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マジカルでロジカルでケミカルな魔法とは?

 急遽任された大任にどうしようかと頭を悩ませるリイン・ベルトナー、彼女は王立学校の魔法教科を好成績で卒業できた秀才ではあるが魔法の教師経験などあるはずもなく、そもそも魔法を教えるというのは相手が魔力を自分の意思で操作できるようになって初めて成立するものなのだ。


 しかし今回教える事となった内容は魔法を扱うための第一条件、魔法使いになるための登竜門とも呼ばれている魔力を感じる方法と、魔力操作の方法だ。


 はっきり言って、この2つを完璧に教える方法など存在しない、仮に存在したとすればそれは誰でも魔法使いになれるという事になる。この2つが出来るか出来ないかは完全に個々人の才能に依るもので教師役の教えの影響など誤差の範囲でしかない。


 だがしかし、何年たっても子供が魔法が使えないという現実を受け入れられない親というものも存在し彼らは魔法が使えない原因は教師役にあるといって怒り出す例は少なくなく。貴族にはその傾向が高い、アカツキ家は民からも信頼され善政を敷いている名君にして明君であるのだが、あまり大きな声では言えないがここ最近はちょっとだけ奇行が目立つ。


 リインに、もしかしたらという気持ちがないわけではない。


 失敗したから処刑。とはならないと思うが、今後の出世に響くだろうし何より共にアカツキ家に使えている家族に迷惑がかかるかもしれないというほのかな不安がリインにはあった。




 まあ、その不安は一時間後には完全に無駄に終わるわけだが。





 ♂♀




 リインに教えて貰った、魔力を感じる方法と魔力操作における最も効率が良いとされる修行法、ぶっちゃけて言えば瞑想だ。


 これを一日、一時間ほど続ければ才能があれば三年で魔力を感じられると言われてやってみたのだが予想外の事が起きた。


 なんと三人が三人とも最初の段階から魔力らしきものを感じ取る事ができていた、そして瞑想を続けると直ぐに魔力操作を出来る段階に移る事ができたのである。


 この事には教師役のリインもビックリで暫くぽかんとしていたくらいだ。


 イザヨイの独自の予測や考察によると、この世界では魔力という力が生まれた時から存在しているため自覚するのが非常に困難である。しかし俺たちの世界では魔力という力が存在しないまたは存在したとしても非常に微弱なため俺たち一家は魔力という突然現れた力を敏感に感じるとる事ができたのではないか。


 という推論だ。


 正直確証が持てないのでどうでもいいことであるが、一応納得ができたのでイザヨイを褒めておいた。




 そんな事もあり勉強は次の段階に移る、次は『では実際に使ってみよう』という事だ。


 リインにこの国で一般的に使われている属性魔法についての説明を聞き使い方を教わる。


 魔法にはちゃんとした法則があるため色々と手順を経る必要があるが原則である等価交換さえ満たしていれば色々と自由が利く。


 属性魔法は魔力を属性に転換して魔法を放つ魔法らしく、この場合の属性の転換は頭の中でその法則を理解し魔力で再現する。


 つまり火を属性魔法で生み出したいなら、頭の中で火が出る状況を思い浮かべ魔力を通せばあとは勝手に発動するというわけだ。




 そして完成するのが目の前にある、馬鹿なイザヨイ(人間火炎放射器)である。


 普通の生活を送るうえで見る機会のない業火がイザヨイの手から飛び出し目の前の森林を撫でる。


 目の前からはパチパチと嫌な音がして、鼻にくる異臭がs


「おいバカヨイ!火魔法の一件、昨日のだけじゃまだ懲りてねぇのか!」


 正気に戻り、叫びながら頭の中では魔法を構成する。


 とりあえず火を消すには水。頭の中では火災を消化する消防士が放水する光景が再現される。


 魔力を通し水の属性へと転換する、最初の魔法行使でぶっつけ本番ではあるが不思議と失敗するような気はしなかった。


 実際水を出そうと思った次の瞬間には手からすごい勢いで水が放水され、イザヨイが放つ業火へと向かって行った。


 爆発、爆音、衝撃、おびただしい量の煙が一瞬で辺りを包み視界を白く染め上げる。突然の出来事に意識が削がれ魔法が中断されたが結果オーライ、煙が晴れた後には少し表面が焦げただけのびしょ濡れの森林が広がっていた。


「あ、あわわ。こ、これはせ、責任問題になりゅのでは……、ふしゅ〜〜」


「なになに爆発!?すごいかっこいい。お兄ちゃんたちの合体必殺技?もう一回見せて!」


 あまりの自体に思考が付いて行かず意識を失うもの、致命的な勘違いをしているちょっと頭のたりない子と色々といるがまずやるべき事は、


「おい、バカヨイ。OHANASIがあるから座れ」


「ちょっと待ってよ兄さん」


「座れ」


「話を聞いてくれ兄さん」


「座れ」


「兄さn「座れ」……ハイ」




 本日の教訓。


 馬鹿に(魔法)は危険。


 みんなも魔法を使う時は、保護者の人と一緒に、周りに注意して、安全に使ってくれよな。




 ♂♀




 前回の事件を踏まえ、魔法は使えても致命的に知識が足りないと実感した俺たちはリインの教育の元魔法を学び続ける事にした。


 要するに、実技はできるけど座学はまだまだだねという事だ。


 実際この世界の魔法は多種多様だ。


 魔法が技術であり自由度が高いからこその多様性ではあるのだろうがそれでも男の子である以上こういった分野には興奮してしまう。


 クレイランド王国も含めた大陸で最も普及している属性魔法、教会などに使用者が多い回復魔法、少数民族のみで使用される魔法や血筋で限定される魔法種族によって固有の魔法などもありこの世界の魔法事情の多様性に驚かされた。


