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オクザキだからオークなのだろうか

六話連続更新します。

「ねぇ、何で? 何で、なっちゃんは麻衣から離れるの?

 何で何で何で? おかしいよね? 麻衣はなっちゃんのことこんなに好きなんだよ?

 麻衣はね、なっちゃんが大好きなの。好きで好きで好きでたまらなくて、どうしようもなく愛してるの。

 麻衣はなっちゃんのぶっきらぼうなのに優しい所が好きだよ? たまに見せてくれる笑顔が大好き。世の中はなっちゃんの魅力が分からない屑共ばかりでとても嬉しいわ。だって麻衣がなっちゃんのこと独り占め出来るもの。

 あああああ、でもあのなっちゃんにまとわりつくメス共は許せない。なっちゃんには麻衣だけいればいいのに何であいつらはなっちゃんの側に……

 ……ああ、ごめんね、なっちゃん。なっちゃんのこと以外考えてちゃだめだよね?

 どこまで言ったっけ……そうそう、麻衣はね、なっちゃんの全部が好きだけど、特に一番好きなのはね。


 なっちゃんが苦しむところなの。


 なっちゃんはね、どんなに辛い目に遭っても凛と前を向いているでしょう? 泣いたりもしないよね?

 大好きなお父さんが死んじゃった時も、お母さんに捨てられた時も泣かなかったものね。麻衣はね、そんななっちゃんがすごく好きなの。愛してるの。

 だからね、なっちゃんがもっと輝くようにゴミ共にお願いしてなっちゃんをいじめさせたの。

 やっぱりあいつらはゴミ屑でカスだよね。簡単に麻衣の思った通りの行動するんだもの。

 その点、なっちゃんはすごいなぁ。こうやって麻衣の思い通りにならないことばかりするんだもの。

 でも、これは頂けないよ。麻衣の側を離れるなんて許さない。


 だからね、死んで、なっちゃん。


 ああ、痛いのに苦しそうな顔を見せないようにするなっちゃん、すごくかっこいい。

 麻衣ね、その顔見るだけで濡れてきちゃった。その我慢する顔で子宮がきゅんきゅんするの。もう()っちゃいそう。

 なっちゃんが死んだらどうしようかなぁ。腐ってくるまでお部屋で抱き枕にしようかなぁ。

 腐って来ちゃったら食べてあげるね。麻衣と細胞から一つになるの、とっても嬉しいでしょ?

 なっちゃん大きいから食べごたえあっていいなぁ。今からどんな料理にするか迷っちゃう。

 麻衣ね、料理上手だから安心してね。なっちゃんに『色々』食べて欲しくていっぱい練習したから。

 それでなっちゃんを食べちゃうんだぁ……倒錯的でドキドキするね」


 ナイフで刺されると痛いよりもまず金属の冷たさが感じられるらしい。十七まで生きて初めての経験だ。先ほどから刃を抜こうと刺してくる元友人の手を掴み力を込めているのだが、なかなかどうして抜くことが出来ない。学園の天使と呼ばれる黒宮麻衣にこれほどの力があったとは。

 そういえば数少ない友人から借りた漫画にこんな女が出ていた気がする。光の入らない目で長台詞を言っている時だけ物凄い力を発揮する女が。


 私が考えている間にも足の先から冷気が昇り、力がどんどん抜けていく。奥崎楢葉(ならは)十七歳に『享年』とつくのはそろそろらしい。

 だが、死因に『黒宮麻衣による刺殺』とつくのだけは避けたい。同性愛をどうこう言うつもりはないが、自身の歪んだ性癖(サディズム)で私を苦しめてきたこいつに引導を渡されるのだけは御免被りたい。

 あと死んだ後の(からだ)を冒涜されるのは『死んでも嫌だ』。


「離せ」

「あっ!」


 私は思い切り腕を振りかぶり、黒宮麻衣の体を弾き飛ばす。私の半分以下の細い体は簡単に吹き飛んだ。

 縦にも横にも伸びていく私の体は、痩せようと試みた運動で筋肉と脂肪がうまい具合に混ざりあった相撲取りのような体型を作り上げていた。豚のような顔もあいまって、私のあだ名は『女オーク』だ。黒宮麻衣と並ぶと『美女と野獣』と揶揄されていた。気にしていないと言ったら嘘になる体格に、今回ばかりは感謝したい。


