」
「申し訳ありませんがこちらも引けません」
「あけび、メギくんとは約束があったりするわけだからさ、じゃあ、こうしよう」
場所を移動した。
どこかの道場のようだ。
「会議するってことで、あちこちからみんなやってくるから、いろんなところにアクセスしやすいような場所を選ぶけどもさ、今日は空いてて良かったね」
旧議会堂地下にある道場を一時間借りることができた。
「おっ、準備できた?」
サイドウはそのまま会議に出席した格好で、上着だけを脱いだだけ。
一方メギは稽古着になってる。
「お二方も、気配を隠さないでかまいませんよ」
鏡の前に話しかけると、男女が正座で現れた。
「俺はしっかり隠れてましたよ」
「どうせ私はこういうのは苦手ですよ」
女の方は、先程スケジュールを管理していたあけびである。
「サイドウ管理官、俺に何かしたんですか?」
メギは殺気を出して聞く。
「うん、したよ」
「季芽がいなくなったあと、何でさっきまで思い出せなかったんだろうって、前に季芽のことをあなたに聞いた時覚えてます?仲良く他のサメと一緒にいたっていう…」
「うん、知ってる、それでそのサメってさ」
こんな感じじゃなかったかな?
とりあえずさ、俺が勝ったから、またしばらく忘れてもらうから…
よろしかったんですか?
いや、だってさ、これ、本来は解けるような奴じゃないんだよね、なんでメギくんが解いてきてるのか、わからんないんだよ。
いっつも間違えないか、確認し直しても…
ほら、やっぱり、陣には間違いないんだよ。
こうなると、俺の手にはおえないし、メギくんのところとはうちは協力関係にあるわけだし、メギくんには忘れてもらうのが一番いいってわけよ。
ですが…
言いたいことはわかるよ。
そのリスクを飲んだ上だしね。
今現段階で、メギくんが忘れたままであることが一番いいわけ。
でもメギくんは、忘れれない。
「それではメギ様はこちらで運んでおきます」
「よろしく」
鏡の前に座っていた男性の方がメギを運ぶようだ。
他の人間を呼んで、担架で運んでいった。
「管理官はどのようなおつもりでこのようなことをしているのでしょうか?」
あけびは疑問をぶつける。
「同期の絆って思ったよりも大きいってやつだよ」
「理解できません」
「まっ、椅子取りゲームを望まれている中、別ルールのゲームに書き換えちゃったのが俺らだし、理解してほしいっていう気持ち、もうないもんな、誤解される不利益さえなければいいや、どうする?何か食べてから帰らない?」
「お供します」
「じゃあ、行こうか」
昼前の天気予報をサメはじっと見ていた。
「列島を覆うような雨雲が…」
アナウンサーがこれからの解説をすると。
「ヤバイかもな…」
サメ子は気になった。
そのためにめずらしくサメ子の方から連絡した。
「おっ、何?会議の事とかきになった?」
「いや、それは別に」
「じゃあ、天気かな」
「うん、そっち、今は電話は?」
「大丈夫」
「天気予報見ていたんだけども、もしかしたら、あるかもしれないよ」
「お前が心配性なのはわかってはいるけども、今回のはな、警報が広範囲だし、あけび!」
「はい、ただいま」
「悪いけどもさ、うちからの外部調査ってことで、サメ子が動けるように用意してくれる?」
「…わかりました」
「じゃあ、用意しておきますが、会議の方はな、あんまりよろしくなかったわ、すまんな」
「期待は…してないよ」
「…そっか、ああ、そっち昼は何にするの?」
「これからコーパスさんがキノコ持ってきてるから、フルゥさんがそばを打つんだ」
「おおいいな、冷酒ほしい!」
「サイドウ、君は仕事じゃないか?」
「会議が終われば俺は自由だ!冷酒用意してくれよ!」
「ないよ」
「ええ、じゃあ、買っていくか」
「いいよ、買わなくて、来るならうちの預けている越後屋さんによってきなよ、リストを見せてもらって、そっから三本持ってきていいから」
「限定のお酒とか選べますか?」
「珍しいのもあるよ」
「わかった、あけび、支払いみんなやっておくから、俺いくね!」
「あけびさんに代わってよ」
「あけび、サメから!」
「はい、こんにちは」
「すいません、用意してもらって」
「仕事ですから」
「そっちは他に何かあった?」
「何もありません」
「…そっか、わかった、ではこれで」
登場人物紹介
・サイドウ管理官
権力の椅子取りゲーム、同期の中での勝者。
・あけび
サイドウの護衛を兼ねる忍び、身の回りを担当している。
・鏡の前に座っていた男。
サイドウの護衛を兼ねる忍び、こちらは力仕事担当。
・メギ
サメと一緒にいた佐藤季芽を探している。
・サメ子
前職は椅子取りゲームの参加者。
当時落雷によって、その地域にある大中小の封印類が全部解けかかり、その応急措置のために認可がおりてない術を使い、その封印を許可なく覗き見ると、人からサメの姿に変わるというチェック機能を附属した。
元には簡単に戻れるが、現封印だと天変地異には大変に弱く、いつ解けるかわからない状態、自分がサメの姿になることで封印と繋がり、いち早く状況がわかるが、それは椅子取りゲームからは脱落することを意味する。
理由はいつサメになるかわからない人間はいらないということ。
しかし、本人はひゃっはー、これで自由じゃ!と大義名分をいい方向に解釈した。
ただ封印は気になる様子、職を離れた今も、天気予報は気になるようだ。