 その割には一般への普及率や文明力の低さなど別の意味でも驚かされているが。


 ちなみに一般に普及している属性魔法は魔力を『火』『水』『土』『風』に転換して発動させる魔法のことであり、他魔法に比べての魔法の発動速度、習得の容易さ、魔法の威力、魔力の使用量、などの水準が優れていたため普及した魔法らしい。


 ちなみに『雷』や『光』『闇』『空間』と言った属性もあるのだが使用できる魔法使いがごく少数のため、それらは属性魔法の上位魔法といった意見と完全に別の体型の魔法という意見がある。


 どうやらこの世界の人たちは魔法について全て完璧に余さず把握しているというわけではなさそうだ。


 それに調べてみると使用できる人数は少数ながら特殊な力を持つ文字を刻むルーン魔術や卑金属を貴金属に変える錬金術なんかも存在しているらしい、胸が熱くなるね!





 魔法の勉強も進み、魔法の訓練をしていく中でどのような内容にするかという課題が出た。


 実際に魔法を使って魔法を使うことや魔法や魔力の操作や調節に慣れるための訓練だ。


 戦闘を想定して場所を作ってやるのか、そこらに的を作って適当にやるのか、その中で俺は魔法を使って何かを開発しようという意見を出した。


 要するにずっと考えていた魔法を使っての発明だ。


 それでは何を作るかという議題になり、今の生活に足りないものを作ることになった。


 衣食住は一応満足に満たされている俺たちの生活に現在足りないもの、それは



『風呂』である。



 体を洗うにあたり、布とお湯は毎日用意されているのであるが現代日本人の感性的に半月近く風呂に入っていないのは苦痛である。


 シャワー許容派の男性陣でもそれなので長風呂派の女性陣はさらにきついことだろう。


 なお、お風呂開発の意見はミライちゃんから出てこの意見をどこかから聞いてきた母さんがリインにかなり力強いお願いをしていた。


 当主の第一夫人から直々にお願いされたリイン氏は責任重大である、概要も知らないものを作るという事で彼女は顔面蒼白になっている。


 南無


 とは言え作るのはそう難しく考える必要はなく魔法で穴を掘って、水を入れて、温めるだけ。




 そう考えていた時期が私にもありました。


 仮にも当主と第一夫人更が入るとなるとそれ相応のものが求められ、場所決め、風呂建設、衝立作り、更衣室作りと何故か大工ばりの仕事をしている俺たちがいた。


 総制作期間6日間、改修期間1日、計1週間に及ぶ大工事の結果屋敷の端っこに見事な露天風呂が完成したのだった。


 原材料は近くにあった森と岩場、加工方法は魔法、かかった費用は0円(人件費別)の究極のエコ施設である。


 水を出すのも温めるのも魔法という水道代光熱費共に0円という非常に優れた施設だ。


 そのせいか排水の設備を見落として改修の必要ができてしまったのは誤算であった。


 完成した新築のお風呂の一番風呂は家族全員でとなった。


 こういう家族水入らずなどというのは久しぶりではないだろうか。


「いやぁ、生き返るな」


「もぉ〜、お父さんおじさん臭いよ」


「家に露天風呂があるのはイイわね、これから毎日入れるのかしら?」


「それって毎日僕たちにお湯を入れてってこと?」


「こうして一つ何かできると次々欲しいのが出てくるな」


「お兄ちゃん石鹸!石鹸作って」


「僕はコーヒーが飲みたいかなぁ」


「お父さんはビールが欲しいな」


「あらやだ、お風呂では日本酒でしょ」


「すごいなこの親、さらっと子供に酒造を要求してきた」


「何この家族、欲望に正直スギィ」


 たわいない会話が浴場に響いた。


 異世界での生活にも慣れ生活レベルも改善の兆しは見えた、以前の世界での生活では両親は共に仕事が忙しく家にいない事がざらで、俺たち兄弟も勉強や趣味というのに時間を割き家族団欒という物はほかの家に比べて少なかったのかもしれない、そう考えると未だ思春期真っ盛りの幼いミライちゃんには寂しい思いをさせていたのかもしれない。


 この世界は未だ忙しく不便な事も多いが、家族が近くにいて一緒に食事を取れる、みんな揃った団欒が何時でもそこにあった。


 もしかしたらこんな生活を、家族みんなが揃う日常をミライちゃんは望んだのではないだろうか、そんな益体もない事を前の世界では見た事もない宝石のような夜空を見上げながらふと思った。





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