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ふざけた世界でブリキは奔る  作者: 猫狐
第一話『はじめてのおしごと』
5/13

4.強盗犯、尋ねる


「ワーオ!」


 俺は思わず、ウルトラハッピーな声を上げた。銀行の扉――プシュー、と蒸気を上げながら自動で開く銅製のドアだった――を潜った先に、大変な光景が広がっていたからだ。

 なんというか、スチームパンク全開な内装だ。そこら中に銅色の金属が使われているし、ところどころには銅パイプも見える。天井には、意味があるのか飾りなのかは分からないが、巨大な歯車もあった。

 空間はかなり広く、中央の巨大な柱にはパイプオルガンが置かれていて、弾く者もいないのにパイプから蒸気を吐き出しながら音を流している。そのオルガンを囲むような形で奥から手前へ机、仕切り、椅子が置かれていた。あそこで受付したり金を下ろしたり融資を申し込んだりするのだろう。

 そしてそんな空間に、茶色生地でチェックのベスト、その下にワイシャツを着ている人間、おそらくは銀行員であろう人たちがいる。彼らに用があって来たと思われる裕福そうな顧客たちもだ。

 そして、その彼らはいま、当たり前のように縄で縛り上げられていた。

 はい。どうみても強盗中ですね、これは。


「あー、ゴスさん。お取り込み中のようだよ。一旦帰ろうか」

「あれー? 誰もいないない。なんでいない?」


 隣にいたゴスがそう言って、キョロキョロと見回した。いるいる。いるって。縛られてる人がいっぱい。何人かは項垂れてるし、明らかに下半身からソンゲンが漏れてるよ。よく見て? 見えない角度じゃないよね?


「もっと奥かも。ついてきてブリ兄さん。いいことあっるぞー♪ ミスタービーン!」


 この状況で奥かー。ふーん。銀行の前で顔を覆うヘルメットを被らされた段階であれ? と思ったけどさー。ミスドとミスタービーンについてはあとで聞こう。あんの? いるの?

 あー、畜生。どうやら俺は、最悪の選択肢を選んじまったらしい。十中八九、この女は仲間だろう。なんのかって? そりゃあお前、銀行強盗たちのだよ。なんであんなところで謎スチームなんて売っていたのかは分からないが、話しかけられた時点で逃げるべきだったのだ。いま逃げればいいじゃないかって? もう手を掴まれているんだ。

 そのまま手を引かれた奥には鉄格子……銅格子の扉があった。開いている。開いているというか、開けられている。どうみてもバーナーみたいなので焼き切られた跡がある。

 銅格子の先は通路であり、俺たちは更に奥へと進んだ。そこにあったのは、やたらと大きな扉。映画とかで見るような厳重なヤツだ。十中八九、大金庫の扉だろうな。やはり銅製であるが、ハンドル周囲を取り囲むようにLAN端子が見える。


「あー、いたいた。やっほー、アリス、クライン、ダリー。ゴスだよ。ゴスゴスのゴスだヨ」


 扉の前には三人の人間がいた。ゴスが空いている手を上げながら彼らに挨拶すると、全員が一斉に振り返った。

 

「テメェ、ゴス! どこに行ってやがった! 芋引いて逃げる性格じゃないと知ってる分、どこへ行ったか検討つかねえんだよテメェは! ……って」

「もー、ゴスちゃんたら。あなた目立つからあんまり離れないでって行ったでしょう? ……って」

『我々貴様探索。苦労。時間浪費。謝罪要求……って』

「「『誰だお前』」」 


 オイ、最後のロボ声のヤツ。口調はちゃんと貫き通せ。

【TIPS】

・銀行

役割は現代と全く変わらないが、融資先や金額の決定等、一定額以上の金が動く場合、貴族や巨大企業が積極的に口を出してくる。

今日も銀行員さんたちの胃はキシむ。


・金庫扉周りのLAN接続口

銀行員が生体LANケーブルを挿し、解錠要求をしたあと、それを銀行地下のマザーコンピューターと支店長が二重チェックすることで開く。

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