後作ったのは大樹と道と本。
ここは庭である。
しかし、この辺りの地図上には載ってはいない庭、まあ、この辺りというのは海なので存在しない島扱いになってはいるのだけども。
そんな島である、島民達もわけありのもの達で、その島のいちばんえらい、まとめ役、創造主の一人、管理者は一匹のサメであった。
「よくある話だよ、面倒ごとが多くなっちゃったっていうやつですわ、押し付けられる事が滅茶苦茶増えていったんで、どうする?って相談して、じゃあ、呪いでサメにされましたってことにして、第二の人生始めようかって」
「その話は何度聞いてもおかしい話ですわね」
話し相手を勤めるのは、今は亡き国の姫巫女であり。
「失礼します」
とお茶を淹れてくれるは、そんな姫巫女を最後まで守ろうとしていた騎士である。
「しかし、こんなところに庭があるだなんて、今は海の上にありますから、島でしょうかね、あるとは思いませんわ」
「海の上にあったら、島ですよね、でも最初相談したときは庭で、こしらえた後に海の上にあったら島だよなって言われて」
あっ!そうだねと。
「魔法術方面も学んできたつもりですが、ここが島にしろ、庭にしろ、この規模を生み出せるとは思いませんよ」
これが全うに学んできた騎士の感想である。
「これでもずいぶん悩んだんですよね」
頭を悩ませたぐらいで、人が住めるような場所を創造するというのは普通はできない。
「名前が決まった辺りから、一気に上手くいったって感じですかね。」
そんなノリで、簡単に何かが大規模なものが生み出されたら、この世はもっと滅茶苦茶になるはずだろう。
「八千代の庭というお名前はどこから来たんですか?」
「長く続いたらいいかなって、植物と関わると人の時間感覚ではなくなるということは、最初は気づきませんでしたがね」
話の中心にいるこのサメは、一メートルぐらい。始めてみる人たちだとぬいぐるみなど、作り物に間違われる。
知り合いに「サメ子ちゃんのモチ肌!」と言われたら、「なんですって!」とぶちギレて、あっ、これは本当にヤバイことになると、相手を慌てさせたが許さない。
未だに許してない心の狭さを持ち合わせている。
「サメになった利点もあるんですよ」
「何でしょ?」
「風邪を前よりひきにくくなった」
「まあ、それはいいですわね」
この二人の会話はいつもこのような感じなので、そこは騎士には気にはならないが、彼が気になるのはサメが身に付けているシャツの字である『サから始まって、メで終わるもの』であった。
なお、その言葉は彼には読めないがサメが常人では理解できない何かをする際の陣にも刻まれている。
登場人物の紹介
・サメ
元人(女)、様々な植物が生息する八千代の庭の想像主の一人にして、管理者。
・姫巫女
結構大きい城に生まれたが、戦火で故郷を失い、逃亡生活を数年続け、共にあるものが騎士一人になりながらも絶望と戦うことにした。
・騎士
文武両道の人格者、そのために戦の際に姫巫女を任されるが、その逃亡生活で体に無理がたたってき始めていた。
それでも…今日の暖を取るための薪を求め、森の中に入っていくと、森の奥で八千代の庭の創造主達が肉を焼いていて、その旨そうな匂いで彼らと出合い、食事を分けてもらう。
楽しい時間はあっという間にすぎ、「これからどうするんですか?」と創造主達の誰かが聞いた。
たぶんあれはサメ(その時は人の姿していたし、女性は彼女だけだ)
「行くところはありませんから、このまま今日は野宿でしょう」と答えると。
「こんなところで野宿するものではありませんよ」
「じゃ、俺のところに来るか?」
「あなたのところとなると、他の人への説明が大変になりますが」
なんだっけかな、森には神がいて、そんな話を読んだことが子供の頃あったな、これはそれなんだろうなどと、どこか他人事のような目でその場はいたのだが。
「お二人とも」
眠そうな目をしたサメがそこにはいた。
「こちらへどうぞ」
大木の隙間にそういってサメが入っていき、ついていく。歩いていくとそれは細かく複雑な陣が作った道であることがわかった。
大木も道も、庭に向かうためのものであり、二人は招かれ、今は平穏な生活をしている。