「痛ぁ……なっちゃん、悪い子だね……これはお仕置き、え?」


 黒宮麻衣が何か言っていたが、私は無視して教室からベランダへ向かう。ナイフを引き抜くと出血により意識が飛ぶ可能性があるので刺したままだ。歩くたびに腹筋が刃を擦り体へ痛みが走る。

 私の熱を吸収したナイフは冷たいものから酷く熱いものへと変わっていた。


「なっちゃん! 何してるの、なっちゃん? そんな所にいたら危ないよ? 戻っておいでよ!」


 どの口がそう言うのだろう。黒宮麻衣の声を背中に受け、ベランダの手すりを掴む。

 振り向いた先にいた黒宮麻衣の顔は私の行動の意味を理解したのだろう、泣きそうに歪んでいた。


「誰がお前の思い通りになるものか」


 最期の力を振り絞り、私はベランダの手すりを飛び越えた。

 黒宮麻衣の絶叫が聞こえて、ざまあみろと笑みがこぼれる。


 四階からのダイビングで、私の体はトマトのように潰れるだろう。少しでも恐怖が紛れるように私は目を閉じる。

 白い光が瞼の作る暗闇を染め上げていった。




 .........


 ......


 ...




『やあ、どうもどうも。ナラハ・オークザキさん。

 管理番号×××……あ、検閲かかってら……とりあえず、シンシンへようこそ!』

『僕らはシンシンの管理者、ベーシンとミョーケンだよー。僕がミョーケン、こっちがベーシン』


『何で君がここにいるか簡単に説明するとだね、君の学校が管理者会議の次元移動に巻き込まれました! マジすいませんっした!』

『学校にいた69人……あらやだ何だか卑猥な人数……が、巻き込まれました! ごめんなさい!』


『慌てて管理ばん……とりあえず君んとこの管理者さんと連絡取ったらうちで面倒みることになりましたー。召喚転移転生課とトラブル対策課がてんやわんやだよー』

『今回の戦犯、次元管理課がお通夜状態だよー。何人首切られるのかなー、物理的に』


『まあ、とりあえずオークザキさんにはシンシンに来て貰うとして……じゃじゃーん、何でもお願いを叶えてあげまーす! あげぽよー!』

『ドンドンパフパフー! でもチートはさせませーん、デメリットもお渡ししまーす! さげぽよー?』


『まずオークザキさんは瀕死状態での転移なので元気な体をあげまーす! やったねー?』

『でも入れられそうな器が絶滅しちゃったオーク族のオスしかありませーん。ごめんねー?』


『あとマイ・クロミヤさんからのお願いで絶対出会うことになってまーす。お願いは目覚めた順なんでメンゴー』

『代わりにオークザキさんにハーレムの呪いがかかりましたー。頭おかしいくらい愛する人の周りにはいつも泥棒猫が……クロミヤさんにとっては凄いデメリットですよねー?』


『ただ、これはオークザキさんにもデメリットな、の、で! 特別にオークザキさんはただでお願いを叶えてあげちゃいまーす!』

『生き返ってもオークだし、ヤンデレからは逃げられないし、オークザキさんは女子なのに望んでないハーレムですからねー。生き返ったくらいじゃ収支マイナスですもんねー?』


『ではでは今からオークザキさんの深層心理を……おぉっとぉ! 「母から愛されたい」ですかー。泣かせますねー』

『もう一つの「父への親孝行」は叶えられませんねー。君にとっての父親はカシタロー・オークザキさんだけですもんねー。流石に亡くなったカシタロー・オークザキさんまでこちらには呼べませんもんねー』


『ではではー、これから僕ら二人でオークザキさんの気に入る素敵なお母さんを選びますからねー? 楽しみにしててくださいねー?』

『どうせだったら赤ん坊からやっちゃいますー? ほらー。やっぱり赤ん坊転生ってのもチート物語的には鉄板じゃないですかー。なかなか出来ない体験ですよー?』


『じゃ、そういうことでちゃっちゃと転生しちゃいましょうかー。目覚めた時をお楽しみにー。後は結果をご覧じろ!』

『では、どどんと楽しいシンシンライフを送っちゃってくださーい!』




 ………………。


 私の名前はオークザキではなく、オクザキなのだが。




 .........


 ......


 ...

お読み頂きありがとうございました。

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